南国に巨大昆虫を見た!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
07/03〜07/09
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●本文
TOMITV企画室に、またもおはちが回ってきた。
何かというと、ナイトウォーカー事件と思われる事態である。今回は『巨大昆虫』だ。
目撃報告は、東南アジアのインドネシアである。森に一抱えもあるという巨大昆虫が居たというのだ。
世界一巨大な昆虫は、一応ヘラクレスオオカブトの全長約30センチ(角を含む)。しかしその巨大昆虫は、カナブンのような形で1メートルを超えるという。
まるで、ナ○シカに出てくる蟲みたいである。
それはともかく、現地の放送局でも事態への対応に苦慮しているらしい。詳しい話しを現地ローカル局が取材したが、巨大昆虫のような『痕跡』は確かに発見できた。だが厳命しそれ以上の取材を停止させた。取材クルーに『人間』が居たからである。二次感染が発生しては、元も子もない。
とにかくTOMO企画室では、この事態に対処すべくチームを組んだ。『河口寛探険隊』である。
基本的な取材クルー(カメラ・音声など)は用意するが、今回の依頼では戦闘要員を必要としている。ただしあくまで撮影の体裁は整えるので、『役』が回ってくる。
スケジュールは7日間。捜索範囲は、密林の中を約3キロ四方。取材クルーに現地に詳しい人物を2名用意しているので、道案内についての不安は無い。
熟慮して、参加していただきたい。
●リプレイ本文
南国に巨大昆虫を見た!
●仮想番組『河口寛探検隊』
ナレーター:「我々探検隊は目撃情報を元に、カナブン型の『巨大生物』の姿を求めて、ジャカルタ郊外の山中に分け入ったのである!!」
『
【インドネシア】
東南アジア南部の共和国で、マレー諸島の大部分を占める世界最大の島嶼(とうしょ)国家。正式国名は『インドネシア共和国』。東西約5100キロメートルに渡る赤道地域に広がる、大小18108個の島々から成り、そのうち4000弱の島に人々が居住する。
カリマンタン島(ボルネオ島)は南半分と東部がインドネシア領、北西部はマレーシアおよびブルネイに属する。パプア(旧名イリアンジャヤ、または西イリアン)として知られるニューギニア島の西半分はインドネシアの統治下にあり、東半分はパプアニューギニア領である。
面積は1904570平方キロメートル、人口は約2億4200万。首都はジャカルタ。バリ島やジャワ島などの観光地が、日本ではおなじみである。
』
観光ガイド帳を開いたザジ・ザ・レティクル(fa2429)が、額に汗を垂らしながらそれを読み上げた。
そう、ここは赤道直下、インドネシアのジャカルタ郊外である。初夏とかそういう季節感は、ここには無い。あるのはひたすら蒸し暑い熱帯雨林と、たかってくる虫と蛭の類だけ。蘇我町子(fa1785)が虫除けを用意していたので助かっている部分もあるが、実はこの手の撮影、本当に大変なのだ。
件(くだん)の『化け物』の目撃報告は、この密林の中となっている。現地のガイド(もちろん危険を避けるため獣人である)の話しによると、街からはそう離れていない場所らしい。まあ『撮影』の都合上、『しっぽから落ちてくる巨大ヘビ』とか『実は毒のない毒グモ』とかの『お約束』シチュエーションの撮影を一通り行ってから、具体的な捜索活動を行うことになる。今回は長丁場になると踏んで、町子が水食料その他のバックアップ体制を、がっちり整えていた。現地のガイドは、水一つとっても「美味い」とご機嫌であった。
今回の『撮影』の編成は次の通り。
【撮影クルー&ガイド】
河口寛以下8名の獣人。
【囮役】
ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)
ザジ・ザ・レティクル
パトリシア(fa3800)
【戦闘班】
羅刹王修羅(fa0625)
鬼頭虎次郎(fa1180)
大間仁(fa1201)
トーマス・バックス(fa1827)
草薙龍哉(fa3821)
サマーラ・タマナ(fa3996)
【後詰め】
蘇我町子
前回の『ツチノコ事件』で隊を二分するリスクを検討・考慮された、別の意味で十全なシフトである。全員おそろいの青い長袖の探検服にヘルメット。あとは(とりあえずカメラの前には出さないが)武器銃器の類を装備し、ガチの戦闘態勢を整えている。
というのも、前回唯一の失策(ナイトウォーカーの戦闘能力に対する評価の甘さ)を踏まえた上で、今回のカナブン型ナイトウォーカーの『防御力』は、並大抵では済まないであろうと予想されたからだ。おそらく、軍用ジープ並に頑丈であろう。この隊の持つ銃器で一番威力があると思われるのは45口径拳銃であるが、相手には小石をぶつけたぐらいにしか感じるまい。
結局、獣化しての牙・爪・獣人能力などのほうが、はるかに強力なのだ。
「とりあえず絵は撮っておこう」
河口隊長が言う。ナイトウォーカーの捜索と殲滅が優先事項だが、番組としての体裁は整える。河口隊長は映像責任者なので、最低限の仕事はしておく主義らしい。
●現場へ
『目撃現場』は、確かに密林の奥だった。カナブン型ナイトウォーカー(仮)の『痕跡』が確かに残っている。それは、皮が剥げた木々が茂る場所だった。腐臭が周囲に満ちている。腐葉土のそれではなく、獣肉の類の腐臭だ。
「隊長、みんなやられている。『ヤツ』はそうとうな大食いだ」
ヘヴィが、多数の草食動物らしい生物の死骸を検分して言った。
「『喰い殺し』か。どうやら相手の武器は、牙か何かのようじゃな」
修羅が、柳眉を寄せながら言う。
「多分空も飛んでいる。あの樹の枝が折れているのは、空中から獲物に飛び掛かった跡だろう」
虎次郎も、周囲の警戒に余念が無い。
痕跡は、唐突に途切れた。どうやら飛び去ったようだ。
あとは、『待つ』しかあるまい。
●丸木船探険隊(丸木船じゃないけど)
モーター音が周囲に響いている。
河口寛探険隊のナイトウォーカー捜索は、三日目に入っていた。当初の発見報告から数えると再情報化による二次感染の可能性も否定できないが、とにかく探すしか無いので捜索する。現在は、ゴムボートで川を遡行しジャングルを大きく移動している。こういうジャングルでの広範囲捜索は、川を利用した方が圧倒的に機動性が増す。運動性は犠牲になるが、それはナイトウォーカーを発見してからでもいい。
「エンジンを止メてくださイ!」
ナレーション:「その時、隊員の一人が何かを発見した!」
声を上げたのはトーマスである。半獣化の状態で、耳をそばだてていたのだ。
「ハネの音がシます」
トーマスが言う。確認のためサマーラも半獣化し、《鋭敏聴覚》のタレントを発動させる。
「たしかに、虫の羽の音がします。それもかなりデカそうな‥‥」
「河口隊長、岸につけてくれ。これでは戦えん。おい、カメラ止めろ。戦えないだろうが」
龍哉が言う。
「カメラは記録として残す。ナイトウォーカーの本物が出たら、Vはお蔵入り確定なんだ。それよりも、ナイトウォーカーの情報収集が優先だ」
龍哉の言葉に、河口隊長が言った。渋々、龍哉が従う。
陸には、ヘヴィと、ザジ、パトリシアの3人が先に上がった。3人で、ナイトウォーカーを引きつける作戦だ。
その他の者は、獣化を始める。武器を取り戦闘態勢を整えておく手はずになっている。前回と違い、先に相手を見つけた分こちらが有利と言える。
待つこと10分。
「‥‥‥‥ぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううわゎわゎわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ‥‥‥‥‥‥(ドップラー効果)」
前回と同じシチュエーションで、ザジが密林の中を走ってきた。そしてその後ろを、灌木をなぎ倒し岩を踏み砕き、土塁を蹴散らして巨大なモノが走ってくる。
「出たぞ!」
取材クルーの目の前に現れたのは、確かにカナブンのような形の物体だった。ただし顔はトンボに似ている。
「アブない!!」
トーマスが、修羅を突き飛ばした。その瞬間、修羅に向かってトンボのヤゴのように、カナブンの口が伸びてきてガッチンと鳴った。
かなり凶悪そうなアゴである。
「妾に何をするのじゃ!」
がっきいいいん!
修羅が怒りのままに放った居合いの剣は、その装甲に弾かれた。それどころか獣化した獣人のパワーと相手の装甲から受ける負荷に耐えられず、頑健なはずの剣が根本からボッキリと折れた。
「並大抵の武器は無理だな」
メリケンサックを構えていた龍哉が、それを放り出す。
「こっちですよ!」
パトリシアが、肩の破れた青い服で、両手を広げて言った。それに反応したかのように、ナイトウォーカーが突進を始める。それを直前で、パトリシアはかわした。
「ナ○シカごっこやっている場合じゃないわよう!」
ザジが言う。
「『核』はどこだ!!」
「背中の上! 中央!」
虎次郎の言葉に、ヘヴィが答えた。装備していた鉄棍が、中程でへし折られていた。
虎次郎は《金剛力増》で強化された筋力で、上方へ跳躍した。樹に捕まり、下を伺う。確かに甲羅の中央に、光る黄色い物体がある。
かかっ!
《俊敏脚足》で、トーマスと仁も樹上に上がってきた。
「いちにのさんでいくぞ」
「OK」
「了解だ」
虎次郎の言葉に、トーマスと仁が応じる。
「いち、にの、さん!」
ばっ!
3人が同時に、上空から攻撃を仕掛ける。ともに頭から、牙による噛みつき攻撃だ。
がががっ!
直撃! しかし。
「浅イ!」
トーマスの言葉と同時に、ナイトウォーカーが彼らをふりほどく。そしてトーマスに、鋭いジャブのような、そして致命的な顎を放った。
ばしん!
「私をお忘れですか!?」
それを横合いから、サマーラが蹴り飛ばした。致命の一撃が、トーマスから逸れる。
「野郎、喰らいやがれ!」
龍哉が、ナイトウォーカーに飛び掛かる。そしてその背の上から、渾身の《波光神息》をゼロ距離で放った。
ぼばっ!!
地面まで突き抜ける轟音。
ナイトウォーカーは、背中から腹にかけて大穴を開けられ、絶命した。
●Vの破棄
「Vを破棄する〜〜?」
河口隊長の言葉に、一同はそろって声を上げた。Vとはもちろんビデオテープのことである。
「モニターを確認すると、龍哉くんの攻撃の前に、ナイトウォーカーの『核』が消滅している。万が一このVにナイトウォーカーが移動したのなら、これを放送することは出来ない」
このようなメディアへの感染は、ナイトウォーカー事件ではままある。河口隊長は番組作りを優先する人物だから、Vの破棄は本当に危険ゆえの判断であろう。
一同はナイトウォーカーの死体と、ここまで撮影したVを焼却し、帰路についた。
ナレーター:「そして、一つの謎が明かされ、またいくつもの謎が残った。しかし、河口寛探険隊は、その謎に挑み続けるのだ!」
【おわり】