CET演歌喉自慢大会アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/25〜10/31

●本文

 よく噂される話だが、放送番組の多くはやらせである。
 こう断言するといろいろと問題ありそうだが、事実そうなのだからしょうがない。一時期流行った『アポなし』とかも、そのほとんどはヤラセだ。でなければ、出演者を含めた番組スタッフは、おおむね警察などのお世話になっているはずである。
 というわけで、お堅いCETの番組でもそういうものはある。CET定番のこの番組、『CET演歌喉自慢大会』もそうだ。出来レースとまでは言わないが、売れない演歌歌手やセミプロ、新人歌手などが多数出場し、アピールの機会を得る。いわば芸能人の登竜門(言い過ぎ)である。
 さて、その番組の準備中に実は不幸な事故があった。出場者が仕出し弁当で食中毒を起こし、急遽10枠ほどの空きが出来てしまったのである。
 出場者がいなければ、番組は成立しない。そこで各プロダクションに回状が回った。出場者の募集である。

・年齢性別不問
・歌う題目は演歌
・急ぎ出場できる者

 つまり芸人でも俳優でも、条件さえ満たせば出場OKだということだ。
 さて、番組が崩壊しないか見物である。

●今回の参加者

 fa0049 遠藤鈴樹(26歳・♂・蝙蝠)
 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0132 宗像 悠(26歳・♀・兎)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0991 法善寺くるる(9歳・♀・鴉)
 fa1044 悠里(15歳・♀・兎)
 fa1628 谷渡 初音(31歳・♀・小鳥)
 fa1695 羅蓮華(23歳・♀・狐)

●リプレイ本文

■CET演歌喉自慢大会

●さてさて
 『CET演歌喉自慢大会』の収録の日はやってきた。
 当初心配された空き枠についてはきっちり埋まったのだが、その陣容には少々不安が残る。なんといってもお堅いCET、紅白に最近流行のハードなGの人が出るかもしれないという噂が立つぐらい砕けた部分はあるが、若かりし頃の植木等も出る出る言われて実現しなかったのである。当時彼は『スーダラ節』などでまさに一世を風靡していたのだが、その登場がかなったのは40年も過ぎてからだ。
 では、番組の方を見てみるとしよう。

●「1番。東京から来ました、遠藤鈴樹26歳。自営業です♪」
《遠藤鈴樹(fa0049)――演歌歌手》
 私は遠藤鈴樹、26歳の蝙蝠の獣人よ。立派なオ・ト・コなんだけど、いつも女装しているわ。
 今回私が歌うのは、都はるみさんの『北の宿から』――なんだけど、その前に更衣室でひと悶着。私が女装しているのがフロアディレクターさん(番組の責任者)さんに見咎められて、男の格好に着替えさせられちゃった。CETでは伝統的にその手の扮装はご法度らしくて、このままじゃ出場できないんだって。
 信念を曲げるのは嫌だけど番組に穴を開けるわけにもいかないし、何よりテレビで歌を歌う機会を逃すわけにもいかないわ。仕方なく私はとっくりのセーターにジーンズという格好で歌を熱唱。個人的には不満もあるけど、鐘は満点をもらったからまあいわよね。

●「2番、大海結。歌は北島三郎さんの『まつり』を歌います!」
《大海結(fa0074)――アイドル》
 僕は大海結。兎の獣人で14歳。歌う歌は北島三郎さんの『まつり』だよ。
 今回は僕の得意分野である『踊り』でアピールをしたくて、テンポのいいこの曲を選んだんだ。ヘッドセット型のマイクを借りて、YOSAKOIのようなダンスを交えて熱唱。当初予定だった半獣形態についてはCET的にどうか? という協議があってNGだった。何せCETはガチガチの保守派で高齢者向け番組を作っているわけだし、芸能界にいるから獣人形態はOKといっても、TPOによるわけだからしょがないよね。
 鐘は残念ながら二つ。でも気分よく歌えたからいいや。

●「3番、宗像悠。藤あや子さんの『雪深深』を歌います‥‥」
《宗像悠(fa0132)――ミュージシャン》
 ‥‥ああ、なんかだるいわね。
 あたしは宗像悠。兎の女獣人、26歳よ。
 今回あたしは、得意のギターの弾き語りで歌を歌わせてもらったわ。こぶしを必要とする演歌はちょっと縁が無い世界だけど、歌ってみると結構楽しいものね。ホント、歌を歌うっていいわぁ‥‥。
 アコースティックギター一本の伴奏で一曲歌い切り、鐘は満点。雨のように降ってくる拍手が気持ちいいわ。この世界(演歌)も、結構楽しいかもしれないわね。

●「4番、星野宇海。石川さゆりさんの『天城越え』を歌いますわ♪」
《星野宇海(fa0379)――歌手》
 初めてのお仕事‥‥ドキドキしますわ♪ 私は星野宇海。歌手で竜の獣人。若作りの33歳ですわ。
 司会の方が「お若いですね」って‥‥嬉しいですわ。
 歌は熱情を込めて歌わせていただきましたわ。特にサビの部分は手に拳を握って熱く熱く歌わせていただきましたわ。
 でも、鐘は残念ながら二つでしたわ。やはり歌唱力に不足があるようですわね。これからも精進が必要だと思いますわ。

●「5番、志羽翔流! 歌の前に自己アピールしまーす!」
《志羽翔流(fa0422)――大道芸人》
「あ、さて、あ、さて、さてはなんきんたますだれ!」
 俺はそう言って、すだれをいろいろな形にしていった。手拍子が会場からわいてきて気持ちがいい。
 俺は志羽翔流。21歳、猫獣人。本職は大道芸人だ。
 今回の募集では「俺、演歌歌手じゃないけど、演歌は大の得意曲だから歌えるぜ。だから出てもいいんだよな? それに暇だし」と確認を取って応募した。曲目は何でも良かったが結局氷川きよしさんの『きよしのズンドコ節』にした。
 が、本当の目的は大道芸人としてアピールし名声を得ること。その目論見は、成功したかにみえる。
 カーン。
 が、鐘はひとつだった。ションボリ。

●「ろ、6番、富士川千春。川中美幸さんの『二輪草』歌います!」
《富士川千春(fa0847)――演歌歌手》
 ――ああ、やっぱ緊張するぅ〜。
 自分の出番の前に、私はびびりまくっていた。事務所移籍後の初仕事。他人の歌だけど、それだけに緊張する。
 私は富士川千春。演歌アイドル歌手を目指す18歳。蝙蝠の獣人。
 演歌はいま冬の時代。正直演歌歌手の新人っていうのは仕事が来ない。だけど私は、演歌が歌いたい。そのために前のプロダクションを脱退し、心機一転仕事を始めた。
 でも、現実は甘くない。
 こののど自慢大会の話が来たとき、私は否も応も無くこの話に飛びついた。人前で演歌が歌える! それだけで理由は充分だった。
 歌を歌ったときの記憶は、飛んでてよく覚えていない。でも鐘が鳴って拍手が降ってきて、私は思わず涙ぐんでいた。
 また歌おう。心からそう思う。

●「7番、法善寺くるる。田川寿美さんの『華観月』を歌います」
《法善寺くるる(fa0991)――歌手》
「法善寺くるるです。歌手を、目指しているので、応援、お願いします」
 自己紹介をすると、会場から拍手が降ってきました。
 私は法善寺くるる。12歳の鴉の獣人です。
 今日は、コネ作りの一環としてこの募集に応募しました。コネは地道に作るもの。第一印象も大事です。先輩芸能人の皆さんやスタッフの皆さんには、しっかり挨拶させていただきました。
 フロアディレクターさんには「出来すぎな子供だ」と言われて、少し照れました。でも、ほめてもらえるのは悪い気持ちではないです。
 歌の方は、普通に歌えました。鐘は満点。幸いです。
 今回のお仕事、やってよかったでした。

●「8番、悠里です。坂本冬美さんの『夜桜お七』を歌います!」
《悠里(fa1044)――歌手》
 あたしは悠里。15歳の兎獣人だよ。
 今回あたしが歌うのは坂本冬美さんの『夜桜お七』。でも女の情念のようなものを歌うには経験不足なので、今回は歌と『踊り』にメインを置いて演(や)ってみました。
 ステージに立つと、さすがに緊張します。身体がギクシャクして、うまく踊れていないような気がします。
 演ってみて分かったけど、あたしは滑りまくっています。よく考えたらCETの演歌のど自慢は高齢者御用達番組。あたしのポップスなダンスでは、そっち方面にはアピールできません。
 結果は、鐘一つ。ずどーんと落ち込みました。
 ファイト!

●「9番、谷渡初音。森昌子さんの『越冬つばめ』を歌います」
《谷渡初音(fa1628)――ボイストレーナー》
 私はボイストレーナーの谷渡初音。小鳥の獣人で38歳よ。
 指導する立場になって何年か経つけど、今回の出場者にも金の卵はいるわね。いろいろと指導してみたい気持ちもあるけど、今日のところは自分の歌に集中。
 『越冬つばめ』は悲しい歌。歌よりもそれを含めた『表現力』が重要‥‥とは分かっているけど、実際は難しいのが現状ね。言うは易しとは言ったものだわ。
 歌のサビにかけての盛り上がりには、演技も加えてかなり力を入れたわよ。お陰で鐘は満点。とりあえず面目躍如というところかしら。

●「10番、羅蓮華。吉幾三さんの『酒よ』を歌います」
《羅蓮華(fa1695)――女優》
 私は羅蓮華。香港出身の女優で、狐の獣人よ。年齢28歳。
 今回のトリは私なのよね。女装はだめだけど男装はOKみたいで、さらしに着流しで出させてもらったわ。
 『酒よ』はしんみりじっくり、そして力強く歌う歌。雰囲気満点で歌わないと歌に飲まれちゃうから、自分の人生を揉み出すような安定感が必要よね。
 とにかく私は、今までの芸暦を全部搾り出すような気持ちで歌を歌ったわ。苦しい事やつらいことを思い出しながら、人生の深さを計るように歌をつむぐ。
 でも歌は本業じゃないから、鐘はふたつだったのよね。ちょっと残念。

●合唱、美空ひばりさんの『川の流れのように』
 色々と問題はあったが、今回のCET演歌のど自慢大会は無事に終了した。最後には異例だが、出場者全員による『川の流れのように』の合唱だ執り行なわれ好評をはくした。
 基本的に音楽センスと発声力が問われる大会になったが、歌だけではなく踊りや芸などいろいろな可能性を番組に残したと言える。
 不謹慎な考えかもしれないが、また食中毒などがあれば面白い番組作りができるかもしれない。

【おわり】