聖遺物戦争 #3中東・アフリカ
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
6Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
79.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/01〜12/07
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●本文
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【モスク】
イスラム教徒の礼拝場所。アラビア語ではマスジド。さまざまな大きさと形がある。イスラム教がアラビアで成立した7世紀から16世紀までがモスク建設の全盛期である。
622年にムハンマドがメディナに建てた住居の中庭が、最初のモスクとされている。キブラ(聖都メッカの方向)の壁には屋根のある場所があり、そこで祈りが朗唱された。のこり三方の壁にはアーケードがつけられていた。この形式がモスクの原型となり、中庭、キブラをしめす壁、屋根つきの礼拝用広間の三つが必ず作られた。キブラをしめす壁の中央にはミフラーブとよばれる礼拝用の壁龕(へきがん)があり、その横には金曜日に説教がおこなわれるミンバル(説教壇)がある。
宗教が大きな力を持っているイスラム社会では、モスクは宗教だけでなく多くの公的な役割をはたす場所となり、裁判所、学校、集会場として機能し、パレードなどにもつかわれた。図書館、病院、宝庫などが付属する場合もある。
【アラビア半島】
アジアの南西部にある、ほとんどを砂漠が占める巨大な半島。北はヨルダンとイラク、東はペルシャ湾とオマーン湾、南はアラビア海とアデン湾、西は紅海とその支湾アカバ湾に接している。サウジアラビアがおよそ四分の三を占め、ほかにイエメン、オマーン、アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、および島国のバーレーンといった国がある。面積は約300万平方キロメートル。人口は約3200万人。世界でもっとも人口密度の低い地域である。
イスラム教とカリフの統治
【アラビア半島とイスラム教】
イスラム教の出現は、アラビア半島の歴史上とくに重要な出来事だった。イスラムの預言者ムハンマドは570年ごろメッカに生まれ、632年にメディナで没した。メッカはこの新たな宗教の精神的な中心地となった。632〜661年には、メディナがムハンマドの歴代の後継者カリフの政治的中心地となった。アラブの軍隊は、シリア、エジプト、ササン朝ペルシャを次々に征服した。
エジプトが642年に陥落したあと、イスラム教徒による征服のほこ先は西方へとむかい、北アフリカ、さらにイベリア半島にまで勢力がおよんだ。661年に4代目カリフのアリーからムアーウィヤが権力をうばってシリアのダマスカスでウマイヤ朝がひらかれると、アラビア半島の重要性は低下した。751年、このウマイヤ朝をたおしてアッバース朝がバグダッドに成立すると、さらに衰退の道をたどった。
8〜10世紀初めには、アラビア半島はバグダッドのアッバース朝カリフが支配する1地方にすぎなかった。その後、東アラビアの支配者は新興の一派であるカルマト派にかわり、10世紀末までつづいた。10世紀末ごろから、カルマト派はベドウィン各部族の前にその力を失い、アラビア半島は再び分裂して、多数の群小勢力が割拠した。しかし、アラビア半島のメッカとメディナの2聖都はバグダッドのアッバース朝カリフにとっても精神的な拠り所でありつづけた。
【キリスト教の象徴、聖剣デュランダル】
フランク騎士ローランが振るったデュランダルは、黄金の柄を持つ両刃の片手剣であったようだ。決して折れることはなく、大理石をも断ち切ったことから、かなりの名剣であることは推測できる。
出典にはいくつもの説がある。シャルルマーニュがフランク王に即位したばかりの頃、ローランの前に天使が現れて「王にこの剣を授けよ」と剣を渡すと消えてしまった。ローランはこの事実を伝えるが、シャルルマーニュは「汝はこの剣を使って我を助けるがよい」と言ってローランに与えたとする説。デュランダルは妖精が鍛えた剣で、ローランがユトムンダスという巨人と対決したときに入手してシャルルマーニュに献上すると、その功績をたたえた王が、ローランに授けるという説。ほかにも、ギリシャの英雄ヘクトルの使っていた剣で、後世にアルモントという騎士とローランが対決して手に入れたとする説がある。
このように、剣の入手経緯だけでも複数の説があることを考えると、ローランの歌は、アーサー王伝説のように、複数の物語を組み合わせて創作されたのかもしれない。
また信仰の歴史を考えると、キリスト教の流布に伴って、人々の信仰の対象は民間伝承などからキリスト教に移ったわけだが、実はデュランダルもそうした影響を受けており、最初は妖精が鍛えた剣とされていたが、のちのち天使の贈り物へと変化したのかもしれない。
ちなみに天使説の場合は、デュランダルの黄金の柄の中には、聖バジルの血、聖ピエールの歯のほか、ローランの守護聖人である聖デュニの毛髪、聖母マリアの衣服の一部といった聖遺物が納められているとのこと。こうしたことから考えると、デュランダルはキリスト教を象徴する剣といえるだろう。
【サウジアラビアの代表的モスク】
・マスジド・ハラーム
サウジアラビアのマッカにあるイスラム教の礼拝堂。地球上このモスクだけギブラ(カアバの方向)をあらわす壁のくぼみ(ミフラーブ)がない。なぜなら、このモスクは、ムスリムにとって最高の聖地であるカアバの周りを保護し、カアバに礼拝するためのモスクだからである。
・クーバ・モスク
イスラム教の第2の聖地。預言者のモスクがあるサウジアラビアのマディーナにあるイスラムにおいて初めてつくられたイスラム教の礼拝堂。このモスクは、聖遷の時つくられた。ここのモスクに置かれた最初の基礎の石は預言者ムハンマド自らが置いたとされている。クルアーンではアルー・タクワと呼ばれている。ハッジ(巡礼)の際、マディーナを訪れたムスリムは預言者のモスクを訪れた後、多くはここを次に訪れる。
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舞台はサウジアラビアに移った。
イスラエルに負けず劣らず、サウジの情勢も非常に微妙だ。毎年1200万人を超えるメッカ巡礼者の窓口であると同時に、反イスラエル派という立場を持ち、そして9・11同時多発テロでは実行犯19人のうち15人がサウジアラビア人であったためアメリカからの非難も高い。アルカイーダなどの温床になっているという風評も立ち、まさに踏んだり蹴ったりという状況である。
そのどこかに、『聖剣デュランダル』があるという。
聖騎士ローランはフランクの寓話だ。それがいかなる経緯でこの地に流れたのかは、今となっては推し量ることも出来ない。ただひたすら、残された手がかりをたどるだけである。
今回はダークサイドを出し抜き、この聖遺物の獲得を狙う。おそらく聖釘もその先にあるはずなのだ。
●リプレイ本文
聖遺物戦争 #3
●聖剣デュランダルと角笛オリファン
陸琢磨(fa0760)とシャルト・フォルネウス(fa1050)、緑川安則(fa1206)、椚住要(fa1634)の4名は、聖剣デュランダルと対に語られる『角笛オリファン』に関する情報を探った。
同時にミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)、
越野高志(fa0356)、七枷伏姫(fa2830)、犬神一子(fa4044)はデュランダルの行方を追う。
聖剣デュランダルは、『ローランの歌』という物語に出てくる聖剣である。が、同時に現在ではキリスト教の象徴のような扱いを受けている。
というのも、それがローランの手で最後に振るわれたのはロンズヴォーの戦い――つまりフランク王国キリスト教勢力とサラセン帝国イスラム教勢力との決戦だったからだ。
そのデュランダル自体は、ローランがサラセンの王子オーモンを倒して入手したものである(フランク王に献上して下賜されたいきさつは省く)。同時にローランは名馬ヴェイヤンティフと象牙の角笛オリファンを入手した。
つまり元をたどれば、デュランダルもオリファンもサラセンの物だったのだ。
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それ以前には、トロイ戦争の英雄ヘクトルの剣だったらしい。この辺はすでにギリシャ神話の世界に突入するので、歴史的解釈は不可能に近い。
ローランの死後、剣は伯ラベルに、角笛は伯ギヌマンに手渡される描写がオックスフォード版写本にあるが、フランス語版には無い。またそれも明確に『デュランダルとオリファン』であるという描写も無く、実はこの二つの器物は『行方不明に限りなく近い』のだ。
その源流は、フランスの文字の無い地域言語『オック語(オイル語)』での伝承になるので、同音異義語などによる誤訳などもあり、解釈が非常に難しい。キリスト教圏側からの調査は、ここで情報が途切れた。
「ですが、これではっきりしました。デュランダルもオリファンも元々サラセンのもの。ならば『存在するなら』かなりの厚遇を受けているはずです」
今回新参となる高志が、そう断じた。他の者も、あまり異論は無かった。何よりサラセンの王子の元所有物である。王権と信仰に対して苛烈なまでに厳格なムスリムたちが、粗略な扱いをするはずが無い。
「トなれバ、アトはその場所でスね」
ミカエラが、黒衣の前をはだけながら言う。まあ、冬とはいえアラブは暑い。空気に至っては『熱い』。
デュランダルが失われたのは現スペインのサラゴザという場所と言われている。バルセロナのさらに西方、ピレネー山脈を西に越えた場所だ。そのような場所にまで馬と徒で攻め寄せた、サラセンの凄さが伺える。
そのサラセンの首都は、当時マディーナ(メディナ)だった。つまり今回の探索候補に挙がっている『予言者のモスク』、クーバ・モスクのある街である。開祖ムハンマドが、没したとされる地だ。
次々と組み上がる符丁。しかし一人、用心深い伏姫は疑念が拭えなかった。
――話が上手すぎるでござる。それに、『嘆きの壁』はローランの死の遙か前に存在したもの。それにデュランダルの情報があること自体変でござろう‥‥。
彼女の懸念は、後に正鵠を射ていたことが判明する。
●クーバ・モスクでの戦闘
クーバ・モスクは、10の尖塔(ミナレット)と7個のドーム、27の開閉ドームを持つ超巨大モスクである。敷地面積は1万6,500平方メートル、礼拝者の収容人数は27万人以上。モスク及びモスク周囲を合わせた礼拝収容能力は70万人、巡礼の季節には礼拝者は100万人を越える。
実に『巨大』の一言に尽きる建築物だ。
モスクでは預言者ムハンマドが最初に置いた石が拝されており、巡礼でも生涯一度は来ることが定められている場所である。
一同は一子のプロデュースでアラブ人と同じ服を着て、内部に入った。巡礼者を拒まないのがモスクというものだ。中に入るのは、わりと容易い(ただし群青青磁(fa2670)の覆面は脱がされた。仮面で入れるほど俗な場所では無かったからだ。また武装もかなり制限された。安則などは所持していた武器の99パーセントをホテルに遺棄せざるを得なかった)。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか‥‥」
タケシ本郷(fa1790)が、用心深く周囲を見回す。
「まあ‥‥居て欲しくないが、あまり遠くない場所に居るだろうな‥‥」
シャルトが、陰鬱そうに言った。もちろん、誰でもない、あの関西弁の黒衣の女である。イスラエルでガイドを事もなく一撃で殺した、おそらくダークサイド。
「まあ、やるしかないだろう」
琢磨が言う。
「俺はそのために来ている」
得物の感触を確かめながら、琢磨が言う。実はオーパーツの十字架を持ってきていたのだが、モスク内で見とがめられると言い訳できないので置いてきていた。
ミカエラや要などもそうだ。イスラム教は他宗教に対してわりと寛容だが、侮辱するような行為に対しては極めて攻撃的である。例えば、聖なるモスクに他宗教の物品を持ち込むことだ。発見されれば、最悪リンチに遭って死人が出る。ハムラビ法典では罪にならないのである。
「それにしても、すばらしい建物だ」
一子が、正直な感想を言った。流麗な線を描く構造物に、目を飽きさせない幾何学模様。イスラム建築の原点であり回帰点であるこの建物は、世界遺産にもなっている。
――そこで、やり合うのか?
これは、一同の正直な気持ちである。いくら獣人でも、いくらWEAでも、世界遺産やイスラム教徒全てを敵に回すわけにはいかない。それはつまり、WEAそのものの存亡に関わる。
自分たちが、他の獣人の運命まで握っている。その重圧は、美しいモスクを見てさらに重くなった。
――当然だが、『ヤツ』はそんな事を斟酌しない。
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ダークサイドにとって世界は遊び場のようなものであり、引っかき回したほうが面白いのである。究極のエゴイスト、それが彼等の本質に近いであろう。
一同は伏姫の手配した現地の案内人(獣人、イスラム教徒)とモスク内で合流した。案内人の話によるとモスクには何ヶ所か入場禁止の場所があり、その中に不自然な地下区画の噂があるのだ。
意外かもしれないが、このモスクには全館空調がありエスカレーターも24個もある。地下は2層式の駐車場になっていて、4000台の車が駐車出来る。
駐車場には移動式と固定式の監視カメラがあり、それらは中央監視室で制御されている。なかなかにハイテクだ。
というのも、これはサウジアラビアのサウード国王がモスク訪問者への旅の便宜を図りモスクの保全と維持管理のために財を投じたからだ。これはサウジ政体のイスラム宗教的な側面の現れと思われがちだが、実は違う。これらの事はすべて『奉仕』で行っていることであり、サウジ王家の勤めなのだ。
ゆえにどれだけ施設が豪華絢爛になろうとも、奉仕の義務は果たしたことにはならない。信仰に終わりが無いことと同じである。
話が逸れた。
一同が案内されたのは、えらく古い地下区画であった。元は偶像崇拝の神殿か何かだったのかもしれないが、イスラム教は偶像崇拝を禁止しているのですべて漆喰で塗り固められたり削られたりしている。ヘブライ系の遺跡とも思えるが、専門家に聞かないと分からないだろう。
「何かありそうだ」
安則が言う。確かに、何かありそうな気がする。ワケあり感満々である。
一同は地下区画を捜索することにした。念のためガイドを入り口に見張りとして配し、内部を入念に探索する。某旧支配者がどうのこうのという物語だとここで恐ろしい何かが出るパターンだが、出てきたのは不自然に塗り固められた壁の一部であった。そこだけ他より新しい。
「崩してみるか‥‥」
シャルトがナイフを突き立てた。壁材はボロボロと崩れる。他の者も手伝って、やがて扉大の穴を30センチほども掘ったところだろうか。
カツン!
「!」
何か硬い感触が、琢磨のナイフに当たった。出てきたのは、黄金の鞘に入った西洋剣だった。粉を噴いたように埃を被っており、かなり長い期間ここに放置されていたようである。
それと、一巻きの書簡。
「見つけたのですね!」
「「「え?」」」
そこに、聞いたことのある声がかけられた。一同が一斉に振り向くと、そこには尼僧服姿の黒人の少女、シスター・マリア・クラレンスが居た。
「あナた、ナんでこンなところニ‥‥」
「すばらしいですわ! 異教徒を退けた英雄の剣を見つけるなんて! 法王さまが聞いたらなんとお喜びでしょう!」
ミカエラの言葉を聞いていないかのように、興奮した様子でマリアは言葉を続けた。
「‥‥ガイドはどうした」
冷徹な――戦意を露わにした声で、琢磨が言った。『警戒』などという生ぬるいものではない。明らかに『敵』を見る目だった。
「殺しましたわ。異教徒ですもの」
マリアが、言った。天使のほほえみを浮かべて。
空気が、びんと張り詰めた。肌をそぎ落とすような殺気が交錯し、きっかけ一つで何かが動きそうだった。
「くっ!」
その時の伏姫の行動を、誰も責めることは出来ない。獣化も武器も制限されている場所でもっとも頼れそうな武器は、一か八かという条件なら彼女が手にしていた聖剣デュランダルそのものなのだ。伏姫は音叩くデュランダルの白銀の刀身を抜き放ち――。
カン!
一瞬で伸びてきた白い槍に手元をはじかれ、デュランダルを落としてしまった。その槍は軟体動物のようにデュランダルに巻き付き、それをマリアの元へ引き寄せる。
「なっ――」
伏姫が、驚愕に目を見開く。
何であろうか、扁平で細長く柔軟な物体が、マリアの僧衣から突き出てデュランダルを保持していた。長さは、5メートルは最低でもある。生物学的には寄生虫の一種『広節裂頭条虫』というサナダムシの一種に似ているが、まさかそんな生やさしいものではないだろう。
「散れ!」
安則が、瞬間的に判断を下した。ギリギリの折衝で持ち込んだUZIを衣服の下から出し、柱の陰に隠れる。
他の者も同様に動いた。が、その時。
「ぐはっ!」
安則がうめき声を上げた。口から血塊を吐き出している。
柱を背にした安則の腹部から、血にぬれた剣の切っ先が突き出ていた。その切っ先はどうみても、石柱を貫通して安則の身体を貫いているようにしか見えなかった。
――デュランダルを敵に渡すまいとしたローランは大理石にそれを叩きつけたが、剣はその大理石を断ち切ってしまった――。
「アホやなぁー、これは『デュランダル』なんやろ? なら切れ味が並み大抵なワケないやんか?」
マリアの口から、聞いたイントネーションの関西弁が聞こえてきた。
「て‥‥てめぇ‥‥」
ずっ、とデュランダルが引き抜かれる。安則が苦鳴をあげる。
「ダークサイドか!」
要が言う。マリアは表情が無く、何か心あらずな感じで言葉だけを吐き続けていた。
「まー、俗にそう言われてるな。でもホンマはそンなダサい名前嫌なんやけどなー」
マリアの足下から、コールタールに赤い血管が浮いたような『闇』がにじみ出てきている。
「名前を聞いておこうか」
一子の問いに、マリアは表情を凍らせたまま『ネグロ』と答えた。
「ま、『コレ』はもらっておくで。あとは『コイツ』と遊んでるとエエわ」
闇が立ち上がった。それは六本足の、黒い甲殻を持つ人型ナイトウォーカーだった。
「ほななー」
マリアが身を翻した。
「待ちやがれ!!」
琢磨が追おうとしたが、黒いナイトウォーカーがそれを阻む。
「くそっ!」
目前を遮られ、琢磨が悪態をついた。
戦いが、始まった。
●痛い勝利
ナイトウォーカーは殲滅した。しかし、マリアを発見することは出来なかった。
重傷者数名。特に安則は内臓までやられていたため、獣人のタレントに頼らなければ死んでしまっていたかもしれない。
しかし、まだ聖釘への線が切れたわけではない。デュランダルは確保できなかったが、残された書簡にはヘブライ語で聖釘の隠し場所が書かれていたのである。『本命』はこちらだったのだ。
おそらく、聖釘は書簡の場所にある。そしてそこが、決戦の地になるであろう。
【つづく】