おのぼりカーペンタリアアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/18〜07/22

●本文

 ジョン・B・カーペンタリア、24歳独身。
 B級キワモノ映画を撮り続ける彼は、もはや言うまでもないが、骨の髄までオタクだった。
 そのカーペンタリア監督が、突然言った。

「アキハバラに行きたい」

 飛行機で10時間の旅もなんのその。そして時差すら超越して、彼は日本にやってきた。骨休めにである。
 いや、秋葉原に行って骨休めが出来るとは、とうてい思えない作者は北海道人。
 それはさておき。
 彼は先日撮ったシャシンのギャラのほとんどを費やし、オタクの聖地秋葉原を目指した。
 しかし日本の道路事情は、こと東京の交通事情は、果てしなく根深く悪い。慣れれば確かにどうということはないぐらい公共交通機関が発達しているが、それも場合によりけりである。特に、ガイジンには大変な街だ。
 それで、である。
 彼をエスコートする人材を募集する。芸能活動とはかなり離れているが、撮影現場の練達者と直接顔を合わせる機会をセッティングできるのだ。これは好機と見ても良いだろう。
 もちろん、カーペンタリア監督の目的はオタク分の補給だけではない。内々に打診されているが、彼の公共電波処女作『Dark Samurai』の続編『Dark Samurai2』のロケハンも兼ねられているのだ。
 多分。
 とにかく協力者を求む(切実に)。

●今回の参加者

 fa0829 烏丸りん(20歳・♀・鴉)
 fa1077 桐沢カナ(18歳・♀・狐)
 fa2683 織石 フルア(20歳・♀・狐)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3960 ジェイムズ・クランプ(22歳・♂・犬)
 fa4068 癸 なるみ(19歳・♀・兎)

●リプレイ本文

おのぼりカーペンタリア

●ジョン・B・カーペンタリア監督
 ジョン・B・カーペンタリア監督はオタクである。
 アメリカではオタクのカミングアウトというのは進んで(?)いて、三十路過ぎたおばさんがビキニアーマー着てコスプレしている姿などというのが、オタクの集会ではマジで見受けられる。誰も彼も『筋金入り』で、いい年したオッサンがスターウォーズや指輪物語の格好したりとか、金のかけかたも非常に極まった感がある。
 日本と西洋のオタクは、アクティヴ度がほぼ180度違うのだ。隠れず、臆せず、堂々とオタクをする。我が道を行くことにプライドを持っているアメリカ人ならではという局面も多々見受けられ、ある意味冷や汗ものの映像が流れることもある。
 悪影響が無いわけではない。例えば洋画『マトリックス』が大流行した時に、全身黒装束で山のように銃器を装備し、本当に銃を乱射して人を殺してしまったなどという事件が起きたりもする。こういうのはイッてしまった部類の人で、映画のあり方と銃の法規制について物議を醸し出したりすることもある。
 日本では「そんなの犯罪者の責任じゃないか」と言われるだけだが、アメリカではそういう犯罪が発生したときに、元になったと思われる映像などが「精神に悪影響を与えた」などと言って訴因になることもあるのだ。
 我らがカーペンタリア監督も、そういう意味では『危険な』映像マンである。B級映画というのはメディア規制の緩いジャンルで、その作品は暴力と性的表現に満ちており、娯楽映画の名を借りてトンデモな内容の映像を露出させることもたびたびだ。カーペンタリア監督の作品はそういうのが薄いから忘れられがちだが、彼はどちらかというと黒っぽいグレーゾーンに身を置いている人なのである。
 彼を取り巻く環境はさておいて、今回の彼の来訪は大変歓迎された。エスコート役の芸能関係者は、手ぐすね引いて待っていたと言っていい。ゴマスリとかそう言うのではない。監督の人徳(?)に惚れての、エスコート役の応募である。
 秋葉原に行きたいから、というヨコシマな理由だけではないとは思う。多分。

●烏丸りん(fa0829)の場合
 監督の秋葉原道中の最初は、烏丸りんのエスコートで始まった。
「ファンタジーに細かいツッコミは無粋ですけど、監督のような方の場合ファンタジーに浸るだけというわけにもいかないでしょうから」
 そう言ってりんが行ったのは秋葉原の『物色』である。具体的には外見的な秋葉原の案内だ。秋葉原の路上にはコスプレイヤーが立ち客引き(?)のメイドがビラを撒いている。キンキン声の声優がゲリラライブを行い、視覚でも聴覚でもカオスのるつぼと化しているのが現状だ。そして多くの秋葉原住人は、それを異常とは感じない。なぜなら『それが秋葉原』だからだ。
 『秋葉原電気街』と呼ばれる区画は、多分多くの地方民が想像しているより狭い。歩くだけなら30分もかからない(障害物と人混みが無ければ)。しかし濃縮度合いはちょっとしたものがある。
 というわけで、物色は済んだ。次は具体的な取材(笑)である。

●織石フルア(fa2683)の場合
 次のエスコート役は、織石フルアである。某案内所で秋葉原の地図をGETし、彼女の目的としている店舗についての情報を仕入れる。
 彼女が目標としたのは、コスプレショップである。定番コスプレ衣装からオーダーメイドコスプレ衣装まで受注してくれる、このところ業績を伸ばしている業種だ。衣装も既製化と制作システムの確立で、価格も5桁台に抑えられるようなものもあり、怪獣の着ぐるみまで請け負ってくれる(価格は2桁ほど跳ね上がるが)。
 スターウォーズのス○ームトルーパーのような既製品もあるが、やはりオーダー品が目を引く。小物ではメイ○ロボのアンテナのようなものから、キャラクターものの着ぐるみまで(黄色い電気ネズミの着ぐるみもあった。すごい値段だった)、触発されるような『何か』を孕んだ店内の空気に、カーペンタリア監督は思いっきりなじんでいた。
 ただ、さすがに『お持ち帰り』で購入しなかったのは、彼にもわずかな自制心があったのだろう。国際便で2品ほど送っていたようだが。

●桐沢カナ(fa1077)の場合
「監督は、秋葉原の何に興味があるんですか?」
 変装した桐沢カナは興味津々の態でカーペンタリア監督に問いかけた。
「秋葉原は、オタクの間では世界随一の街として有名だ。だからすべてに興味がある。この前会食したインドの富豪なんかは、秋葉原で出ているフィギュアをグロスで買っていったそうだ。あとオンラインゲームでの日本人の友人も多いよ。そういう人たちの話に上るのは必ず『アキハバラ』だ。週末は必ず行くとか、イスラム教徒のメッカ巡礼に等しい意志力を見て取れるね」
 意外と日本語の堪能なカーペンタリア監督が言う。
 フィギュアの話が出たので、カナは秋葉原どころか日本で一二を争うフィギュアショップへ監督を案内した。精巧なキャラクターフィギュアから等身大ドールまで売っている、ある意味開き直ったショップだ。
 クリエイターとしていたく感心した様子で、カーペンタリア監督はそれらを注視していた。まあ、日本のフィギュアはハリウッドから原型制作の依頼が来るほどの技術力である。見とれないほうがおかしい。
 監督は10数個のフィギュアをカードで購入すると、その中の小振りで当たり障りの無いもの一つ、カナに進呈してくれた。

●鶴舞千早(fa3158)と春雨サラダ(fa3516)の場合
「「お帰りなさいませ、ご主人様」」
 このお迎えの言葉でもう分かったと思うが、鶴舞千早と春雨サラダが案内したのは、いわゆる『メイド喫茶』というものである。
 メイドについては本来このような軟派なものではないのだが、そこは秋葉原ドリーム。オタクの萌え心をくすぐる演出と仕掛けが盛りだくさんであった。
 ちなみにメニューは少ないし人混みもすごいので、大人数での来訪にはちょっと覚悟がいる。厨房もほとんどの加熱メニューは電子レンジのようで、昼ご飯に頼んだピラフは冷凍食品の味がした。まあ、厨房で中華シェフのように鍋を豪快に振るメイドというのは明らかにおかしいので、これはこれで納得ものであろう。
 ただメイド喫茶に対しカーペンタリア監督は誤解があったらしく、客とじゃんけんなどの遊興に興じるメイドの姿を見て、なにやらカルチャーショックのようなものを受けたようだ(言うまでもないが、西洋人のカーペンタリアのほうが『本物』のメイドに対して造詣が深い)。

●ラリー・タウンゼント(fa3487)の場合
 ラリーは、かなりマニアックな場所に来た。通称『乙女ロード』と呼ばれる萌え系店舗街にある『眼鏡っ漢喫茶』というものである。つまり眼鏡をかけたイケメンばかりの居る喫茶店だ(期間限定。本来は執事喫茶)。
 それ以外どんな特徴があるのかというと、実はあまり無い。強いて挙げれば、ここはやおい系同人をたしなむ人が妄想たくましくするような場所である。こういう萌え系店舗は、幅2ミリぐらいの視野しか無い狭い客層のニーズに応えるのが目的であり手段だ。ニーズがあれば成立するので、深く考えないことが吉である。
 ちなみに女の子はわりと楽しめるが、男にはいささか居心地が悪い場所でもある。ゲイ(らしい)ラリーはそれでも無問題のようだが、このような場所に来て演劇談義などされても空気を読んでいないとしか言い様が無いだろう。
 ただカーペンタリア監督は眼鏡っ漢に色々質問攻撃を行い、何らかの成果を得ることが出来たようだ。

●癸なるみ(fa4068)の場合
 癸なるみの番になって、やっと一同は電気街から離れた。しかしオタク濃度を薄める気は無いので、神田明神に向かいあるイベントを見物することになった。
 それは、『巫女さん入門〜初級研修〜』というイベントである。詳細はウェブで見て欲しいが、要するに巫女装束を着て巫女の修行をするイベントだ。
 『巫女さん萌え〜』という人たちがいるこの業界、これに食いつかないオタクは居ない。去年行った研修は大好評で、今年も行われることになったのである。
 内容については至極まともなもので、巫女装束の着方から、行儀作法、お守りやおみくじの説明、大祓詞(おおはらえ)、結婚式の見学、神道と神社の歴史などを、1日で受講するのである。受講語には修了証が授与される。
 ちなみに『由緒ある神田明神が‥‥』と思う読者は、認識が間違っている。すべて『マジ』なのだ。ほとんどの授業を正座で受けなければならず、正午からの昼食も『食事作法』という授業なので、きちんとした姿勢でで緊張しながら食事を取らなければならない。もちろん私語も禁止。
 神田明神では、巫女装束を身にまといながら茶髪だったり大股で歩いたりする、巫女さんにふさわしくない行為をするレイヤーに、正しい巫女の姿を知ってもらおうという真面目なイベントなのだ。
 監督は神社自体かなり気に入ったらしく、「ここでサムライとノブシを戦わせたい」などと間違ったことを言っていた。それではまるで、格闘ゲームである。

●ジェイムズ・クランプ(fa3960)の場合
 今ツアーのトリは、ジェイムズ・クランプが仕切った。山手線界隈を中心に『日本の文化』を堪能してもらおうと、予定を組む。
 彼がまず引っ張ってきたのは、品川の『花魁SHOW』である。花魁行列を見ることの出来る外国人向け観光スポット筆頭の一つだ。ここでは監督の本来の顔、つまり『映像監督』としてのカーペンタリアの欲求を十全に満たすことになった。次回作のインスピレーションに影響をあたえたことは言うまでもない。
 そしてもう一つ、東京中野の某有名オタク系書籍店(ひらがな五文字の店)への強行軍である。場所のチョイスはジェイムズの意志によるものだが、理由は一番『濃厚』だから、だとかなんとか。確か昔は店員さんが漫画やアニメのキャラクターのコスプレをしていたはずだが、今もやっているのだろうか?
 まあ監督もいたく気に入ったらしく、「この棚のここからここまでを全部」と言って同人誌を大人買いしていったのは、さすがカミングアウトしたオタクである。それ以前に漢字読めるのかどうか微妙だが。

 ともあれ、無事に監督はオタク分を充分補給し、土産も手に入れてほくほく顔で成田を発っていった。

 ‥‥‥‥。
 あれ、ロケハンは?

【おわり】