南の島に海棲魚竜を探せアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 13.5万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/17〜07/23

●本文

 『UMA』という言葉がある。
 『科学的には存在が確認されていない未知の生物』という意味だが、獣人の多くはその存在を『ナイトウォーカー』という『モノ』に定義づけている。ヒバゴンもネッシーも、ナイトウォーカーだった可能性が高いというのだ。
 ナイトウォーカーの出現には一定の法則がある。情報生命体である彼らの多くは古い建築物や遺跡などに存在し、そこにまぎれこんだ生物を媒介して外部に出現する。最初はヘビや蜘蛛、昆虫といった小生物のたぐいがほとんどだが、この時点で解決――つまり殲滅できればよし。そうでない場合何らかの媒体に再情報化されて、より知的で強力な生物に感染する。
 そうなったナイトウォーカーを倒すのは、けっこう至難の業である。
 物理的に消滅させるなら、最悪核弾頭でもその地域にぶち込めば良い。だが高度に情報化の進んだこの世界で『情報』そのものを破壊するには、コンピューターや放送ネットワークそのものを全世界規模で破壊しなければならない。そのようなことは、ゴ○ゴ13でもなければ不可能だ。
 ゆえにWEAでは、UMA探索に力を入れている。本当のUMAである可能性より、ナイトウォーカーである可能性が高いからだ。
 遺跡+UMAの組み合わせには、特に反応する。そこで今回もまた、TOMITVの企画室に話が舞い込んできた。

『河口寛探険隊 第x弾 南の島に海棲魚竜を探せ!!』

 そこの君、引かない。
 ロケ地は沖縄である。沖縄にある遺跡らしきモノについては、ニュースなどで知っている者の多いだろう。最近はスキューバダイビングの観光スポットにもなっている。
 その与那国島で、最近妙な噂が流れ始めた。UMAの目撃情報である。海に居ないはずの、鰐(わに)が出現するというのだ。漁師が網を食い破られたり、イルカの死骸(それも半身がちぎれたもの)が漂着したりと、結構真実身がある。ダイバーにも注意が促され、海上保安庁では船舶の通行制限と海洋調査も検討されている。
 そしてWEAに、1枚の写真が送られてきた。不鮮明な水中写真だが、巨大な海洋生物で額に相当する部分に鈍く緑色に光る物が見えるのだ。デジタル処理して鮮明にしたそれは、まさしく古生魚の魚竜のようであった。
 『河口寛探険隊』は、沖縄の海に挑戦する。

●今回の参加者

 fa0443 鳥羽京一郎(27歳・♂・狼)
 fa1180 鬼頭虎次郎(54歳・♂・虎)
 fa1201 大間 仁(26歳・♂・狼)
 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa2196 リーゼロッテ・ルーヴェ(16歳・♀・猫)
 fa2429 ザジ・ザ・レティクル(13歳・♀・鴉)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)
 fa3821 草薙 龍哉(29歳・♂・竜)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4038 大神 真夜(18歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

南の島に海棲魚竜を探せ

●仮想番組『河口寛探検隊』
ナレーター:「我々探検隊は目撃情報を元に、魚竜型の『巨大生物』の姿を求めて、沖縄の海に乗り出したのである!!」

●勝手なこと言うな
ザジ・ザ・レティクル(fa2429):「魚群探知機に映る巨大な影!! 懸命の捕獲作戦も空しく破られる網!! そして唐突に流れる『ロッキー』のテーマ‥‥ああ、まさに尻切れだわ!! サイコー‥‥♪」
河口寛隊長:「君は何を妄想しているんだ(冷たくツッコミ)」

●沖縄についてのうんちく(ザジ調べ)
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【沖縄諸島】
 南西諸島のほぼ中央部にあたり、沖縄県の北部を占める島々の総称。沖縄島を主島にその周辺の慶良間列島、渡名喜島、粟国島、久米島、伊江島、伊平屋島、伊是名島などの島々、さらに東方沖にうかぶ大東諸島からなる。沖縄県の人口の約90%が居住。
 広大な在日米軍基地があり、その返還と産業振興が課題となっている。県庁所在地は沖縄島の那覇市。面積は2273平方キロメートル。人口は136万2千人あまり。

【沖縄遺跡様海底地形】
 沖縄海底にある遺跡様地形については、1946年ごろから一部目撃されていた。しかし本格的な調査が始まったのは1986年からで、地元ダイバーによって調査と同時にダイビングスポットとしての開発が行われた。爆発的に注目を浴びるようになった以後、陸上を含めた広範囲な調査が行われ、1998年にはほとんどの地形が模型化された。しかしその地形が人工によるものか自然物なのかについては、諸説ありいまだ結論は出ていない。
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「とまあそんなわけで」
 と、ザジはメモ帳をしまいこんだ。
「今回のヤツは水棲UMAで間違いなし。ただし諸説あって、目標の能力は未知数よ。デジタル処理した画像に『コア』らしいものがあるから、99パーセントナイトウォーカーで間違いないと思うけど‥‥あたしは水の中じゃほとんど無力だから、みんなお願いね☆」

●河口寛探険隊
 さていきなり本題に入るが、河口寛探険隊はいくつかの事前準備を終わらせて探索に入った。余談だが鬼頭虎次郎(fa1180)が、現地漁師に扮して『迫真の演技』で役をやってくれたことを付け加えておく(地方を馬鹿にしとるのかというようなクレームが来そうな演技だったが)。
 主立った事前準備とは、『調査』と『レクチャー』である。
 事前調査については、リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)がほとんどの項目を済ませてしまっていた。UMAの目撃ポイントや出現場所。破られた網の設置場所や遺跡様海底地形などについての情報。また海上保安庁の哨戒網や設定された侵入禁止海域などについてもである。
 その結果、目撃報告が集中しているのは与那国島近海らしいことが推察できた。
 ついでに、獣人能力の《瞬速縮地》が水中でも使用可能か確認も取っておいた。結果は着地(?)地点を誤らなければ有用に使用可能ということだった(水中に深く潜ることも出来るけど、当然息は出来ないから、到達地点は常識的な範囲にしておかなければならないということ)。
 『レクチャー』は、今回の撮影スタッフ全員に海の掟をたたき込み、スキューバダイビングの実践を行わせることである。ドライスーツの下に防刃ジャケットなどを着込む者もいるが、当然訓練無しで海に潜るのは危険だ。慣熟に最低1日。獣化能力との組み合わせにさらに1日を費やし、『被害の出ない準備』を限られた時間なりに十全に行った。
 船は撮影用にリースされたものだが、マグロを釣ることが出来るぐらいの漁船で、華美ではなくストイックな印象を受ける。魚群探知機などの装備は徹底的に組み上げられ、出来ることはすべてやったと言って良いだろう。
 なお前回の『河口寛探険隊』では、ナイトウォーカーが再情報化してビデオテープに入り込むというアクシデントがあったが、草薙龍哉(fa3821)の要請を考慮しつつもVを回すことになった。
 理由は簡単。追い込む場所を限定するためである。例えば下手に追い込んで海底ケーブルなどに感染すると、まったく手が出せなくなるからだ。
 さて、ここで今回の作戦についての編成を公開しておこう。
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【撮影クルー】
 河口寛隊長以下8名の獣人。

【囮】
 鬼頭虎次郎
 大間仁(fa1201)
 竜華(fa1294)
 joker(fa3890)

【戦闘要員】
 鳥羽京一郎(fa0443)
 ザジ・ザ・レティクル
 天目一個(fa3453)
 草薙龍哉
 大神真夜(fa4038)
 リーゼロッテ・ルーヴェ
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 船長はもちろん探険隊隊長の河口寛である。大所帯だが、きちんと計算してまともなサイズの船を借りたので問題は無い。舵取りは仁が行った。
 さて、会敵予想地点へ舳先を向けた船は、魚群探知機と目視、そして罠となる網を張ってUMAの出現を待つ。
「おええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜」
 船酔いに苦しんだ一部の隊員には、地獄の数日となるが。

●沖縄を楽しむ――余裕なんてあるわけない
「青い海、青い空、そして白い雲‥‥沖縄はいいところだなぁ」
 虎次郎が、平々凡々な風体で言った。仁が舵を取り船を上手い具合に回航させている。
 現在は、竜華とjokerが囮役を担っていた。竜華は半獣化して泳ぎ回り、jokerはボートを下ろして顔を水面に浸け、《超音感視》のタレントを発動させている。イルカが襲われた件から、目標が超音波を発するか、反応する可能性があると見たからだ。
 もちろん他の者も、のんべんだらりとやっていたわけではない。ある者は魚群探知機を凝視し、ある者は双眼鏡で海面を見ている。相手が水棲モンスターということであれば、水中では勝ち目が薄い。より早く発見し先制して対処するのが、まさに勝利の秘訣と言えた。むしろここまでくると、必須条件と言っていい。
「反応アリだ」
 魚探を見ていた京一郎が、声を上げた。深度20メートルほどのところに、大きな影を発見したのだ。
 リーゼロッテが、水中マイクで竜華を呼び戻す。その影を舵取りの仁が追うが、不鮮明な魚群探知機を使用したナビゲートでは、限界がある。
「呼び寄せよう」
 龍哉が言った。
「獣化すれば寄ってくるかもしれない」
 ナイトウォーカーには、獣人を感知する能力があると言われている。それがどのようなロジックで作られているものかはわからない。だが経験則で言えば、ナイトウォーカーは獣人が近くにいると、ほぼ100パーセント寄ってくるのである。
「船酔いから解放されるなら、変身してもいい」
 船酔いで死にそうなザジが、死にそうに言った。
「やりましょうよ」
 一個が言った。
「20メートルも下じゃ、こっちが相手出来ないわ。水面近くまで引き上げて、一気に叩く。それしか無いでしょ?」
「賛成だ」
 真夜が同調した。
「一斉に完全獣化。そして一気に殲滅。他にオプションは無い。河口隊長も、それでいいですね?」
 河口は鷹揚にうなずいた。

●後の先
 獣人達の獣化は、一斉に行われた。撮影スタッフも含めてである。ちなみに河口隊長は、獅子の獣人だった。
「感あり、すごい勢いで何かが浮上してくる!」
 撮影スタッフが魚探を見ながら言う。
「かかった! 移動して網にかかるように誘導だ! できるか!?」
 河口が仁に言う。
「もちろんだ!」
 仁が激しく舵輪を回す。すでに船上では、撮影クルー以外の全員が戦闘態勢を整えている。
 がつん!
 船に衝撃。かなり重い。
「でかいぞ! 5メートル‥‥6メートルはある!」
 虎次郎が言った。大型のサメぐらいのボリュームはあった。
 がつん!
 もう一発衝撃。さっきより激しい。
「網をかぶっているのに、なんてやつだ」
 網の目印の『浮き』を引きながら、『それ』は船に体当たりを続けていた。
「なんとかしてくれ! 舵が持たない!」
 仁が言う。獣人は人間を遙かに超える身体能力を持っているが、船は人間用なのである。
「《虚闇撃弾》! 一斉射撃! タイミングを合わせてね!」
 獣化してやっと船酔いから解放されたザジが、元気に言った。
「3、2、いぃぃいいいいいい!?」
 どっどどばっしゃーん!!
 『それ』が跳ねてきた。船上に向かって。
 それは手足のないワニのように見えた。強固な鱗に覆われたその姿は確かにナイトウォーカーのような特徴を持っていたが、とにかく口がでかい。しかも痛そうな牙が並んでいる。
「撃て!」
 誰かが言った言葉に反応して、凝縮した闇が複数炸裂した。そして船のヘリを破壊して乗り上げた『それ』と、今度は格闘戦になる。
 混乱のうちに、勝敗は決した。船が小破したが多少のケガだけで、ナイトウォーカーを倒したのだ。コアを破壊され、ナイトウォーカーは完全に死んだ。

●沖縄小旅行
「予定より早く仕事が終わったから、今日はオフにする」
 やけにさばさばした表情で言ったのは、河口隊長である。予定通りナイトウォーカー事件でVはお蔵入り。隊員の要望もあって、沖縄でリゾート気分を満喫することにしたのだ。

ナレーター:「そして、一つの謎が明かされ、またいくつもの謎が残った。しかし、河口寛探険隊は、その謎に挑み続けるのだ!」

【おわり】