Guerrilla St.St.05Aアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/07〜10/11

●本文

 ショーレスリング番組『Guerrilla Stunt Studio(ゲリラ・スタント・スタジオ)』は、好調を維持していた。
 この興業は『ショーレスリング』である。ガチンコでやり合うのではない。『魅せる試合』を行うのだ。殺人技や流血は厳禁。セメントマッチ(真剣勝負)はありだが、あくまでショーであることを忘れてはいけない。
 重要なのは演技とか演出とかである。

「我らがG.S.S.はかなりの好調を維持し、現在視聴率でも充分な成果を挙げています」
 高田馬場修平番組Pが、企画会議で演説を打っている。経験を積みそれなりに貫禄もついて、もはや新人Pとは言えないだろう。給料も権限も増し、体重もちょっとついたようだ。
「しかし、この番組の敵は視聴率ではありません。『マンネリ』です。ドラマ、いざこざ、怨恨、様々な要因が折り重なり、一つの物語を作ってゆく。しかし『マンネリ』になってはいけません。初めて見る人が楽しめ、そして人づてに楽しさが伝わり口コミで広がってゆく。将来ゴールデンに進出するならば、格闘技としての完成度よりも『番組としての完成度』が要求されるのは否めません。つまり、『面白い番組』を作る。それが前提条件であり、そして最終目標です」
 高田馬場Pが言う。そこで、副Pに付けられた男が企画書をつまんで口上を垂れた。
「前回『DPW』の登場によって、番組は転機を迎えました。今後しばらくは、ベビーフェイスの『GSS』軍とヒールの『DPW』の抗争という方向性に進めて行きます。ただし、それは後半戦のみ。前半戦は『個人』と『ネタ』と『企画』重視で行い、今後『GSSvsDPW』という構造が薄れてきたときに『拾える』ネタを確保する方向で進みます」
 つまり、番組そのものは暗中模索で行くというのである。さすが深夜枠だけあって、結構いい加減だ。
 高田馬場Pが再度口を開いた。
「とりあえず、種まきと収穫を同時に行う方向で行きます。前半は企画物、後半はGSSvsDPW。しばらくはこの構造で行くと考えてください」

    *

 本募集は『格闘家』の募集である。戦闘能力よりも演技力を重視している。むしろそっちが本分と言って良い。
 やる気のある者の参加を待っている。

●今回の参加者

 fa0360 五条和尚(34歳・♂・亀)
 fa0374 (19歳・♂・熊)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa3244 難波・虎キチ(24歳・♂・虎)
 fa3790 GIGA(21歳・♂・竜)
 fa4319 キバ(12歳・♂・犬)
 fa4555 シトリー・幽華(29歳・♀・豹)
 fa4613 レディ・ゴースト(22歳・♀・蛇)

●リプレイ本文

Guerrilla St.St.05A

●いつもとちょっと違います
「うわぁ‥‥まぢですか」
 『Guerrilla Stunt Studio』プロデューサー高田馬場修平は、ひさびさに困っていた。それというのも、GSS第5回のAパート出場者が、2名も欠場したのである。これは出場者側も想定外で、今回8人で組むはずだったストーリー構成が、最初からガタガタになってしまったのだ。
 中には相手との絡みを中心に、というかそれしか想定していないブック(脚本)しか用意していなかった者もおり、まさにドタキャンクラッシュという状況であった。
「よし、じゃあひさびさに芸人を使おう」
 と、言ったのはやはり高田馬場Pであった。彼はGSSの前身番組である『STREET FIGHTERS』という超俗悪深夜番組で同様のアクシデントに見舞われており、その時もヒマな芸人を見つけて『なんとか』したのであった。
 芸人といっても、ショーを『なんとか』出来る人物でないと多少困る。それにブックを製作する都合上、演技力も必要になってくる。この辺は『芸能』でもある程度代用可能だが、最終条件が一番深刻だった。男女比率である。
 今回無事Aパートに出場が間に合ったのは、以下の6名。

【男性陣】
 GIGA(fa3790)【DPW】
 キバ(fa4319)【GSS】
 五条和尚(fa0360)【GSS】

【女性陣】
 泉彩佳(fa1890)【GSS】
 シトリー・幽華(fa4555)【DPW】
 レディ・ゴースト(fa4613)【DPW】

 つまり普通に1on1で組んだ場合、男女混合の変則マッチが発生するのである。しかも今回はヒールサイドの女性が多く、ベビーフェイス唯一の女性である泉彩佳はあまりに見かけが貧弱(申し訳ない)であった。ヒール主体の定番ブックを作ると、虐待ショーになりかねない。
 ゆえに今回引っ張ってこられたのは、ケイティ(NPC)という名の女性芸人であった。黒人少女の、日本ではいわゆるガイタレというやつである。これがなかなかはしっこく、リハーサルでは俊敏な身のこなしを見せた。獣人としては猫科らしい。
「よし、これでいこう」
 ブックを修正(というかほとんど書き起こし)し、高田馬場Pは番組に挑んだ。

●『Guerrilla Stunt Studio』第5回開幕
「みなさん、こんばんはー!!」
『こんばんはー!!』
 泉彩佳の挨拶に、会場が応える。アイドルっぽい風貌に衣装。一見すると格闘家には見えないが、かなりの場数を踏んだ女性レスラーである。あの『STREET FIGHTERS』にも出場した経験がある。
 今日の彩佳の衣装は、お姫様をイメージしたドレスであった。ツインテールに結った髪が、ゆらゆらと揺れる。
 今回は司会者のコメントもそこそこに、彼女が現在の『GSS事情』の説明を行っていた。GSS立ち上げからヒールの台頭に、DPWの結成とその総統バルダーの脅威。そして現在に至るまでの諸々の状況など。
 基本的にこういう説明の類は、『前説』と呼ばれるADや新人芸人が行うものだが、今回のブックでは、彩佳がこの説明を行っている最中に『事件』が起こることになっていた。
 わっ。
 花道の方で、なにやら騒ぎが起こった。紙吹雪と蜘蛛の糸のような細い紙テープが舞い、毒々しい黒と黄の縞模様のタイツ姿をしたシトリー・幽華が入場してくる。
「はじめまして人間の姫君。噂に違わぬ美しさだな。新たな魔族の女王、いや私の『身体』となって頂きたい」
 ファンタジーもののような物語が、いきなり展開されてゆく。
「魔女なんかに私の身体なんか渡さない!」
 カーン!
 彩佳の反抗の声と共に、ゴングが鳴った。
 試合は前半戦、彩佳の優勢で進められた。飛び技や打撃系で幽華を突き放し、自分の間合いを保って試合を進める。まあ、ドレス姿(一応すそはミニ程度に切られているが)でよく動くものである。
 が、リングでは打撃のみで戦うことはほぼ不可能である。6メートル四方のリングに逃げ場所は無い。詰められれば組み合いになるしかなく、そして組み合いは『毒蜘蛛魔女』幽華の独壇場であった。関節技をガチガチと極めてゆき、最後はロープに磔にして彩佳を締め落とした。
「ふっふっふっふ‥‥美味そうな身体だ、取り返したくば我が子たちと戦ってみよ‥‥」
 リングが暗転した。

●勇者見習い登場
 リングに再び明かりが灯ったとき、彩佳は蜘蛛の糸のようなものに絡み取られて磔にされていた。その下にはいつの間にか、棺桶が置かれていた。
「なんやあれは?」
 そこに、軽戦士といった風体のケイティが入場した。新米冒険者のような雰囲気が出ていて、なかなかのものである。
 ギイイイイイイイイイイ‥‥‥‥。
 無気味な効果音と共に、棺桶のふたが開く。中から出てきたのは、貞○、もとい、レディ・ゴーストであった。
『我が母の依り代に、近づくことかなわず。さもなくば恐怖を知ることになるであろう‥‥』
 スピーカーから、レディのものとおぼしき声が響く。それは憑きもののように無気味なうめき声の唱和を受けていて、結構嫌な雰囲気だった。棺桶から血染めの修道女が出てリングに上がると、音楽は最高潮になった。
 カーン!
 ゴングが鳴る。幽鬼を思わせる動きのレディは、生命でも吸い取ろうとでも言うようにケイティに近づいてゆく。ケィティは軽敏な動きでそれをかわすが、元がレスラーではないので攻撃はへただ。回し蹴りとソバットの出来損ないのような蹴りや、ロープに飛んでみたものの何の技も当てられないという微妙な展開である。
 ただ、状況はレディが作ってくれた。うまい具合にケイティの技に合わせてくれて、突き飛ばされたり蹴られたり。まあ、実のところやられているときに「うあああ」「おおおお」「かゆい‥‥うま‥‥」とか幽鬼のような声を上げるチャンスが欲しかったので、半分以上自分のためである。
 最終的には、レディのからみつくような寝技の応酬でケイティからタップを取り勝利を決めた。
『我が眠りを妨げる者に災いあれ‥‥』

●ファンタジー最強の敵
 最後のカードは、派手な登場で彩られた。『着ぐるみレスラー』を標榜するGIGAである。彼は今回、ファンタジー界最強の幻獣ドラゴンという設定で、彩佳の救出を阻む最後の障害となったのである。
 対するは『勇者タッグ』と名付けられた二人のレスラー、キバと五条和尚のコンビであった。ちなみに今回、ブック上では一番割を食った二人であったが、役所は一番美味しいところを振られた。
 まあ、「思うところはあると思うけど、今回はアクシデントがすごいんだ。申し訳ない」と人の良さそうな高田馬場Pに頼まれれば、嫌とはいいにくい。
 それはともかく、奇声をあげるGIGAに対し気勢をあげる『勇者タッグ』チームという、1on2変則マッチで試合は始まった。
 文字通りの着ぐるみ(特撮もののアレに近い)を着込んで戦うGIGAへ最初に突っかけたのは、小兵のキバである。軽量級レスラーの妙手である速度を活かして、GIGAを一方的に翻弄する。キックに始まりありとあらゆる打撃系の技をたたき込むが、着ぐるみ、もといドラゴンにはなかなか効いているようには見えない。そしてGIGAの尻尾攻撃で派手に吹き飛ばされると、和尚にタッチした。
 和尚はどちらかというと、オーソドックススタイルのレスラーである。実のところGIGAのようなイロモノは結構苦手なのだが、四の五の言ってもしょうがないのでとにかく組みに入る。
 ウレタンで衝撃を吸収してしまう着ぐるみも、関節技には関係ない。むしろ可動範囲が狭まり痛さ倍増だったりする(指の間に鉛筆を挟んで握りこんだのと同じ)。和尚の極め技はよく効き、GIGAに怪獣の声以外の悲鳴を上げさせるほどだった(だって痛いんだもの)。
 さらに追い打ちとばかりに、キバが変則ブローでウレタンの薄い腹部などを殴る。先ほどは防備に役立った着ぐるみも、今は文字通りお荷物である。
 前半戦のGIGAの猛攻が嘘のように、後半は勇者チームの反撃が際だった。最終的には、GIGAは和尚とキバのスクラップバスターでとどめを刺された。

●姫救出
 勇者タッグチームによって、彩佳は救出された。勇者タッグチームにはお姫様の彩佳から口づけ(ただし頬)が与えられ、いつもとはやや彩りの違うリングに観客は沸いた。
 終わってみれば、結構イイ興業になった。

【おわり】