DARK SAMURAI XO B1アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 12.9万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 08/16〜08/22

●本文

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【タイトル】
 DARK SAMURAI XO

【内容】
 舞台はサムライの国日本。船の難破で流れ着いた主人公はその土地で女性と恋に落ち、一児をもうけて平和に暮らしていた。
 それの平和な暮らしを、ノブシが破壊した。ノブシに妻を殺され子供を誘拐された主人公は、ノブシに復讐し子供を取り返すために『武士道』を学ぶ。
 四〇〇年後の現代、主人公のノブシ探しは続いていた――。

【脚本概要(全4回中の第1回)】
 『ダーク・サムライ』ことベイカーは、武士道を学び400年を生きる超人である。今は娘を連れ去ったノブシ『シュラ』『リュウケン』を追って日本に来ている。
 シュラとリュウケンと剣戟を交わすベイカー。負傷するが日本の協力者に助けられる。
 物語は400年前の日本にさかのぼる。難破した船で流れ着いた日本でベイカーは、その生活の中でミネという女性と恋に落ち一児をもうけた。しかしノブシの襲撃を受け、村を焼き払われ娘を攫われてしまう。
 回想シーンが終わると、そこは豪奢なホテルの一室だった。そこにはかつての妻ミネそっくりの女性がいた。ノブシと戦う意志を共にする協力者だという。
 その他にも数名の協力者を得て、シュラの本拠へと、ベイカーは向かう。

【募集】
・製作スタッフ(AD・音声・美術・撮影・編集・etc)
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 累々と並ぶカップ麺の残骸と栄養食品のゴミ屑、そして撮影機材の山々。
 最近露出が多くなって機材が増えた、ジョン・B・カーペンタリア監督の部屋である。機材を増やす前に生活の潤いを増やせと思うのは筆者だけではあるまい。
 『ダーク・サムライ』というシャシンは、かなり間違った方向で制作され放映された彼のデビュー作である。ジャンルはダークヒーローモノ。ブシドーを修得すると400年も生きられるというへんてこ映画だ。
「基本的には『ジャパントクサツ』のフォーマットを利用して、30分で1話完結。連続ものだから伏線は張りまくりで、回収は半分もすればいいか」
 日本人からクレームが来そうであるが、そう言う気遣いをしないのがJ・B・カーペンタリア監督である。
 ともあれ企画は通り、一応4回分1/3クールの試験放送が行われることになった。これが評判良ければ、1/2クール6話の契約が取れることになっている。
「さて、スタッフを集めよう」

●今回の参加者

 fa0088 ハグンティ(59歳・♂・熊)
 fa0708 重杖 狼(44歳・♂・蛇)
 fa1584 高川くるみ(20歳・♀・兎)
 fa1733 ウルフェッド(49歳・♂・トカゲ)
 fa2177 縞八重子(27歳・♀・アライグマ)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)

●リプレイ本文

DARK SAMURAI XO B1

●B級映画『DARK SAMURAI XO』撮影風景
 フィルム『DARK SAMURAI XO』の撮影は順調だった。主人公ベイカーには中堅どころの役者リチャード・バークマン(NPC)を迎え、粛々と撮影を終えてゆく。
 この物語は、その撮影に携わったスタッフの、悪戦苦闘の記録である。

●AD走る
 ハグンティ(fa0088)は、アシスタントディレクター(AD)である。ADというのは、言うなれば力仕事専門の雑用係で、撮影スタッフの多くを占める職能だ。体力勝負な部分が多く、レフ板を何時間も持ち続けたり配線ケーブルを設営したり、ほぼありとあらゆる前準備が彼らの手によって行われる。
 ハグンティは、ADとしては経験値のある部類に入る。ADの中でもとりまとめ役に近い。50過ぎでADというのはもはや現場のヌシに近く、監督でも一目置く人材だ。正直、この年齢でADというのは逆に扱いに困る部分もあるのだが、本人が昇進を嫌がっている節もあるので多くは言えないだろう。いずれ自分のやりたいことが決まれば、自ずと変わってゆくかも知れない。
 もっとも、そういう人生の機微にまったく動じないのがカーペンタリア監督である。ハグンティが万端整えた前準備を「ご苦労さま」の一言で片付けて、本道である撮影に臨む姿勢はある意味見事と言えば見事だ。

●大道具は今回意外と手間暇でした
 『DARK SAMURAI XO』は現代劇である。ゆえに大道具である重杖狼(fa0708)の主な仕事は、それに則したロケ地の探索ということになる。
 大作になれば丸ごとセットで制作というのもあるのだが、あいにくカーペンタリア監督はそういう予算の使い方が嫌いらしい。どこまでもB級にこだわるその姿勢はあっぱれとも言えるが、狼にしてみると小間使いのような仕事ばかりで今ひとつ乗り切れないものがある。
 それでも仕事はある。ロケハン以外に必要なセットを作るわけだが、これが結構面白いことになった。
 主人公ベイカーは、改造したバスに住んでいるという設定である。ゆえに今回のメインは、このバスの制作となった。
 で、カーペンタリア監督から入った注文は、『内装はオリエンタルな雰囲気で』というお達しであった。
 んで、悪のりして作ったバスの内装は、茶室にふすまにタタミベッドというものになった。明らかに間違った日本観に、
「エクセレント!!」
 と、カーペンタリア監督が喜んだのは言うまでもない。

●小道具はアイデア盛りだくさん
 雨宮慶(fa3658)は小道具の担当である。今回は光る日本刀や光る印籠などの小物を製作して撮影に織り込ませるアイデアを提供した。ただ光るシリーズはCGでエフェクトかけたほうが見栄えと出来に差が発生し、なおかつ予算もそのほうがかからないことから、慶の作業は小物の製作ではなく『光るシリーズ』のエフェクト作成に終始した。これは慶がCGエフェクトを修得していたこととも関係する。
 他に監督に容れられたアイデアとしては、禁煙パイプの製作である。キセル型のそれは、単純に言うなら禁煙パ○ポを先端に付けたキセルなのだが、アメリカ映画業界は喫煙に非常に厳しい環境なので(その辺を詳しく知りたい人は、ウェブで『アメリカ』『喫煙事情』という検索ワードで検索してみよう。ある意味可哀想なほど喫煙者は肩身の狭い思いをしている)、主人公、特にヒーロー役の喫煙は御法度なのだ。背景を背負ったヒーロー像とたばこは記号的に結びつけやすいものなので採用は当然だが、この辺りの事情を慶が察知していたのなら、よく事情を理解していたと言える。
 なお、それでも慶がのけぞったオーダーがある。主人公のバスの内装に、金色の大仏(電飾付き)を用意してくれと言われたのだ。いや、バスに入る程度のものだから『大仏』と言って良いかはわからないが、ともかく『中空の破砕素材で作ってくれ』というオーダーであった。
 どうやら監督、この大仏を爆破するつもりらしい。不信心というか、罰当たりである。

●撮影は地味に派手に
 今回のロケ地は日本である。ゆえにというか、撮影のウルフェッド(fa1733)はやや制限を受けることになった。獣化しての撮影規制を受けるからだ。
 ロケの場合しばしば起こることだが、獣化による能力上昇を見込めない『素』の撮影を制限されることがある。これはハリウッドのような巨大スタジオを持っていない日本ではやむを得ない事情であって、ましてやB級映画となればバカ高い日本のスタジオを長期レンタルするわけにもいかない。名を挙げつつあっても、カーペンタリア監督はまだ二流の監督なのだ。
 ゆえに、ウルフェッドは『人並み』の撮影技術しか披露できなかった。それでも十分な技術は持っていたが、本人は不満を隠せない。キレキレの時に撮った彼の映像は、それこそアングルだけで魅せるものになるからだ。
 もっとも、当人は全力を尽くしたのでそれなりに満足げである。日本の風景は日本でしか撮れないし、与えられた条件で全力を尽くしたのならば、悔いは残らない。

●プロデューサーのオシゴト
 縞八重子(fa2177)はプロデューサーとして腕を振るった。裏方の長、ある意味監督より偉いのがプロデューサーだが、今回は監督について回る位置づけになるので序列では2番目に相当する。
 ちなみにプロデューサーのお仕事のメインは、『金の管理』である。スポンサーを探し金をかき集め、必要な部所に適当に配分する。監督の上に居るか下にいるかでずいぶん環境が変わってくるが、八重子の場合電卓片手に予算配分を取り仕切るのがメインの仕事だ。
 スタッフはアイデアマンが多い。自分の制作欲求(?)を満たすために、ありとあらゆるアイデアを出して実現しようとする。が、その全てが可能なわけではない。渡航費用から弁当代に至るまで、シャシンの制作にはとにかく金がかかるのだ。監督はどちらかというと『アーティスト』なので金の事など気にせずイケイケゴーゴーで行ってしまうが、現実を見る人間が一人は必要なのである。
 そして今回の場合、八重子がその役割を担わなければならない。とにかく苦言、起きたら苦言、寝る前に苦言とひたすら監督をアッチの世界から現実に引き戻さなければならないのだ。
 そして彼女の評価は、最後に数字として表れる。その結果は、250万あまりの予算オーバーであった。主な原因は人件費であるが、この手のシャシンではオングストローム単位の誤差である。ひとまず、満足な結果と言えよう。

●サントラ封入
 高川くるみ(fa1584)は今回、ハリウッドのスタジオでの作業になった。基本的に完全獣化して、制作に挑む。名前の通り日系なので、『和』テイストに関しては、充分以上に理解がある――と思っていた。
 が、監督からは珍しくダメ出しが出た。これは彼女と監督のつきあいの中でも異例の事態である。
 彼女の誤算は、『和』テイストを理解しすぎていて、その音楽が『芸術』の域にまで達していたことだった。ハマりすぎていたのである。例えるならナチスドイツの集会場でヒトラーが演説を打つようなはまり具合で、つまり『出来すぎ』だったのだ。
 監督が求めているのは『芸術』では無い。おそらくくるみが最初に提供した音楽でイージーリスニングのアルバムを出せば、それなりのものになっただろう。が、そういうことではないのである。監督はあくまで『B級映画のサントラ』が欲しいのであって、その範囲内でのBGMがフィルムには必要なのだ。
 そう、つまりめずらしくも「仕事で手を抜いてくれ」と頼まれたのである。仕事は全力で行うもの、という常識を持っていたくるみとしては、意表を突かれた展開だ。
 結局、当初提供していた音楽をダウンサイジングしB級っぽく安い音に音源を置き換え、期日通りにモノは完成した。
 意外なところに意外な落とし穴があると、くるみは思ったものである。

●完成――1stラッシュ
 できあがったフィルムは、最低限の編集状態で1stラッシュが公開された。それだけでも充分人は全力を尽くしたという満足感を得られたが、最後の詰めは監督が行うことになっている。
 モノとしてはいかにもな『カーペンタリア・フィルム』っぽい作りで、微苦笑を浮かべるものも居た。予想通りの出来で裏切らない展開。犬並みの安産は約束されたようなものだった。
 さて、次の仕事が待っている。

【おわり】