THE TIME ARMY 1429 Aヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/03〜12/09
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●本文
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【タイトル】
THE TIME ARMY 1429
【内容】
自衛官の戦隊が、中世の百年戦争時代の欧州にタイムスリップした! 自衛官達は伝説の女傑ジャンヌ・ダルクと共に、中世世界を戦い生き抜く。
【脚本概要】
自衛隊の実弾演習中に、自衛隊の戦隊の一部がその車両ごと行方不明になる。そして消えた彼・彼女らが出現したのは、百年戦争時代のフランス、そして伝説の女傑ジャンヌ・ダルクの元であった。
『神からの使者』として歓待される自衛官たち。しかし戦争に巻き込まれ、ジャンヌを助けるうちにジャンヌを中心とした英雄とされてゆく。しかし生き抜くために戦う主人公たちを、悲劇が襲う。異端審問にかけられ、悪魔とされ今までの身方から剣を向けられるよになる。果たして、彼らは生き残れるのか?
【資料】
●ジャンヌ・ダルク(1412〜1431)
フランスとイングランドによる百年戦争の末期、劣勢にあったフランス軍を優位にみちびいた、フランスの国民的ヒロイン。『オルレアンの少女』ともよばれる。
フランス北東部ドンレミ(現ドンレミ・ラ・ピュセル)の農家に生まれ、13歳のときに天からの声をきいたという。1429年、オルレアンがイングランド軍に包囲されていたとき、ジャンヌは王子シャルルを助けるよう神の啓示をうけた。シャルルは前国王の子であったが、支持する勢力は弱く、トロアの和約によってイングランドの王がフランス王位をつぐことになっていた。ジャンヌはシャルルに面会してフランス王としての使命を説き、神学者や聖職者にも主張を認めさせた。
彼女は軍の指揮をゆだねられ、武具に身を固めて王家の紋章のついた白い旗を手に出陣し、包囲軍をやぶってオルレアンを解放した。シャルルはジャンヌにともなわれて北フランスのランスのランス大聖堂におもむき、シャルル七世として即位した。これを境にフランス軍は優勢に転じ、フランス国内をひろく占領していたイングランド軍は排除された。
【募集】
・主人公(日本人男性)
・ジャンヌ・ダルク(欧米人白人女性)
・自衛官数名
・騎士・戦士役など
・その他、集まった人員によって脚本を調整
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「今回はロケとセットと装甲車の使用が可能‥‥っと」
早くもおなじみになった感のある無数のカップ麺と栄養食品、そして映画機材の押し込められた部屋で、三流映画監督のジョン・ブラザー・カーペンタリア(24)はふうと大きく息をついた。
今回もまた、彼は企画をWWBに持ちこみ、それが通ったのである。いわゆる深夜三流俗悪映画枠なのだが、彼はそれについてあまり気にしていない。まだ公式な監督作品は、これで三つ目なのだから。
その三本目の作品が、『THE TIME ARMY 1429』である。
中世世界にタイムスリップした主人公たちが、近代兵器でジャンヌ・ダルクを助けオルレアンを奪還するという物語である。
枠は25分弱。低予算B級志向バリバリだが、三作目にして与えられた予算は以前の10倍であった。さらにロケと機材の提供も受けたのだ。
企画書が通り深夜枠は押さえたので、あとはクランクインするだけ。そしてまたもであるが、足りないのは出演者とスタッフだ。
本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
●リプレイ本文
THE TIME ARMY 1429 A
●初没
「今回発案のあった君の役、『時空監察官』は没にする」
眼鏡をかけた無精ひげの監督ジョン・ブラザー・カーペンタリアは、ダン・クルーガー(fa1089)に向かってそう言った。
「悪いが尺が合わない。それにそこまで話を広げるには予算も時間も無い。君には一自衛官の役につき、そして劇中で死んでもらう」
「はあ、まあわかりました」
ダンは落ち込んだ風もなく言ってのけた。キザな彼が弱みを見せるこちょは少ないが、心中はがっつり落ち込んでいる。まあ、演技力0の彼が映画で活躍するには、ちょっと世間が厳しかっただけだ。
「じゃ、早速クランクインしよう」
監督が言った。
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THE TIME ARMY 1429
西暦1429年のフランスを舞台とする娯楽映画。百年戦争の時代にタイムスリップした日本の自衛隊が『オルレアンの少女』ジャンヌ・ダルクと行動を共にし、オルレアン開放の手助けをするという物語。
物語冒頭はジャンヌの異端審問のシーンから始まる。ジャンヌは審問会にかけられ、有罪とされて火あぶりになる。しかし同時に、歴史を改変すべく自衛隊とジャンヌの仲間達が活動を開始する。果たして、自衛隊とジャンヌは生き残れるか?
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●オルレアンの少女
奇跡は起きた。
難攻不落と思われたオルレアンへの道を、聖女ジャンヌ・ダルクと彼女の言う『神の戦士』、自衛隊の戦隊が切り開いたのである。
総輪装甲車の火砲は相手の城門を容易く打ち砕き、小銃弾は甲冑に身を包んだ敵の将兵を藁のようになぎ倒してゆく。それはほとんど一方的な虐殺であり、戦闘ですらありえない。
光り輝く銀色の鎧を身につけ、先頭を征くのはサレナ(サレナ・ブリュンヒルド(fa0667))という名の女性だった。彼女は、ジャンヌが幼いため戦場での士気高揚に不足があると思い、ジャンヌの影武者となって先頭に立っているのである。彼女はジャンヌに心酔し、その馬蹄の後ろにつく『神の戦士』たちにも心酔していた。
「こんなもん、戦争じゃないな」
その『神の戦士』の中で、暗くつぶやく男が居た。樹脂製フリッツヘルメットにボディーアーマーを装備した、老齢の自衛官だった。階級は一曹。戦隊では『鬼軍曹』の名で呼ばれる戦隊のリーダー、カタオカ(守山修(fa2456))である。
「カタオカさま、いかがなさいましたか?」
装甲車の上で戦況を見ていた本物のジャンヌ(Camille(fa0340))が、無邪気とも言える口調でカタオカに言う。まだ十代半ばにもなっていない碧眼の美少女は、純真なまなざしでカタオカを見る。その視線にカタオカは耐えられなくなり、思わず目を逸らした。
彼ら自衛隊第2師団普通科連隊第21装甲戦隊の約半数である10名余は、この百年戦争時代にタイムスリップしてしまったのである。
原因は、よく分からない。ただ幸いなことに、タイムスリップした時彼らは実弾演習中で、身を守るのに必要な銃器弾薬は装備していた。その中には総輪装甲車と呼ばれる、戦闘車両も含まれる。そして、彼らはジャンヌ・ダルクと出会い、歴史的事件に巻き込まれることになった。彼らは『神の使者』として祀り上げられたのだ。
●出会い
「あ‥‥流れ星‥‥」
最初に『それ』を見つけたのは、カレン(月李花(fa1105))という名の教会孤児だった。彼女は星の導きのままに丘へと向かい、そして光と共に現れた自衛官たちと遭遇した。
――天の使いだ!
カレンはすぐにそう思い、そして自分の住む修道院へ取って返した。そしてシスター・クラレンス(Chizuru(fa1737))を呼び、自衛官たちに引き合わせたのである。
「おお‥‥」
シスター・クラレンスは、自衛官達を見て声を無くした。馬の無い鉄の馬車が黙示録の神の軍団の姿に見えたからだ。
「ここは‥‥フランスなのか‥‥」
隊員の中で一番若いミツルギ(御剣真一(fa2232))が、食事を受け取りながら言う。カレンを含む教会の孤児たちは、装甲車や自衛官のヘルメットなどが珍しくてしょうがないようだった。
時代と状況についての情報を集める自衛官たち。そしてその中で、ミツルギはジャンヌに出会う。死んだ妹に似ている彼女にミツルギは共感し、傾倒してゆくのだった。
「『何か』が俺たちをこの時代に呼んだんだ。それがたまたまジャンヌの手助けだったのかもしれない」
「でも、歴史に介入するのは危険よ! あなた自分の言っていること分かっているの!?」
ミツルギの言葉に、声を荒げて返す女性自衛官ヒロカ・クドウ(ヒロカ(fa2440))。ひそかにミツルギに心を寄せる彼女は、やがて苛立ちを隠せなくなってゆく。
●暗闘
「オルガ、あなた正気?」
女騎士ブラーネ(羽曳野ハツ子(fa1032))は、同じ騎士のオルガ(綾枷紗夜(fa2379))に向かって、嫌悪感を隠さずに言った。
「そうよブラーネ、私は正気。あのジャンヌと神の戦士たちの戦いを、私は間近で見たわ。あれは神の力なんかじゃない。悪魔の力よ! ジャンヌは悪魔にたぶらかされたのよ!」
ジャンヌたちの戦いは、まさに奇跡的な勝利の連続だった。むろん、自衛隊の存在あっての事である。だがそれは、奇跡であると同時に悪魔的でもあった。人は未知なる物を恐れる。そしてしばしば、それは悪魔の所業とされてきた。
「教会のシスター・クラレンスも認めているわ。あの者たちは悪魔の手先だって。早晩、彼らは捕まって火あぶりにされるわ」
「そんなことはさせない」
猫のように目を細めて、ブラーネが言った。殺気を放った、鋭い視線だった。
その日、オルガは死体で発見されることになる。そしてそれが、皮肉にも事態を悪い方向へと転がしてゆくのだった。
●ジャンヌ救出作戦
――歴史を改変する。
ジャンヌに妹の面影を重ねていたミツルギに引きずられるように、戦隊は未知の領域へまい進していた。
ジャンヌは、異端審問にかけられて拘留されていた。少なくない日々を共にすごしてきたミツルギらにとって彼女は守るべき存在であり、そして肉親にも近い感情を持っていた。
しかしヒロカの離反、そしてカタオカの戦死。ジャンヌに付き従ってきたブラーネ、サレナの死。そして異端視された自衛官たちは、この世界に頼るものも無い状態で、終焉の時を迎えようとしていた。
燃料の無くなった装甲車を湖に沈め、残り少ない弾薬を分け合い、剣を手に取ってジャンヌの元へ向かう。疲弊しきった彼らに当初の面影は無く、彼らの戦いは絶望的であった。
死力を尽くしたジャンヌ救出作戦は決行された。一人、また一人と倒れてゆく戦隊の同僚たち。ある者は自爆し、ある者は仲間の盾となって死んでゆく。
だが、ミツルギはジャンヌの元にたどりついた。そして彼女を救出し、逃走する。
その後、ジャンヌが火刑に処せられたという話が伝わった。ヒロカが身代わりに、殉死したのであった。
●そして――現代
ミツルギとジャンヌは、日本に居た。あの後、追い詰められ崖下へと転落したはずの彼らは、現代に戻って来たのだ。
ただ一人の生存者――その謎は、いまだに解明されていない。
【おわり】