ツチノコは実在した!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 4.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 06/19〜06/25

●本文

 群馬の山奥にはツチノコ伝説のある場所がある。
 別に群馬に限った話ではないのだが、今回はとにかく群馬だ。ツチノコ発見の噂が流れて数日、TOMITVの企画室では緊急『対策』会議が開かれた。
 対策――つまり今回の件は、ナイトウォーカーの出没によるものではないかという疑いがあるのである。というのも、群馬に散在する古墳の一つの壁画が、まるごと消滅していたからだ。
 これは、ナイトウォーカーの情報媒体となっていた可能性がある。
 かくて、今回は持ち回りでTOMIの企画室にお呼びがかかった。ツチノコというのならヘビのナイトウォーカーと思われるが、サイズが通り一辺倒のヘビと同じである保証は無い。ともあれ今回は、『河口寛探検隊』という架空番組の撮影をカモフラージュに、ナイトウォーカー退治を行うというコンセプトの元で『撮影』が行われることになった。
 探索はくだんの古墳から始まり、周囲3キロメートルを範囲とする。児童公園や国道などもあるが、ナイトウォーカーが狙うのは主に獣人なので二次被害はあまり考慮しなくていいだろう。それより重要なのは、ナイトウォーカーが再圧縮されて人間に感染することだ。これはかなりヤバイ事態である。
 装備は各自に任せるとして、撮影クルーはTOMIから一通りのスタッフが出た。今回は出演者=ナイトウォーカーと戦う者達の募集である。
 なお、撮影の都合上『役』は回ってくる。山案内のマタギ(群馬には居ないが)が1名、探検隊6〜8名。その他『土地の人』など、『とりあえず体裁は整えてくれ』とのことであった。
 さて、ツチノコ探しが始まる。

●今回の参加者

 fa0431 ヘヴィ・ヴァレン(29歳・♂・竜)
 fa0625 羅刹王修羅(21歳・♀・竜)
 fa1050 シャルト・フォルネウス(17歳・♂・蝙蝠)
 fa1180 鬼頭虎次郎(54歳・♂・虎)
 fa2429 ザジ・ザ・レティクル(13歳・♀・鴉)
 fa3126 早切 氷(25歳・♂・虎)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3709 明日羅 誠士郎(20歳・♀・猫)
 fa3765 神塚獅狼(18歳・♂・狼)

●リプレイ本文

ツチノコは実在した!

●独走は許しません
河口:「シャルト・フォルネウスくん、君にはこれを着てもらう(と、探検隊員服を渡す)」
シャルト:「こんな格好では空を飛べん」
河口:「飛んでもらっちゃ困るんだ。それに獣化したまま、その辺を歩かれても困るんだよ。仮装行列じゃなくて、このシャシンは『河口寛探険隊』だ。Vが高確率でお蔵入りでも、もしかしたら本物のツチノコが出るかもしれない。つまり、シャシンはきっちり撮る。もちろん協力してもらう」
シャルト:「‥‥‥‥‥‥‥‥」

●既知ナイトウォーカー論
 獣人と――いや、ある意味あらゆる生物の天敵。それがナイトウォーカーである。
 情報生命体(らしい)彼らはありとあらゆるメディアで生物に感染し、増殖し、獣人を捕食の対象として迫ってくる。時々は高度な知能を持つナイトウォーカーも確認されており、獣人達の組織WEAでは、その生命・生態の解明に躍起になっている。
 なぜなら、多くの生物に害悪あるナイトウォーカーが、明らかに獣人を狙い撃ちにしているからだ。
 ナイトウォーカーの感染やその生物の支配(あるいは同化と言ったほうがいいかもしれない)はあくまで『手段』であり、その目的は獣人の捕食である。文字通り『喰う』のだ。
 情報生命体が獣人を喰う理由については、まったく分かっていない。遺伝子情報が人間より複雑で情報価値が高いからだとか言う者もいるが、あてにはならない。
 いずれにせよ、ナイトウォーカーの被害は増すばかりである。特に昨今の、メディア情報社会化の進み具合は、獣人達にとって致命的に危険と言える。

●仮想番組『河口寛探検隊』

ナレーター:「そして我々探検隊は、幻の生物『ツチノコ』の姿を求めて、群馬某山中に分け入ったのである!!」

 群馬某山中。関東平野を広く望むその場所で、ツチノコらしきものの目撃情報は広まっていた。
 仮称『河口寛探検隊』のそう構成人数は18名。その中で撮影関係スタッフが8名。ナイトウォーカー殲滅の任を請け負ったのは、10名の獣人である。
 その構成は次の通り。

【陽動班(撮影スタッフ含む)】
 ザジ・ザ・レティクル(fa2429)(探検隊員)
 早切氷(fa3126)(山案内役)
 春雨サラダ(fa3516)(探検隊員)
 明日羅誠士郎(fa3709)(探検隊員)
 神塚獅狼(fa3765)(探検隊員)

【戦闘班】
 ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)(山案内役)
 羅刹王修羅(fa0625)(探検隊員:レポーター)
 シャルト・フォルネウス(fa1050)(探検隊員)
 鬼頭虎次郎(fa1180)(地元住民役)
 天目一個(fa3453)(探検隊員)

 撮影は虎次郎の『地元民』から行われた。
「丸太ん棒みたいなでっけえ代物じゃったわ〜! もう、あっしは腰抜かして逃げてきたんだわ〜!」
 コテコテの演技で、臨場感たっぷりに『証言』をする。その後は隊員服に着替えて、ナイトウォーカーの探索に加わった。
「妾は、もうちょっと派手な仕事がしたいのじゃ。まったく、ツチノコが本物なら、賞金とか出るじゃろうに‥‥」
 レポーター役としては、標準語にやや問題のある修羅が不満をつぶやく。レポーターというのはちょっと控えめな仕事なのだが、修羅は不遜を通り越してある領域に達した感がある。
「うまく相手が食いついてくれればいいけど‥‥いざとなったら実力行使になるわよね」
 一個が、集音マイクの柄に仕込んだ日本刀に手を添えた。いざとなった時の武器だ。
「蛇か‥‥」
 藪を鉄棍でつついていたヘヴィの声が、急に消えた。
「何か見つけたか?」
 終始根の暗いオーラを放っていたシャルトが、ヘヴィに問う。
 その視線の先には、何か巨大なものがはいずった跡があった。
「やべぇ‥‥でかすぎる‥‥」
 ヘヴィがつぶやく。
 はいずったものの大きさは、5メートルは超えていそうだった。

●山間チェイス
「ぅぅぅぅぅぅぅうううううううわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥(ドップラー効果)」
 ザジは全力で山中を逃げていた。
「なんであたしを追ってくるのよおぉおおぉおぅ!!」
 サファリルックの彼女は、今回の撮影を嬉々として受けた。膝までしかない底なし沼とか腕時計の跡のある地元民族とか(なんでそんなのが群馬に居るとかは考えない)と接触し、ついにツチノコを見つけたのである!!

 全長5メートルの。

 ツチノコはいわゆる『東北型』と言われる、前半分が蛇で後ろ半分が兎でも飲み込んだかのように膨らんでいるタイプで、あまり素早そうには見えなかった。
 もちろんナイトウォーカーであるのは、丸わかりであった。元は『蛇のような生き物』だったと思われるが、節足動物――この場合ムカデ――のような形態になり、複眼をぎーらぎらと光らせていた。顔には上下に四つの牙があり、毒のようなものをしたたらせている。
 そしてその物体は、恐るべき速度でザジを追いかけ始めたのである。
 ちなみに45口径を何発か撃ったが、効果は確かめられなかった。
「出番早すぎだぜ」
 半獣化した氷が、トランシーバーで戦闘班に連絡を取りながらザジを追う。他の者は目標にならなかったことを幸いに、獣化を始めた。
「ザジ君、この辺をぐるっと回るように逃げたまえ」
 なんか他人事のように氷が言う。しかしここは山中である。平坦で視界の良い場所ならともかく、なにぶん場所が悪い。
「ハルサキーック!!」
 一分少々後、春雨サラダが、やっとで完全獣化し援護に入った。ザジはさすがにグロッキーである。だが。
 ギロリ。
 サラダとツチノコナイトウォーカーの目が合った。
 ――あ、ちょっとヤな予感。
 キシャー!!
 ナイトウォーカーが吠える。そしてサラダに向かって突進してきた。
 ごっ!!
 神塚獅狼が、日本刀で上から突きかかった。頭部に穴を穿たれ、ナイトウォーカーがうるさそうに首を振る。
「春雨さん、いまのうちに逃げて!」
 獅狼はさらにナイトウォーカーの頭部をえぐった。だが、あまり効いているようには見えない。
「核は胴体の付け根!」
 明日羅誠士郎が、半獣化の状態で叫んだ。タレントの《鋭敏視覚》によるものだ。
「うわっ!」
 ナイトウォーカーが、頭に日本刀を突き刺されたまま移動を始めた。先ほどより動きが速い。
 目標になったのは氷であった。噛みつかれかけて、あわててよける。ガキンと、牙が合わさる音がした。
「うりゃっ!」
 バゴン!
 その頭部を、駆けつけてきたヘヴィが鉄棍で一撃した。衝撃に揺らぐがやはりあまり効いた感じがしない。
 他の報告でもあるが、ナイトウォーカーは肉体に痛痒を感じていない、あるいはそれが薄いという情報がある。肉体は本体ではなく、あくまでコア(核)が本体であるというのだ。
「逆を言えば、核だけぶん殴ればいいのじゃ!」
 左半面だけ赤い顔の竜獣人が、飛び込みざま日本刀を居合い抜く。ガツンという手応えがあって、初めてナイトウォーカーが苦鳴をあげた。斬るには至らなかったが、修羅の剣が確かに一撃与えたのだ。
「闇よ‥‥穿て‥‥」
 上空から、シャルトの《虚闇撃弾》が立て続けにナイトウォーカーに放たれた。かなり効いている。やはり頼るべきは、こういう獣人ならではのタレントである。
「いくぞ!」
「はいな!」
 天目一個と鬼頭虎次郎が、木の上から飛び降りてきた。共に《金剛力増》で強化された筋力で木立の上にジャンプし、その上から奇襲をかけたのだ。
 一個の日本刀はナイトウォーカーの首を断ち、虎次郎の日本刀は核を捉えていた。
 バキッ!
 コアが、粉々に砕ける。もう再情報化は不可能であろう。
 それが、ツチノコの最後だった。

●河口寛探険隊終了
 ナイトウォーカーの死体は、その場で解体され燃やされた。下手な証拠を残すことが出来ないからだ。
「あのさー」
 ザジが言った。
「この生き物、元はなんだったの?」
 ナイトウォーカーは、ツチノコのような形をしていた。だが、ナイトウォーカーは変態をするが、元の生物を大きく逸脱ことは無いという。
 もしかしたら、本当にツチノコだったのかもしれない。だがこうして、事件はまた一つ、闇に葬られた。

ナレーター:「そして、一つの謎が明かされ、またいくつもの謎が残った。しかし、河口寛探険隊は、その謎に挑み続けるのだ!」

【おわり】