Guerrilla St．St．04Bアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 三ノ字俊介 |
| 芸能 | 4Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | やや難 |
| 報酬 | 27万円 |
| 参加人数 | 6人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 08/19〜08/25 |
●本文
ショーレスリング番組『Guerrilla Stunt Studio（ゲリラ・スタント・スタジオ）』は、好調を維持していた。この興業は『ショーレスリング』である。ガチンコでやり合うのではない。『魅せる試合』を行うのだ。殺人技や流血は厳禁。セメントマッチ（真剣勝負）はありだが、あくまでショーであることを忘れてはいけない。
重要なのは演技とか演出とかである。
その番組も、今回で４本目（ライブマッチを入れれば４本目）になる。三代続けば王朝は成るというが、ＧＳＳも軌道にのってきたと言える。
その大事な一戦は、１時間枠になった。
「好評を博したこの番組『Guerrilla Stunt Studio』も、今回を成功させればかなりのものを得られると思います。ドラマ性を維持しつつ魅せる番組作りをする。必要なのは『変化』であり、常に新しい血を注ぎ続けること――つまりマンネリの回避は必要不可欠です」
口上を垂れているのは、プロデューサーＢこと高田馬場修平（たかだのばば・しゅうへい）である。すでに１０本近くの格闘番組をプロデュースし、一定の評価を得つつある。もう新米と言うには抜き目がありすぎるだろう。
修平の口上は続く。
「今回のＧＳＳは、今までの制約された枠組みでは出来なかった、新グループのプロデュースや新しい戦力の拡充。また得られるものなら『なんでも』取り入れてゆきたいと思います。もちろん出場者の皆さんの、同意と総意の上でという前提はあります。本当にゲリラになられては困ります。ですが前半３０分枠をＡパート、後半３０分枠をＢパートとし、Ａパートを新人に開放して新団体、新勢力、その他様々な新要素の取り込みを行い、Ｂパートで今まで構築してきた『モノ』――もちろん積み上げあって現在が在るわけですが、それを活かしていただく作りにします。Ａパートは新人さん、一見さんの積み上げの場。Ｂパートはベテランさん、レギュラーさんの場所と住み分けてください。問題さえ起こさなければ、以前の某アイドル軍団のような切り捨てはしません。私は『可能性』を尊重します。とにかく一試合一試合、ドラマを１本作るつもりで当たって下さい」
＊
本募集は『格闘家』の募集である。戦闘能力よりも演技力を重視している。むしろそっちが本分と言って良い。
やる気のある者の参加を待っている。
●リプレイ本文
Guerrilla St．St．04B●『Darkness Professional Wrestling』登場
『Guerrilla Stunt Studio』第３回の前半戦は、なんとか予定通りに終わった。会場は体勢を整え直し、リングアナが会場になにやら説明している。会場の整理も付き、実況と撮影が再開された。
でーんでーんででーんでんででーんでんででーん♪（映画『スターウォーズ』より『インペリアルマーチ』）
威圧的な行進曲と共に、会場が派手にライティングされる。
花道を進んでくるのは、通称『ヒール軍団』と呼ばれるレスラー達だ。先頭を行くのはＳＩＧＭＡで、エレキギター片手に、モデルのような女性を二人伴って入場。リングに上がると、ギターをつま弾いてマーチに華を添える。
次に登場したのは孫・華空である。京劇風の衣装をまとい棍棒を持って、アクロバティックな入場だ。
そして最後は、菊柾稔。大柄な身体で恐い顔をし、威圧感を振りまいている。
「『Darkness Professional Wrestling』！！ 略して『ＤＰＷ』！！ 生ぬるい世間のあまちゃんレスリングを全否定して、本当の『戦い』ってものを見せつけてやるぜ！！」
ＳＩＧＭＡが、派手なＤＰＷ結成宣言をぶちあげた。会場からわっと歓声が上がる。
――今後の方針は、『ＧＳＳ』ｖｓ『ＤＰＷ』っていう方向性になるな。
Ｐ席で、高田馬場修平Ｐが思った。以前から『ベビー』『ヒール』という呼称が気になっていたのだ。何かカッコイイ名前が無いかと思案していたところ、出場者からスポーンとこのアイデアが出てきた。「これだ！」と思った高田馬場Ｐは即座にその案を容れ、今回のＤＰＷ立ち上げとなったのである。
なお参考までに、ＤＰＷのトップは総統バルダー（ＮＰＣ）。必殺技は『暗黒超能力』ということになっている。
さて、派手な入場の後に組まれた後半戦のカードは、次の３本。
・第１試合
【ＧＳＳ】ルル・キャバリエ（fa2647）
ｖｓ
【ＤＰＷ】孫・華空（fa1712）
・第２試合
【ＧＳＳ】ゲオ・ガル・エルディー（fa4027）
ｖｓ
【ＤＰＷ】ＳＩＧＭＡ（fa0728）
・第３試合
【ＧＳＳ】醍醐千太郎（fa2748）
ｖｓ
【ＤＰＷ】菊柾稔（fa1060）
シングルマッチ３本。そして今日は、総統バルダーもリングに上がるという噂がある。
●第１試合 ルル・キャバリエ（fa2647）ｖｓ孫・華空（fa1712）
「おーら！ 暴れまくるぞー！！」
がらの悪い台詞を並べているのは、ＤＰＷ第１の刺客、孫・華空である。黒いチャイナという姿は、この興業ではおなじみだ。カンフー使いで、打撃系の技を得意とする。
対するルル・キャバリエは、白とピンクにフリル付きという、アイドルアイドルした格好だ。
「わたくし、活躍しますことよ」
お嬢様お嬢様した感じが、また微妙な雰囲気である。
カーン！
ゴングが鳴る。
試合は、いきなりルルの開幕ドロップキックで始まった。しかし、華空はそれをうまくかわしルルは自爆してしまう。そして立ち上がったところに、華空がルルの膝に足をかけ頭部に向かってキック！ 《シャイニング・ウィザード》と呼ばれる、結構高度で危険な技だ。
さらに、華空が俵返し（うつぶせの相手を持ち上げて、後方に反り返り投げる技）を放ってダメージを蓄積し、そこから寝技に入った。
アキレス腱固めでルルの足を痛める華空。しばらくそれは続いたが、からくもルルがロープに逃れてブレイク。だが華空はさらに、ボディースラムを連続で行い、ルルをグロッキーにした。
しばらく攻防は続いたが、逆転の契機を作ったのはルルだった。苦し紛れの延髄斬りが決まり、華空をダウンさせたのだ。その間にルルはコーナーを昇り、華空が立ち上がったところで「ファクー！！」と華空の名前をコール。よたよたと近づく華空に向けて、トップロープからのドロップキックを見舞った。
ルルは華空を起こし、フロントスリーパーにかける。そして腰を落とし、そのまま華空を投げ反った。《フロント・ネック・チャンスリー・ドロップ》と呼ばれる技だが、華空と息が合っていないととてもルルにはかけられるものではない。
１６分３３秒。
ルルの踵落としが決まり、華空はフォールされた。
●第２試合 ゲオ・ガル・エルディー（fa4027）ｖｓＳＩＧＭＡ（fa0728）
ＳＩＧＭＡは、レスラーとしては大きい方ではない。しかし小兵の理を活かした速度戦を得意としており、相手のゲオとは１８０度違うタイプの戦いを得意としていた。
「オラオラ、足下がお留守だぜ！」
ＳＩＧＭＡの攻撃は、俊敏の一言に尽きた。つかみ合いたいパワーファイターのゲオを、その身軽さで翻弄する。
前半戦は、とにかく打撃によるダメージ蓄積に終始した。ロープに飛びドロップキック。さらにフライングクロスチョップでぐらつかせ、その場からのローリングソバットで追撃する。
ゲオも負けてはいない。打撃戦ならばと、体格を活かしたタフネスを武器にＳＩＧＭＡの攻撃をあえて受け、そこから要所に投げを決める。しかし連続で決められず、攻めあぐんでいるのは見て取れた。
客が湧いたのは、ＳＩＧＭＡのボディースラムが２連続で決まった時だ。小兵が体格差の相手を投げるのは、理論や論理以前に痛快である。またＳＩＧＭＡは、柔道の勇『西郷四朗』ばりの体術を見せ、何度か身をひるがえしてゲオの投げを無効化させたのである。西郷四朗の『猫』と呼ばれた技だ。
もちろんヒールを気取っているので、ローブローや場外での乱闘、イス攻撃など、エンタメ面も充実している。サービス過剰な気もしないではないが、やりすぎということはない。
さらにパウダー攻撃でゲオの視界を潰し、トップロープからのスプリングボード式ニールキック！ これで勝負は決まったと思われた。
が、ゲオはこれを受けて見せた。
ただ一瞬の間隙とも言えるそのスキを、ゲオは逃さなかった。一端地面にＳＩＧＭＡをたたきつけ逆エビに固めたあと、返しの起き上がりで強引にパワーボムへ持って行ったのである。
１５分４６秒。
３カウント入り、ゲオのフォール勝ちが決まった。
最終的には、実に充実したブック（台本）となった。
●第３試合 醍醐千太郎（fa2748）ｖｓ菊柾稔（fa1060）
ラストの試合は、かなり好反響の一戦となった。千太郎と稔の試合である。
ＧＳＳでは無名に近い稔に対し、常連でベビー軍のフラッグシップである千太郎との試合は、最初はあまり期待感が薄かった。
が、そこはそれ、ショーレスリングである。ブック（台本）次第でどうにでもなるというのを、観客は目撃する。
序盤、チョップやボディプレスなどの痛め技のラッシュで優位に立っていた千太郎であったが、中盤になると稔のタフネスが目立ち、互角の打ち合いに転じていった。技数でも手数でもほぼ互角のレスリングを披露し、稔は試合中に、高熱患者の水銀体温計のように評価を上げていったのである。
打撃主体の千太郎に対し、立ち技主体で攻める稔。コブラツイストのようなオーソドックスな技から、ボウ・アンド・アローのような難易度の高い寝技までこなす稔を見て、観客は彼を「ただの噛ませ犬ではない」と見たのだ。
もちろん、千太郎の仕上がり具合は万全だった。それであるがゆえに、稔の試合運びが光り、観客は双方のレスリングを認めていったのである。
技と力の我慢比べ。それでいながら、爆発的に開放される打撃技に魅せられ、観客はヒートアップしていった。
稔の評価を決定づけたのは、コーナートップからの雪崩式フランケンシュタイナーである。相手に肩車した状態で前転し、背中から千太郎をマットにたたきつけフォールを取る。実にカウント２．８というところまで、千太郎を追い詰めたのだ。
だ、最終的には『場数』が物を言ったと言えるだろう。千太郎は大きな『溜め』から放たれるショートラリアートを豪快に決め、稔からフォールを取ったのだ。
１８分１３秒。
勝利はＧＳＳ軍団に輝いた。
後にこの千太郎の技は、サウザンド・ハンマー（千の戦鎚）と呼ばれるようになる。
●総統バルター、その力
「ヒールの集団だかなんだか知らないが、俺たちプロレスラーを敵に回して無事でいられると思ってんのか？」
試合後、完勝したＧＳＳ軍団がマイクパフォーマンスを披露した。マイクを取っているのは千太郎である。
ガガッガッガッガッ、ガガッガッガッガッ♪（洋画：ターミネーターのテーマ）
突然、場内に重量感のある音楽が響いてきた。
わっ、と、歓声があがった。
ＤＰＷコーナーから、ラ○ウのようなヘルメットをかぶった巨大な男が、マントをひるがえして入場してきたのである。足音が鳴るエフェクトまでかけている。
顔はよく見えないが、身体はボディビルダーのようにたくましい。見かけだけか本物かどうかは分からないが、かなりのものだ。体格で互するのはゲオぐらいであろう。千太郎でも１０センチは差がある。
『さえずるな、小童ども』
場内に、バルダーの声が響く。バルダーが手をかざすと、リング上のルルが派手に場外へ飛ばされた。触れていないのにだ。
「「なっ」」
ゲオと千太郎が声をあげる。
「おのれ面妖な！」
ゲオがバルダーに突っかけた。バルダーはそれを避けもせず、まともに喰らった。
「何っ！」
が、バルダーは小揺るぎもしなかった。
ばん！ とバルダーが腕を振る。すると木っ端のように、ガタイと重量だけが取り柄のようなゲオが、場外に振り飛ばされた。
「野郎！」
千太郎が仕掛けた。初めてそこで、バルダーは足を一歩踏み出した。千太郎の渾身のナックルを、バルダーが受け止める。
『はあっ！』
バルダーが押すと、やはり千太郎もそのまま場外に吹き飛ばされてしまった。
『悪の力は不敗不滅。次の刺客を待つがいい。さらばだ』
出てきたときと同じく、バルダーは悠々と去っていった。
どうやらＧＳＳ、まだまだ奥がありそうである。
【おわり】
