Voodoo People南北アメリカ

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 4.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/04〜07/10

●本文

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【ブードゥー教】
 ハイチで広く信じられている民間信仰。キューバやトリニダード・トバゴ、ブラジル、ルイジアナ州などのアメリカ合衆国南部でも同様の信仰がみられる。ローマ・カトリックと西アフリカ(おもにベナン)の部族の宗教の諸要素が結合して生まれたもので、宗教に自由の無い国では肩身が狭い。
 ブードゥー教徒は、最高神『ボン・デュー』や先祖をはじめとする死者の霊、双子、『ロア』とよばれる精霊たちを崇めている。ロアの性質は宗派によって様々だが、それらはアフリカの部族の神々であり、しばしばローマ・カトリックの聖人と同一視されている。
 例えば、蛇神は聖パトリックと同一視されている。この他ブードゥーに見られるカトリック的な要素としては、ロウソクや鈴、十字架を使用することや、祈りや洗礼、十字を切ることがあげられる。いっぽうアフリカの宗教の諸要素としては、踊りや太鼓、先祖や双子を崇拝すること、呪術的な色彩が強いことがあげられる。
 ブードゥーの儀礼はしばしば、ホンガンとよばれる男性祭司やマンボとよばれる女性祭司が執り行う。儀礼が行われるのは大抵深夜で、崇拝者たちは太鼓や踊り、歌、ごちそうでロアを呼び出す。呼び出されたロアは踊っている人々に取り憑く。取り憑かれた人々は、それぞれ憑依者独特の振る舞いを示し、恍惚状態の中で病気治療を行ったり信仰者たちにアドバイスを与えたりする

【ゾンビ】
 霊力によってよみがえらされた死人。言葉をしゃべらず、意志も無いとされる。また死人を蘇らせる霊力そのものを指すこともある。アフリカのバントゥー語族に属するキンブンドゥ語で『霊』を意味する言葉に由来し、ハイチの民間宗教であるブードゥーを信仰する人々の間で、その存在が信じられている。悪意を持った妖術使いは、呪術によって死人を墓場からよみがえらせることができ、そうして作ったゾンビを奴隷として酷使するとされる。
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 累々と並ぶカップ麺の残骸と栄養食品のゴミ屑、そして撮影機材の山々。
 最近露出が多くなって機材が増えた、ジョン・B・カーペンタリア監督の部屋である。機材を増やす前に生活の潤いを増やせと思うのは筆者だけではあるまい。
 このところずっと籠もりっきりで何をやっていたのかというと、新企画の企画書作成である。
 タイトルは『Voodoo People』。ジャンルはダークヒーローモノ。ゾンビを使役して悪を倒すという、キワモノなB級映画である。
「基本的には『ジャパントクサツ』のフォーマットを利用して、30分で1話完結。ブードゥーヒーローは3人にゾンビも3人。マイケルとかレイレイとかみたいな、活きのいいのがいいな。悪役は4名、首領に幹部3人。両方とも女性と有色人種をうまく入れないと、企画が通らないなぁ‥‥」
 それ以前にバチカン辺りからクレームものと思うのだが、そう言う気遣いをしないのがJ・B・カーペンタリア監督である。
 ともあれ企画は通り、一応1話分の試験放送が行われることになった。これが評判良ければ、1/2クール6話の契約が取れることになっている。
「さて、スタッフを集めよう」

●今回の参加者

 fa0203 ミカエラ・バラン・瀬田(35歳・♀・蝙蝠)
 fa0348 アレイ(19歳・♂・猫)
 fa0361 白鳥沢 優雅(18歳・♂・小鳥)
 fa0365 死堕天(22歳・♂・竜)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1335 サラール(16歳・♀・猫)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

Voodoo People

●始まりは突然に
「シン、シーンー」
 ベッドで眠り続けるシン(白鳥沢優雅(fa0361))を、サラ(サラール(fa1335))が起こしていた。なにやら女の子にモテているような夢を見ているらしく、寝顔が幸せそうである。
「しゃあないなぁ」
 サラはそう言うと、慣れた手つきでパッケージの中からある丸いものを取りだした。
 じゅっ。

 ――うわ熱ゃあああああああっ!
「朝から元気だねー」
 リネット(甲斐大地(fa3635))が、朝食のベーコンエッグを慣れた手つきで口に運んでいる。見事なボディをタンクトップにショートパンツという、いかにもなアメリカン・ティーンエイジャーのような格好で包み、何事も無かったかのように食事を続けていた。
「やあ、おはよう」
 ソフトフォーカスのかかった華やかな空気をまとって、シンが奥から出てきた。ただし雰囲気はキラキラしているが、ごてごてのトマトソースと溶けたチーズにまみれている。先ほど、サラが熱々のピザを押しつけたからだ。
「まったく朝から面倒やワ」
 そのサラは黒人の、猫のようなはしっこい雰囲気の少女だった。髪の毛はボールペンが埋まりそうな、太く結ったドレッドである。
「まったく、あんたたちは一応『ホンガン』と『マンボ』(共にヴードゥー祭司)なんだから、もうちょっと威厳ってものを身につけなさいよ」
 リネットが言う。
「すまんなぁ、ウチはこれが『地』やから☆」
 サラが舌を出して笑い、その場をごまかした。

【タイトル】(※OPテーマ曲が流れています)
 Voodoo People

【キャスト】(※画面がヒーローものっぽく次々更新していると思ってください)
シン:白鳥沢優雅
 無駄にキラキラした二枚目俳優。
サラ:サラール
 ピザの宅配のためにスクーターを駆る元気少女。
リネット:甲斐大地
 芸能モデルとして活躍するナイスバディの美女。

ゾンビ・ファントムボーイ:アレイ(fa0348)
 鋭いアクションの寡黙なゾンビ。
ゾンビ・ヨミ:月葉・Fuenfte(fa1234)
 何も無い空間からすっと現れる、静かな雰囲気のメイド服美少女ゾンビ。
ゾンビ・スラッシャー:小野田有馬(fa1242)
 長髪のヴィジュアルパンク系ゾンビ。アクセサリーだらけで身体にドラムを縫いつけている。

幹部ヨハネ:ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)
 悪の女幹部っぽいごてごてとした衣装を身にまとった褐色肌の女性。戦闘員の指揮をしている。
幹部サムディ:ジョニー・マッスルマン(fa3014)
 ぱんぱんに張り詰めた肉体を黒のモーニングに押し込んだインテリ系大幹部。シルクハットにステッキを持ち、モノクルがきらりと光る。
幹部ジン:片倉神無(fa3678)
 無精髭でコートを羽織り、不敵な笑みをニヤリと浮かべた男。戦闘シーンでは右腕が何かのクリーチャーに獣化する。

首領ヴァレス:死堕天(fa0365)
 外見は子供。しかし子供とは思えない迫力を持った悪の総首領。ヨハネ、サムディ、ジンを完全に従えている。


監督:ジョン・B・カーペンタリア


●ブードゥー・ピープル登場!
 テレビの女性レポーターが、金切り声を上げていた。
「ラスベガスでは現在、非常事態宣言が発令されています。それというのも何者かがラスベガスを武力占拠し、大量の人質を取ったようなのです。あ、あれは何でしょう! まるで悪魔のような怪物が大挙して向かってきます。今、州兵に発砲準備が発せられました! まるで黙示録戦争です!」
 その緊迫した画面になぜか、『Pizza Happy☆』と書かれた黄色のスクーターが割り込んできた。衆目の集まる中、そこから出てきたのはサラだった。
「できたていっちょう配達にキタで」
 ヘルメットをスクーターのミラーにかけて、サラが言う。
「もう‥‥撮影の最中だったのよ? 嫌になっちゃうわ」
 リネットが、上半身水着にジーンズというきわどい格好で入り込んでくる。
「真打ちというのは、出番が遅いものですよ」
 シンがキラキラオーラを振りまきながらやってきた。
「ほな、いこかー」
 サラが言って、3人が構えを取った。
『Voodoo!!』
 しゅばしゃきーん!!
 3人の声が唱和したかと思うと、3人の姿がブードゥー司祭になった。素朴な素材の黒い衣装に、ヘビの骨のネックレスやイヤリングといった邪悪っぽいアクセサリーを装備している。どれも宗教的かつエロティックで、ちょっとお子様向けとは言い難い。
「ほな、いこかー」
 たん! 3人が地を蹴る。
 真っ先に敵の戦闘員の中に飛び込んだのは、シンだった。素早い体術で相手を倒してゆく。
 サラは、黒い颶(ぐ)風となって相手を撹乱している。時折相手が悲鳴を上げるのは、要所要所で攻めているからだろう。
「怨敵退散!」
 ブードゥーと東洋信仰を混ぜて戦っているのは、リネットだ。御幣や符をとばして、戦闘員を無力化している。
「ブードゥー・ピープル!!」
 戦闘員がほとんど倒されたところで、道路向こうの霞の中から、三つの影が出てきた。コウモリのような翼を生やし、豪奢な衣装で着飾った女性、ヨハネ。英国紳士のような風体のサムディ。トレンチコートに無精ひげの男、ジン。悪の組織『ジード』の三幹部である。
「Marvelous! 実に実に素晴しい! いやいや凄い! 凄い物を見せてもらったなぁ」
 サムディが拍手をしながら言う。
「ああすまない。自己紹介がまだだった。初めまして諸君、私の名はサムディ。ボコールを生業としている者だ。以後よろしく頼むよ」
 パチン! サムディが指を鳴らすと、倒れた戦闘員の死体が消えた。
「今日は我々の実験に付き合ってくれて、どうも有り難う。お陰で素晴しい結果がでたよ。だが、もう一つ実験に付き合っていただけるかね?」
 ズガガガーン!
 地面を割って、なにやら獣と昆虫を混ぜたような化け物が出てきた。
「サムディ! 抜け駆けするつもりか!」
 ヨハネが気色ばんで言う。
「放っておけ」
 ジンが言った。
「挨拶代わりだ。やつら程度、サムディで充分だろう」
 ジンの言葉に鼻白む様子も見せず、サムディがもう一度指を鳴らした。
「ゆけ! ゴリアテ! ブードゥー・ピープルを倒せ!」
 ガアアアアアッ!
 怪人『ゴリアテ』が吼える。
「みんな、いくわよ」
 リネットが他の二人に声をかけた。
「「「聖なる双子の名において! 来たれ! ブードゥーの戦士達!」」」
 バリリリーン!
 上空に黒煙が渦巻き、稲光と共に『それ』らは召還された。シンの身体の中から『ファントムボーイ』が、サラの背後にメイドゾンビの『ヨミ』が、リネットの足下の地面を割って『スラッシャー』が現れた。
『ヨミをお呼びになりましたか、主上?』
 ヨミがサラに問う。
『呼ぶの遅いぜ! ヒャッヒャッヒャ!』
 スラッシャーが、文句を言った。そしてドコドンとドラムを叩き始める。ファントムボーイは終始無言だった。
「いつもの通りよ。『アレ』を倒すわ!」
 リネットが、ゴリアテを指して言った。
『承知いたしました』
『ヒャヒャヒャヒャヒャ!』
『‥‥‥‥』
 最初に仕掛けたのはヨミだった。力業で攻めてくるゴリアテをいなし、幻影のような動きから一撃を打ち込む。
『ウェェェイヤッフー!』
 ドバン!
 スラッシャーがゴリアテの直近でドラムを思いっきり叩いた。衝撃波が空間まで歪ませ、周囲のガラス窓やイルミネーションを破壊する。
 ざくっ!
 ファントムボーイの手刀が、ゴリアテの腹部をえぐった。ゴリアテが悲鳴を上げた。
「『ロア・スマッシャー』!!」
 リネットたちがポーズを取って、型を決める。するとゾンビたちは霊体になり、三方向からゴリアテを突き抜けた。アストラル体を破壊され、ゴリアテは青い炎を吹いて溶けるように消滅した。
『ブードゥー・ピープル‥‥』
 皺深い声が、周囲に響いた。三幹部の背後に、子供のように見えるシルエットが大写しになっている。
『我は首領ヴァレス‥‥世界征服をもくろむもの‥‥覚えておけ‥‥貴様らの死は近い‥‥』
 幻影が消えると同時に霧も晴れ、三幹部の姿も消えていた。

●戻ってきた日常
「シン、シーンー」
 ベッドで眠り続けるシンを、サラが起こしていた。なにやら女の子にモテているような夢を見ているらしく、寝顔が幸せそうである。
「しゃあないなぁ」
 サラはそう言うと、慣れた手つきでパッケージの中からある丸いものを取りだした。
 じゅっ。

 ――うわ熱ゃあああああああっ!
「朝から元気だねー」
 リネットが、朝食のベーコンエッグを慣れた手つきで口に運んでいる。見事なボディをタンクトップにショートパンツという、いかにもなアメリカン・ティーンエイジャーのような格好で包み、何事も無かったかのように食事を続けていた。
「やあ、おはよう」
 ソフトフォーカスのかかった華やかな空気をまとって、シンが奥から出てきた。ただし雰囲気はキラキラしているが、ごてごてのトマトソースと溶けたチーズにまみれている。先ほど、サラが熱々のピザを押しつけたからだ。
「まったく朝から面倒やワ」
「まったく、あんたたちは一応『ホンガン』と『マンボ』なんだから、もうちょっと威厳ってものを身につけなさいよ」
 リネットが言う。
「すまんなぁ、ウチはこれが『地』やから☆」
 サラが舌を出して笑い、その場をごまかした。

【おわり】