ナイトハンター making南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
雪端為成
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/21〜12/27
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●本文
月の光を跳ね返す摩天楼。皓々と光る満月の下、対峙する二つの影。
「しつこい“Human”だ。もう諦めたらどうだね?」
「お前たち夜の住人の居場所は‥‥もう、無いんだよ!」
黒衣の紳士。しかしその口唇から覗くのは鋭い犬歯。
血に濡れたように赤く濡れ光る唇と死人のように白い肌。爛々と輝くその瞳。
「追いかけっこは終わりだ、“Freaks”」
頭上に傲然と佇む黒衣を睨みつけていた青年は、手に持った『兵器』を掲げる。
銀の銃弾が装填された愛用の拳銃。その銃口はぴたりと黒衣へと突きつけられ‥‥
「原案がこの完成度だったらクランクインはまだ無理だなぁ‥‥」
薄っぺらい冊子をぺらぺらとめくりながら呟いているのはヨハン・トビアス。
まだ年若き映画プロデューサーである。とそこに、横から冊子をかっさらう女性の手。
「ふんふん‥‥面白そうな題材持って来たな。ヒーロー物か♪」
彼の姉、フィルムを編集するエディターのエリザである。
「んで、今回は人集めからか?」
「うん、その通りだよ、姉さん。脚本に美術、小道具に特殊効果‥‥ゼロから集めなきゃ」
「ふーん、まあヒーロー物なら大歓迎だな」
「それと今回は映画のメイキング番組も作るらしいんだ‥‥うう、募集がかけづらいよぅ」
「ま、頑張れ〜♪ あたしは寝なおすから起したら埋めるぞ」
「ハイ‥‥お休みなさいませー」
ふらふらと立ち去っていくエリザの背中を眺めながら、がっくり肩を落とすヨハンだった。
●新作映画スタッフ募集
●映画タイトル『NIGHT HUNTER』
●映画概要
・現代を舞台にしたモンスター退治。今回の相手はドラキュラ。
・アメリカの大都市を舞台にして、ハンターと吸血鬼がバトルする話。
●設定
・吸血鬼を狩る組織があり、主人公たちはそこのエージェント。
・キャラクターの細かい設定は未定
・吸血鬼はたくみに人間社会に混ざり、隠れている。
・それを見つけ出して、秘密裏に退治するのが主人公たちの役目である。
・吸血鬼は伝説そのままの能力。不老不死と怪力、血をすう事で下僕を増やす。
・弱点も同じ。太陽光、銀、にんにくに弱い。
●監督・脚本スタッフ
>キャラクターの設定とストーリーを決めてもらう。複数名いるのが望ましい。
>主要キャラクターは主人公側3名。5名敵側。
・初期アイディアのキャラクター
>銃使いの青年(主役なので隠し技的必殺技が欲しい)
>ヒロイン役 (エージェントでもそれ以外でも可。主人公と行動を共にする戦う女性)
>科学者役 (発明品を駆使する三枚目。主人公の同僚が良いと思われる)
>吸血鬼のボス (かっこいい悪役を)
>吸血鬼の腹心×2 (それぞれに個性をつけてほしい)
>その他部下×2 (未定。ストーリーによる)
※キャラクターの性格や個性、特徴やドラマなどすべての決定をしてもらいたい。
●美術担当
・主役と適役の服飾・装備等小道具と大道具の美術
・監督、脚本との協力して、装備の具体的なアイディア、製作を行う。
>例えば主人公の銃や、戦闘に使う剣。吸血鬼の服装など奇抜なアイディア求む。
●その他スタッフ
・特殊効果を初めとするスタッフも同時に募集中。
【重要】
・スタッフは全員メイキング番組の中でインタビューを受けます。
・その際、問われたいことを明記すること。
(例えば「この映画の見所は?」「どの衣装に一番力が?」など)
●最後に
・プロデューサーによるプロット案(採用する必要なし、参考までに)
>主人公は吸血鬼によって狼男にされた親友の手を移植され危機の際には右腕が獣化。吸血鬼は同僚の仇。
>女主人公は吸血鬼とのハーフで、拳法で敵をなぎ倒す/銀の剣で戦う剣士。
>吸血鬼の部下には、古代のフルプレートアーマーを装備し、銃が効かない。
>部下には狼男が居る。
>女吸血鬼がセクシー。
さて、どうする?
●リプレイ本文
「映画の舞台裏 −新作映画 NIGHT HUNTER−」
そんなタイトルが表示されるのは深夜10時の映画情報特番。
映画会社のスタジオや事務所が立ち並ぶ一角、大きなスタジオを大きく引いて映してから徐々にカメラが接近。
そしてそこに映し出されるの初々しく少々緊張気味の女性だ。
彼女は特番でのレポーター、セレン・シーモアという新人キャスターだ。
「それでは早速『NIGHT HUNTER』の製作現場を突撃取材をしてみましゅ!」
いきなり噛んでいるのはさておき、彼女は映画制作に取り掛かるスタッフたちに取材を開始するのだった。
とあるスタジオにて、セットや道具類の準備が進む中会議を重ねている一団があった。
監督や脚本家を初めとするストーリーの製作チームである。
長机には大量の書類と紙コップのコーヒー。散らばった食料や投げ捨てられたボトルの数が会議の熾烈さを語っていた。
その中央、足を卓上に上げて傲然とふんぞり返りながらストーリーボードを眺めているのは敷島オルトロス(fa0780)だ。
「フム‥‥ここのところは、もっと派手に変更するべきだな。最凶のハンターを印象付ける最初のシーンだぞ」
オルトロスが赤いペンで変更を加える。こうして皆で荒削りなアイディアの集積を削り上げていくのである。
「んー、そこのシーンに個性も印象付けるため、酒のシーンをつなげられないか? やっぱりバーボンは出しときたいし」
皮ジャンに身を包んで手元の資料に目を落とすのは相麻 了(fa0352)。
「そうだよね〜。あ、それと一つシーンで削ったから、その後に会社でのシーンを挟んでもらえる? やっぱり敵側の貫くものを示さないと、ただの悪役になっちゃうからね」
チョコを片手に桐沢カナ(fa1077)も意見を述べる。
それらを聞いてホワイトボードにシーンの流れを書き出していくのは、リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)。
「それじゃ、このシーンはこのセットで、尺は‥‥7分半ぐらいでいけるかな?」
シーンの順番を入れ替えて、てきぱきと共同作業が進む。
そんな中をひょっこりと現れたのが、先ほどのセレンであった。
「そ、それではここで、監督さんや脚本担当者たちにインタビューしてみましょう!」
その声で、会議の面々がぐるりと顔を向け、緊迫した雰囲気から一転、インタビューが始まった。
とりあえず、こちらに好意的な表情をしていた相馬の元へとセレンはマイクを向ける。
「了さんは今回主人公側の設定を担当したそうですが‥‥」
「ああ、今回の設定と脚本には俺がアクション俳優として温めてきたエッセンスを全て注がせて貰ったよ」
「そう、そうなのです! 今回は脚本担当にも現役の俳優陣を多く取り入れた異色作なんですよね! プロデューサーさんから何か注文があったりはしなかったんですか?」
「ああ、プロデューサーの意向ね。プロットがあったけど、あんなの無視無視」
はははと軽く笑う相馬にあわせてセレンもあはは、と引きつりつつも笑顔。すると‥‥
「ところでセレンちゃん。この収録のあと暇? 近くにうまい店が‥‥」
「へ? えぇぇええ!? わわわ、私はそんなっ!!」
わたわた慌てるセレンが一瞬映って画面はスイッチ。どうやらナンパされたようであるが、とりあえず次のインタビューである。
画面には下にテロップで名前が表示されつつ具体的なシーンのスケッチを見せて語るリーゼロッテ。
「それではメインストーリー担当のリーゼロッテさんに最後に聞いて見ましょう。一見所シーンはずばりどこでしょう?」
「クライマックスの月下の元、繰り広げられる敵のボスとの戦いとそれに続く‥‥とと、これ以上は見てのお楽しみだね」
ぱちりとウィンクを一つ。ちらりとストーリーボードの一部を見せてさっと隠すロッテであった。
そして、隣の桐沢カナにもセレンがマイクを向ける。
「カナさんは、敵サイドの設定と脚本担当でしたね。苦労したところはどこでしょうか?」
「現代における新しい吸血鬼像かな? カナが一番気をつけたのは、うまく現代社会を吸血鬼と融合させることだよ」
吸血鬼のボス、デフロットと銘打たれた大きな一枚絵をひょいと見せてにっこりと微笑むカナであった。
いくつか映画に関するインタビューが過ぎ、場面は次に切り替わった。
場所は変わってコンピューターに囲まれた一室で、こちらを向いてインタビューに応じるのはサラ・メロディ(fa2313)。
背後のディスプレイには、モデリングされたモンスターの頭部や爆発の様子が、3Dモデルで表示されている。
イヤにリアルな狼男のアップを表示したりもしながら、サラは語っていた。
「特殊効果の見所はどこでしょうか?」
「とにかく派手になると思うよ。銃、爆発にリアルな変身シーンとか」
「ふむふむ、それでは一言をどうぞ!」
「今までの常識をはるかに超えたど派手なアクション。最先端の技術を駆使した、本物と見違えんばかりのモンスター。絶対の自信を持ってお届けする痛快娯楽活劇をご期待ください」
絶対の自信を持って笑顔で告げるサラであった。
続いてはがんがんと音楽の響くミキサー部屋。一人の女性が指揮を執って作業を進めていた。
「ハァイ、メイヤーよ。よろしくお願いするわね」
メイヤー・E・霧島(fa2557)のテロップと共にBGMとして映画の音楽がタイトルと共に流れ始める。
「この映画では音楽も力入ってるわよ〜。しってる、映画音楽でたまに使われる手だけど、超低周波を使うってやつ」
「ああ、ホラー映画とかで不安感を掻き立てるってやつですよね?」
「そう、クライマックス直前のシーンでは観客の不安と期待を最高潮まで煽るわけね。荘厳な曲からハイテンポなナンバーまで音楽も良く聞いてくれると楽しいと思うわよ」
「なるほどー‥‥それでは最後にこの映画で一番気にいってるシーンを!」
「そうね、やっぱりラストバトルかしら。荘厳な音楽が一気にテンポアップ、激化していくバトルに心躍るばかりね。私も現実にあれくらい気持ちの昂ぶる体験をしてみたいわ。あと、ラストのオチで金タライチックな‥‥と、これはオフレコね」
そこまで言うと、メイヤーはすっくと立ち上がりぱしんと手を叩いて、
「さ、とっとと片付けてやるとしましょうか」
最後の追い込みにかかるのであった。
そして続いては美術や小道具担当、スタジオの一角での試用や衣装のチェック中にレポーターが突入である。
「おハヨうごサイマす。わたし、ミカエラ・バラン・瀬田と申シますワ、よろしく」
「あ、こちらこそよろしくお願いします。 それではミカさんにいくつか質問をしたいのですが‥‥」
ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)とのインタビューが始まり、やはり話は小道具についてとなる。
「沢山あるんですね〜」
「これなんカ、自信作でスヨ。携帯電話内臓の秘密兵器でシテね‥‥」
かしゃっと開いてびかびか光るアイテムを見せつつインタビューは進み、ついに最後の質問。
「それでは見所は?」
「バンパイア、という素材と登場人物の魅力が最大限に生きるようデザインしタツモりでスワ。吸血鬼の底の見えない恐ろしさと、ヘヴィメタルな武器達の魅力の折衷を楽しんデクだサイ♪」
そしてがしゃっと巨大な銃を構えるミカエラ。それはデザインラフでは主人公が持っていた物であった。
てくてくと山積の衣装を抱えた小さな人影にセレンが気付いてマイクを向けると‥‥なんと10歳ほどの少女であった。
「あ、お手伝いをさせてもらっているんです!」
とは、山田夏侯惇(fa1780)の言葉。
「お手伝いとは言っても、しっかりしたデザインだねー」
「えへへ、そうですか?」
頭をぽりぽりかいてはにかむ山田をなでたいのかセレンがうずうずしながら短いインタビューが行われる。
「やっぱり黒の貴族風の装束が一番大変だったんですよー」
「ふんふん、やっぱりデザインが複雑だったからかな?」
「それもあるんですけど、衣装がボスの豹変に合わせて微妙に変化するのが見所で‥‥」
どさっと数着の微妙な違いを見せるスーツを持ってくる山田。
「山田は吸血鬼のスーツを色違いで数十着仕立てるのに、一番苦労しました!」
そういうと、周囲の衣装担当者たちも口々に手伝いとしての山田を褒め、和やかな雰囲気が流れるのであった。
そしてインタビューは再び、監督へと。
映画の全体的なストーリーやその根底に流れる設定。キャラクターの個性なんかについての数度のインタビューがありついに最後の質問となった。
「それでは、最後に御聞きします。この映画の一番見所は?」
セレンがびしりとマイクを差し出すと、ゆっくりと監督のオルトロスは足を組み替えて、ぐるりと周囲を見回す。
カメラがその視線を追うようにわずかに引いて、周囲を映し出すとそこにはそれぞれの持ち場で働くスタッフたちの姿があった。
「‥‥ここはあえて全部、と言いたい。スタッフにも恵まれたし、良いモノができたと自負している」
番組の最後は、にっと豪胆な笑みと共に告げられる自信に満ちた言葉で締められたのだった。