赤いずきんと狼男アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 4.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/25〜05/31

●本文

「ふーむ‥‥アクション&美女だなぁ‥‥」
 なにやら遠くを見つめて怪しげなことを呟いているのは、若手映画監督のマルコ・ジェリーニ。
 ソファーにひっくり返ってぼんやりしつつ、次なる作品の構想を練っているようだ。
 ふと、何かアイディアの足しになるものは無いかと、テレビをつけるマルコ。
 するとそこに写ったのは、子供向けの人形劇だった。

 赤いずきんの少女がおばあさんの家へお使いに向かう。
 しかし少女は途中で悪い狼にそそのかされて寄り道をしてしまう。
 少女がおばあさんの家に着いたとき、既におばあさんは悪い狼に食べられているが、それに少女は気付かない。
 そしてついには少女も食べられてしまうが、猟師さんがなんとか狼を退治して二人を助け出してくれる。
 めでたしめでたし。寄り道はいけませんね〜という話であった。

「ふむ、童話か‥‥ん、待てよ」
 それを見て、マルコは何かを思いついたようである。
「お婆さんは助からなかったが、赤ずきんは猟師に救われる。そして成長した赤ずきんは、狼男というモンスターを倒すために立ち上がる‥‥」
 ぶつぶつと呟くマルコ。どうやらアイディアをまとめている様子。
「よし! モンスターを退治するヒロインってことで、クールな映画が撮れそうだな!」
 マルコはがばっとソファーから跳ね起きると、携帯電話を取り上げたのだった。

「‥‥で、僕が脚本を書くの?」
「おう、お前だったら無茶な注文しても別に平気だし」
「‥‥‥僕が平気じゃないんだけどなぁ‥‥」
 ため息をつくのは若手脚本家のアレクサンドロス・ルティオス。
 ともかく映画は撮影に向けて動き始めるのだった。

●映画概要
>設定
・クールな女性を主役にしたモンスター退治のアクション映画。
・敵は狼男とその手下たち。獣化しての演技は可。

>ストーリー
・幼いころ祖母を狼男に殺された赤ずきんの少女はすんでのところで猟師に助けられる。
・手負いの狼男は逃げてしまう。
・成長した赤ずきんは、武器を手に力を増した狼男に復讐を誓い立ち上がる。
・狼男は倒され平和が戻る。

>シーン構成の一案
・回想 赤ずきんが子どもの時の話
・成長した赤ずきん 武器を取って仲間と決起
・赤ずきんたちと狼男の手下たちのバトル
・狼男との決着と結末

>キャラクター
・赤ずきん(回想編ありなら子役と大人役の2人)
・赤ずきんの仲間(猟師の息子など)
・狼男(ラスボス)
・狼男の手下(他の狼男や別種の獣人など)

●その他注意事項
・メインの設定以外なら変更は可能です。アイディアを出しましょう。
・あまり残酷は無しで。ヒーローものとしてかっこよくクールに。
・時代設定は18,9世紀という感じで。自動車は無く、銃器もリボルバー程度までで。
・場所のイメージはヨーロッパの深い森の中で、小さな村や古城がある感じです。

●今回の参加者

 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2814 月影 愛(15歳・♀・兎)
 fa3004 ラム・セリアディア(14歳・♀・リス)
 fa3028 小日向 環生(20歳・♀・兎)
 fa3048 真田・真(30歳・♂・兎)
 fa3594 黒影 美湖(21歳・♀・猫)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 セピアの映像。その中に現れたのは、ラム・セリアディア(fa3004)演じる小さな少女。
 短い黒髪を弾ませて森の中をおつかいの途中、薄茶の瞳を楽しそうに見張って蝶々なんかを追いかけている。
 その頭巾から、赤ずきんと呼ばれた彼女は村の人気者。その日、彼女はバスケットを手に大好きなおばあちゃんの家に。
 画面が瞬転、彼女が森を進むその後ろ姿を見る巨大な影が映る。
 やがて彼女はおばあちゃんの家にたどりつくのだが‥‥。
 画面は暖炉の火で壁に映された影のみに。
 おばあちゃんと会話する赤ずきん、彼女は親しげに話しているのだが、徐々におばあちゃんの影が大きくなる。
 怯えた赤ずきんの声。
「おばあちゃん‥‥なんでそんなにお口が大きいの?」
 応えたのは既に人のではない声。
「それは‥‥お前を食べるためだよ!!」
 画面は暗転。そして銃声。
 次のシーンは、血まみれになって狩人に抱きかかえられる赤ずきん。赤ずきんはただ狼男が消え去った方向を見つめていた。
 撃たれた左目をおさえ逃げる狼男、その姿を睨みつける赤ずきん。
 鬼気迫る表情の赤ずきんは、動かない体を引きずって狼男を追いかけようと立ち上がり気絶するのだった。
 あわてて抱きかかえた狩人の声が遠くに聞こえる中、赤ずきんの呟きが。
「‥‥あの狼だけは‥‥絶対に許さない‥‥」
 そして場面は切り替わる。

「狼男を倒したいんですって?」
 復讐を誓った赤ずきんは、傷が癒えるとすぐにある女性の元へ向かった。
 彼女は村の外れに住まう1人の謎多き女性、黒影 美湖(fa3594)演じるティッシである。
「でも、私はあの狼を許せない!」
「そう‥‥あなたは途中で死ぬかもしれない。それでも己の道を己で切り開きたいなら術を教えてあげますよ」
 こうして、赤ずきんは師を得ることになるのだった。
 画面が次々に切り替わる。
 2人で銃を取って的を狙っている様子。格闘の練習をしてぼこぼこにされている赤ずきんの泣き顔。
 しかし、赤ずきんの誕生日にはこっそりティッシがケーキでお祝いが。思わず泣き笑いの赤ずきんを抱きしめるティッシ。
 こうして赤ずきんは成長していったのであった。

 数年がたった。赤ずきんの腰にはホルスターに納まったリボルバーが。
 瞬間、引き抜いたリボルバーを的に向けると、引き金を引きっぱなしのまま撃鉄を左手でたたき付けるファニングで早撃ち!
 弾丸は立てられた人型の的の頭、心臓、両肩、両足に命中。
「‥‥もう、私が教えることはないわね」
「きっと戻ってきますから」
 振り向いた赤ずきんは凛とした女性に成長していた。成長した赤ずきんを演じるは富士川・千春(fa0847)。
「ええ、待っているわ」
 ぎゅっと抱き合うティッシと赤ずきん。こうして赤ずきんは決戦へと向かうのだった。

『赤いずきんと狼男』

「狼男を倒すためには銀の銃弾がいるってお父様が言ってたわよ?」
 赤ずきんの話を聞いている女性は、数少ない友人である狩人の娘。
 小日向 環生(fa3028)演じる彼女は狩人の実の娘であり、その職を継いだ腕利きの狩人であった。
「ええ、そうみたいね。だから今日村に来た商人から買うつもりよ‥‥」
「えっ! それじゃついに退治に行くのね!」
「‥‥別にメルはついてこなくてもいいのよ?」
 赤ずきんは極力友だちを作らないようにしていた。
 曰く、
『赤ずきんの奴は、復讐の誓いを忘れない為に倒した敵の血で毎回ずきんを染め直してるらしいぜ‥‥』
 狼男を倒す練習として何匹もの魔物を狩った赤ずきんにはそんな噂が付きまとっていた。
 その赤ずきんにとって唯一の友人であるのは狩人の娘だけである。
「でも、貴方だけじゃ心配よ。なんと言おうとついていくからね」

「ほなお前さんがたが狼男を退治にいくっちゅうハンターやな」
 西から来た商人は銀の銃弾を買った赤ずきんと狩人の娘に興味をしめした。
 敷島ポーレット(fa3611)演じる商人は言う。
「まぁ、わいら商人も迷惑しとったしな。ついてったろ! それにぎょうさん弾が必要やろ? 安うしとくよ♪」
 こうして商人を加えた三人が狼男が根城とする城へと向かうことになるのだった。


「ここを通るつもりなら死んでもらうわ」
 古城の一階ホール、そこに居たのは一振りの剣をもった少女であった。
 角倉・雨神名(fa2640)演じる少女の名前はレイ。
 銀の髪と深い蒼をたたえる神秘的な輝きの瞳、しかしその瞳には意思の輝きは見受けられない。
「じゃまをするなら、倒すだけよ」
 ばさっと赤いずきんを翻す赤ずきん、すると魔法のようにリボルバーが引き抜かれている。
 神速のドロウから、一瞬で6発の弾丸を撃ちつくす脅威のはや撃ち!
 その弾丸は、見事レイを打ち抜くのだが‥‥レイの姿がぼやけふっと消える。レイの姿は幻術だ。
「そんなっ!!」
 狩人の娘も、父の形見の猟銃でレイを撃つのだが、その狙いはことごとく外れる。
「無駄な攻撃‥‥どうして、そこまで戦おうとするの?」
 レイは無表情に尋ねながら反撃、剣で赤ずきんと狩人の娘はつぎつぎに傷を負っていく。
 幾度撃っても銃弾は通じない、しかしその時商人が放ったのは閃光を放つ特殊な爆弾!
 閃光と衝撃、一瞬だけ動きを止めたレイを強引に引き倒すとその額に拳銃を突きつける赤ずきん。しかし引き金は引かない
「‥‥なんもためらう必要ないやろ。ちょいと指先に力入れたら、それで終いや」
 たきつける商人を無視してレイの瞳を見据える赤ずきん。拳銃を引くと彼女は言った。
「私の時間はあの時止まったまま‥‥狼を倒すまではあの時のお使いは終わらないのよ」
 そして彼女たちはレイを残して次に進むのだった。
「‥‥ま、好きにしたらええか」
 商人は呟き2人を追う。レイの瞳には始めて意思の輝きが宿るのだった。

「まぁ、あの人形は役立たずねぇ‥‥まあ良いわ。おねぇさんが遊んであ・げ・る‥‥」
 次なる場所は巨大な舞踏会場のように飾られたホールだ。
 そこに居たのはローブ姿の女性、月影 愛(fa2814)演じる悪の魔法使いである。
「おっ! 色っぽい姉ちゃんやな!」
「あら、褒めてくれてありがとう‥‥でも、貴方は私の好みじゃないわね。みんな纏めて死になさい」
 ローブの下には黒皮の扇情的な衣装が。そして、彼女は杖を取り出すと一行に向けて振るうと雷光が閃き、爆発が起きる!
 その爆風にまぎれて、距離を詰めた魔法使いの剣を、ナイフでかろうじて受ける狩人の娘。
 狩人の娘は言った。
「赤ずきん! 貴方はここで立ち止まってる暇は無いはずよ、先に行きなさい!!」
「そや、お前さんは先へいき! ここは任せとき! お前さんたちに死なれたら大損やしな!」
 爆弾を取り出し構える商人と、ナイフを逆手に握って構える狩人の娘。
 その姿を見て赤ずきんは走り出すのだった。
「‥‥いいわ、遊んであげるからいらっしゃい」
 魔法使いは剣を振りかざし戦いが始まった!

「よくきたな‥‥」
 青い毛並みを持つ巨躯の狼男、真田・真(fa3048)演じる最後の敵は残った獰猛にのどを鳴らしながら赤ずきんを迎えた。
「ええ、何度貴方を倒すことを夢見たことか‥‥覚悟しなさい」
「御託はいい‥‥かかってこい」
 手招きする狼男、それに応えるかのように赤ずきんは両の手にリボルバーを握ると狼男を狙って早撃ち!!
 狼男は跳ね飛ぶと、壁を足場に跳ね回る。凶器の両の爪とその鋭い牙を閃かせると、人あらざるものだけが出来る動きで赤ずきんに襲い掛かる。
 とっさに転がって避けた赤ずきん、その頭巾の端が切り裂かれる!
 跳ね起きつつさらに打ち続ける赤ずきん、弾丸が切れれば、片方の銃を空中に投げると一瞬で弾丸を補充。
 落ちてきた拳銃を再び手で拾うと淀みなく弾丸を雨のように降らせるのだった!

「今や! きっついのかましたれっ!」
 もう一つの戦いは終結を迎えていた。
「これは効くわよっ! 滅びなさい!!」
 狩人の娘が猟銃で放ったのは父の形見。特別製の銀の銃弾だ。
 ただの弾丸と甘く見た魔女は、その弾丸を受けてしまう。すると末端から崩れ始める魔女の体。
「わ、わたしが‥‥に、人間に倒されるなんて!!」
 怨嗟の叫びが響くと、魔女は粉々に砕け散りながら消えるのだった。

「はっ! もう弾切れか?!」
 ついに恐れていた瞬間がやってきた。撃鉄がかきんと乾いた音を立て、ついに弾切れをつげる。
 一瞬で接近した狼男は、拳銃を弾き飛ばすと赤ずきんを一撃!
 青い燐光を放つ狼の一撃を受けた赤ずきんは弾き飛ばされると柱の一本にぶつかって止まり、悔しげに顔を歪ませるのだった。
「終わりだな‥‥」
「‥‥いいえ、まだよっ!!」
 息も絶え絶えかと思われた赤ずきん、しかし彼女はのしかかるように近づいていた狼男に対して決死の反撃!
 なんと隠し持った銀の銃弾を握って、その銃弾を狼男ののこった右目に突き刺したのだった!
 咆哮しながらのたうつ狼男、痛む体を引きずって立ち上がると赤ずきんは拳銃を拾って狼男に向けると、最後の弾丸を入れる。
「‥‥切り札は最後まで取っておくものよ」
 銃声、その弾丸は狼男の心臓を確実に破壊していた。
 ぶすぶすと全身から煙を上げて灰になっていく狼男、彼は最後の力で呟くのだった。
「この世界には‥‥まだ私のような‥‥存在がいるのだ‥‥これで勝ったと‥‥思うなよ」

「勝ったのね!! 良かったわ!!」
「怪我してるのよ、痛いわ」
 満身創痍の赤ずきんに飛びついたのは狩人の娘、思わず2人は笑いあう。
「ほな、これでお別れやな‥‥そやからありがとな、赤ずきん」
 ぽりぽりと頬をかく商人。なぜ礼を言われたのか分からず不思議そうな顔をする赤ずきんに対して商人は言う。
「まぁ、今まであの狼男に襲われた商隊にうちの友達もいたんよ‥‥ただ、そんだけや」
 こうして商人はまた別の村へと去っていく。
 そして、彼女たちの姿を遠くから見ているのは、レイ。
「私もあの人たちと‥‥」
 意思を取り戻した少女は、彼女たちの姿になにかを見たようだった。

 彼女たちの旅はまだ終わらないようである。

 END