雪に閉ざされた場所にてアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 02/28〜03/04

●本文

 北海道の市街から少し離れた山の中にぽつんとたたずむ建造物があった。
 それは個人が道楽で立てた小さな天体観測所だった。
 旧式だけど大型の天体望遠鏡と小さなペンションというその観測所。
 今では所有者の手を離れ、天文部の合宿などに使われる施設となっていた。

 そしてそこで、痛ましい事件がおきた。
 この冬の時期、雪に閉ざされたその観測所に客があった。
 地方の大学からちょっとした旅行に来ている天文好きのカップルである。
 そんな2人がこの観測所をしばらくの間、借りていたのである。
 
 ある日、この施設を紹介するために地元のテレビ局が取材に訪れた。
 取材はつつがなく終りテレビクルーたちはペンションへと顔を出したのだが。
 そこには今まで顔を出していなかった2人が。
 そしてその2人はナイトウォーカー化したのである。
 情報化が進む昨今、どこから彼らにナイトウォーカーが感染したのか知る術はない。
 しかし、襲撃を辛くも逃げのびたテレビクルーたちは、WEAに報告を送った。
 雪によりそこから外に逃げ出すことはないだろうが、山中の観測所にてNWが2体確認、と。
 こうして、君たちに依頼が出されたのである。
 目的は、2体のナイトウォーカーの完全撃退。
 ちなみに依頼完遂までこの場所は閉鎖される。
 向かうルートは一つだけ、山の麓から続く登山道のみ。
 冬季につき、本来なら閉鎖されているところをテレビクルーは雪上車にて向かったとのこと。
 よって、依頼を受けた場合雪上車にて現場まで向かうこととなる。
 観測所は、小さな観測ドームとその下にある資料室や小さな会議室などの集まった観測所基部。
 そして観測所の地下には原動機や大型の機材、資材などが置かれている。
 隣にくっつくようにして小型のペンションが。
 最大で20名ほどが宿泊できるような小さな平屋建ての建物がある。
 このどこかにナイトウォーカーが潜んでいるはずである。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1797 小塚透也(19歳・♂・鷹)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3392 各務 神無(18歳・♀・狼)
 fa3652 紗原 馨(17歳・♀・狐)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa3982 姫野蜜柑(18歳・♀・猫)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●突入前
 冬の雪山、そこには10名の討伐者が集まっていた。
 それぞれ腕には覚えあり。その彼らがこれから向かう先に怨敵NWがいるわけである。
 目的のペンションを見る視線は一様に鋭い。戦闘準備に余念も無く、いよいよ突入が迫っているのであった。
 そして戦いに向かう心意気と、その準備も様々。
「これからNWと戦う、これからNWと戦う、これからNWと戦う‥‥よし!」
 びしっと自分に気合を入れる姫野蜜柑(fa3982)、体操をして体をほぐしながら。
「あ〜、寒いな‥‥」
 スノーウェアのモデルを気にしてぼやく小塚透也(fa1797)。
「確かに‥‥耐えられない程ではないが流石に寒いな」
 戦闘前の静かな一服とばかりに紫煙をくゆらす各務 神無(fa3392)。
「やっぱり中‥‥ですかね。広い場所が、あると良いんですけど‥‥」
 雪の中うっそりと聳える建物を見やりながら呟く紗原 馨(fa3652)。
 それぞれの準備は様々、しかし無駄にしている時間はない。
 準備を各人が終えいよいよ中に入る時、そこには10の獣の影が。
 完全獣化し、人の姿を捨て去った獣人たち。彼らの狩が幕を開けたのである。

●観測ドームにて
 まずは外の通用口から観測ドームの内部へと一行は侵入した。
 物音は無く、ただ静寂が広がるのみと思われるその内部。
 しかし彼らはその音を聞き逃さなかった。
「ん、何か‥‥聞えませんか?」
「‥‥前!」
 馨の声に静かに耳を済ませて警句を発したのは因幡 眠兎(fa4300)。
 彼女は暗がりの中、咄嗟に飛び出した。
 その身にまとっているのは気流の鎧、それが突進してきた一体のNWの攻撃と真っ向からぶつかった。
 気流にそらされた一撃はNWの棘が生えた拳。
 それを腕でガードしつつミントはその強化された脚力で一足飛びにその懐へ。
「シュッ!」
 左右の拳から放たれるコンビネーション、ボクサーらしい見事な一撃。
 しかしそれはNWを覆う強靭な甲殻に阻まれる。
 そして同時に、もう一つの影が動いていた。
「上です!」
 優れた聴覚でもう一つの動きを聞きつけたのはパトリシア(fa3800)。
 同時に、そのパトリシアはドームの壁面を足場に壁を駆け上がっていた。
 そしてそれを追うようにして壁を駆ける二頭の狼が。
 イルゼ・クヴァンツ(fa2910)と神無がパティを追うようにして地壁走動を使って壁を駆け上ったのだ。
 ドームの上部、壁面に沿うように設けられた小さな通路、そこにNWの姿があった。
 作業用の通路のNWを囲むようにして壁を蹴って駆け上がる三頭の狼。
 そしてさらに二つの羽ばたきがそれに加わった。
 すこし離れた通路にふわりと着地、NWに向けて銃を構えたのは御影 瞬華(fa2386)。
 そして空中を羽ばたきながら、NWに対峙したのはトーヤだ。
 NW一匹に対して5人、だれもが場所を選ばないで戦闘が出来る。
 トーヤが放った飛羽針撃が戦いの始まりを告げる。高速で通路を移動し跳ね回るNW。
 それをチームワークで狩る狼たちを鴉とオオタカが追うのだった。

 一方、ミントのコンビネーションを受けたNWは怯んだのか身を翻した。
 その行く先はドームの地下通路、この先に基部がありペンションへと繋がっているはずの場所であった。
 それを追うのは地上に残っていた5人。
 それを追う彼らは万全の体制を整え、追跡を開始した。
 先頭には闇の衣を纏うのは夏姫・シュトラウス(fa0761)。
 風の鎧を纏うミントと並んで前衛として盾となり通路を進撃する。
 その後に続くモヒカン(fa2944)、手には凶悪な鉄球を下げ。
「ゲット・レディ! レッツバーニング・JUSTICE!!」
 咆哮もかくやの大音声。気合十分の様相である。
 その後に狐の馨と猫のみかんが続き、彼らは地下の連絡通路を追っていく。
 警戒するが姿は無く、どうやらNWはペンションまで移動した模様。
 彼らは一気にその後を追って、ペンションの扉を開け放ったその瞬間。
 前衛の2人に襲い掛かったのは、NWの一撃だ。
 ナツキは神速の感覚で、ミントは卓越したフットワークで。
 NWの攻撃をかわしざまに見事なカウンター二連撃がNWに叩き込まれる。
 ペンション内部での攻防、こちらも5対1の戦いが始まったのであった。

●縦横無尽の立体戦闘
 翼持つ2人と壁を足場に戦う3人。その立体的な攻めにNWは防戦一方であった。
 トーヤの飛羽針撃と御影の射撃。それが次々にNWの後を追って打ち込まれる。
 ソニックブレードの抜き打ちで追撃するのは神無。ソードofゾハルを強烈な一撃で追いすがるのはパティ。
 そしてその2人を援護しつつ、爪と牙で追跡するのはイルだ。
 鋭い動きでその5人の追撃をかわし続け、たまに命中する物があったとしてもその装甲で凌ぐ。
 いまだ獣人たちは決定打を与えることはできていなかったのだ。
 しかし防戦一方のNW、ついにその均衡が破られるときが来たのだった。
 均衡を破る第一撃はイル。突進力を利用してその牙の一撃でNWの喉笛を狙う。
 それを飛び退って回避するNW、しかし一瞬足が止まったのを見逃さなかったパティ。
 彼女は壁面を足場に、剣を一閃! なんと壁に固定されていた通路の一部が轟音と共に切断!
 ぐらりと一瞬傾く通路、落ちるようなことは無いがわずかにバランスを崩すNWだが、それで十分。
 一瞬で間合いに踏み込んだのは神無。居合いでの牽制から、鞘を押さえていた左手を振り上げ。
「――爆ぜろ」
 爆音。NWの胸に叩き込まれたブラストナックルが爆裂、NWの胸部の装甲を大きく爆ぜ割ったのである。
 白狼の神無はその衝撃でよろめくが、それを支えるパティとイル。
 そしてNWにはさらに追撃、御影が放った弾丸が次々にNWの装甲を削る。
 そしてトーヤの援護の下、銃を持ち替えながら一気に接近。
 近距離からのソルジャーガンの一撃!! 吹っ飛ぶNWへはさらにトーヤがフルパワーの破雷光撃。
 そして止めは御影の虚闇撃弾。全力で叩き込まれた数々の技にNWのコアは粉砕されるのだった。

●万物粉砕の室内戦闘
「ぶるらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 気合一撃、モヒカンがぶん回すスパイクハンマーは家具を粉砕しつつNWをぶっ飛ばす!
 衝撃にぐらつくNW、そこに追撃するのは接近戦のプロフェッショナルの2人だ。
 強靭な脚力で接近したミントは、NWの一撃をヘッドスリップで回避。
 腕をかいくぐりつつ、そのボディに速射砲のような左右の乱打!
 拳の形が残るほどの連続打撃に、弾き飛ばされるNW。
 超人的な身体能力を持つ獣人たちの技はスポーツを遥かに凌駕し、その威力はすでに凶器であった。
 そしてそれを追うのは白虎の姿。ナツキは高速振動する爪を振りかざし追撃。
 高速振動する爪は全てを切り裂き、彼女が放つ振動エネルギーは無機物を破壊する。
 壁にぶち当たって家具調度に埋もれるように崩れたNWもその一撃にかかれば周囲の物事粉砕されていくのであった。
 そしてNWの注意がナツキに向いた瞬間、NWの視界に突然現れる別の獣人。
 動かない獣人に向かって突進するNWだが触れた瞬間それは崩れ去る。
 馨の作った灰人形は囮の役目を果たしその瞬間、馨自身が突貫。メリケンサックの一撃がNWのコアにめり込む。
 NWも反撃するが、そこで馨は引き他の誰かが飛び込んでくる。
 室内の狭さを利用したその怒涛の攻撃に見る見るうちにNWは疲弊していくのだった。
 その時、NWは不利をさとったのか大きな窓へと突進、逃げ去るのかと思われたその瞬間。
 その進路に突如現れたのはみかん、瞬速縮地による瞬間移動である。
 飛び出そうとしていたNWの頭上に現れたみかん。ドスを逆手に構えて。
「そのコアァ! ワイがとったるでー!」
 気合と共に体重を乗せた一撃! 流石のそれにはNWも叩き落される。
 そしてそこに止めを刺したのはモヒカンの一撃。金剛力増で増した膂力から放たれた爪の一撃。
 NWのコアは粉々に砕け散り、こうしてすべてのNWは討ち取られたのだった。

●死者への手向け
 施設内でのすべての情報媒体の処分と封印が完了し、依頼が終わる。
 戦いが終われば彼らは獣では無い。血に飢えているわけでも無く戦闘狂でも無い。
 彼らは血も涙もあり、情を持つ者へと戻るのである。
「‥‥亡くなったカップルにはなんの慰めにもならないかもしれませんが」
 パティは慰めと希望を花言葉に持つ白い小さな花を手向け静かに呟く。
 そしてみかんは手をあわせて。
「ココで星を眺めたふたりが、最後は幸せな時間を過ごせてたと思いたいね」
 静かな祈りとともに、依頼は無事成功し終わりを迎えたのであった。