映画 『爆走特急!』南北アメリカ
種類 |
ショート
|
担当 |
雪端為成
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
3.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
02/26〜03/04
|
●本文
「よしっ! 列車は1つ押さえたな?! それなら問題なしだ!」
プロデューサーと連絡を取って、笑みを浮かべる男。
彼の名はイザーク・ハイネマン。壮年の映画監督だ。
白髪交じりのもじゃもじゃの髭と古ぼけた丸メガネが怪しさ爆裂である。
彼は爆発と破壊をこよなく愛する男であった。
娯楽とは何か? それはインパクトである、というのが彼の座右の銘。
画面いっぱいに広がる爆炎や、ひっくり返る車。崩れる建物などが大好きなのであった。
そして今回も、どうやら廃棄された豪華列車をどうにかして手に入れたとかで‥‥。
「CG? そんなもん最低限にしか使わん! リアルさが大事なんだぞ!」
ばしばし机を叩きながら電話に向かってがなり立てるハイネマン監督。
「最終的には、列車丸ごとドカンだ! これだけは譲れないぞ!!」
そして映画は動き出すのである。
●ストーリーボード
『爆走特急!』
・アメリカを走る豪華特急、グレートコンチネンタル号をテロ集団が占領。
・乗客を人質としてテロ集団は、身代金を要求。
>ここまでシーン1
・しかしその列車には、特殊部隊の隊員が二人乗っていた。
・カップルで旅行中だったその二人の隊員は、事件の解決のために動き出す。
・武器は無く、通信は通じない。そんななかでの決死の戦いが始まった!
>ここまでシーン2
・お互い協力しながら一人一人とテロリストを倒す2人。
・ついには乗客が集められた客車を切り離すことに成功する。
>ここまでシーン3
・テロ集団は決死の覚悟で反撃、なんと女性隊員が人質にとられてしまう。
・しかし女性隊員の機転と男性隊員の勇気でなんとかテロ集団のボスを撃破。
・先頭車両から切り離された第二車両で、2人は満載した爆薬によって爆発する先頭車両を見る。
>ここまでシーン4
全体として4シーンで構成で、列車は派手に爆発させる予定の監督。
戦闘でも、爆発したり壁が吹っ飛んだり。ともかく派手に。
●募集スタッフ・俳優
・脚本家が居る場合、ストーリー修正がある程度可能。
シーンの追加や、変更も監督が許せば可能になる。
・俳優は、主役のカップルとテロ集団のボス以外は特に指定なし。
テロリスト側のやられ役、端々で出てくる政府の人間などアイディア次第です。
・俳優として参加する面々の意見は派手ならば監督が取り入れることも多いでしょう。
●リプレイ本文
●舞台裏
「正直こういうのって‥‥」
1人静かに撮影所を去る青年。若手ながらも存在感のあるアクションスター、相麻 了(fa0352)。
映画を作り上げるという行為は、さまざまな人間の共同作業である。
人と人とが協力して作り上げる作品、それゆえに時には摩擦や軋轢が生まれることもある。
参加者や裏方にもそれぞれこだわりがあり、それが衝突することもあるだろう。
その結果、彼はスタジオから去りこの映画に関わらないことを決めたようである。
彼はスタジオの入口で振り返ると、閑散とした撮影所をぐるりと見回して静かに頭を下げ、ゆっくりと出て行く。
去った後、ドアの閉まる音だけが撮影所には響いているのだった。
●放送5分前
映画の予告編が流れそれに合わせるようにして、監督と脚本家の談話が挟まれる。
監督のイザーク・ハイネマンがまず口を開いた。
「‥‥今回の映画で、最も苦労したのはキャスティングだったな」
−キャスティングですか? そういえば予定されていた主演男優が役を降りたというお話を聞きましたが‥‥。
「いろいろとありましてね」
インタビューアーの質問に答えたのは理知的な容貌の脚本家、巻 長治(fa2021)である。
「当初予定されていた脚本では主人公は男女のカップルだったんですが‥‥」
細いフレームのめがねを押し上げると、どこか陰のある表情をさらに曇らせて言う。
「おかげでクライマックスの展開が大幅に変わってしまいましたよ」
わずかに憔悴した様子の巻が苦笑する。
−なるほど。冒頭のシーンにはそういう理由があったんですね。
そして、インタビューアーは沈んだ雰囲気を吹き飛ばすように明るく質問を投げかける。
「それではお二方に、この映画の見所を伝えていただきましょう!」
マイクとカメラは、まず巻の方を向く。
「そうですね‥‥何といってもラストシーンまでの手に汗握る緊張の連続が見所でしょうね」
そして続いて監督が最後に述べる。
「特にラストシーンはド派手の一言だ。SFXも駆使しての派手なクライマックスは見所シーンだと思うぞ」
−ありがとうございました。それでは本編をお楽しみください。
インタビューアーがそう締めて、映画本編が始まるのだった。
●交渉と予想外の出来事
列車の中の一室。普通ならば大陸を横断する豪華な列車の旅の途中で、人々の楽しげな会話が聞こえるだろう。
しかし今日は違っていた。黒尽くめの一団が列車を占領し、乗客たちに銃を突きつけていたのだった。
テロリストのボスは、まだ若い女性であった。
「私たちの要求を飲まなければ人質が死ぬだけだ。さあ、答えを聞こう」
衛星電話で何者かと話しているその女性。相手は軍の上層部のようである。
「し、しかしジェーン! 君にもそれが無理なことはわかっているだろう? 私の下にいた君なら!!」
「‥‥何人か人質を殺せ」
冷酷に指示を出す彼女の名はジェーン・ドゥ。天音(fa0204)演じる冷酷非道なボスは身代金と部下の釈放を要求したのだ。
恐怖に震える人質たち、その中で1人立ち上がる男性。
「‥‥犠牲者第一号に志願するんだな」
響く銃声、倒れる男性。
彼の恋人、大宗院・慧莉(fa2668)演じるエリーは静かに涙をこぼすのだった。
ここで、タイトルロール。監督、脚本の名が流れて、再び画面は列車内へと戻る。
「‥‥なんてことを」
立ち上がったのは少女だった。しかし幼さの残る彼女の姿はシスターのそれであった。
エリア・スチール(fa0494)演じる小さなシスターの白い頬を涙が伝う。
「テロなどおやめになって下さい、そのような事は神がお許しになりません」
「‥‥死にたいようだな」
「きゃっ!」
そのシスターの髪を掴んだのはジェーン。非常口を開けるとそのふちに彼女を立たせる。
「‥‥神に許しを請うのです、まだ間に合います」
蒼白になり唇を震わせながらも、脅しに屈せず彼女は言った。
「そう、それなら貴方も死になさい」
再び響く銃声と、非常口が閉じる音。そして彼女は再び電話に向かって口を開いた。
「聞こえたか? 今また一人死んだ。私が望む言葉はイエスのみだ。それ以外の言葉を発したら、その度に一人死ぬ」
「‥‥時間が必要だ」
「2時間だけだ」
そういって彼女は電話を切り、部下に指示を出す。
「‥‥人質たちを後ろの客車に入れて、監視しなさい」
人質たちが客車に連れて行かれるその中で、一番後部の客車にまとめて軟禁される集団。
その中に、先ほどのエリーがいた。
「‥‥あの人のためにも、私が何とかします」
悲痛な決意を込めた彼女は、乗客の1人のベルトを手に客室を抜け出し、見張りの後ろに静かに忍び寄る。
「っ!」
気づいた見張りが振り向いて銃を突きつけた瞬間、エリーはベルトを銃に巻きつけ奪い取りそのまま窓の外に放り出す。
そのままベルトで見張りを締め落とすと、静かに次の客車へと進んでいくのだった。
●孤軍奮闘
着々と見張りを排除していくエリー。そして着いた先は最後の客車。
客車のドアを開け、連結部分にやってくるエリー。そのとき、影が差した。
「子どもっ?」
今までとは雰囲気の違うテロリストの登場、黒服の小柄な少女はシャウロ・リィン(fa0968)演じる敵の一員である。
「子供だと思って甘く見ないことね♪」
狭い客車間での対峙、しかしリィンはその場所で宙返りをしながらの蹴りの一撃を放つ!
間一髪で回避したエリー。しかしこめかみを掠めた蹴りが髪の毛を数本ふきとばす。
壁を蹴ってはねるリィンの早い動きにエリーは防戦一方であったが交差の瞬間エリーは手に持ったスプレーを吹き付ける!
「なにこれっ!! けほっ! ふ‥‥ふぇくしゅっ!!」
それは客の1人から借りた痴漢撃退用のスプレーである。
けほけほと咳き込むリィンに近づくと、手に握ったスタンガンを押し当てるエリー。
「うっ! ‥‥ふ、不覚‥‥」
気絶するリィンをエリーは縛り上げるのだった。
無事客車を切り離し終えるエリー。食堂を通り過ぎて厨房へ進むが、そこにも敵の影が。
「‥‥おとなしくしていればいいものを」
レーヴェ(fa2555)演じるテロリストの腕利きが姿を現す。
彼の手には拳銃がひかり、腰の後ろにはナイフが。完全装備の隙の無い姿である。
「‥‥死ね」
オートマチックの拳銃が弾雨を降らす。とっさに冷蔵庫の陰に隠れたエリーは劣勢に。
エリーも負けじと反撃を始める。投げたのは胡椒ビン。割れたビンから胡椒が降り注ぐがレーヴェには効果が無い。
しかしそれは囮。いつの間にか足元には油が流れていた。足を取られ、一瞬体勢を崩すレーヴェへエリーの蹴りが。
銃を蹴り飛ばされたレーヴェはナイフを抜くとエリーへと突きを放つのだが、エリーはそれをまな板でがっちりと受け止める。
そして返す一刀は包丁。自分の胸に刺さった包丁を呆然と見つめたレーヴェはがくりと倒れ伏すのだった。
続く先頭車両にはボスとその取り巻きがいるのだが、レーヴェの銃を奪ってそこに踏み込むエリー。
気づいた取り巻きとの激しい銃撃戦のさなか、とうとう姿を現す黒幕のジェーン。
そこでジェーンの取った行動は、味方ごとエリーを撃つことであった。
ジェーンのサブマシンガンが唸りを上げると、手下たちが背中から撃たれて次々に倒れていく。
エリーはとっさにテロリストの体を盾にして、銃弾を避ける。
「‥‥さすがにしぶといな。こうまで邪魔されるとは思わなかったぞ。だがお前には確実に死んでもらう」
計画を邪魔されたことに静かな怒りを燃やしながらジェーンが銃口を向けるとエリーも拳銃を掲げる。
「あなたのせいで私の大切な人が命を落としました‥‥許せません」
そしてお互いの銃口が火を吹いた。
遮蔽物を使いながらお互いを狙う二人、しかしエリーの拳銃が先に弾切れを起こしたのだった。
「くっ!」
あわてて、戦闘物陰に隠れるエリーとそれを追うジェーン。
しかしそこにはエリーの姿はなかった。
天井に張り付くようにして左右に手足を突っ張り体を支えていたエリー。
飛び降りざまにジェーンの武器をはじくと、2人はナイフの攻防へ。
ナイフの腕はジェーンが一枚上手、そのナイフがまっすぐエリーの棟に突き刺さるのだが。
「なにっ!」
ガキッという音で刃が止まる。なんとナイフはエリーに託された彼女の恋人の金属製の認識タグでとまっていた。
一瞬の隙でエリーの刃がジェーンを貫く。
しかしジェーンは血を吐きながらスイッチを入れる。
「‥‥お前は道連れだ」
事切れるジェーン。そして爆発が!
とっさに後ろの車両へと走るエリーだが、連鎖する爆炎はとまらず追ってくる。
そこで列車は橋へと差し掛かると、エリーはとっさに外へと飛び出した!
ひときわ大きい爆発で車両が吹き飛び橋すら捻じ曲がる。
そしてカメラははるかしたの川面を映し出すと‥‥そこには満身創痍ながらも無事なエリーの姿。
「なんとか無事でしたが‥‥やはり悲しいですね」
彼女は命を救ってくれた恋人の認識票を握り締めるのだった。
−END−