Guerrilla Stunt St.01アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
1人
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期間 |
06/12〜06/16
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●本文
ちょっと前に、『STREET FIGHTERS』という深夜俗悪番組があった。PTAの評判は、最悪の部類に入る。深夜枠に流血上等のガチンコバトルをやるのだ。凄惨なシーンも多数あり、『青少年の健全なる育成を気にする人々』によって中断を勧告されるほどのものだった。
そのプロデューサーが、今ここに居るB君(仮名)である。当時彼は、穴の開いた時間帯に緊急に企画を立てることになり、そしてその任務を遂行してみせたのだ。成果は上々――ただし放送局的には――であった。
さて、その『STREET FIGHTERS』も5回に及ぶ放送でかなりのバッシングを食らい、今は中断したままである。根強いファンも居るが、当面放送局側では制作の予定が無い。
が、B君も仕事をしないわけないはいかない。そこで先日、B君は渋谷でショーレスリングのゲリラライブを立ち上げた。
番組名は『Guerrilla Stunt Studio(ゲリラ・スタント・スタジオ)』である。
この試合は『ショーレスリング』である。ガチンコでやり合うのではない。『魅せる試合』を行うのだ。
殺人技や流血は厳禁。セメントマッチ(真剣勝負)はありだが、あくまでショーであることを忘れてはいけない。
重要なのは演技とか演出とかである。
ドラマを1本作るつもりで当たってもらいたい。
本募集は『格闘家』の募集である。戦闘能力よりも演技力を重視している。むしろそっちが本分と言って良い。
●リプレイ本文
Guerrilla Stunt St.01
●退場
――カ・エ・レ! カ・エ・レ!
怒号――まったき怒号が会場にこだましていた。
大道寺イザベラ(fa0330)を始めとする3名の出場者(エリア・スチール(fa0494)、結城ハニー(fa2573))が、『最凶アイドル軍団』を名乗り会場入りした。スタッフと打ち合わせらしい打ち合わせもせず他の出場者との打ち合わせも折り合い付けず、自分の意見が通らないと見ると手続きも何もかもシカトして『自分のやりたいこと』を一方的に押し通すような行為を行ったのである。
その結果は、ごらんの通りである。PであるB君との打ち合わせも出来ていないため、空気を読み切ることも出来ず会場の観客から帰れコールを受ける始末。
「下がって! 下がらせて!!」
責任者であるB君は、スタッフや前座レスラー、果ては前説の芸人まで動員して、3人を無理矢理下がらせた。筋を通さねば、番組に参加することなど出来ないのである。
結局3人は、ブラウン管に1秒たりとも映ることは無かった。
●マッチ・コンフィグ
今回のカードは3カードである。
細かい流れは置いておいて、大まかな流れで予定カードは以下のようになる。
【ベビーフェイス】
第1試合:難波虎キチ(fa3244)
第2試合:リュアン・ナイトエッジ(fa1308)
第3試合:五条和尚(fa0360)
【ヒール】
第1試合:常盤躑躅(fa2529)
第2試合:ブレード・ヤシャ(fa3581)
第3試合:ブレード・ヤシャ
今回は放送時間にも余裕があるので、たっぷり堪能してもらおう。まずはヤシャのマイクパフォーマンスである。
「いいかてめえら!(ごめん、放送できません)」
威勢がいいのはいいことだ。
●第1試合
「関西最っ高〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ここは関東だ。
スモークの中を某関西系の演歌歌手の歌にのって出てきたのは、本邦初登場の難波虎キチである。マツケンばりにギンギラギンな装飾のガウンをまとい、ハリセンを振り回しながら出場してきた。一見すると悪役のような悪ノリだが、善玉での登場であった。
リングに上がってガウンを脱ぐと、虎覆面に虎縞パンツの結構マトモなレスラーっぽく見える。体もちゃんと作り込んでいて、ただのイロモノではなさそうだ。
対するは。
「ふん、覆面レスラーか。ならこっちは『バイオレット・バイオレンス』の登場だ!!」
ヤシャのマイクコールと共に、赤いガウンの選手が出てきた。一気にリング上へ駆け上がり、軽快に前転宙返りを見せる。ぶわっとガウンをひるがえして脱ぐところまで決まっていたが、中から出てきたのはパンダの覆面だった。
中身は、常盤躑躅である。
ざわざわざわざわざわざわざわ。
決まり方が決まり方だっただけに、会場がどよめいている。目立ってはいるが、空気を読み違えた感じだ。
この二人、どうやらカトゥーン(お笑い)・レスリングを見込んでいたらしい。B君からは「空気を読んで様子を見てくれ」と注意が入っていたが、その懸念は的中したようである。
まあ、ヤシャがマジモードだからね。
「俺をタダのパンダ野郎とおもわねぇほうがいいぜ!」
かわいいパンダ面で、まじめに躑躅――バイオレット・バイオレンス(以後BB)が言う。
カーン!
「ほないきまっせー」
ゴングが鳴ると同時に、虎キチがリングの中をサークリングする。BBも同様だ。互いに間合いを詰めてゆき、両手でクラッチ。力比べから、虎キチがロープにBBを投げて自分もロープに飛ぶ。数度ロープでの交差を繰り返した後、虎キチがBBに向かってラリアートを放った。それをBBはかいくぐり、返しのロープ交差で水平チョップを虎キチの胸板に放つ。
ばっちいいいいいいいいん!
かなり具体的に痛そうな音が響いた。その後もかなりの数の打撃を受け続けて、虎キチの胸板は真っ赤に腫れていた。
が、実はダメージはそれほどでもない。演出である。本当に痛い打撃は、衝撃が音にすらならないのでこのように派手な音はしない。
試合はBBの一方的な展開になっていた。しかしプロレスの醍醐味は『逆転』である。虎キチはケンカキックから掌底連打の『うたわす』『しばく』の攻撃から、パワーボム『六甲下ろし』をかけてBBをピヨらせ、コーナーポストにあがった。
「『道頓堀ダイブ』や!」
――ウォーーーーーーーッ!!
観客から歓声が上がる。虎キチがコーナーポストからダイブした。
どずーーーん!!
「1、2、3!」
カンカンカンカン!
虎キチがピンフォールを取って、まずはベビーフェイスが一勝した。
●第2試合
「いくっすよ。リュアン・ナイトエッジ、やるっす」
道着姿に青いタイツのリュアンは、格闘家としてのいつもの格好でリングに上がった。
対するは、ヒール軍首謀役のヤシャである。
「格の違いを見せてやるぜ」
今回は試合数の少ない分、密度が濃い。打撃コンボでリュアンが攻めるのを、ヤシャはほとんど受けている。リュアンは格闘家なので自分の技に名前は付けていないが、図らずも空手vsプロレスの異種格闘技になって、観客はかなり楽しんでいた。
ショーレスリングの観客は、ディープでコアな人が多い。しかしレアではないのがポイントである。
リュアンも、道場の看板を背負っている以上無様な負け方はできない。攻めるときは真剣に攻める。ただし派手ではあってもダメージは少ない攻め方だ。
合図は、ヤシャの毒霧であった。ヤシャが塗料を吹くと、リュアンが一気に劣勢になる。手数が減り――というより手が出せなくなって、一気に畳み込まれた。
最後はロープにリュアンを振ったヤシャがリュアンのあごをエルボーでかちあげ、倒れたところをそのままフォールした。
「ご苦労さん」
「うぃっす」
ヤシャとリュアンは、小声で健闘を称えあった。
●第3試合
「けっ、食い足りないぜ。おい、そこで高みの見物してるヤツ! 俺はこんなのとやらされて非常に不満だ。お前が本物のレスラーなら今すぐリングに上がれ!」
ヤシャがリング下にいる清掃員(?)に向かって言った。
「ば〜れ〜た〜か〜」
清掃員がツナギを脱ぐと、そこには五条和尚が『風神』と書かれたモップを持って立っていた。試合前からずっと潜んでいたのである。
いや、この場合清掃員がなんで? というのは無視してくれてかまわない。
和尚は軽やかにリングに上がると、身体をほぐすように柔軟をした。
カーン!
サークリングからオーソドックスな力比べを行い、そして技のかけあいになる。
ちなみに和尚、全日本の井上雅央やリック・フレアー(古いぞ)のファンらしく、かなり姑息な戦法を好んで使う。相手の前で無用によろめいたり、拝んでヤシャの攻撃をためらわせたり、ひざまづいたりと結構食わせ物だ。
地力ではそこそこの力しか無いが、しかし魅せる演技力を持っていて、ベビーフェイスとは思えない『いやらしさ』がある。これを良貨と見るか悪貨と見るかは微妙なラインだが、一種の『華』があるのは確かだ。
しかしヤシャも一癖ある。チョーク、ローブロー、顔面へのげんこつなど多数の反則技で観客のひんしゅくを買いながら、ばっちり会場をヒートアップさせていた。
時間は試合開始20分、試合は最高潮に達していた。和尚の四の字固めがヤシャの足に決まると、ヤシャは転がって和尚もろとも場外に落ちたのだ。
そこからは、ベビーフェイスとヒール入り交じっての大乱闘になった。そしてゴング――。
試合は、ノーコンテストになった。
●B君は考える
「そろそろショッカーの『総統』みたいなのを用意したほうがいいかもしれないなー。興業時間の延長を申請して、人数は今と同じに抑えて試合の放送を優先させて‥‥」
B君は企画室で今日も残業である。先輩プロデューサーのA氏からオファーが来たのだ。拡大版をやってみようという。
はてさて、どうなることやら。
【おわり】