Welcome Air Fource B1南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
9.4万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
12/17〜12/21
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●本文
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【タイトル】
Welcome Air Fource
【内容】
アラビア半島周辺海域を哨戒中のアメリカ海軍第七艦隊所属のトップ・ガン、ロジャー・ロッドマン中尉の小隊に特別指令が下された。アメリカの人気俳優デニス・ステッドラの役作りに協力せよというのである。デニスは次回の映画で戦闘機パイロットの役を行うため、その取材のために中東までやってきたのだ。
お調子者のデニスに不満を覚えながらも、取材に協力するロッドマン小隊。しかし飛行中に敵と遭遇してしまい、撃墜されてしまう。からくも脱出するが、そこは中東ゲリラの本拠地。あっという間に捕虜になり、ビデオで声明を発表させられるなどのお決まりのコースになってしまった。
屈辱的な扱いを受けるロジャーだが、デニスはなぜか待遇がいい。というのも、デニスの出演した映画に中東に理解のあるものがあって、中東戦士たちもそれを観ていたからだ。
口八丁手八丁で、航空機を奪いなんとか脱出する二人。しかしそこに、捜索に飛んできたヒロイン、リリー・マルレーン撃墜の無線連絡が入る。救出に向かう二人。しかし先に二人を撃墜したミグが迫る。三人は無事に脱出することが出来るか!?
【脚本概要(全4回中の第1回)】
ロジャーとデニスの出会いから最初の出撃まで。中東情勢の説明と第七艦隊の説明など。
パリパリのエリートであるロジャーが上官から不服な命令を下され、渋々デニスに協力するまでの降り。戦争を知らず脳天気に戦争を語るデニスに呆れながら、航空ショーのようなアクロバット飛行に『同乗』させ(乗機は訓練用のF−5タイガー(複座型・武装無し))、多少の意地悪を込めて歓迎する。ヘロヘロになりながら「良い経験をした」と感動する役者バカのデニス。しかし二回目の飛行の時に敵編隊に補足され、撃墜される――。
【募集】
・製作スタッフ(AD・音声・美術・撮影・編集・etc)
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「よし! ペンタゴンから第七艦隊の取材許可が降りました!!」
ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『Welcome Air Fource』は『潜望鏡下げろ!』『PARADISE ARMY』に続き、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。
本募集では『スタッフ』の応募を待っている。美術・音声・編集、その他いろいろあるが、画面に出ない、あるいは台詞の無い人たちの仕事である。
●リプレイ本文
Welcome Air Fource B1
●軍事映画の大変なところ
軍事映画は、SF映画に並ぶ映画業界の鬼門である。
理由は簡単だ。ハリウッドのスポンサーの多くは軍事産業に関わりを持っていて、なおかつ軍事映画はたいてい軍人や軍の装備そのものに撮影を頼らなければならないからだ。NASAをまるごと作ったスタジオを組めても、さすがに空母や戦闘機までは作れない。なぜなら、戦闘機も空母も、空を飛び海を行く以上は、それはセットでもなんでもなく『本物』なのである。
うかつに作っって公海に出ようものなら国際問題になるのは必定だし、例えばニミッツ級原子力空母1隻の価格がいくらするかというと、3兆650億円以上である。さらにン十億円という戦闘機や爆撃機を入れると、その価格はほとんど麻雀の点棒のように推移する(ちなみにアメリカのGDPは推定1京2911兆1500億円ほど)。
こんなものを日本はアメリカからぽんぽん買っているのだから、その購入交渉が日米首脳による麻雀大会でも、もはや驚くに値しない(ちなみにレートは『点F−15』とかであろう)。
余談が続くが、かの戦艦大和の建造費は2712億1500万円だそうである。ただし当時の日本のGDPの1パーセントに相当するので、現在の価格に直すと5兆5000億円ほどになる。某公団が無駄遣いした金を綺麗に精算すれば4隻ぐらい建造出来そうだが、これは40兆円という無駄遣いの金額に驚愕すべきであろう。まあ、旧帝国海軍も大和、武蔵、信濃と、大和級の戦艦と空母を3隻も造ったのだから、ちゃんと倹約すれば出来ないことはないだろうが。
いずれにせよ映画で本物の原子炉を回転させるわけにもいかないので、航海する原子力潜水艦や原子力空母、飛行する戦闘機や爆撃機などの絵は、おおむね軍に頼らなければならない。そこでプロデューサーや監督は、軍部の人間に頭を下げて『お願い』するのである。つまり協力報酬として『軍賛歌』『兵役奨励』などの恣意的なメッセージを織り込むことになるわけだ。空軍映画の代表と言われる『○ップ・ガン』などは、エースパイロットは全員二枚目でほとんど白人である。
敗戦だって宣伝材料になる。例えばベトナム戦争を描いた有名な映画は多数あるが、大作になればなるほど軍や兵士は『被害者』の立場に置かれる。「悪いのは当時の無能な首脳や大統領であり、軍や軍人に罪は無い」というスタンスになるのだ。そして「我々は敗戦で教訓を得て学んだ。ゆえに二度と同じ過ちは犯さない」と結ぶわけである。
そして(訳あって朝鮮戦争をすっ飛ばすが)『現在の戦争』をリアルに描ける可能性はほとんど無い。なぜなら現在のイラク情勢を見るとおり「うまく行っていない戦争」をリアルに書くと、大統領の再選や党の支持率に響くからだ。
(華氏911みたいな)どマイナーな監督や作品ならまだしも、例えばハ○ソン・フォードが主演して約1年前に公開した『No True Glory』とイラク戦争をモチーフにした映画は、『とっても複雑で深い事情があって』日本での配給および公開が1年保留されている。戦う大統領としてジャンボ機の中ででテロリストとドンパチやるのはOKでも、現政府批判に繋がりそうな映画は、特に『日米安保条約』という『都合』のある日本政府にとっても非常に気まずいのである。
と、ここまでがっちり書くとさすがに、サングラスに黒服の厳つい人々が身体の中にGPS発信器とかをインプラントしに来そうだが、誰も突っ込まないだけで皆本当は『感じている』ことだ。「文民統制など今は無い」というのは幻想で、戦争がやりたい老害政治屋や金儲けをしたい軍需産業は『いつでもOK』と口を開けて待っているのである。
というわけでやたら前振りが長くなったが、つまり本シャシン『Welcome Air Fource』もその制約からは逃れられない。『コメディ』ということと『中東のどこかが舞台』ということで逃げているが、結局軍部がNOと言ったら公開できないのが現状だ。
「まあ、そんなことを遵守していたら、マトモなシャシンなんか撮れませんが」
とワード監督はうそぶくが、この監督もメジャーになれば目を付けられるようになるので注意が必要である。なぜなら彼は、軍人賛歌もしないし兵役奨励もしない。リアルに描かないだけで、かなり辛辣な内容の軍事映画を撮っているからだ。
「ま、それをサポートするのがわしらスタッフじゃきに」
極道の親分のような風体でそう言うのは、鬼王丸征國(fa0750)である。プロデューサーは営業が命というが、その命の営業に影響のありそうな刀傷が顔に斜めに走っている。
彼が主に担当したのは演出である。演技指導やエキストラの取り回しなど、『人をたくさん使う仕事』だ。特に今回は中東が舞台設定なので、エキストラにもイスラム教徒やヒンズー教徒がおり、メッカへの礼拝や食事に関する制約など、わりと問題が山積している。
まあ、食事に関しては現場名物ビュッフェ形式の食事で、自由に取捨選択させることにより事なきを得た。アメリカの低所得者向け大衆食堂の多くがこの方式を取っているのは、実はその辺の宗教問題があるからである。間違ってイスラム教徒に豚肉を食べさせてしまったりしたら、店ごと自爆しかねない(本当にそういう事件が過去あった)。
征國にとって意外だったのは、「心づくし」とか「心付け」という風習が無いことである。日本では当たり前の慣習だが、実はコレ、アメリカでは「(暗に)クビです」という意味なのだ。筋を通したつもりが相手の演技生命を奪いかねない事態に発展しかけたと聞いて、征國が引き戻しにかっ飛んでいったのは言うまでもない。この辺は、つくづく征國も『ニホンジン』である。
宮尾千夏(fa1861)は美術担当。今回はセット以外に面白い仕事が待っていた。
飛行機模型作りである。
最近のCG技術は進んでいて、かなりの空中戦を再現できるようになった。が、やはり要所要所で模型による撮影が必要である。そこで今回の練習機であるF−5タイガーと、敵機であるミグ21フィッシュヘッドの模型が製作されることになった。スケールはF−5が1/1を含む4種にミグが3種。あとはコックピットの1/1セットである。
1/1戦闘機の模型については、過去他の映画で何度か作られているので、ノウハウはある。例えば世界最強でありながら先月スキーで足を骨折した某州知事が主演した『トゥルーライズ』という映画では、1/1シーハリアーの模型が作られ、その上で主人公がアクションするというシーンもある。
模型の良いところは、本当にぶっ壊しても良いところだ。ゆえに千夏の作業は、コンテに沿って火薬を装填し弾痕を装飾し、撮影時に爆破して画像を作り上げることである。
これが、非常に楽しいのだ。結果がきっちり出た時は、本当に気分が良い。
あとはこれらのもので撮影したエレメントに、CGエフェクトをかけて完成させるのである。なかなか満足出来る出来だったのは幸いだ。
巻長治(fa2021)は脚本担当。ワード監督とは何度か組んだ経験があるので、間合いは分かっているつもりである。
で。
想定通りにホンを書いたら、予想通りの返答が来た。キャラクターメイキングも物語の展開もそつなくこなし――。
長治自身が、今ひとつ面白くなくなった。
そこで長治は脚本を、主路線は崩さずに大幅に加筆。視点がアメリカサイドだったものをあえて中東サイドにも向け、『双方の』イラク戦争を描く方向を監督に提案したのである。
ワード監督は、それに『乗った』。
実は監督、今回は長治のホンについて『文句はない』という言い方をしていた。長治の『引っかかったところ』はまさにそれで、そつなくこなした結果凡百な脚本を上げてしまっていたのである。
ワード監督は妥協の人ではない。が、大作映像作家というわけでもない。ただ自分の目的のために機をうかがう分別はあり、序盤から角を立てる必要も無い――という『判断』をしていたのだ。
だが脚本がわざわざ「角を立てましょう」と言ってきたものを突っ返すほど、意気地のない人物ではない。というわけで、このシャシンは序盤から、かなりのリスクを伴うものになった。
長治的には全然OKであるが。
梓羽(fa3715)はADを担当。実年齢16歳という年齢のため労働基準法の壁にぶち当たることしばしばであったが、バイト君としては良い働きをしていた。何より体力があるし若い。昼間限定であるがカメラマンや照明などもこなし、順当にADとしての任務を全うした。
守都翠(fa3964)はサウンドトラック担当。監督の許可をもらい、完全獣化で作業に挑んだ。
提供した曲は次の4曲。『hawk in flight』『frivolous man』『stunt flying』『A bolt from the blue(hawk in flightアレンジ)』で、1曲目からブラス、スイングジャズ、ロック、ファンクと多彩なカラーを見せた。
最後に提供したのは『The Air Force Song(アメリカ空軍の歌)』である。と言ってもこれは1938年からある伝統的な曲なので、主旋律をいじる必要は無い。画面用にファンクっぽくアレンジするように要請されたので、アレンジ曲を入れただけである。
さて、スタッフの奮闘のお陰で大過なく撮影は進んでいる。次は地上での話になるので、ちょっとしたセット作りが必要になるだろう。
ま、どうにかなると思うが、面白くするにはちょっとがんばりも必要であろう。
【おわり】