映画出演するモデル急募南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
雪端為成
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/29〜11/04
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●本文
「むーう‥‥モデルが今ひとつぱっとせんな‥‥やっぱり新人俳優じゃ締まらないな」
「そうですねぇ。衣装も特別なものじゃないですし」
そんな会話を交わしているのは、とある映画監督と美術担当のスタッフ。
その監督が取っている映画は、アメリカのファッション界を舞台にしたもので、新人デザイナーとモデルの恋やベテランデザイナーとの確執などを題材にしたドラマ映画なのである。
しかし、今回美術担当が悩んでいるのはちょっと別のこと。どうやら映画で、ファッションショーのシーンにでてくるモデルたちが今ひとつ気に食わないようであった。
「やっぱり本職のモデルとかに頼んだ方がいいのかもしれませんね」
「だがなぁ‥‥もうあまり予算は無いはずだぞ?」
「それが問題なんですけど‥‥あ、いいこと思いつきましたよ監督!」
「ん? なにを思いついたんだ?」
「ええ、現職の新人モデルと新人デザイナーに頼みましょう。映画に登場すれば彼らにとっては宣伝になりますし、新人ならばそれほどのギャラは必要ないはずです!」
「ふむ‥‥それはなかなかいい感じだな。それでいってみようか」
さて、どうする?
●リプレイ本文
●作戦会議
「脚本と美術構想を見せて戴けますか?」
フェリシア・蕗紗(fa0413)が監督に問う。
突然のオファーに応えて映画撮影所にやってきたモデルの集団の行動は、とりあえず意見交換からである。
「とりあえずベテランと新人の対比って形でファッションショーが展開してもらえれば‥‥」
ストーリーボードを皆で見ながら相談中。
「ベテランは堅実、新人は和やアジア民族風を取り入れた映画栄えする華やかな物‥‥といった感じでどうしょうか?」
桜 美鈴(fa0807)は台本を読みながら提案。
「ベテランは舞台なんかにも凝る。それに比べて金のない新人はシンプルな舞台って感じかな? 全体的な雰囲気がフォーマルで‥‥」
大道具なんかの舞台設定を眺めて注文をくわえているのはエスカ・アランディル(fa0576)。
「恋愛ドラマの要素があるみたいだから、男女のペアルックファッションもいいかもね♪」
荻咲・姶良(fa0489)が元気に提案していたりする。
そんなこんなで、大体の流れは決まった。
ベテランの堅実さが出るような衣装が前半、後半は斬新な新人のファッション。
新人は和をメインとして、ペアルックを基本とする。
そして続いては、衣装とショー自体の準備である。
ファッションショーで使用する予定だった衣装をざっと集めて、会議室のような部屋を借りて準備が始まった。
部屋の扉には『関係者以外立ち入り厳禁!』の張り紙。
パイプ椅子に腰掛けてちょびっと暇そうな星野・巽(fa1359)が見張り番である。長い足を組んでのんびりしている。
そこにやってきたのは夕陽色の瞳の青年、伊奈汐人(fa1691)だ。持っているのはどうやらデザイン画や型紙のようである。
「星野さん、ご苦労様です」
「あ、完成したみたいですね」
手がふさがっている汐人の代わりに巽が周囲をうかがってから扉を開ける。
すると中には‥‥忙しそうに働きまわる獣人の姿があった。
「お帰りなさい伊奈さん、もうすぐ終わるので次にかかれるわ」
一角獣の姿で衣装の直しをしていたのは凜音(fa0769)だ。手にした衣装をひょいと取り上げて汐人に見せる。
今回、衣装の製作はほとんど汐人が中心となって進んでいた。
もちろん同じ獣人の衣装さんとか美術さんに手伝ってもらいつつであるが、モデルたちもショーの準備をしつつお手伝いだ。
「いくつか手直しをしてきたからこれでいけると思う」
新しいデザインがを数枚広げながら汐人が言う。いよいよ最後の追い込みだ。
「でも、ばれないよう獣化して服を作るなんて、鶴の恩返しみたいですね」
まあ、多くのスタッフが獣人であるからそんなに珍しい事でもないのだが。
そして同じ部屋では、ショーの練習なんかも進んでいた。
「あ、靴が届いたみたいね。それじゃあ荻先さん、ちょっと歩き方の練習は休憩して試してみましょう」
「ハイヒールか厚底かぁ。下駄はないの?」
フェリシアが借りてきた靴を姶良が借りて履いてみる‥‥流石に下駄はないが。
「で、今回俺の着る服はどれ? ‥‥このウェディングドレス? 俺が着てもいいのかな?」
真鳥・華月(fa1069)がおいてあったウェディングドレスを体に当ててくるくる廻ってみたり。
ちなみにそのドレスは今回使うものではないのだが‥‥中性的な華月にちょっと似合ってるのが不思議である。
「それじゃ、俺は買出しに行って来るぞ、なんか買ってくるものあるか?」
エスカが言えば、さっきまで靴を履きながら、
「それにしても、みんな背が高いよね〜」
ぴょんこぴょんこ飛び跳ねてみたり。
「これはもうちょっと飾りを増やしてアグレッシブなイメージの方が‥‥」
と美鈴が衣装を汐人に見せれば、
「そうですね。感性にあった物の方がアピールに繋がると思いますし」
といって手直しする。
そして、いよいよ本番がやって来るのである。
●ファッションショー!
ステージのライトに照らされて、ショーが行われる。
観客は本当の客ではなく、あくまでも擬似的なものであるがモデルたちは最善を尽くしたのだった。
「カメラを気にし過ぎて直視しないようにね」
カメラ慣れしている姶良のアドバイスを聞いて、いよいよいよいよカメラが廻り始めた。
まず始めは、ベテランの担当というシーン。
ファッションの雰囲気としては、高級感漂うシックなものがメイン。
衣装にもかなりの資金をつぎ込みきらびやかな印象である。
光の陰影をうまく使って落ち着いた印象の衣装がつぎつぎと紹介される。モデルは主に女性だ。
フェリシアには黒が基調でセクシーに肩と背中が大きく開いたストレートなロングドレス。
姶良は可愛らしさを活かしつつも大人びた雰囲気のミニスカートとジャケットの組み合わせだったり。
凜音はVネックでシンプルなフォルムのタイトドレスに一際目を引く豪奢なショール。
そして美鈴は髪を上にまとめて大人しい雰囲気。巻きスカートにスタンドカラーの上にゴーントレットを組み合わせた夜会服だ。
そして、話し合いを重ねた新人の衣装のシーンへと移り変わる。
今まで堅苦しい衣装を着ていたモデルが再び登場するときは、それぞれペアになって登場しているのだ。
恋人たちといった様子で現れる事で、映画の中での新人側の心情まで示唆しようという計らいである。
まず最初は巽とフェリシアのコンビだ。
巽は袖なしのハイネックな上と、黒地で裾の広がりが和風を思わせる活動的な服。
それにあわせるようにフェリシアも、和服のように前合わせなドレスだ。夏のアゲハが裾にあしらわれている。
並んであるくと長身の二人だからかなりの迫力がある。そして端までやってくると突然構えを取る二人。
高々と足を上げてテコンドーの動きは巽。ゆるゆると複雑ないくつもの構えを取るフェリシア。
凛々しい二人がときに交錯して動きを見せるのに、映画であるのにもかかわらず自然と観客が息を飲む。
続いてやって来たのは汐人と姶良だ。
まだかすかに幼さが残る汐人と年長ながら小柄で可愛らしさを振りまいている姶良。
年上の彼女に連れられているといった風情である。
特徴的な髪と瞳の色に合わせるように、和風な袖に楓の模様。さらに袖が切替になった独創的な衣装なのが汐人。
底の厚い靴を履いて今風な衣装に和風な小物をあしらった姶良。
その二人が、ゆっくりと楽しそうに手を繋いでやってくる。明るい印象が場の空気をがらっと切り替える。
続いてやってきたのはエスカと美鈴だ。
ごてごてとしたジャケットの背中に吼える狼の図柄。下品と紙一重の派手で荒々しい衣装は精悍なエスカだ。
それに対して、サリーを纏うかのように和風の記事を身に纏うのは美鈴。
美女と野獣といった対照的なイメージの二人である。
そして歩きながら不敵な笑みを浮かべたエスカは、美鈴を抱えてぐるりとターン。歓声の中で美鈴は髪を整える。
そして最後は華月と凜音。純和風と非和風。陰と陽の対比という対照的な組み合わせだ。
古風な和服のイメージをぎりぎりまで残した衣装の凜音は静々と。
対してぎりぎりまで現代的なイメージにかすかに和が見える華月。
その二人が舞台から消えて、シーンは次に移る。
「オッケー!!」
万雷の拍手と共にファッションショーのシーンは成功のうちに終わるのだった。