映画 『FIGHT!』南北アメリカ

種類 ショートEX
担当 雪端為成
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 13.5万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/17〜07/23

●本文

【企画書】

●映画『FIGHT!』出演者・スタッフ募集
・格闘アクション映画『FIGHT!』の出演者とスタッフを募集します。
・俳優は、アクションが出来ることが条件、格闘技の現役選手の出演もありです。
・スタッフは、監督をはじめスタッフ全般で。

●ストーリー
〈設定〉
 アメリカの某都市、その都市の暗部を牛耳る組織が運営する“地下闘技場”があった。その地下闘技場は、さまざまな格闘技者がルール無用でぶつかり合う現代のコロッセオ。毎晩のように行われるファイトでは賭けが行われ、巨額の金が動く場でもあった。
 選手たちはそれぞれ卓越した格闘技の腕前を持ちながら、さまざまな問題を抱えている者ばかりである。傷害事件を引き起こして表舞台に立てなくなった豪腕のボクサーや、組織の用心棒に身を持ち崩した空手家などである。 選手たちは組織に飼われて、八百長すら行う選手から、自らの限界に挑戦するフリーの選手たちまで幅広くいる。

〈ストーリーの流れ〉
・パトロンを持たないフリーの選手たちが主人公
・彼らがある日、急成長するとある組織のボスから八百長を持ちかけられる。
・八百長を断る彼ら。すると見せしめとばかりに味方の1人が犠牲に。
・選手たちは、彼らの誇りを守るために立ち上がり、振興の組織を潰すために立ち上がる!

●補足
・主役側の選手が4人、そのほかは敵側の手下格闘技者とボスが適当かと。
・本物の格闘技アクションを売りにする予定。なので、本当の格闘技選手の出演も良い。
・ただし、格闘技の強さ=活躍度ではなく、どれだけ華麗で強烈なアクションができるかが重要な点になる。

・監督や脚本家が参加すれば、ストーリーを多少変更するのもかまわなくなる。
・細かいアイディアや、キャラクターの描写は個々に任せられている。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0757 グリード(24歳・♂・熊)
 fa1714 茶臼山・権六(44歳・♂・熊)
 fa2593 孫・黒空(45歳・♂・猿)
 fa2603 ダン・バラード(45歳・♂・狐)
 fa2651 モハメド・アッバス(40歳・♂・狼)
 fa2653 レオナード・レオン(29歳・♂・獅子)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3425 ベオウルフ(25歳・♂・狼)
 fa3595 スイート・ザ・ウルフ(25歳・♀・狼)

●リプレイ本文

●特別コーナー
「さぁ、今日放送されるのは新作格闘アクション映画『FIGHT!』です! そこで脚本家をお招きしました」
 映画が放送される前の十数分、組まれた特番に登場したのは茶臼山・権六(fa1714)だ。
「この映画の魅力について語っていただけますでしょうか?」
 問うレポーターに対して、着流し姿の権六は鷹揚に頷いて口を開く。
「我輩は脚本家として細部の構成と全体のバランスを調節したが、今回は俳優の方々の働きも大きかったな」
「俳優さんたちの活躍‥‥ですか?」
「ふむ、劇中の人物像については各俳優の意見が大幅に取り入られたのである」
「なるほど‥‥それならば俳優さんたちも自分に似合ったキャラクターを演じることができるってことですね」
「うむ、そのとおりである」
「それでは最後に映画で注目すべきところはどこでしょうか?」
「悩むところであるが‥‥詳細に描かれた登場人物たちの心情と爽快なアクションであるな」
「なるほど。今日はありがとうございました! それでは本編のほう、どうぞ〜♪」
 静かに座る権六とテンション高めのレポーター、ゆっくりとカメラがズームアウトして画面の外に。
 そして、画面が暗転、本編の始まりである。

●プロローグ
 轟々と歓声が響く空間。コンクリートむき出しの地下空間には不思議な熱気が渦巻いていた。
 老若男女、貧しいなりの者からいかにも金持ち然としたものまであらゆる人間の姿が見える。
 その中心には四方を金網に囲まれた巨大なリングが。
「おおっと、ここで挑戦者! 抵抗もむなしく袋のねずみか?!」
 リングには二つの人影。一方は空手着を着た黒人の男。もう一方はがっしりとした体格のプロレスラーだ。
 挑戦者は空手着の男。金網の角に追い詰められつつも拳を繰り出してけん制するが‥‥
「おー! 捕まったぞ挑戦者、これは絶体絶命! ここで見せてくれ、ミステリアン!!」
 喉を片手でつかんで吊り上げつつ、もう一方の拳を突き上げてアピールするのは男。
 彼はミステリアン・ファイヤーことビル・クロフォード、演じるのはダン・バラード(fa2603)だ。
 片腕で挑戦者をさらに持ち上げると、帯をつかんで高々と掲げる。
 そしてそのまま、背中からまっさかさまにリング中央にたたきつける!!
 轟音を立てて、叩きつけられる挑戦者はそのまま戦闘不能になり、ゴングが鳴り響いたのだった。

 そう、ここは社会の暗部によって管理される地下闘技場。
 巨額の掛け金が飛び交い、闘士たちは時には命すら懸けて戦うのだった。

 勝利を収めたミステリアン・ファイヤーは炎柄が描かれた真紅のローブを羽織って、花道を帰る。
 投げかけられる声援と女性ファンの嬌声。
 豪奢な金髪を後ろに撫で付けた伊達男のミステリアンは特に女性に愛想を振りまきながら歩いていくのだった。
 そして場面切り替わって、別の戦いに様子がつぎつぎに映し出される。

 漆黒に染め上げられた柔道着を身に着けてリングにたっているのはビショップ。
 事故で記憶をはじめ全てを失った格闘家としてリングにたつ彼を演じるのは辰巳 空(fa3090)。
 彼は今日も冷徹に体が覚えていた技を駆使して敵を投げ飛ばすのだった。
 寡黙に勝利を収めた彼は、とある場所へと呼び出される。

「エ・ボ・ニー!!!」
 歓声とともにリングに飛び出した女子プロレスラーはエボニーことジェーン・ストラサイド。
 スイート・ザ・ウルフ(fa3595)演じる彼女の戦う相手はなんと頭二つも大きな巨躯の男。
 しかしエボニーは体格差をものともせずに末端破壊を連続で決め、ラストはフランケンシュタイナー一撃。
 リング中央で華麗に宙返りしてアピールするエボニー。
 彼女は控え室に届けられた手紙で呼び出しを知ることになる。

「はっ! どいつもこいつも手ごたえが無さ過ぎるぜっ!!」
 豪語する男は、ビクトリー・レオことスティーブン・トリニティー。
 レオナード・レオン(fa2653)演じる派手な男だがその実力は折り紙つきだ。
「次の相手はどいつだっ!」
 携帯に入っていたメールは彼に、とある場所へと来るように指示していた。

 側方倒立回転、ロンダート、後方宙返り!
 試合後のパフォーマンスを見せているのは相麻 了(fa0352)演じるジョーカー。
 試合のあち、いつものように妹へと電話をかけた彼は、見慣れない差出人からのメールに気づく。

 そして、ミステリアン・ファイアーことビルは親しい女性の部屋にて。
「ダン、携帯がなってるわよ?」
 シーツで体を隠した女性がビルに声をかける。
「‥‥いったいあの男が何の用だろうな」
 メールの文面を確かめた彼は、怪訝そうな顔をするのだった。

 5名の地下闘技場選手。
 彼ら全員に届けられた内容は同じ、夜11時にその日使用されていないリングがある会場の一つに来るように書かれていた。
 場所は倉庫街にある古びた建物の地下で、彼らも幾度か訪れたこともある場所だった。
 しかし、彼らが総じて怪訝に思ったのはその差出人であった。
 クリフォード・ハリス。最近とくに力を増してきた新興の犯罪組織のボスである。
 地下闘技場で活躍する選手を数多く抱えるも、その誰もが卑怯な行動を厭わない残虐な人間ばかり。
 首領であるハリス自身も武闘派として恐怖されている男であった。
 その男が5人の選手へと声をかけた。これはいったい何を意味するのだろうか‥‥。

●提案と黒い陰謀
「前置きは必要ねぇな‥‥今日お前たちを呼んだのは他でもねェ」
 ライトが煌々とリングを照らすがらんとした会場では、すでにクリフォード・ハリスが待っていた。
 ボディーガードと思しき三人の男を従えて彼はリングの上に土足で立っていた。
 グリード(fa0757)演じる黒社会の首領は、まるで臣下を睥睨する王のごとく選手たちを見下ろしていた。
 高さも幅も厚みも十分な巨躯は獰猛な熊を思わせ、仕立てのいいダークカラーのスーツと金無垢のネックレス。
 葉巻の端を噛み切り吐き捨てると、火をつけて紫煙を吸い込む。
 ハリスを見上げながらリング脇に立っているのは呼び出された5人の選手。
 思い思いの格好で集まった彼らの表情は硬い。
 なぜならこれから告げられる話が不愉快なものであるという確信があったからだ。
「単刀直入に言うぜ。てめぇら、俺の下につけ」
 傲然と言うハリスに一同は言葉を失った。
「金なら不都合はさせねぇぞ。守るべきことはたった一つだ、俺の言うことを聞きゃいい。どうだ?」
 ぱちんと指を鳴らすと、後ろに控えたボディーガードの一人がスーツケースを持ってくる。
 ハリスがスーツケースをあけると、そこには束ねられた札束がぎっしり。
「とりあえず手付金としてこれをもって来たが‥‥まさか嫌だなんていうやつぁいねえよな?」
 しばしの静寂、それを破ったのはミステリアン・ファイアーことビルだ。
「俺は降りるぜ。いつも言ってるだろ? 八百長だけはしないってな」
 まっぴらだとばかりに両手を挙げて笑みを浮かべるビル。
「八百長なんかした日にゃ上等のスコッチもまずくなる。それに‥‥応援してくれる女に向ける顔がねぇしな」
 その言葉に続くように選手たちは次々に声を上げた。
「八百長は美しくないな。俺の美学に反する」
 髪を後ろに撫でつけながら、ビクトリー・レオことスティーブンも言う。
 くちびるにはハリスをあざ笑うかのように冷笑を浮かべて。
「あたしも降りるわ。気のいい仲間と試合するときは、本気でやりたいしね」
 にやりと笑みを浮かべていったのはエボニーことジェーン。
「それにしても、やっぱりあんたたち最高ね。あたしが認めるだけあるわ」
 からかうようにひじでスティーブンやビルをつついてジェーンは笑みを深くするのだった。
「‥‥私も遠慮させてもらおう」
 ひとことぽつりと言ったのはビショップ。侍がごとく自らの矜持を貫く。
 地下の闘士には珍しく彼には孤高の気概が見えるのだった。
 そして最後はジョーカー。
「‥‥その金は確かに魅力的だな」
「ジョーカー! あんた本気で‥‥」
 思わずジェーンが声を荒げるが、彼女は彼に病気の妹がいることを思い出す。
 治療には金がかかる。ジョーカーは金のために地下で闘っているのではなかったか‥‥
 しかし、ジョーカーはにっと唇を吊り上げると、言葉を続ける。
「でも、そんな金じゃシャミーは喜んでくれないさ。不器用な生き方が気持ちいい時もあるさ」
 吹っ切るようにジョーカーもきびすを返す。
 そして話は終わったとばかりに5人全員で会場を後にするのだった。

 その背中に向けてすさまじい視線を向けるハリス。
「‥‥いいだろう。だが俺に逆らって、この街を歩けると思うなよ‥‥」
 ぐしゃりと手の中で葉巻がつぶれるのだった。

●悲劇
 倉庫でのハリスとの会談から数十分、人通りの耐えた深夜のスラムを歩いているのは方向が一緒だったエボニーとミステリアン・ファイヤー。
「ちょっと待ちな」
 その2人に暗がりから声が投げかけられた。
 そこに姿を見せたのは3人の男。
「お前らはさっきの‥‥」
「あら、言うこと聞かなかったら今度は無理やり? 芸が無いわね」
 ミステリアン・ファイヤーが気づいたとおり3人は先ほどのハリスのボディーガードだ。
 見ればおくにはハリスが乗っているであろうリムジンが止まっている。
「で、お前らが相手をするつもりか? いいから、かかってきな」
 ミステリアンが挑発をすると、ボディーガードたちが襲い掛かってくるのだった。
 先頭を突っ込んできたのは黒人の巨漢。モハメド・アッバス(fa2651)演じるアブドル・ラーマンというレスラーだ。
 アブドルはがっしりビルと正面から組み合う。このまま行けばミステリアン有利という様子だ。
 しかし、アブドルは組み合ったまま、なんと口からなにかをミステリアンに吹きかけた!
 あわてて目をこするミステリアンだったが、目が一切利かない。そんなときにするすると近寄ってくるのは黒いスーツの男。
 彼はベオウルフ(fa3425)演じるジェンドという名前のバウンサー。
 着崩したスーツの男は目を押さえてよろめくミステリアンに近づくと、その拳をポケットから取り出す。
 そこには凶悪な形のメリケンサック。
 反応ができないミステリアンのあごを強烈な右ストレート一閃。
 脳震盪を起こされてよろめくミステリアンを後ろからアブドルが抱える。
 そしてそのままジェンドはサンドバッグをたたくかのようにメリケンサックの連打をミステリアンに打ち込むのだった。
「ちっ! 大勢で一人をリンチだなんて、最低だね。いま味方を呼んでくる!!」
 背を向けて逃げ出そうとするエボニー。しかし、そこにはいつの間にか接近していた中国風の衣装の男が。
 黒い武道服の壮年の男は孫・黒空(fa2593)演じる李・白龍。
「逃がすわけにはいかんのう」
 じゃきんという音とともに伸ばしたのは合金製のロッドだ。
 即席の棍を振りかざすと、李はそれをエボニーへと振り下ろす。
 不意をつかれたエボニーはその一撃で意識を失ってしまうのだった。

 そして次の日、3人の選手は再び集まっていた。
「ちくしょうっ!!」
 だんっと机をたたいて悔しげにつぶやいたのはジョーカー。
 彼の目の前には、無残な姿をさらすミステリアンと、その写真と一緒に入っていたエボニーの髪のひと房。
「‥‥公開処刑か。まったく趣味の悪いことをしやがるな」
 ビクトリー・レオが手に持っているのは、ハリスからの手紙。
 そこにはエボニーを人質にとったことと、エボニーを殺されたくないなら、組まれた試合に出るように促してあった。
「私のような者を増やさないためにも、こんなことは許せませんね」
 ぎりと奥歯を噛むように吐き出されたのはビショップの言葉。
 こうして、残された3人の格闘家たちは、ハリスのわなにあえて乗り込むことを決めたのだった。

●最後の戦い
 大歓声と熱気に満ちた会場。そこにはひときわ巨大なリングと6人の選手が立っていた。
「今回の試合は変則的なバトルロイヤルです!!」
 実況の声が響く中、ジョーカー、ビクトリー・レオ、ビショップの3人は眼前の敵を見つめていた。
 それぞれ拳法家らしい李、用心棒然とした黒スーツのジェンド、そしてプロレスラーのアブドルだ。
「本日のメインイベント! いよいよゴングです!!」
 ゴングが鳴り響くとともに、試合が始まった。
 しかし、3人はまったく動けなかった。
 嘲りの表情でせまる、3人の刺客。しかし彼らには反撃できない理由があったのだった。
 リングサイドのボックス席。そこにはクリフォード・ハリスととらわれのエボニーの姿があった。
 こうして、一方的な試合が始まってしまうのだった。

 李は連続攻撃でジョーカーを攻める。ジョーカーは防御に専念するもその猛攻にどうしようも無かった。
 ビクトリー・レオに対してはジェンドが仕掛けていた。
 ボクシング仕込みのジャブからフック、ボディブローでガードを下げさせてからの左フックのコンビネーションが決まる。
 そして止めとばかりに、ビクトリー・レオに対して飛びつき腕ひしぎ。みしりと嫌な音が響く。
 そしてアブドルはビショップを滅多打ちにしていた。
 狂気攻撃を隠す気もないアブドルの猛攻で、すでにビショップの頭からは鮮血がこぼれていた。
 今にも倒れそうな3人、それを見て思わず腰を浮かせたクリフォード・ハリスだったが、その瞬間動いた者がいた。

 エボニーがわずかな隙を捉えて、実をひねると一歩逃げ出して、リングへと走りよろうとした。
 その後ろを追ってやってくるハリス。その後ろ髪をつかんで捕まえようとしたそのときに、エボニーは叫んだ。
「私はいいから、闘ってっ! ビルの敵を討って!!」
 そこまで叫んだところで、追いついたハリスが拳銃でエボニーを思いっきり殴りつける。
 崩れ落ちるエボニー、しかしリング上の3人の刺客たちにも瞬間の隙が生じたのだった!

 3人の選手は一斉に反撃に移る。
 ビショップは今までと変わらずに繰り出されたアブドルの豪腕を紙一重でかいくぐる。
 そしてそのまま相手の体に身を寄せると、相手の腕の勢いをつかって体勢を崩させて投げ飛ばす!
 天地が一瞬にして逆になって、投げ飛ばされるアブドル。そのまま彼は床にたたきつけられるのだった。
 一瞬の早業、おそらくアブドルは自分の身になにがおきたのかわからなかっただろう。
 しかしそこでビショップはがくりとひざを折る。血を流しすぎた上にダメージが大きすぎるのだ。

 続いてビクトリー・レオ。
 ジェンドは左右のラッシュから危険な肘の一撃。
 その一撃が空を切った瞬間、レオは一瞬にして後ろに回り込む。
 左手で相手の首をホールド、右手で相手の腰をつかむ。
 そのまま高々と相手を抱え上げ叩き落すブレーンバスター。
 さらに脳天から落とす垂直落下式に加え、投げる瞬間体をひねって威力を倍加!
 旋回垂直落下式ブレーンバスターが見事に決まり、ジェンドは一発で意識を失うのだった。

 そしてジョーカー。
 李の連打を後ろに飛んで交わした次の瞬間、体操の踏み切りの要領でそのばから一気に飛び上がる。
 開脚側方宙がえりにひねりを入れて、狙うは相手の頭。一瞬のうちに助走もなしに放たれた強力な蹴撃。
 予想外の角度から落とされた一撃で、李も一撃で昏倒するのだった。

 一瞬にして、部下が全滅してしまったハリス。
「ちっ、役立たずどもが‥‥使えねぇ!」
 そういうと、ハリス自身がリングにあがると、目前のジョーカーへと襲い掛かる!
 いきなり急所の目を狙った攻撃、しかしそれをジョーカーは辛くもかわす。
 さらにハリスは豪腕をふるうのだったが、ジョーカーは地面を転がってなんとさらに踏み込む。
 そして体を起こしざまに、飛び上がって下から顎を一撃!
 その一撃でハリスも崩れ落ちるのだった。
「名づけて『疾風拳』‥‥なんてね」

 一瞬観客たちはなにが起こったのかわからなかったものの、すぐに大歓声が沸きあがった。
 派手な飛び入りがあったものだと解釈したらしく、なんとか生き残った3人の選手たちはやっと表情を緩める。
 ビショップはあわてて駆けつけてきた権六演じる応急医によって手当てを受けつつもどこか晴れやかな表情をしていた。
 ビクトリー・レオは殴られたエボニーの身を案じて駆けつけ、命に別状をないと確認して安堵していた。
 そしてそれを見て一息ついたジョーカーは、携帯を取り出してやっと落ち着いて妹へと電話を掛けるのだが。
 ダーンッ!!! 突然の銃声。
 なんとハリスが袖口に隠し持った拳銃から放たれた凶弾がジョーカーを襲ったのだった。
 あわててレオがハリスを取り押さえる。そしてジョーカーはやけにゆっくりと倒れる。
 会場全体が息を呑み、ハリスのみが薄笑いを浮かべるその瞬間。なんとジョーカーが身を起こした。
「いてててて‥‥備えあれば憂いなしってね」
 試合が終わって着込んだジャケットの裏地をめくるジョーカー。
 そこにはなんと防弾チョッキが。
「ん? ああ、大丈夫だよ」
 そしてあわてて妹への電話に向き直るジョーカーであった。
 こうして、仲間の犠牲はあったものの、かれらは戦いのリングにたつことができるようにあった。
 あるものは失ったものを探すために。
 あるものは失えないものを守るために。
 彼らの戦いは今日も続いているのだった。