ライヴマッチ演出募集!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.2万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
05/25〜05/27
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●本文
ちょっと前に、『STREET FIGHTERS』という深夜俗悪番組があった。PTAの評判は、最悪の部類に入る。深夜枠に流血上等のガチンコバトルをやるのだ。凄惨なシーンも多数あり、『青少年の健全なる育成を気にする人々』によって中断を勧告されるほどのものだった。
そのプロデューサーが、今ここに居るB君(仮名)である。当時彼は、穴の開いた時間帯に緊急に企画を立てることになり、そしてその任務を遂行してみせたのだ。成果は上々――ただし放送局的には――であった。
さて、その『STREET FIGHTERS』も5回に及ぶ放送でかなりのバッシングを食らい、今は中断したままである。根強いファンも居るが、当面放送局側では制作の予定が無い。
が、B君も仕事をしないわけないはいかない。そして今回、新番組を立てるために一つの企画を立てた。
休日の渋谷で、路上ゲリラ興業を行うのである。
具体的には、リングとセットを組んでおきそれにカバーをかけておく。ボックスが開くとリングが現れ、コンテナトラックに控えていた格闘家が次々と路上で試合を始めるのである。
ただし、この試合は『ショーレスリング』である。ガチンコでやり合うのではない。『魅せる試合』を行うのだ。
殺人技や流血は厳禁。セメントマッチ(真剣勝負)はありだが、あくまでショーであることを忘れてはいけない。
重要なのは演技とか演出とかである。
番組名は『Guerrilla Stunt Studio(ゲリラ・スタント・スタジオ)』。
ドラマを1本作るつもりで当たってもらいたい。
本募集は『演出スタッフ』の募集である。制作に携わる全てのスタッフが対象になる。ADからアナウンサーまで、幅広く募集する。
●リプレイ本文
ライヴマッチ演出募集!
●某月某日早朝、渋谷
「よく許可が下りたなぁ」
先輩プロデューサーのA氏が、設置された『それ』を見ながらB君に向かって言った。
「渋谷商店街の催し物に偶然空きがあって、そこにねじ込みました」
B君が答える。
場所は、休日の渋谷である。時刻は早朝の6時。
休日の東京にはいくつかの歩行者天国が現れる。最近のトレンドはアキバこと秋葉原だが、新宿などの伝統的な歩行者天国も健在だ。そこでは毎週さまざまな催し物が行われ、通行人を楽しませている。
渋谷の歩行者天国は現在設置されていないが、同様のものが渋谷の各通りの商店街で設置されイベントなどが催されているのが現状だ。
が、今回の『Guerrilla Stunt Studio』クラスの催し物となるとなかなか無い。ホコテンのど真ん中でレスリングの興業を行うというのだ。剛毅というか、ばかげている。秋葉原では絶対出来ない――というか、どこの歩行者天国でもまず出来ないような事である。
しかしどうせならば、それぐらいのバカをやらないと――。
芸能関係者としては本能に類する、原理主義的な義務感であった。この瞬間スタッフと出演者たちはまさに、『番組』という信教に殉ずるテロリストだ。
番組スタッフはそのために、短い期日の間まさに八面六臂の活動を行った。警察に許可を取る手続きから小道具の用意まで。一部勘違いしてトリモチデスマッチなどの準備を始めたスタッフも居たが、それは興業として不適切でありまた今回のライブ興業では不可能ということで却下された。
ともあれ、スタッフの尽力――そう、まさに『尽力』によって、今ここに『それ』がある。
『Guerrilla Stunt Studio』のロゴが入った巨大ボックス。中にはリングが入っている。
一番人がにぎわう13時。それは開封される。その時が、彼らテロリストたちの目的が成就する時である。
この番組は、『Guerrilla Stunt Studio』立ち上げ興業までの、スタッフの活躍を描いたドキュメンタリーである。
●準備開始
「オープニングには『スカイダンサー』を導入しましょう!」
勢い込んでそう言ったのは、ADの菊人(fa3562)である。ちなみにスカイダンサーというのは送風機で風を送り膨らませる風船の化け物のようなもので、人型の『パフォームエアー』とチューブ型の『フライチューブ』などがある。
「採用します」
B君は即答した。
「手配は出来ますか? 当日までに必要数レンタル出来なければお蔵入りになりますよ」
「何とかします!」
菊人は断言した。B君が課したノルマは、フライチューブ6本以上。ないしパフォームエアー4体以上。レンタル予算的には10万円そこそこのものだが、急な話なので都合良く空いている保証は無い。
が、菊人はなんとかそれを集めてのけた。
「それで、今度はトリモチデスマッチの件なんですが……」
「却下」
「あーん、Pのいけずぅ〜〜〜」
まだあきらめていなかったんかい。
常盤躑躅(fa2529)は警備関連の担当だった。セット付近は開梱の時も含めてかなり危険である。鉄柵を作って、さらにその周囲にスタッフジャンバーを羽織った警備員の列を組み、がっちりガードする。
しかし野暮は言うまい。場外乱闘なども想定して『内部からの圧力』に対しては警備を緩くしていた。また今回の興業では乱入者が入ることになっているので、警備員にはあらかじめその事も言い含めておいた。そのためのリハーサルも何度か行っている。
余談だが、躑躅は『バイオレットバイオレンス』というリングネームの、覆面レスラー志望のスタントマンというやや複雑な身の上である。「芸能人としては半端だから、どれかに絞るといい」とB君には言われている。
梓羽(fa3715)はその警備部隊の副長をしていた。雑用をひたすらこなし続けて、お膳立てを整える。描写は少ないが、仕事の密度はやたらと濃い。他人を立てるというのは、そういうことだ。
焔(fa0374)と雷光(fa3022)は、本番組の撮影手である。雷光が黙々と仕事をこなすのみなので主に焔がプロデューサーB君の指示を受けコミュニケーションを図るという構図になるのだが、とりあえず2台のカメラでひたすら絵を撮り続ける。控え室の選手などは(ストーリーがあることを伏せるため)撮影されないが、現場の制作風景を多数収録することになった。
●開幕
『レッディース、エェンド、ジェェントゥルメェーン! ボォォイズ、エァァンド、ガァァルズゥー! ヤァァンガァァッ、アァンドォォゥ、ハアィアァー! アッテンショオォォン、プゥリィズゥゥゥッ! 『GuerrillaァーStuntォーStudioゥォウォゥー』、ただいまより開幕いたします!』
ブルース・ガロン(fa2123)によるハウリングぎみのアテンションがあって、ボックスの周囲のスカイダンサーが動き回る。そしてスモークと派手な銀ビラの紙吹雪が噴出して、ボックスが開いた。
時に、某月某日13時02分。
ブルース・ガロンが、タキシードを着てリングに立っていた。今日は変にいじられていない。まっとうすぎるほどまっとうである。
むしろ、彼の声が響いて全てが始まるのだ。まっとうでなければ困る。
さて、放送席を見るとプロのアナウンサー(実況担当)にまぎれて礼花(fa3043)の姿がある。何事も経験ということで、解説業を行うことになったのだ。
いよいよ、試合が始まる。
イッツ・ア・ショータイム、である。
【おわり】