『SURVIVE』 �Vアジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 雪端為成
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 09/16〜09/20

●本文

人の強さを測るのはなんだ。
 何枚の瓦を割れるか? どれだけ重いものを持てるか?
 ‥‥そんなものでは人の強さは測れない。

 一番強いのは、最後まで生き残った奴、最後まで立っていた奴だ。

 『生き残れ』という単純なルールの新進気鋭の格闘イベント、それが『SURVIVE』である。

 参加資格は無く、ルールも最低限。
 目つきや金的など急所攻撃の禁止と武器使用の禁止である。
 試合に参加する双方の合意が得られれば、それがルールとなる。
 試合の判定も単純、残ったほうが勝ち。
 どこで試合を止めるかすらも双方の合意の下に決まる。
 意識を失ったら? ギブアップあり? ドクターストップ?
 よほどの危険行為でない限り、ほとんどのことは許される。
 試合は一般的なリングで行われ、放送はされないライブイベントである。
 参加する選手も、プロから素人までなんでもあり。
 ケンカが強いただの不良だって参加することができる。
 ただ自分が強いと信じるものだけが参加できるのだ。

 さらに戦士たちを盛り上げるために、数々のイベントが予定されている。
 ミュージシャンによるライブや、映像、ライブアート。
 これらも戦士たちの血を滾らせるに違いない。

 精神の闘争であるアートと、肉体の闘争である格闘技。
 そこでは生存本能のみが頼りだ。

●補足
 格闘技サイドは対戦相手との合意の下に詳細なルールを定めてください。
 立ち技系でも関節技系でも、総合格闘技系でもかまいません。
 ただし、危険行為や残虐行為がまかり通るルールはさすがに禁止です。
 死人が出そうなことはもちろん避けてください。
 まずは話し合いで自分の相手を決めましょう。
 1対1でもタッグでも、3対3も可能。トライアングルマッチもありです。
 また、なるべく男女混合の試合も避けてください。
 もし人数に端数が出た場合は審判や解説、イベント側に回ってもらいます。

 イベントサイドは自由に何でもやってください。
 コンサート、パフォーマンス何でも思いつけばオッケーです、
 しかしあまりにもそぐわない場合は没になることもあります。
 残虐なものや、人に不快感を与えるようなものは特に禁止です。

 サポートで参加する場合、全体に関わるような役職につくことは出来ません。
 セコンド程度が限界だと考えてください。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0757 グリード(24歳・♂・熊)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1308 リュアン・ナイトエッジ(21歳・♂・竜)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2594 ドン・ドラコ(30歳・♂・竜)
 fa2748 醍醐・千太郎(30歳・♂・熊)
 fa2814 月影 愛(15歳・♀・兎)
 fa3770 エミニー・デルオート(26歳・♀・竜)
 fa4613 レディ・ゴースト(22歳・♀・蛇)

●リプレイ本文

A SURVIVEのリングサイド。
 本来なら実況も解説も居ないこのリングに今日は珍しく、マイクを備えた放送席が。
 実力ある選手が参加するようにもなり、解説を求める声も多くなったのだ。
「それでは、本日の解説をご紹介しましょう。実力派レスラーの醍醐・千太郎(fa2748)氏です」
「‥‥よろしく」
 寡黙なレスラーとして名の通っている醍醐。とはいえ、仕事の解説はしっかりこなす心積もりのようだ。

 こうして今までとは少し違った状況の元、再び戦いの火蓋は切って落とされた。
 今回はトライアングルマッチを含む全5試合。
 波乱に満ちた格闘の祭典が今、幕を開ける!

●第一試合 尾鷲由香(fa1449)VS月影 愛(fa2814)
「尾鷲選手は本職はスタントだが、テコンドーやジークンドーを習得した格闘家でもある」
 解説・醍醐の言葉が響く中、由香はいつもおなじみの迷彩柄のタンクトップで登場。
「対する月影選手は‥‥モデルだが、自己流の格闘技を使うとか。非格闘家同士の戦いとなったようだな」
 AV女優はセクシーさも武器というところか。彼女はなんと女子高校生の制服姿。
 ブレザータイプの征服にミニスカート。一部のファンからは熱狂的な支持を集めていそうである。
 対戦経験のある両選手、前回は惨敗したアイが由香にどれだけ食いついていけるかが焦点となりそうだ。

「今回の戦闘で重要なのは体格さだ。体を使うとはいえ、月影選手は格闘家としての体ができているわけではない」
 そう、醍醐の言うとおりアイは体力で大きく劣る。さらに身長でもかなりの差があるのだ。
 そのハンデをどうにかして縮める方法が無い限り勝つことはおろか、いい勝負をすることすらおぼつかない。
 そこをどう考えて作戦を組んできたか、注目である。
 そしていよいよ試合開始。カーンッ!! ゴングが鳴り響いた!

 ゴングが鳴らされるぎりぎりまで、上着を脱いでファンサービスをしていたアイ。
 対する由香は一気に飛び出せるように、力を抜いて構えていた。
 そしてゴングの音が響いた瞬間、はじかれたように飛び出す由香。先制攻撃を狙ったのだ。
 しかし、その眼前に突然覆いかぶせられたものがあった。
 それはアイが着ていた上着。なんとアイは目隠しとして自分のブレザーを投げつけたのだ。
 セクシーなパフォーマンスと思いきや、実は奇襲の布石。そしてアイは一気呵成に攻撃を開始した。
 まずはローキック。意外に腰の入ったローは足首を外側から強打する。
 かぶさったブレザーをとろうとして意識が向いていない瞬間に、痛烈なダメージを足に与える一撃。
 だれしも意識していれば打撃を受ける瞬間防御することはできる、しかし不意打ちはそれができない。
 ゆえにその一撃はかなりのダメージを与えたに違いないはずである。
 その隙を逃さず、アイは一気に連続攻撃。こぶしに蹴り、相手の側面に回り込もうとしながらの一撃だったのだが‥‥。
「‥‥打撃には体重を乗せなければ効かない。しかし彼女には乗せるための体重が決定的に足りない」
 身長たった144センチ。愛らしい容姿は中学生といっても通るかもしれない。
 しかし、それが通用するのは自分のホームグラウンドのみ。この格闘技の世界では愛らしさは通用しない。
 まとわりつくブレザーをやっと振り払った由香、ダメージはほとんど無い。
 そして反撃が始まった。
 最初は膝の内側へのキレのあるローキック。
 膝の少し上辺りにローキックがしっかり入った場合、体重を支える膝ががくっとずらされることになる。
 その瞬間、人の体はバランスを失い硬直する。バランスを保とうと体が瞬間的に反応したその刹那。
 それは格闘家にとって、最高のチャンスなのだ。
 硬直したそのとき、由香の引き戻した足がローの起動を逆巻きに戻り、ハイキックへと変化。
 そのハイキックがアイの側頭部に直撃する。
 パァンッ! とはじけるような音がして蹴り飛ばされるアイ。
 かろうじて腕を上げてガードしたアイもなかなかのものだが、そのガードごと吹っ飛ぶのはやはり体格差が原因だ。
 さらに跳び後ろ廻し蹴りにつなげた由香、アイは完全に腕を上げてのガード姿勢だがそこに突き刺さったのはこぶし。
 高い蹴りから体勢を低くしての腹部への双拳返し突き。これがガードの無いところに突き刺さる。
 144センチの小柄な体格にはこの攻撃は重すぎた。
 みぞおちを射抜いたこの一撃で、ダウンしたアイ。彼女はそのまま立ち上がることはできなかったのである。
 これにて、決着。第一試合の勝者は尾鷲由香。
「やはり体格さが大きな要因だったようだな。いくら鍛えていても、中学生が大人に勝つのはなかなか難しいものだ」
 身長にして30センチの差は、リーチにも体重にも大きな差を生み出し、それがはっきりと差を分けた試合となった。
 顔への攻撃が無かったのは幸運だが、体中についた痣でしばらく本業に支障がでそうなアイなのである。

●第二試合 ドン・ドラコ(fa2594)VSグリード(fa0757)
「次の試合は両方とも俺よりでかい選手だ。2メートル近い選手が真正面からぶつかる迫力の試合になるだろうな」
 その言葉の通り、リングに入ってきたのは巨漢の2人だ。
 なぜか僧兵姿で入ってきたドラコ。でもやっぱり同じ雅楽でコーナー上で赤い毒霧をはいてアピールである。
「あたしのサムライソウルにかてるかしら?」
 お約束ともいえるアピール。こうした積み重ねがレスラーに歴史と伝説を刻むのである。
 そしてもう一方、熊のマスクのグリードは王者の貫禄とばかりにゆったりと入場。
 ロープをくぐって静かにコーナーに陣取るのだった。
「豪快な技をもつパワーファイター同士の対戦だ。もしかすると血を見るような展開になるかもな」
 醍醐が冷静に告げる。果たしてその言葉は真実になるかどうか。
 カーンッ! そして、ゴングが鳴り響き、試合が始まった!!

 試合の開始は静かに始まった。双方手を出してがっしりと組み合って手四つの体勢。
 ぎりぎりと力比べをする2人、ほぼ同じ力が拮抗する。
 軋みをあげる上腕二頭筋、広背筋が盛り上がり僧帽筋がみしみしと音を立てんばかりに張り詰める。
 永劫とも思える数瞬の攻防の末、惜しかったのはグリードだ。
 がくっと膝を折るドラコ、そのままグリードは冷酷にブーツのつま先で鳩尾を蹴り上げる。
 しかしドラコも去るもの、並みのレスラーなら悶絶する一撃を鋼のような腹筋で受け止める。
 そして起き上がると強烈なチョップを一撃! 対するドラコは腹部への蹴りの乱打で対抗。
 乱打戦の最中、ドラコの足に決まったのはグリードの強烈なロー。
 そして膝を突いたドラコの膝を足場にして、シャイニングウィザードが炸裂。
 もんどりうって転げたドラコは思わず場外にエスケープするのだった。
 追うグリード、しかしこれは誘いであった。
 場外に降り立った瞬間、椅子の一撃がグリードに直撃。すかさずふらついたグリードをコーナーに叩きつける。
「思いっきりプロレスの試合になってきたな。ラフプレーもドラコらしいが、これをグリードはどう返すか‥‥」
 グリードは額への強烈な一撃でなんと大出血! だくだくと血を流しながらも試合は続く。
 ドラコとグリードは双方ふらつきながらリングに戻り、そこでドラコはコーナーポストからなんとミサイルキック!
 しかし、つかんでなんとそれをつかんでボディスラムで返すグリード。
 倒れたドラコをうつぶせにしてから両腕をダブルアームロックの体勢で引き起こす。
 うつぶせのまま両腕だけ背中側に引っ張られるドラコ、しかもグリードはそのまま自分で膝から落ちてドラコの顔面をマットに叩きつける!!
 これでドラコは鼻を強打したらしく、こっちも流血。そして倒れたドラコに対してアイアンクローを狙うグリード。
 しかしこれはなんとか手で押しとどめるドラコ。ぎりぎりと再び拮抗する2人の腕力。
 こんどはドラコが下から蹴り飛ばしてグリードを撃退、そしてそのままドラコはグリードの後ろに回りこむ。
 そしてなんと相手の股下にもぐりこむと無理やり肩車の姿勢に!
 このまま後ろにたおれこんで叩きつければ、ハイタワードロップの完成なのだが、そこでなんとグリードが反撃に。
 自ら体を横に大きく振って、首を挟んだまま180度回転、そのまま重力にしたがって足で首を挟んで投げる!
 強引に放たれたフランケンシュタイナーでなんとドラコを投げ飛ばしたのだ!!
 体重で100キロを優に超える選手同士、爆音というのがふさわしい轟音をたててマットを揺るがす。
 そのままグリードはドラコをピンフォールで勝利を奪うのだった。
 血にまみれた両選手、凄惨ながら迫力ある試合はこれにて幕を閉じるのだった。

●第三試合 MAKOTO(fa0295)VS夏姫・シュトラウス(fa0761)
「マコト選手はプロレスラーとしてのキャリアもあるがそれ以上に打撃に長けた格闘家でもあるな」
 醍醐がそう評したマコト。今日はオレンジと赤のセパレートの衣装である。
 対する選手は白虎の覆面をしたレスラースタイル。
 白地に黒縞の虎模様衣装をまとったホワイトタイガーマスクとしての登場のナツキだ。
「ルールは総合系らしいが、どうやらホワイトタイガーマスクの方はグラウンドで攻める作戦のようだな」
 重心を低くしてアマレスの選手のようにタックルの体勢。
 お互いが相手を倒すために立てた戦略が功を奏すか。それを知るための試合がいよいよ始まる。
 カーンッ! ゴングと大きな歓声の中、試合開始である。

 こぶしを構えたマコトとピーカブースタイルで頭をしっかりと防御するナツキ。
 前傾姿勢のナツキはじりじりと距離を測りながらマコトと対峙する。
 マコトは牽制のジャブを連打。顎を狙ったジャブは全てなつきの防御の前に阻まれる。
 そして深い前傾姿勢のためになかなかボディやローが届かない。
 これにはマコトも距離を測りかねて、数度牽制を行うのだがその瞬間!
 超高速タックルで突貫するナツキ、うちおろしのハンマーパンチを耐えてがっしりと胴体に組み付くナツキ。
 ここでマウントを取るのではなく、関節を取るナツキ。
 まずは足を取ってのアキレス腱固め! ぎりぎりとマコトの足の筋がきしみながら伸ばされていく。
 しかし、レスリングの経験もつんでいるマコト。これはうまく回転して返す。
 そして再び対峙する両者。マコトの攻めは徐々に速度を増していった。
 まずはジャブの乱打に混ぜた強烈な裏拳と連携の後ろ廻し蹴り!
 これにはさすがにナツキも反応が遅れて、蹴りの一撃は見事に太ももに直撃。
 この影響もあったのか、二度目のナツキのタックルは足を踏ん張って重心を低くしたマコトに受け止められる。
 胸の下に抱え込んだナツキの体軸をずらすマコト、その瞬間力が逃げる。
 そしてそのまま、上から体重をかけるとタックルががくっと緩み、その瞬間マコトは投げる!
 ブレーンバスター気味に投げ飛ばされるナツキ、しかしナツキは見事に受身を取ってヘッドスプリング。
 すたっと起き上がると、起き上がる前のマコトにつかみかかる。
 今度も飛びつくようなタックルから腕ひしぎの体勢。総合のグラウンドでよくある攻防だ。
 両腕をクラッチして伸ばされないようにするマコト。全力で腕を引くナツキ。
 しかしこの場合、僅かに小柄だったことが有利に働いた。
 ナツキは全身の体重すらかけて相手の腕を引き見事に腕ひしぎが決まる!
 これにはさすがのマコトもタップでギブアップするしかないのであった。
「この試合は、どっちが勝ってもおかしくなかったが、今回ばかりはうまく作戦が働いたというところだろうな」
 醍醐が語るとおり、非常にきわどい試合であった。
 ピーカブースタイルで防御を固めるナツキに対して投げ技でマコトが対応していたら結果が違ったかもしれない。
 もしくはナツキが、打撃での攻防を思い描いていたらどうなっていただろう。
 そんな格闘技の奥深さが垣間見える試合展開だった。
 正々堂々とした試合に惜しみない拍手が送られ、これにて試合終了である。

●第四試合 リュアン・ナイトエッジ(fa1308)VSマリアーノ・ファリアス(fa2539)
「リュアン選手とマリアーノ選手‥‥この試合もやはり体格差が重要だろうな」
 リュアンは184センチ、対するマリアーノは157センチ。およそ30センチの差がある。
 第一試合の展開でもわかるようにこの差はリーチにも差を生み、それが攻防の中で生きてくる。
 この差をどう越えるか、それが若手、いや超若手格闘家のマリアーノの課題となるのである。
 道着とオープンフィンガーグローブのリュアンは合掌礼をしてリングへ。
 マリスは楽しげにぴょんぴょんと飛び跳ねて体を動かしている。
 固唾を呑んでファンが見守る試合の行方は‥‥いよいよ試合開始のゴングが鳴らされる。
 カーンッ! 一ラウンド目のゴングが鳴り響いた。

 じりじりと構えるリュアン。その構えは磐石だ。
 飛び込めば、中段と上段の突き、離れていても間合いぎりぎりなら足刀が届く距離。
 まさしく自らの周囲の制空圏を把握しての待ちの姿勢である。
 対するマリスはなんとも奇妙な動き。酔拳とでも言うようにふらりふらりと左右にゆらゆらと動く。
 酔拳の動きの要は重心移動だ。ぎりぎりまで残した重心を移動の瞬間に高速移動させる。
 自分から倒れこむようにして進む緩急自在の移動、これにはリュアンも手を出さず、じっと待ちの姿勢。
 マリスのミドルへの蹴り! これにはリュアン距離を読んで僅かに後退。
 空を切るマリスの蹴りをやり過ごした瞬間、リュアンの足刀が放たれる。
 しかしそのタイミングは読んでいたのか、マリスもバックステップで強引に後退。
 双方不発のまま再び距離を置く両者。再び戦いは振り出しに戻るのだった。
 飛び込んでバックブローをするマリス。それをかわして追撃するリュアンだがマリスがタイミングを読んで下がる。
 こうした攻防が続き、一ラウンド目は終了するのだった。
 第二ラウンドの開始、開始とともに飛び出したのはマリスだ。
 命知らずのダッシュから強烈な浴びせ蹴り! 全身のばねを使ったきれいな回転を描く強烈な一撃がリュアンを襲う。
 前回り受身をするかのように体を投げ出すマリス、そのかかとがリュアンに直撃するかと思えたのだった!
 しかしリュアンは危なげなくガード。全体重が乗った一撃だったためカウンターは返せないが、しっかりと受け止める。
 体重が乗る技は威力不足の感じが否めないマリス、再び対峙する2人だが、今度はマリスが苛烈に攻める!
 バックブローから下がらずに、さらに蹴りや拳を見舞うのだが、距離で優位にたつリュアンは迎撃の一撃!
 マリスも懸命にガードするのだが、それでも数初は突きやロー、ミドルが被弾する。
 そして第二ラウンドも終盤、マリスのローキックを足でしっかりガードするリュアン。
 そのままたたんだ足を伸ばして上段への足刀蹴り! しかしそれをマリスはしゃがんでかわす。
 そしてマリスは蛙跳びのアッパー! 強烈な威力のアッパーが一直線にリュアンへと向かう!
 しかし、この技。身長差がある相手には今ひとつ効果が薄いのだ。
 リュアンもこれをぎりぎりでガード。後ろに下がったものの、しっかりと手で受けて致命的な一撃はさけ、これで第二ラウンドは終了するのだった。
 そして、最終ラウンド。
 こんども一気に飛び出したのはマリス。しかしマリスはぎりぎりで急ブレーキ。
 そこからバックステップで距離をとる。
 距離をとったり近寄ったり。縦横無尽にリングを跳ね回るマリス。
 しかし最終ラウンド、リュアンは手数を増やしそれでマリスを追い込んでいく。
 攻撃を避ける方向がわかれば、思い通りの方向に誘導することができるのだ。
「やはりキャリアでもリュアン選手の方が一枚上手のようだな。お互いダメージはそんなにないが、マリス選手の方が幾分不利といったところか‥‥」
 分析する醍醐。そして彼は付け加える。
「ラッキーヒットがあればひっくり返るかもしれないが‥‥」

 突きと前蹴り。徐々にプレッシャーをかけながらマリスをコーナーに追い込むリュアン。
 もしマリスがガードを固めて足を止めたら、そこでリュアンは一気に攻め込めばいい。
 体力で勝るリュアン、乱打戦になればラッシュでも体力に勝り射程で勝るリュアンが勝つのは道理である。
 マリスの背後にはコーナーが。逃げ場はどこにも無い。ぐっと踏み込み、連続の突きを放とうとしたその瞬間!
 マリスは予想外の行動に出るのだった。
 くるっと背中を向けて、コーナーポストを手でつかむ。
 コーナー上部を支点にして、そこから両足を後ろに伸ばし、ラビットキックを放ったのだ!!!
 本来ならば反則すれすれの技。しかしここはルールのないSURVIVEのリング。
 本来ならば隙だらけの博打技。しかしその瞬間、リュアンはラッシュのために踏み込んで射程に入っていた。
 本来なら当たるはずの無い技。しかし攻撃を放つ瞬間にこそ最大の隙が出る。
 リュアンの拳のリーチをマリスの全身を使った蹴りのリーチが上回る。
 強烈な蹴りの一撃がリュアンの顔に叩き込まれる。その威力には不幸にも自分のダッシュの威力が加わっている。
 そしてそこでリュアンの意識は闇に落ちた。
 はっと気がつけば、目に映るのはリング上で煌々と輝くライト。
 やっと大歓声が耳に入り、リュアンははっと我に返る。
 マリスのラビットキックはリュアンの顎に下から上に跳ね上げるように命中したためリュアンは脳震盪を起こしたのだ。
 ゆっくりと立ち上がるリュアンは、勝利の喜びに沸くマリスと硬く握手を交わす。
 そしてマリスとリングに合掌礼を返して去るのだった。
「あのタイミングでラビットキックを放つ度胸はすごいとしかいいようがないな‥‥」
 醍醐も驚く幕切れ、こうして第四試合も幕を閉じるのだった。

●最終試合 泉 彩佳(fa1890)VSエミニー・デルオート(fa3770)VSレディ・ゴースト(fa4613)
 初のトライアングルマッチを行うSURVIVEのリング。
 女子レスラーによるトライアングルマッチ、タイプの違うレスラー三名による最終試合に、場内は沸きかえっていた。
「トライアングルマッチでは、試合運びが重要だ。一人を相手にしていても勝ちをさらわれることがあるし‥‥」
 醍醐は最終試合でも淡々と言葉をつむぐ。
「両方をいっぺんに相手にすれば自分が負けるのは想像に難くないだろう」
 そしてそれぞれが入場だ。
 アヤは若くしてかなりの人気のよう。ファンから歓声がとびそれに応えながらリングイン。
 エミニーは白いワンピースにガウンを羽織、手には優雅に薔薇を一輪。ゴージャスかつ清楚にリングイン。
 そして最後はゴースト。ぼろぼろの修道女服。返り血のとびちった衣装とざんばら髪。
 ゆらゆらとうめき声を発しながらリングに近づくと、ずるりとサードロープの下を張って入場だ。
 深くかぶったローブを脱ぎ捨てるとまさしくゴーストという雰囲気。新人としてつかみはオッケーのようだ。
 そして三者がそろい、ついにゴングが鳴り響く。
 興奮が最高潮に達したSURVIVEの会場。怒号と化した歓声の中、最終試合がいよいよ始まった!

 開始早々、エミニーがゴーストへと低空ドロップキック!!
 轟音を立てながら吹っ飛ぶゴースト。そしてエミニーが立ち上がった瞬間、後ろ廻し蹴りでなぎ倒したのはアヤだ。
 アヤが一人勝ちしたと思われたその瞬間、いつの間にか復活していたゴーストが小柄なアヤを抱えてボディスラム!
 しかしそこに何時の間にかコーナートップにのぼっていたエミニーのスワンダイブ式低空ドロップキック!
 ぶっとぶゴースト、そこに再びアヤ。着地で膝を突いていたエミニーの膝を使ってシャイニング式踵落し。
 そして返す刀で、起き上がったゴーストに対してDDT! 小柄なアヤが大柄なゴーストを気合とともにブン投げる!
 投げられたままごろごろと転がっていくゴースト。そのまま場外へ落ちると、場内にはアヤとエミニーが。
 体格で勝るエミニー。アヤをキャッチするとロープに振ってからの戻ってきたところにDDT。
 そして場外に逃れていたゴーストを見つけると、なんとそのままダッシュ!
 トップロープをつかみ、回転して背中からつっこむトペ・アトミコで爆撃!!
 ゴーストとエミニーは場外でころがるが、なんとかリングに復帰。しかしそこで待っていたのはアヤだ。
 先にエミニーにドロップキック一閃。そしてふらつくゴーストにスイングDDT!
 しかしそこでアヤが復活したエミニーに捕獲されて強烈なジャーマンスープレックス!
 しかもジャーマンの落し先にはゴーストが! アヤを巻き込んでふっとぶゴースト。
 一見エミニー有利と思われたのだが。
「エミニー・デルオート選手は飛ばしてるな。かなり体力を消耗しているはずだが‥‥」
 醍醐が言うとおり、プロレス技はかけるほうも消耗するのだ。
 そして起き上がったゴーストは、エミニーと組み合うと両手首をつかんでダブルリストアームサルト!
 さらにアヤを捕獲、小柄なアヤをパワーボムの体勢でつかむと、叩きつけるのではなく後方に反り投げる!
 ダブルリストアームサルトで倒してエミニーの方向にジャンボスープレックスでアヤを放り投げ激突させるゴースト。
 そしてゴーストはエミニーをホールド。しかしこれにはアヤが攻撃。
 小柄な体躯を生かして、なんとエミニーをホールドするゴーストの後頭部をそろえた両足で蹴り飛ばす619!
 倒れるゴーストにチキンウィングフェイスロックをかけ、ドラゴンスリーパーにつなげて終わらせようとするアヤ。
 しかしこれを撃破したのは、再びエミニー! スワン式ドロップキックで再びふっとばす。
 そして最後の攻防。もっとも体力に優れたゴーストがぎりぎりで温存していた体力を振り絞る!
 まずはエミニーをジャンボスープレックスで反り投げる!
 そして小柄なアヤの首をつかんで持ち上げ、そのまま開脚ジャンプで叩きつける!
 アヤをそのまま場外に落し。ジャンボスープレックスから復帰しようとしたエミニーにさらに大技。
 ハイジャックバックブリーカー、つまり起き上がらせたエミニーを前かがみにさせ、クラッチして抱えあげる。
 そしてそのまま肩の上に持ち上げて相手の両脇を支え、そのまま開脚ジャンプで飛び上がり前に叩きつける!
「ハイジャックバックブリーカーから、叩き落すブラックタイガーボムをつかうのか! リングネームと違って豪快な‥‥」
 醍醐の言うとおり、強烈な一撃。そして倒した状態からそのままえび固め。
 変形の横十字固め、ゴーストは十字の技を使うことをよしとするのだった。
 そしてこれは見事スリーカウント。
 アヤとエミニーをぶつけて、その隙に体力を温存するという作戦で、体力に勝るゴーストが紙一重で勝利をものにしたのだった。
 これにて全試合終了。選手たちは万雷の拍手を持ってすばらしい試合への感謝を労われたのであった。