『in Island』南北アメリカ

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 5.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/22〜03/31

●本文

「無人島‥‥エリザさんと一緒に南の島‥‥」
 視線をさまよわせながら、南国の島の写真を眺めているのは若手脚本家のアレク。
 ギリシア風の美男子、アレクサンドロス・ルティオスである。
「んー‥‥ロケは何処がいいかなぁ?」
「もちろん私もついてくからな〜」
「ええ〜‥‥ハイ、ワカリマシタ‥‥」
 姉のエリザに睨まれてカクカク答えているのはプロデューサーのヨハン・トビアス。
「‥‥水着っていいなぁ♪」
 ソファーにひっくり返ってにやけているのは映画監督のラテン系派手男、マルコ・ジェリーニ。
 三者三様の思惑はあるようだが、それとはまったく無関係に映画撮影は始まるのである。

●新作映画『in Island』出演者募集

 無人島で繰り広げられる奇妙な日々を描いたどたばたサバイバルコメディ、出演者募集。
 主役の総数は最大8名の予定。

●『in Islando』 キャラクター解説
 (番号が後ろになればなるほど優先順位は減ります。登場しなくても可)

・その1 ベテラン漂流者
 無人島にいた先客、すでに無人島生活5年目に突入。

・その2 わがままお嬢様
 自家用機が墜落してお供とともに漂着。超絶お金持ちで我侭。トラブルメーカー。

・その3 お嬢様のお供
 世話をする執事もしくはメイド。意外にタフでお嬢様をなだめる良識人。

・その4&その5 旅行者カップル
 カップルで漂流(理由は自由に)。能天気なバカップル。

・その6 まだ幼い少年もしくは少女(15歳未満の見た目が望ましい)
 たまたま漂流してしまった子ども。健気で働き者。

・その7・その8 未定

●ストーリー解説
 起承転結の4部構成が基本、細かいシーンは出演者のアイディアで変化。

・シーン1
 無人島に漂流、共同生活のスタート。
 それぞれの知識を駆使してサバイバル。
 トラブルはあるも、どこか楽しい生活が始まる。

・シーン2
 脱出するために努力する漂流者たち。
 しかしベテラン漂流者が無駄だと言ったことで、一同に亀裂。
 お嬢様を初め、数組が分かれて別の生活を始める。

・シーン3
 とある日、危機に陥るベテラングループ。
 それを助けるお嬢様グループ。
 お嬢様曰く「人の数が多ければ多いほど、脱出しやすいだろうから助けただけ」
 協力体制の復活&脱出のために一致団結。

・シーン4
 努力が実りついに脱出(イカダ完成orは救助のための巨大なのろしで救助到来)
 しかし脱出を拒否するベテラン漂流者。
 また遊びに来ること&この島を守る(買い取る)ことを誓うお嬢様。

・細かいシーン展開は俳優の意見が受け入れられる。
・未定のキャラクター2名に関しても同様。自分なりにストーリーに関わって欲しい。
・大枠のストーリーを変更しない限りかなり自由度が高いので、アイディアを盛り込むべし。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0413 フェリシア・蕗紗(22歳・♀・狐)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa0769 凜音(22歳・♀・一角獣)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2543 結城 始(16歳・♂・獅子)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa2868 矢沢きゃおる(19歳・♀・狸)
 fa3180 マーマレード(21歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

 ざざーん‥‥ざざーん‥‥
 寄せては返す波の音。雲ひとつない青空と透き通った青い海。そして海鳥の泣き声とさわやかな風。
 その白い砂浜に、倒れ付す5つの人影があった。
 ざざーん‥‥ざざーん‥‥
 そこに歩いてきたのは朴訥な青年、マレーことマーマレード(fa3180)である。
「今日も良い天気だなぁ‥‥って、だれか倒れてるっ!?」
 わたわたおろおろ、とにかく呼んでこないと! とあわてて誰かを呼びに行くマレーであった。
 彼の声で気付いたのか、5人がのろのろと体を起こす。
「ん‥‥こ、ここは?」
 まわりをきょろきょろと見回す少女はマイこと姫乃 舞(fa0634)。
「あいたたた‥‥なんだか体が痛いですよ〜」
 きれいな赤い髪から砂を叩き落としている小柄で可愛らしい女性はベルこと鐘下べる(fa1828)。
「んー、見渡す限り海ばかり。電話も圏外っすね」
 携帯電話を取り出して首をかしげているボブレイヤーの元気そうな女性は矢沢きゃおる(fa2868)。
「お嬢様、どこか痛いところとかありませんか?」
「大丈夫よネリー、それにしてもここは何処かしら? 早く家に連絡を取らないとお父様が心配すわ」
 心配そうに眉根を寄せてる清楚な女性。メイド衣装が目を引く彼女はネリー役の凜音(fa0769)。
 その心配も何のその、芯の強そうな生まれながらのゴージャスお嬢様役、フェリシア・蕗紗(fa0413)である。
 その時その場に先ほどの男、マレーが戻って来た。そして彼の後ろにはもう1人。
「残念ながらここは無人島だよ‥‥5年もこの島に住んでるあたしが言うんだから間違いないよ」
 日焼けした肌の精悍な女性は、ビーことベルタ・ハート(fa2662)が演じるベテラン漂流者、ベルリン・マウスである。
「さて、人が増えてにぎやかになったけど‥‥生き延びる努力をしてもらわないとね」
 きっぱりと告げるビー、その言葉に5人の漂流者は言葉を失ったのだった。

 そこでカメラが引いて、島の外観が大写しに。
 次に視界は空へと向かい、そこにタイトルロールが表示。
 そして画面は次のシーンへと変わっていくのだった。

「サバイバルの基本は何よりまず食っす!」
 もしゃもしゃ何かの実を齧っているのはきゃおる。何故だかいきなり野生生活に適応している様子である。
「わ〜、きゃおるさんはなんだか慣れてるみたいですね〜」
「でも、そういうベルも釣りが上手なんてアイドルなのに意外っすよ」
「えへへ、私は幼い頃ガールスカウトに参加してたので基礎的なことは出来るんですよ〜☆」
 釣り糸を垂れながら、ベルのはすこし自慢げに言うのであった。

「やっぱり直接火であぶるなんて野蛮ね。私の方がもっと美味しく料理できるわよ」
「でもお嬢様‥‥」
「あら、私だってキャンプ経験もあるし大丈夫よ。私でも電子レンジがあれば簡単な料理ぐらい作れるわ」
「その、お嬢様。残念ながら、無人島に電気は御座いませんので‥‥」
 こちらはお嬢様とメイドさん。やっぱり文明生活からまだ抜けきっていないようである。

「はぁ‥‥大丈夫かねえ?」
「まぁ、少し前に私が来たときもどうにかなりましたし、何とかなるんじゃないでしょうか?」
 新入りの様子を心配げに見守るビーとマレーであった。

 そして夜、一同はビーが建てたログハウスの前で晩御飯。焚き火を囲んで焼き魚などの質素な食事である。
「わ、わ! お兄ちゃんすごーい♪」
 ぱちぱちと手を叩くマイ。華麗にタップを踏んでみせるマレーのタップダンスに感激した様子だ。
 串に刺さった焼き魚を齧りながら同じように拍手するきゃおるにベル。
「お嬢様、美味しいですよ?」
「殺菌もしないでそのままなんて信じられないわ。それに高級なものの方が美味しいに決まってるわ」
「高級だとか、お金には価値はないね。使いようがないだろう?」
 意地を張るお嬢様。しかしその時お嬢様のおなかがかすかにきゅーっと音を立てた。
 とたんに真っ赤になるお嬢様。無言で魚の串を渡すビー。
「‥‥‥ん、それなりに美味しいわね」
 こうしてやっとお嬢様もこの無人島に暮らす一員になったのである。
「ん? マイちゃんどうしたんだい?」
 踊り終えたマレーはお嬢様をボーっと見ていたが、マイが笑顔なのに気付いて聞いてみた。するとマイは答える。
「えへへ、家族がたくさんできたみたい!」

 漂流生活が始まって数週間がたった。
「なんで無駄なんですの!?」
「ここからは逃げられないよ。強い海流があるし、船の行路からは遠いからのろしをあげるってのもムダだよ」
「結局、外に出るのが怖いんだわ! もういい、これからは私は自分でやって行くから!」
 脱出に尽力するお嬢様たちと、それを無駄だというビーたちベテランが衝突してしまったのだった。
「あ、お嬢様! ‥‥申し訳ありません」
 ぺこりとビーにお辞儀をして、ネリー(リオ)もお嬢様の後を追う。
「ん、あたしもここから出たいし、バラバラでやるっすよ」
 さらにきゃおるも離れていってしまったのだった。
「勝手にしな!」
 ビーは離れていってしまった彼らに叫ぶ。
 この日を境に、漂流者たちは二つのグループに分かれて生活を始めるのだった。

「お姉ちゃんたち、今頃どうしてるかなぁ‥‥」
 彼女たちが去ってから数日、その日はマイが1人で火の番をしていた。妙にぎすぎすした空気のせいか、寝付けない日が続いていたネリー。
「私も、もっとがんばらなきゃ‥‥」
 眠りかけながら呟く彼女。しかし炎は強い風にあおられて大きくなっていくのだった。

「お嬢様、今日は葉っぱで蒸し焼きにしてみたんですけど、お味のほうはどうでしょう?」
「ん、なかなか‥‥ねえ、ネリー。あの煙ってログハウスのあたりじゃないかしら?」
「え? ‥‥ええ、たしかにそうですね。煙があんなに‥‥」
「おお、すごいっすね! もしかしたら火事っすか?」
 はっと彼女たちは顔を見合わせると、走り出すのだった。

「ごめんなさい‥‥ごめんなさいっ‥‥」
「あんたが悪いわけじゃないから大丈夫だよ。でも。これじゃこのまま蒸し焼きになっちまうね」
「部屋の中の物では消せそうにないですよ〜」
 風にあおられた炎は、まだそれほど広がってはいないもののこのままではあっという間に火が回るはずだ。。
 泣きじゃくるマイの肩を抱きながら途方にくれるビーであった。
 その時外から声が。
「ネリー! 水道で水を汲んできて!」
「す、水道はありませんけど、えとえと、池ならばっ。少々お待ちくださいませっ!」
 走り去るネリーの足音と、今度はログハウスの中に向けられるお嬢様の声。
「いまからきゃおると2人でドアを破るわ、急いで水をかぶって一気に外に出てきて!」
「じゃーいくっすよー!」
 蹴り開けられる炎に包まれかけていた扉。
 飛び込んでくる2人に水を掛けられた一同はあわてて外に逃げ出したのだった。

「お姉ちゃん‥‥ありがとう!」
 ぎゅっと抱きつくマイ。その時、マレーに引っ張られてビーがお嬢様のもとへとやってきた。
「‥‥ああ、今日は助かったよ。それと‥‥この前はすまなかったね」
「あら、別にあなたを助けたわけじゃありませんよ。火事を消しただけですわ」
 と言うものの、お互いに笑顔を向けるお嬢様とビーであった。
 そして、思わぬ副産物も。
「切り倒した樹を使って、もっと大きなのろしを作ってみたら良いと思うんですよ〜☆」
 それから三日後。なんと水平線の向こうに船が見えるのだった!

「悪いけどあたしは残るよ。家督を継ぐ時に親戚一同骨肉の争いってのがあってね。あれは最悪だったよ。あれに比べれば、ここは天国さ」
「せっかくお友だちになれたのに、離れるのいやだよ! 一緒にかえろうよ!」
「‥‥それにあたしも死んだ事になって弟が家を継いでいるだろうからね。わざわざ風並みを立てる必要はないさ。ごめんな、マイ」
「‥‥離れてても皆お友達だよね!? 絶対絶対また会おうね!」
 なきながらマイはビーと別れ。

「これでこの島ともお別れと思うと寂しいっすね」
「ん、それならまた遊びに来るですよ〜☆」
 さっさと救助船に乗り込んで、ビーに手をふっている2人。

「ああ、我が息子よ!!」
「えぇ! お父さん?!」
「父の顔も忘れてしまったのか? ‥‥それにしても、あそこのお嬢様まで一緒だとは驚きだったよ」
 救助船を雇った名士の1人はなんと記憶喪失の男マレーの父だったとかで不思議な縁があったり。

「ああ、早くシャワーを浴びてさっぱりしたいわ。お風呂上りには冷えたシャンパンね」
「かしこまりました、でもお嬢様‥‥」
 彼女はその視線を島に向ける。徐々に進み始めた船から見える島は徐々に遠くなっていく。
「本人が望んでるんだから仕方ないじゃないの。あ、キャビアも忘れずにつけてね」
「お嬢様‥‥」
「本当はキャビアより島の果物の方が美味しかったけど無いからしょうがないわよね」
 そういうとお嬢様はしばし考える様子を見せて‥‥。
「そうね、またあの果物も食べたいし、あの島にはまた行きましょうね、何なら買い取って。その時には皆も一緒にね」
「!! そうですよね、お嬢様♪」
 ネリーも満面の笑みで答えるのだった。