Guerrilla St．St．06Aアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 三ノ字俊介 |
| 芸能 | 2Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 3.6万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 11/09〜11/13 |
●本文
ショーレスリング番組『Guerrilla Stunt Studio（ゲリラ・スタント・スタジオ）』は、好調を維持していた。この興業は『ショーレスリング』である。ガチンコでやり合うのではない。『魅せる試合』を行うのだ。殺人技や流血は厳禁。セメントマッチ（真剣勝負）はありだが、あくまでショーであることを忘れてはいけない。
重要なのは演技とか演出とかである。
「我らがＧ．Ｓ．Ｓ．はかなりの好調を維持し、現在視聴率でも充分な成果を挙げています」
高田馬場修平番組Ｐが、企画会議で演説を打っている。経験を積みそれなりに貫禄もついて、もはや新人Ｐとは言えないだろう。給料も権限も増し、体重もちょっとついたようだ。
「しかし、この番組の敵は視聴率ではありません。『マンネリ』です。ドラマ、いざこざ、怨恨、様々な要因が折り重なり、一つの物語を作ってゆく。しかし『マンネリ』になってはいけません。初めて見る人が楽しめ、そして人づてに楽しさが伝わり口コミで広がってゆく。将来ゴールデンに進出するならば、格闘技としての完成度よりも『番組としての完成度』が要求されるのは否めません。つまり、『面白い番組』を作る。それが前提条件であり、そして最終目標です」
高田馬場Ｐが言う。そこで、副Ｐに付けられた男が企画書をつまんで口上を垂れた。
「前回『ＤＰＷ』の登場によって、番組は転機を迎えました。今後しばらくは、ベビーフェイスの『ＧＳＳ』軍とヒールの『ＤＰＷ』の抗争という方向性に進めて行きます。ただし、それは後半戦のみ。前半戦は『個人』と『ネタ』と『企画』重視で行い、今後『ＧＳＳvsＤＰＷ』という構造が薄れてきたときに『拾える』ネタを確保する方向で進みます」
つまり、番組そのものは暗中模索で行くというのである。さすが深夜枠だけあって、結構いい加減だ。
高田馬場Ｐが再度口を開いた。
「とりあえず、種まきと収穫を同時に行う方向で行きます。前半は企画物、後半はＧＳＳvsＤＰＷ。しばらくはこの構造で行くと考えてください」
＊
本募集は『格闘家』の募集である。戦闘能力よりも演技力を重視している。むしろそっちが本分と言って良い。
やる気のある者の参加を待っている。
●リプレイ本文
Guerrilla St．St．06A●ハロウィンマッチ
『Guerrilla Stunt Studio』は、はっきり言ってイロモノ番組である。
ぶっちゃけてしまって申し訳ないが、シリアスでリアルな格闘番組ではなく、エンターテインメント路線を追求している番組だ。時間枠がゴールデンに近いのも、その辺を見込んでのことである。
ゆえに不評もそこそこある。リアルバウト嗜好の『真摯な格闘技フアン』あたりからは、「格闘技を馬鹿にするな！」とお叱りの声をいただくこともしばしば。何せブック（脚本）の存在を公認していないだけで、あきらかに『（ブックの）存在する』興業をしているからだ。
ただこの『ブック論争』については、おおむね決着が着いている。アメリカ最大の某プロレス団体はブックの存在を公認したし（筋書きの決まった『ショーをする』ショー団体のほうが税金が安いからだ）、日本でも暴露本や格闘家のコメント記事でブックの存在が半ば公然と語られている。日本に来て地元に帰ったレスラーには、「日本のブックは決め技以外自由だから楽だ」とコメントされ、日本のブックがわりと自由で仕事がし易いと好評だ。最近では、ボクシングにもブックが存在することが暴露された。ネットを検索してもらうと、最近日本で行われた某タイトルマッチに関するブックの話が溢れかえっている。
別に、筆者は格闘技を馬鹿にしているわけではない。むしろ好きだ。肉体を鍛え技を競い、そして『雌雄を決する』か『客を魅せる』かの違いだと考えている。『魅せる』プロレス興業に地元意識が根付くのも、観客は試合の中に『ヒーロー』を見出すからであろう。
もっと単純に、日本人的『勧善懲悪』というイデアとかイデーというモノに触れると言い換えてもいい。そもそも『勧善懲悪』という言葉の存在が、日本人のメンタリティーの象徴とも言えるだろう。
「前置きが長くなりましたが、今回の前半戦はレスラー諸賢のブックを全面採用します」
番組プロデューサー高田馬場修平が、清書したブックを各員に渡して言った。
「ハロウィンにはちょっとナニでアレかもしれませんが、ショーレスリングとしては面白いでしょう。ただし、鎖付き首輪はボツです。人間をペット扱いするような描写は、『青少年の健全なる育成を気にする人々』から総スカンを食らいます。あとはおおむね通しました」
筆者にしてみれば『青少年の健全なる育成を気にする人々』の妄言などすっぱり遮断したいのだが、エンタメ路線を行く以上避けては通れない。そもそもテレビ番組でどうにかなるような、ダメな子供を育てるような親はどうなのだと問いかけたいが、誰しも我が身の不貞は言われたくないものである。
「では、本番ではよろしくお願いします」
高田馬場Ｐが言った。
●Ｇ．Ｓ．Ｓ．φ６
さて、第６回ＧＳＳのオーダーは次の通りである。
・第１試合（シングルマッチ）
大神真夜（fa4038）
ｖｓ
草壁蛍（fa3072）
・第２試合（シングルマッチ）
ヴァイ（白虎（fa0756））
ｖｓ
白虎（竜華（fa1294））
・第３試合（タッグマッチ）
富嶽（青雷（fa1889））＆ドワーフ太田（fa4878）
ｖｓ
ヘビーカーペンター（かいる（fa0126））＆ＧＩＧＡ（fa3790）
以上３試合だ。ちなみに第２試合はネームベットマッチになっているため、白虎の表記は竜華のものとなる。注意されたい。
●第１試合 大神真夜ｖｓ草壁蛍
ＶＴＲは中盤から始まる。
『ハロウィンマッチ』と興業で銘を打っているので、真夜はＣＥＴで『発生』した超アングラキャラクター『ス○ー』のような衣装。対する蛍はカトリックの尼僧服という、ある意味でアレな対戦である。
筆者的には、もう目的の８割は果たした感じだ。
○プー対シスターという異色対決は、カートゥーンレスリングの様相を見せていた。双方から『ツッコミ』と称した攻撃が入るが、互いにボケのチャンスをねらっているので当たらない当たらない。技だけはムーンサルトプレスやルチャリブレ、トペ、トペスイシーダと派手なものが飛び交うので客は沸くが、その後に自爆を繰り返し「なんでやねん！」という言葉のほうが派手に飛び交う。別に飛び技だけではなく、３０秒も空中に溜めたブレーンバスターを蛍が自爆したり、それなりに魅せる要素も十分持っていた。
というか、まじめにやったら『試合』になるのでは？ という内容である。見た目に誤魔化されがちだが、実はカートゥーンのほうが遙かに難しいのだ。客の空気を読まなければならないし、しらけさせてもいけない。飽きさせず、しかし緊張させずに『エンタメ』しなければならないのだ。筆者が敬愛してやまない故ジャイアント馬場選手も、一線を退いた間は前座でカートゥーンをやっていた。プロレスフアンの間では有名な話だが、『あの』ジャイアント馬場氏がコミックショーのようなレスリングをしていたのである。それが意味するところを考えていただくと、彼女たちの『仕事』がいかに重要でクオリティを求められるか、ご理解いただけるだろう。
最終的に試合は、スプ○のフォール勝ちという形で決着がついた。客席はしっかり暖まり、かなりイイ感じである。
●第２試合 ヴァイｖｓ白虎
「此（こ）の国に『白虎』を名乗る奴がいると聞いた。銘を掛け勝負よ！」
達者な日本語でそう言ったのは、白虎（バイフー）を名乗る中華風衣装の女性である。アジアンビューティーのアジア系レスラーというふれこみだ。
対するヴァイは、白いリングスーツに虎柄をプリントしたものだ。ちなみに入場曲はワーグナーの『ワルキューレの騎行』である。
「その勝負受けました！ 負けたほうは今後『子猫（キティ）』を名乗ること！ それでいいですね！！」
カーン！
双方異論無いようで、試合がドラと共にどかんと始まった。
序盤戦、力量で劣ると見たヴァイが打撃戦を仕掛けた。速度と勢いで白虎を圧倒せしめんとするが、これがなかなかうまくいかない。受けに回られるとことごとく外される。
そして「打撃戦は私の十八番よ☆」とばかりに、白虎が反撃に転じた。中国拳法の動きでばしばしと打撃を決める。『見せ技』に徹しているのでダメージは少ないが、鬱陶しいことこの上ない。
手数で勝てないと悟ったヴァイは、組み合いを挑む。フルネルソンからゴリースペシャル（マイナーな技でスイマセン‥‥）をかけてダメージを蓄積し、さらにそこから投げ技に転じた。
が、それを好機をばかりに白虎が切り返す。足払いからヴァイの姿勢を崩し、今度は脚技を連続で披露した。カケ蹴りや返し蹴り、ヴァイの腕をつかんだままの回し蹴りなど、カンフー映画でおなじみの蹴り技が次々と決まる。
最後はプロレスらしく、ダウンを取って押さえ込みフォールした。カウント３が叩かれ、ヴァイは『子猫』になってしまった。
まあ、リベンジを期待しよう。
●第３試合 富嶽＆ドワーフ太田ｖｓヘビーカーペンター＆ＧＩＧＡ
さて、前半最後の試合はかなりのイロモノ対戦となった。『身長差３０センチマッチ』とでも言おうか。それとも『ウエイトダブルスコアマッチ』と言おうか。
つまりヘビーカーペンター＆ＧＩＧＡの『巨大生物災害コンビ』ｖｓ富嶽＆太田『普通の人コンビ』の試合である。
「さあさあよってらっしゃいみてらっしゃい！ この怪獣に挑戦する猛者はいないかい？ こいつは『プロレス怪獣』だ！」
ヘビーカーペンターが、怪獣の着ぐるみを着たＧＩＧＡを引き連れて口上を垂れる。
「さあ、こいつに挑戦する奴はいないか？ 今なら激安３割引きだ！」
――おいおい。
とＧＩＧＡがジェスチャーで抗議する。
「俺たちが挑戦するぜ！」
某アニメのＯＰ曲をバックに、忍者装束の富嶽と太田がリングに飛び込んできた。ポーズ（ファイティングスタイル）を取り場外のヘビーカーペンターとＧＩＧＡを威嚇する。
「なんだよ、やけに小さい連中だな」
――はっはっは。
ヘビーカーペンターとＧＩＧＡが笑う仕草をする。
「何を〜〜〜〜〜！ レスリングはサイズじゃないことを見せてやるわ！」
太田が吼えた。
カーン！
ゴングが鳴る。とりあえずヘビーカーペンターとＧＩＧＡのコミカルな寸劇があったのだが、その後の『着ぐるみを着たＧＩＧＡが一生懸命リングに上がる様子』の方が客にウケていたことを付記しておこう。
最初は富嶽＆ドワーフ太田ｖｓＧＩＧＡの、２ｖｓ１の変則マッチだった。が、試合中前半でＧＩＧＡがどかどかとツープラトン技を食らいあっという間にグロッキーになる。
「おいおい、このヘタレ怪獣！ 勢いがいいのは威勢だけか！？」
その態に、ヘビーカーペンターが悪態をついた。
――ならお前がやってみろ。
と、ＧＩＧＡがジェスチャーをする。
「どーれ、いくぞ！」
リングに上がったヘビーカーペンターが、いきなり巨体をドロップした。『スレッジハンマー』と言われるドロップキックだ。ちなみに食らったのは太田である。
試合はそのまま、タッグマッチに移行した。単発でどっかんどっかん景気よく打撃技を放つ怪獣コンビだが、コンビネーションがまったくなっていなくてしまいには仲間割れを始めた。
「いまじゃ！」
そこまでさんざんな目に遭っていた太田が、ここぞとばかりに富嶽をけしかける。富嶽とコンビネーションのドロップキックで体重差を補い、ツープラトンブレーンバスターでヘビーカーペンターを沈めた。さらに返す刀でダブルローリングソバットをＧＩＧＡに放ち、場外にたたき落とす。
結局ヘビーカーペンターはノックアウト、ＧＩＧＡは自力でリングに戻れずリングアウト負けという、さんざんな結果になった。
客は沸いたけどね。
【おわり】
