ストリートファイターズアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/26〜11/01

●本文

「ぬわにぃぃぃぃぃいっ!!」
 プロデューサーA(仮名)は、電話口で叫んだ。
 ちょっとした事故があって、番組枠に穴が開いたのである。
 詳細はともあれ、番組に穴が開いたのは確かだ。しかし放送を休止するわけにはいかない。何かの番組で埋めなければならない。
「おいっ! 後輩B(仮名)!」
「はいっ!」
「お前、何か番組作れ!」
「は?」
「番組作らせてやるって言ってるんだよ! 期限は三日! 予算は100万!」
「ちょっとまってください! そんなの無理じゃないスか!」
「うるせぇ! 無理でもなんでもやるんだよ! いいか! 必ずやるとげろ!」

    ***

 というわけでB氏、非常に短期間かつ低予算で一つの番組を作ることになった。
 彼が出した結論は、企画物で格闘ものということになった。会場は借りると高いので夜間の製鉄工場を使い、出場者も新人格闘家を集めて低予算にする。設定はストリートファイトという形である。
 スタッフも最低限しか使えないので、司会と進行はBが仕切ることになった。泣けるほどの低予算だ。
「とにかく格闘家の募集だ」
 とりあえず製鉄工場を舞台に、新人格闘家によるシナリオ無き闘いが始まる。

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0936 霧夜マイナ(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1080 タイガーエース(24歳・♀・虎)
 fa1089 ダン・クルーガー(29歳・♂・狼)
 fa1404 柊 静香(16歳・♀・竜)
 fa1460 飛鳥 信(23歳・♂・狼)
 fa1482 武厳皇(34歳・♂・亀)
 fa1513 THE DIABLO(34歳・♂・虎)
 fa1712 孫・華空(24歳・♀・猿)
 fa1719 風和・浅黄(20歳・♂・竜)

●リプレイ本文

■ストリートファイターズ

●ままあること
「こういうことは、よくある」
 集まった面々を見て、B氏は言った。かなり真剣だ。
「不意の事故よって番組に穴が空く。放送業界ではあってはならない事故だが、例えばドキュメンタリー番組のように、『そもそも予定の立てられない撮影のともなう番組の予定』を放送枠に組み込まなければならない事情があるからだ。これはTVチャンネルガイド雑誌などに約1ヶ月先の(内部発表では約3ヶ月、いわゆる1クール)の番組の予定を立てて発表しなければならないというのが主な理由だ。ゆえに、放送枠には時々穴が空く。そして今回のような、俺のようなペーペーの新米ディレクターに番組を作るチャンスが訪れるわけだ。そして!」
 バン! B氏はそこで机を叩いた。
「奇しくも神は、我々に『予算』と『人員』を与えたもうた。こうなったら蔵出しの穴埋め番組なんざ退けて、この時間は我々が取る! 集まってもらったみんなには、精一杯面白い番組を作ってほしい!」
「「「「おー!!」」」」
 スタッフと出演者から、鬨の声があがった。

●15秒PR《霧夜マイナ(fa0936)》
「ボンバープロダクションの霧夜マイナです。精一杯頑張りますから、よろしくお願いしますね‥‥あら?(手袋の中からスパナが転がり出る)」

    ***

 自己PRの撮影を終えて、わたくしは会場である某製鉄工場の会場設営準備にかかりましたわ。
 わたくしは霧夜マイナ。17歳、蝙蝠の獣人。ヒール(悪役)を売りにしている女子プロレスラーですわ。
 今回の会場は地面が危険なので、近郊の小学校などから運動用マットを借り受けて敷き詰め、それにブルーシートをかけてその上にさらに土をかけました。これで多少の無理はきくようになるでしょう。
 一応『シナリオ無き闘い』と言っても、怪我などをしてはいけません。まずは順当に、下準備を全員でしましたわ。

●15秒PR《タイガーエース(fa1080)》
「ほぉい、あたいがタイガーエースだ‥‥(約10秒アップで沈黙)‥‥へっくちy(ブツッ)」

    ***

 撮影が始まって、B氏がマイクであたいの名前をコールする。
 あたいはタイガーエース。24歳の女子プロレスラー。もちろん虎の獣人だ。
 登場シーンは一応ライトアップとかスモークとかあって、それなりにいい雰囲気で出来た。B氏は低予算なりに金のかけどころを分かっているようで、ちゃんとやらなきゃならないところは押さえてある。実は結構有能かもしれない(さもなければこんな番組任されはしないだろうけど)。
 あたいの当面の相手は、霧夜マイナだった。ヒールだからイロモノかもと思ったが、空中殺法をこなすどちらかというとメキシカンなスタイルを身につけていた。設備の上からのトペ・スイシーダ(投身自殺の意、上空からのフライングボディープレス)などは結構堂にいっていたね。受けきったけど。
 試合は、あたいの体力勝ちだった。ただ17歳って若さを見ると、まだまだ伸びそうだね。

●15秒PR《柊静香(fa1404)》
「(ツーテールの片方を手で梳かし流して)ボンバープロレス所属、柊静香よ。魅力的な試合をお送りするわ」

    ***

 今回の試合は、互いが装着している『首輪』を奪い合うという形式になったわ。首輪と言ってもハードなGの人が付けるような、レザーの鋲打ちチョーカーなんだけどね。
 あたしは柊静香。19歳の竜の獣人。職業はどちらかというとハードな格闘家よ。
 今回はプロレスラーの参戦が多かったし、あたしも所属事務所がプロレス団体なんで、番組はプロレスのような形式で進められたわ。基本的にガチの1vs1マッチ。ほんとうは5vs5の試合形式で戦(や)りたかったんだけど、一応『シナリオ無き戦い』っていうことで1vs1原則のバトルロイヤル形式になったわけ。文句は無いけど番組の尺が短いから、実際の活躍とは別に編集で秒殺されちゃう人もいるんじゃないかしら? あたしがそうならなきゃいいんだけど。
 あたしの相手は孫華空さんになった。流れからだけど。これがちょっと問題だったのよねぇ‥‥。

●15秒PR《孫華空(fa1712)》
「カンフーレスラーの孫華空だぜ!(回し蹴りをしてポーズをとる) 中国4000年の中国拳法をひっさげて参戦するぜ!!」

    ***

 おっす! オラ○空! じゃなくて孫華空! 自称カンフーレスラー! 24歳の猿の獣人さ! 今回はこの無謀な企画に、楽しく参戦させてもらったぜ!
 基本的にあたしは軽快な空中殺法が得意なんで、今回の舞台である製鉄工場では、立体的なあたしの技を存分に発揮できたぜ! とにかく跳ぶ。とにかく跳ねる。段差や中二階とかそういうのをガンガン使って相手を翻弄――最高に気分が良かったぜ。
 あたしの相手は柊静香。オーソドックススタイルなんで結構噛みあいが良くて、今できるほとんどすべてを叩きつけたぜ! 結果は勝利! ただ編集上は秒殺になってて、活躍があまり見せれなかったのが悔やまれるなぁ‥‥。

●15秒PR《チェダー千田(fa0427)》
「最初に言っておく。3分だ。3分間‥‥何としてでも生き延びてやるぅッ!」

    ***

 俺はチェダー千田。37歳リスの獣人。お笑い芸人だ。
 俺はがんばった。身体を張って○年、ハリセン、くすぐり、お約束のオンパレード。正直、がんばりすぎるぐらいがんばったと思う。
 思うのだが‥‥。
「ぐぁ‥‥秒殺やん‥‥」
 編集の終了した番組を見て、結果に愕然とした。多分5カットも出てたかどうか。CM込み30分で10人じゃ‥‥3分出演し続けるのも無理が多いよなー、よく考えたら。
 そして俺のぼやきもここで切れr(ブツッ)。

●15秒PR《武厳皇(fa1482)》
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ばしん!(無言で鉄骨に張り手一発)」

    ***

 俺の名は武厳皇。プロの格闘家。亀の獣人で34歳です。
 俺の所属していた相撲部屋が潰れたのが10年前。当時力士だった俺はそのまま格闘家として再出発しました。
 回想終り。
 テレビの仕事は初めてですが、ともあれ残酷ショーにならないように配慮したつもりです。ただ相手がチェダーさんだったのは今ひとつ不本意。お笑いと俺のスタイルとは噛みあいません。結果チェダーさんは私の一番厳しい部分と戦うこととなり、張り手で轟沈。私の勝ちということになりました。
 身体を張った立派なお仕事だと思いますが、お笑いも相手によりけりでしょう。ご容赦を。

●15秒PR《飛鳥信(fa1460)》
「(メール着信音) あ、メールだ。どれどれ‥‥よーしっ! 勝ってくるぜ!!」

    ***

 今度の仕事は、深夜番組の穴埋め企画だとさ。まあ、何でもいいや。俺は強い奴とバトル出来れば文句ないさ!
 俺は飛鳥信。キックボクサー。狼の獣人で23歳。
 俺は今回、STORMVISITのダン・クルーガーを相手に指名した。もちろん否も応も無くOKされた。マーシャルアーツなら相手にとって不足なし。やってやるぜ!
 ダンとのせめぎあいは、苛烈な駆け引きの勝負になった。ダンはかなり高いレベルでまとまったカウンタータイプのアーティストで、俺の一撃に的確に技をあわせてくる。カウンターは一般に、倍返し。キックを食らえば3倍返しになる。さすがにヤな感じだぜ。
 ロングレンジの武器は互角、インファイトはこちらに分があるが相手が踏み込ませてくれない。結局互いの手を読み、機先を制したほうが勝つという図式になった。
 結果は‥‥。

●15秒PR《ダン・クルーガー(fa1089)》
「STORMVISIT所属、ダン・クルーガーだ」

    ***

「いい目をしているな、インパルス・ボーイ」
 対戦相手を指名してきた飛鳥信に対し、私はそう言った。
 私はダン・クルーガー。元傭兵の格闘家。狼の獣人で29歳。マーシャルアーツのアーティストだ。
 飛鳥信は私にとって、ある意味理想的な対戦相手だった。キックボクサーで、何より若い。経験を積めば、良い格闘家に成長するだろう。つまり、経験の差を私が埋めてやるわけだ。
 『シナリオ無き戦い』ではあるが、やはり最低限のルールは存在する。しかし反則などは私も頭に無い。重要なのは、『魅せる闘い』ができるかどうかだ。それは相手が存在しなければ成立しない難しいもの。しかしその不足を補って余りあるものを彼は見せてくれた。
 しかし、最後は私の経験が勝負をつけた。ハイキックのカウンターによる一撃が彼を失神させたのである。
 いい、勝負だった。

●15秒PR《風和浅黄(fa1719)》
「風和浅黄です。それなりにがんばります‥‥これでいい?」

    ***

 おもむろに呼び出されたんだけど、強そうな人が大勢で少し嬉しいね。
 俺は風和浅黄。竜の獣人で格闘家。20歳。
 正直今回の番組では、裏方の仕事が多かった。低予算番組だからしょうがないとは思うけど、スタッフだけじゃ手が足りないんだからまあいいでしょ。
 俺のスタイルはムエタイ。キックボクシングの元祖だ。腕の3倍の威力の蹴りを受ける競技だから、タフネスには自信がある。しかしDIABLOは反則だよなぁ。覆面かぶっているからって獣化しているんだもの。身体能力は抜群に上がっていたはず。
 結局相手が『獣人であること』で敗北したわけで、ムエタイが弱いなんてことは考えていない。同条件なら決して負けていないと思う。
 ま、相手のスタイルがスタイルだったってことだな。今後は俺も注意しよう。

●15秒PR《THE DIABLO(fa1513)》
「リングの外だからこそできる『プロレスリング』の恐怖を見せてやるのである」

    ***

 吾輩はTHE DIABLOである。プロレスラーである。虎の仮面をかぶっているのである。34歳なのである。
 今回も吾輩は高所より登場させてもらった。ライトやスモークを運ぶスタッフは、かなり大変だったようである。
 しかるのち、吾輩は風和浅黄氏とマッチしたのである。吾輩は覆面レスラーの特徴を活かして常に獣化しているので、相手の攻撃を全部受けきり反撃に転じたのである。さぞかし爽快な逆転劇になったであろう。
 その後も順調に相手を倒し、首輪を集め続けたのである。結果、我輩が勝利したのである。

●結果
 第1回ストリートファイトは、THE DIABLOの勝利に終わった。視聴率もそこそこ取れて、かなりの回収ができた模様である。
 気を良くしたディレクターAは、B氏に第2回の企画をあげろと言っているそうだ。
 とりあえず、成功で万々歳であろう。

【おわり】