『SURVIVE』アジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 雪端為成
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 難しい
報酬 1.1万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 02/07〜02/11

●本文

 人の強さを測るのはなんだ。
 何枚の瓦を割れるか? どれだけ重いものを持てるか?
 いや、そんなものでは人の強さは測れない。

 一番強いのは、最後まで生き残ったやつだ。

 『生き残れ』という単純なルールを採用した新進気鋭の格闘イベント、それが『SURVIVE』である。

 参加資格は無く、ルールも最低限。
 目つきや金的など急所攻撃の禁止と武器使用の禁止である。
 そのほかは試合に参加する双方の合意が得られれば、それがルールとなる。
 試合の判定も単純、残ったほうが勝ち。
 どのラインで試合をとめるかすらも双方の合意の下に決まる。
 意識を失ったら? ギブアップあり? ドクターストップ?
 よほどの危険行為でない限り、ほとんどのことは許される。
 試合は一般的なリングで行われが、放送はされないライブイベントである。
 参加する選手も、プロから素人までなんでもあり。
 ケンカが強いただの不良だったとしても参加することができる。
 ただ自分が強いと信じるものだけが参加できるのだ。

 さらに戦士たちを盛り上げるために、数々のイベントが予定されている。
 ミュージシャンによるライブや、映像、ライブアート。
 これらも戦士たちの血を滾らせるに違いない。

 精神の闘争であるアートと、肉体の闘争である格闘技。
 そこでは生存本能のみが頼りなのである。

●補足
 格闘技サイドは対戦相手との合意の下に詳細なルールを定めてください。
 立ち技系でも関節技系でも、総合格闘技系でもかまいません。
 ただし、危険行為や残虐行為がまかり通るルールはさすがに禁止です。
 死人が出そうなことはもちろん避けてください。
 まずは話し合いで自分の相手を決めましょう。
 1対1でもタッグでも、3VS3でもいいでしょうが、バトルロイヤルは禁止です。
 リングはそれほど広くないですから。
 また、男女混合の試合も避けてください。
 もし人数的に端数が出た場合は審判や解説、イベント側に回ってもらいます。

 イベントサイドは自由に何でもやってください。
 しかしあまりにもそぐわない場合は没になることもあります。
 残虐なものや、人に不快感を与えるようなものは特に禁止です。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0696 ボルティオ・コブラ(28歳・♂・蛇)
 fa1179 飛鳥 夕夜(24歳・♀・虎)
 fa1385 リネット・ハウンド(25歳・♀・狼)
 fa1674 飛呂氏(39歳・♂・竜)
 fa1690 日向 美羽(24歳・♀・牛)
 fa1719 風和・浅黄(20歳・♂・竜)
 fa1827 トーマス・バックス(19歳・♂・狼)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2594 ドン・ドラコ(30歳・♂・竜)
 fa2748 醍醐・千太郎(30歳・♂・熊)
 fa2917 ラディアル(21歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

 きぃん‥‥と薄暗い空間に音が響く。可聴域ぎりぎりのハウリングの音と、かすかなざわめき。
 格闘技イベント『SURVIVE』を見るため、いや参加するために集った観客たちは静かに息を殺していた。
 いよいよ待ちに待ったイベントが始まるその瞬間に備えて、じっと息を潜めているのだ。
 瞬間、会場中央のリングが光で照らされた。四方から伸びたスポットライトが、リングを煌々と浮かび上がらせる。
 そのリング上には8名の人影があった。それぞれが思い思いの衣装に身を包んだ8人の格闘家。
 観客を向いて円形に並ぶ8人。迫力すら感じるようなその姿に観客が息を飲んだそのとき、場内に声が響いた。
「これから始まるのは生存競争‥‥The struggle for LIFE‥‥」
 静かに声が流れる。そしてほんの数秒の空白。ごくりと息を呑んだ音がいやに大きく響くような静寂。
「‥‥‥‥生き残るのは誰だっ!! Battle For 『SURVIVE』!!」
 爆発するような叫びとともに、会場に爆音が轟く。ドラムとギターの音が響く中、8名の戦士が拳を掲げる。
 それに呼応するかのように、会場の一角から光が溢れた。
 狭いステージにはバンドの姿、エレキギターが響きドラムがビートを刻むその真ん中に、1人の男が立っていた。
 会場中から向けられた視線を受け止めたその男は、マイクに片手を添えながら不敵な笑みを浮かべる。
 目を引く煌びやかな銀の髪を書き上げると、ボーカルのLUCIFEL(fa0475)は大きく息を吸い込み‥‥。
「Go ahead!!」
 声とともに音が爆発する。アップテンポなロックナンバーが鳴り響き、観客を鼓舞する音色が流れ始めた。

 ココロの本音出して挑み続けろよ
 必ずgetするモノはあるはずだ
 オマエのHeartしかと刻めよ やれるだけやろうぜ

 不可視な壁を突き抜け Go way! Go ahead!! 未来を懸けぬけろ 手にした証を掲げろ
 不可視な穴を跳び越え Go way! Go ahead!!
 過去を捻じ伏せろ Glorious掴み取れ その手に

 元気な歌詞を歌い上げるLUCIFELはその透明でハイトーンの声を存分に響かせていた。
 派手な音楽と、パフォーマンスはいやがおうにも会場を盛り上げる。
「‥‥Shout of soul. Break the Fake」
 そしてLUCIFELが二曲目である『Awaking』を歌い終わるころ、リングの上には二人の選手が準備していた。
 実況も解説もいない試合。
 観客たちのすさまじい熱気と興奮の中、いよいよ試合が始まろうとしていた。

●第一試合 風和・浅黄(fa1719)VSマリアーノ・ファリアス(fa2539)
「テレビじゃないからと思って来たけど‥‥何でルシフがここに居るんだろう?」
 どうやらパフォーマンスに登場していたボーカリストと知己であるようなのは浅黄。
 コーナーでぐいっと腕を伸ばして試合開始に備える浅黄の表情にはどこか楽しげな笑みが浮かんでいた。
 しかしくるりと背を向けてリングの対角に立つ相手を見据えた時には、その顔から表情は消えている。
 青のオープンフィンガーグローブに包まれた手を合わせ一礼。
 白地に青ラインのトランクスに身を包んだムエタイの戦士はリング中央に足を進めるのだった。

 対するコーナーにはマリス。まだ少年といってもいい年頃の彼は現在はまだ練習生である。
 まだまだ幼さの残る表情に小柄な体格。しかしその瞳は闘志に満ちていた。
「やっぱり目指すは金星だね!」
 にっと笑って、拳を掲げる少年格闘家。生き生きとその瞳を輝かせながら、赤いグローブを打ち合わせる。
 そして彼もリング中央に向かうと、なんと浅黄に対して手招きで挑発。
 表情をかえずに静かに見返す浅黄と、楽しげに笑みを浮かべるマリス。いよいよ試合開始である。

「‥‥FIGHT!!」
 黒のスラックスに黒いシャツを着込んだ本日のレフェリーは珍しく女性。
 レフェリーの日向 美羽(fa1690)の鋭い声とともに、マリスと浅黄は同時に動いた。
 体格で劣るマリスはトリッキーな動きで距離をとりながら右に左にはねるように動く。
 対する浅黄は翻弄されないように冷静に距離を詰めながら圧力をかけていく。
 先手を打ったのは浅黄、けん制のローキックで相手が引いた瞬間に踏み込んでハイキック一閃!
 しなやかな足から繰り出された強烈な蹴りは、頭を下げたマリスの頭上を通過、髪の毛を掠めるように通り過ぎた。
 しかしマリスもとっさに動く。かわした足を潜り抜けざまに、バックブローで反撃である。
 勢いを載せた裏拳がまっすぐに浅黄の顔に伸びるが、それは浅黄も見えている。
 危なげなく腕を上げてガードの体勢、しかしマリスはなんとバックブローをそのまま当てずに半回転。
 半身になったところで逆回転、その勢いのまま拳を振り下ろすハンマーブローにつなげる!
 横回転から縦回転への連続攻撃、これも浅黄がブロックするが一瞬の停滞。
 その隙を突いてマリスは距離をとり再び、ぐるぐると動き始める。
 冷静に距離を詰めて、牽制の拳やローキックでプレッシャーをかける浅黄。
 対してマリスはくねくねと酔拳のような動きをするなど、不思議な行動を繰り返す。
 そしてお互い距離を詰めず様子見で時間が経過し、一ラウンド目は終了。
 決着は次のラウンドに持ち越されれた。
 カーンとゴングが響き第二ラウンドが始まった。
 今度は浅黄が攻める。距離を積極的に詰めて、ローキックで牽制。
 相手が回り込もうとする動きにあわせて移動してうまくマリスをコーナーに追い詰めていくのだった。
 対するマリスは起死回生の一撃。ねこだましからのタックルを試みるのだが、体重差は非情である。
 タックルを防がれ、がっしりと組んだ首相撲の体勢。浅黄は、相手の肩をしっかりと押さえて膝での攻撃である。
 このままでは体力を削られてマリスは不利である。しかしマリスはあきらめていなかった。
 膝の一撃をガードしながら、スリップしたかのように倒れこむと間髪いれずに片足を狙ってのかにばさみ!
 タイミングがきっちりあったのか、なんと浅黄は転倒、マウントこそ取れないもののグラウンドの攻防である。
 浅黄は足でマリスの腰をはさんでマウントは防ぐ、しかし上をとったマリスは連続して拳を叩き込む。
 拳の攻撃をしっかり防ぐ浅黄と、狙い続けるマリス。そのままマリスは足を狙っての関節技に切り替える。
 これにはさすがの浅黄もピンチである。
 膂力とはあまり関係のない関係技に加えムエタイを使う浅黄にとってグラウンドの攻防は不得手。
 アキレス腱固めをしようとするマリスに対してなんとか振りほどこうとする浅黄。
 完全に決まりはしないものの、じわじわとダメージが蓄積されていくのだが‥‥カーンッ!
「ブレイクッ!」
 レフェリーの美羽が間に入る。なんと2ラウンドの終了である。決着は最終ラウンドにもつれ込んだ。
 ふたたびゴングが響くが、浅黄の動きは固い。
 やはり足への関節技はダメージを与えていたようである。
 しかし、ここでも体格の差は無情であった。
 同じ時間運動していても、まだ体が完成していない少年マリスには疲れが色濃く出始めていた。
 今までは警戒していたため一発の被弾もないハイキック。
 ダメージを無視して浅黄はハイキックを一閃! しかしマリスは再びかがんでかわそうとする。
 しかし浅黄の攻撃はマリスを捕らえた。ハイキックは途中で起動を変えてミドルキックへ。
 かろうじてガードするもののけりの一撃で思わず体が泳ぐマリス。
 そのよろめきを逃さず、浅黄はラッシュからけりへのコンビネーション。
 ガードごとハイキックで頭を揺らされたマリスは、がっくりとリングに膝をつくとそのまま立ち上がれないのであった。
「勝者、風和 浅黄っ!!」
 3ラウンド目、2分32秒TKOでの決着。
 勝利を収めた浅黄は、まだ幼いながらも奮闘したマリスに対して健闘をたたえて深々と一礼。
 初めて笑顔を見せて、がっちりと握手したのだった。

●二試合目 飛鳥 夕夜(fa1179)VSリネット・ハウンド(fa1385)
 二試合目は異色の組み合わせであった。
 古武術である小具足術、つまりは柔術などを使う夕夜と正統派プロレスラーのリネット。
 まったく予想外の試合が見られる興奮に会場は沸いていた。
「FIGHT!」
 美羽の声で動いたのはリネット。夕夜は待ちの体勢である。
 じりじりと体勢を低くしてタックルのためにばねをためながら近づくリネット。
 対する夕夜は体重をすっと落として、冷静に相手の出方をうかがう。
 まずはリネットが牽制のローキック。対する夕夜はその蹴り足を狙って攻撃。
 末端部に対してのダメージを蓄積して機動力を奪おうという削ごうというのである。
 しかしそれを痛痒ともせず、リネットがさらに接近すると強烈なタックルで一挙に間合いに踏み込んだ!
 夕夜の迎撃、あごを狙った鋭い打撃を繰り出すも突進の勢いで狙いをはずし、突進はとまらない。
 そのままリネットはタックル。そのままグラウンドに引き倒して、腕を取ろうと手を伸ばす。
 しかし倒された夕夜も反撃、リネットの腕を逆に取ろうと手を伸ばし、お互いグラウンドでの熾烈な攻防が始まった。
 腕ひしぎを狙うリネットの、手首をとってひねり上げる夕夜。
 しかしリネットは今度は足を狙ってアンクルホールドをすれば夕夜が対抗してリネットのアキレス腱を決める。
 リネットがマウントを取ろうと力で押せば、夕夜はリネットの間接をうまくひねってかろうじて脱出。
 10分間の長い1ラウンド目はまだ終わらなかった。
 隙を見て打撃を的確に決めていた夕夜が優勢に見える状況。そこで優劣をひっくり返すような行動にリネットがでる。
 グラウンドの状態から相手の体にがっちりとしがみつくと、強引に立ち上がるリネット。
 体力にものを言わせそのまま夕夜を持ち上げ、ボディスラムで夕夜をマットに叩きつける!
 体力で劣る夕夜には、強烈過ぎる一撃。
 その一撃を受けてもふらふらと立ち上がった夕夜であったが、さすがにダメージは大きかった。
 リネットはその夕夜の起き上がり際を強襲、気合の入ったローリングソバットを放つのだが、まだ夕夜はあきらめていなかった。
 ソバットを真正面から受け止める夕夜。大きなダメージを受けるも、そのまま足を掴んで振り投げる。
 身長で勝る夕夜の一撃によってリネットもマットに叩きつけられることになるのだった。
 しかし、体力で勝り、受身の技術においても慣れがあるリネットにはさすがに利きが浅い。
 夕夜の反撃もここまであり、その後のグラウンドの攻防でリネットの腕ひしぎ逆十字でタップするのであった。
「勝者、リネット・ハウンド!!」
 1ラウンド目、9分14秒ギブアップによる決着。
 濃紺のコスチュームが光に映える中で大きく拳を上げて歓声に応えるリネット。
 彼女はリング中央で、リネットは夕夜に握手を求め、二人はお互いの健闘をたたえたのだった。

●三試合目 ボルティオ・コブラ(fa0696)VS飛呂氏(fa1674)
 この試合も、古武術家対プロレスラーの異色戦。
 いつものように動議姿なのは飛呂氏。静かにリングにたたずんで相手を見据えて口を開く。
「‥‥鬼の血が騒ぐというものだ」
 対するマスクのルチャドール。メキシコで盛んな空中技を得意とする豪快なプロレスラーは冷静に互いの実力を見て言う。
「出来ることは少ない‥‥考えること、そして恐れず実行することだ。さて、どう戦おうか‥‥」
 いよいよ試合が始まる。

「FIGHT!!」
 鋭いレフェリーの開始の声。それなりに長身の美羽に比べてもさらに大きい二人の戦いはかなりの迫力であった。
 実力では飛呂氏が優勢、しかしグラウンドや関節技などによってはあるかがわからないのがリングの上である。
 飛呂氏の強烈な拳がコブラの腕に悲鳴を上げさせる。
 なんども叩きつけられる拳をしっかりとブロックしながら、コブラは隙をうかがっていた。
 瞬間、相手の横をすり抜けて背後でがっしりと飛呂氏を捕まえるコブラ。飛呂氏は肘を放つもコブラは死守。
 次の瞬間、強引にコブラがバックドロップ!
 轟音とともに、マットに叩きつけられる飛呂氏。年齢に似合わずかなりの体力を誇る飛呂氏もこれはきいたようであった。
 間髪いれずコブラはロープに走り、立ち上がった飛呂氏に対してドロップキック。
 全身で飛び込むような攻撃はプロレス独自のもの。わが身を省みない攻撃は自分の肉体への信頼なくしては不可能だ。
 飛呂氏はドロップキックを受けるも、踏みとどまる。
 倒れたコブラに対して追撃のロー。コブラはそれを食らいつつも、足を狙ってかにばさみ。
 なんとか飛呂氏を倒して上をとるコブラ。しかしローの一撃はかなりの力を奪っていた。
 腕や首を攻めるように関節を取ろうとするコブラ。しかし下からも容赦なく拳は伸びてくる。
 そのうち一撃、わき腹への抜き手の一撃がコブラを悶絶させるとその隙に飛呂氏は脱出。
 再び強烈なローキックと拳がコブラを襲うのだった。
 策を用いず、正面から攻撃力に任せて突破する飛呂氏に対して策を張り巡らせるコブラ。
 コブラはかなりのダメージを受けていながらも再び反撃。
 今度は大きくローリングソバットで牽制、それを飛呂氏が受けると同時にタックル!
 しかし、今度は飛呂氏が読んでいた。
 上から迎撃のハンマーパンチを一閃。コブラがぐらついたと同時に、左右のラッシュ。
 ガードしそこなったのは顎を引いて受けきろうとするコブラだが、打撃が続くとすべては裁けなくなっていく。
 さらに駄目押しの後ろ回し蹴りをくらってさすがのコブラも足元が定まらない。
 その瞬間、レフェリーが割って入る。
「ストップッ!!」
 追撃しようとしていた飛呂氏に体当たりするようにして止めると、コブラはふらふらと近づいてきた後がくりと膝をつく。
 TKOによって試合決着。
「勝者、飛呂氏っ!!」
 声に応えながら、飛呂氏はがっしりとコブラと抱き合いお互いの健闘をたたえるのだった。


●第4試合 ドン・ドラコ(fa2594)VS醍醐・千太郎(fa2748)
 赤いショートタイツに赤いブーツ、赤い髪とあいまって全身真っ赤なスペイン系の男はなぜか空手着を着て入場。
 その空手着を脱ぎ捨てて、リングにあがるのはドラコであった。
 対する千太郎はTシャツを脱ぎ捨て、ショートタイツ姿になるのだが、その腕はまるで丸太のように太い。
 ねじり合わせた鋼線のような筋肉が浮き上がるその巨大な腕をぐっと掲げて名乗りに応えた。
 カーンというゴングとともに、レフェリーの声。試合開始である。
「ソードストーム!!」
 自分で技名を叫ぶレスラー、ドラコの最初の技は「ソードストーム」。
 チョップの連打で相手のガードをこじ開ける予定なのだが、これは防御に自身のある千太郎には利かない。
 ひとしきり受けた後は、千太郎も反撃のチョップ。
 ドラコのチョップが連打なら、千太郎のチョップは一撃必殺。
 ドラコが連打して、それを数発受けた千太郎が強烈なのを返す。これをしばらく繰りかえすとお互いの肩や胸は真っ赤。
 そこでドラコが次の攻撃。
 ロープに千太郎を走らせたドラコは、「ドラゴンファング」と叫んで、戻ってくる相手に対してまっすぐコブラクロー。
 往年の悪役レスラーが得意とした相手の喉をわしづかみにして締め上げる技である。
 だが突進中にこの技はまずかった。相手もクロスチョップで正面衝突し、二人はもんどりうって倒れこむのだった。
 しかしここでドラコにとって好機が到来。
 先に立ち上がると、高々とジャンプ。空中で胡坐を組むとそのまま千太郎に向かって落ちていく。
 しかし千太郎は転がって回避したので、なんとドラコは自爆。対戦は再び振り出しに戻ったのだった。
 今度は千太郎が攻撃。がっしりと手四つで組み合ったところから相手をロープに投げてラリアット!
 これを受けきろうとするも豪腕のラリアットで一回転して後頭部から落ちるドラコ。
 さらに追撃のエルボードロップでさすがのドラコも悶絶である。
 しかしドラコも負けてはいない。
 千太郎が四の字固めに入ると、ロープを掴む。
「ロープ、ロープ!」
 美羽が割ってはいると、距離をとる双方。今度はドラコが積極的に攻める。
 相手をチョップやけりで牽制した後、ロープの反動で正面からせめて、高速のフロントスープレックス。
 お互いかなりの体格を誇っているためすべての技が豪快なのである。
 さらにドラコの攻撃はもっとも派手な技に。
 ドラコは、千太郎を肩車するようにして高々と持ち上げる。
 2メートル近い長身のドラコが千太郎を持ち上げているのはかなりの迫力。
 しかもドラコはそのまま後ろに倒れこむ!!
 轟音とともにマットに叩きつけられる両者。千太郎のダメージは大きかったが、ドラコもダメージが大きい。
 かろうじて千太郎が立ち上がる。
 彼はまだ立ち上がりきらないドラコの頭を掴むと、そのまま勢いを付けてフェイスクラッシャー。
 顔面をマットに叩きつける千太郎の得意技「ベアータッチ」である。
 これにはさすがにドラコも動けない。
 わずかなスタミナとダメージの差が大きな違いを生んだようであった。
「勝者、醍醐 千太郎っ!!」
 僅差の勝負をかろうじて制した千太郎が歓声に応えるのを再びドラコが肩車。観客はいやがおうにも沸き返るのだった。

●最終試合 トーマス・バックス(fa1827)VSラディアル(fa2917)
 最後の試合は、お互い正統派のボクサー同士の対戦となった。
 しかも偶然、タイプがまったく同じで、実力的にもほとんど同じ。緊迫した試合が予想されていた。
 赤と白のコスチュームはラディアル。手数と俊敏性を武器にカウンターを取るタイプである。
 対するは青と灰色のコスチュームのトーマス。こちらもスピードとカウンターを得意とするタイプである。
 まったく同じような能力と戦い方の持ち主同士の真っ向勝負。
 ついにゴングが鳴らされた。
「FIGHT!!」
 美羽がさまざまな種目のレフェリーを纏めてこなしたのはただただ努力の成果である。
 これが最後の審判、気合とともに試合開始を告げる。
 お互いスピードを重視するボクサーであり似通っているのだが、その戦い方には違いがあった。
 手数の多さがその特徴であるのはラディアル。左右の連打とフットワークによる連打型である。
 対してトーマスは、一定距離を保つアウトボクシングを得意としている。
 すばやいバックステップと一撃の速さを利用して、正に「蝶のように舞い、蜂のように刺す」のである。
 このわずかな違いと戦術が勝敗を分けるかもしれない。
 先に仕掛けたのはラディアル。牽制のジャブからさらに踏み込んで左右のジャブを連打!
 バックステップで引くトーマスだが、左右の連打をガードしながらその隙をうかがう。
 トーマスはジャブで牽制して距離を置いて、相手の癖や動きを冷静に見据えていた。
 そこにさらにラディアルのすばやい踏み込みからの連打。トーマスは今度はダッキングで反撃である。
 膝を曲げて体ごと沈めることで、頭の位置を下げるダッキング。一瞬で相手のパンチの下をくぐってカウンターを狙う。
 しかし、すばやいラディアルはカウンターを紙一重で回避。
 こめかみを狙った強烈な一撃も皮一枚で届かないのであった。
 再び距離をとる双方、ここでゴングがなり第一ラウンドが終わる。
 残りの9ラウンドは熾烈な戦いが続くのがありありと見えていた。
 続く第2ラウンド、攻めるトーマスの一撃に丁寧に合わせてくるラディアル。
 お互いにクリーンヒットはないまま、カウンターの応酬と相手の隙を狙いながら数ラウンドが経過した。
 そろそろお互い疲れが見え始めた6ラウンド目、戦いは一気に決着へとなだれ込むのだった。
 これまでこめかみ狙いのカウンターばかりをしかけていたトーマス。それには意味があった。
 踏み込んでのロングフックをブロックされたトーマスは再びスウェーとバックステップで距離をとる。
 それを追うラディアル。左右の連打をウィービングとブロッキングでしのぐトーマス。
 上体を前後左右に動かして辛くも連打をかわしつつ、最後の一撃に対してカウンターを放つトーマス。
 これまでの癖で、顔面への軌道をブロックするラディアルだったが、なんとカウンターはボディ。
 ブロック無しでボディに初のクリーンヒット。再び距離をとったトーマスの猛攻が始まった。
 遠距離から飛び込んでの一撃がロングフック一撃から、ストレートをショートブローで顔に2連発。
 さらに、左ジャブから右ストレートさらに左アッパーのコンビネーションなど、徐々に手数が増えていく。
 一度速度が落ちた相手に対して、怒濤の攻撃で駄目押し。
 クリーンヒットこそないものの、ラディアルは手が出なくなりこのままでは体力を削られるばかり。
 ラディアルは起死回生の連打から渾身の強打へと希望をつなぐ。
 それに対してトーマスは、連打をぎりぎりで見切ってかわし続ける。
 かなりぎりぎりなために、顔や腕、肩が皮一枚切り裂かれたように赤くはれ上がるのだが、それもお構いなし。
 そしてついにラディアルの渾身の一撃、身長で劣るラディアルは下からの強烈なアッパーだ。
 対するトーマスは、振り下ろしの右!
 交錯するカウンター、音は一度。
 ラディアルのアッパーはトーマスの顎から頬を切り裂き、トーマスの振り下ろしの右ストレートはラディアルのこめかみを打ち抜いていた。
 がくりと意識を失って崩れ落ちるラディアル。それをぎりぎりで受け止めるレフェリーの美羽。
 同時にゴングが鳴り響き、トーマスは高々と両手を振り上げて雄たけびを上げたのだった。
「勝者! トーマス・バックス!!」

 これにて全試合は終了したのだが、会場にはいつまでも歓声が鳴り響いていた。
 リングにおいて、立っていたものも敗れてしまったものも、全身全霊をかけて戦った試合ばかりである。
 戦いにかける意欲、生命力、生存競争に勝ち抜く力は強く観客の心を捉えたようであった。