試写会での警護大募集アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/19〜11/22

●本文

「こまったなぁ‥‥」
「どうしたんですか?」
 頭を抱えているのはプロデューサーだ。
 アメリカでなかなか成功を収めた映画の日本試写会を大々的に行うとの事で日本入りし、現在その準備が進んでいる。
 が、なにか困ったことがあるようだ。
「実はなぁ、試写会と舞台挨拶をやるんだが、どうやら荒れそうなんだよ」
「荒れるっていうのは‥‥ファンがですか?」
「ああ、ファンをはじめ結構な数が集まるし、コアなファンが多いからなあ」
 はぁとため息をついて、電話をかけるために携帯電話を手に取るプロデューサー。
「仕方ないから、警備に当る人員を増やすぞ。配備とか忙しくなるからな!」
 プロデューサーの激の声が響くのだった。

 話によれば、試写会のためにやってくる俳優、監督は総勢5名。
 監督と主演の俳優たちである。
 試写会と挨拶のスケジュールは既に決まっているので、警備担当はそれぞれ配置を決めて警護に当ることになる。
 試写会が行われるのは都内のシアター。
 警備担当が配置される場所とタイミングは3カ所。
 舞台挨拶に出席するために集まる俳優や監督がシアターに入るとき。
 入場場所は正面からで、ファンに対しての顔見せをかねるために混乱が予想されている。
 二ヶ所目は、舞台挨拶中。
 もしものときのために備えて配備が必要だと思われる。
 そして最後は、試写会中の控え室。
 監督と俳優たちは映画を見ないで控え室にいるので控え室に突撃をかける記者やファンがいるかもしれないからである。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0145 辻原 光(27歳・♂・鷹)
 fa0200 影山志狼(22歳・♂・狼)
 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0310 終無(20歳・♂・蛇)
 fa0431 ヘヴィ・ヴァレン(29歳・♂・竜)
 fa0770 宵咲 狂華(15歳・♀・猫)
 fa1137 ジーン(24歳・♂・狼)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●嵐の前に
「この通路とこの通路は封鎖して、この入り口の前には3名置くのが効果的だな」
 現場の警備担当と意見交換をしているのは烈飛龍(fa0225)。
 時刻は試写会が行われる予定の日の前日。警備の補充として配備された面々が事前の準備に忙しく働いている。
「サクラは無理か‥‥まあ、仕方ない。万全をつくそうじゃないか」
 ところ変わって会場内の大ホール。舞台を前にして、1人の男が立っていた。
「護衛、か‥‥まぁ我侭は言ってられないな」
 男は殺陣師の辻原 光(fa0145)。少々仕事の中身に物足りなさを感じているようだった。
 彼は舞台の上を見上げて静かに呟き、そして再び会場の下見へと戻っていく。
 控え室の準備が進む中に混じって控え室の周囲を見てまわっている者たちもいた。
「警備ってモデルの仕事じゃねぇなぁ‥‥ま、貰えるもの貰えりゃ文句ねえケドな。‥‥そ・れ・に」
 不満を表すかのように眉をしかめて宵咲 狂華(fa0770)はそう言うと、突然表情を明るくして隣を振り向く。
「‥‥しゅーむと一緒だしな〜」
 狂華はにっこりと微笑むと隣の男、終無(fa0310)の首に腕を回すとじゃれるように頬にキスをするのだった。
 それに対して終夢はふっと笑みを浮かべて、
「あんまりいちゃつくと他の警備員さんに睨まれますよ? ほら狂華君、お仕事終わったら何か奢ってあげますから、がんばりましょう」
 終夢は残念そうな狂華の髪をくしゃっと撫でると、連れ立って会場の下見に戻るのだった。

●入場は賑やかに
「正面入り口。問題なし。やはり偽装特殊部隊行動計画を準備したほうがよかったのではないかね?」
 肩口に取り付けた無線機のマイクのスイッチを押しながら、苦笑を浮かべて言うのは緑川安則(fa1206)だ。
 黒のスーツにサングラス。ガードマンというよりはシークレットサービスという出で立ちで会場の様子を見回している。
 安則が言うのも一理あった。なぜなら会場の入り口付近は人並みでごった返していたからだ。
 会場に入るために並んでいる人だけでもかなりの数で、さらには野次馬まで集まってきてしまったからさあ大変。
 警備員たちも対応におおわらわで、会場入り口は混乱を極めていた。
「‥‥まさかあの映画の挨拶だとはな‥‥」
 列の整理をしながら呟くのはジーン(fa1137)だ。視線の先は、会場のところどころに張られた映画のポスター。
 実はこの映画彼と縁のある映画だったのだが‥‥
「‥‥とりあえずは仕事に集中だ。‥‥お客様、大きいお荷物はこちらで預からせていただきます」
 さっと気分を切り替えて、会場内への誘導をてきぱきと進めるジーンであった。

 するすると滑るように会場前にやって来たのは黒のリムジン。
 これでもかと目立つ車体に、スモークガラス。いかにも重要人物が乗っているといった様子だ。
 そう、監督をはじめ主演俳優たちの到着である。
 さっと、車の扉へと近づいて扉を開けたのは安則と飛龍。2人して黒づくめの格好だ。
 車のドアが開き、中からぞろぞろと姿を見せる監督たち。いっせいに光るフラッシュの明かり。
 大きな歓声が上がり、少しでも海外から来たスターたちを見ようと観客たちが身を乗り出し、警備員たちと拮抗する。
 軽く手を上げて挨拶する監督たちとそれを先導しながら警備する安則と飛龍。
 そんな中会場のそこかしこで、小さな混乱がおきていた。
「お客様、それ以上身を乗り出さないで下さい」
 静かな口調でジーンが身を乗り出す観客たちを抑える。と、ジーンがふと1人の男に視線を向けた。
 やせぎすでどこか落ち着きの無い様子の男は、ジーンと目が合うとびくっと身をすくめるようにして列に紛れていくのだった。
「‥‥会場内の警備担当者に連絡。不審人物が1人。服装は‥‥」
 身を乗り出すファンたちを抑えつつ無線機で連絡を取るジーンであった。
 一方、野次馬たちの中にはもちろんマナーの悪い奴もいる。
 後方で髪を金に染めた若者たちが列に割り込もうとしていたのだった。
 と、そこに現れたのは光だ。
 ずいっと進み出た光を見て立ち止まる若者たち。
「悪いが、入場券を持っていないのなら此処までだ。戻って貰えるか」
 有無を言わせぬ様子で立ちふさがる光、しかし若者も強引にぐいと光を押しのけようとして、
「‥‥痛えな、おい」
 サングラスをずらしながらのドスの効いた一声、すっと手を腰の警棒にやったのが見えたのか若者たちは、すごすごと引き下がったのだった。

 混乱を抜けて、VIPたちは無事控え室へと進んでいく。
 監督となにやら親しげに二言三言交わしていた安則は、控え室へと続く通路に立ちふさがると飛龍とともに立ちふさがるのだった。
「申し訳ありませんが、ここから先は関係者以外立ち入り禁止です。取材は広報部を通してもらえますか。また監督などへのプレゼントはこちらでお預かりさせてもらいます」
 にこりともせずにそう告げると強引に身を乗り出した記者の突進を1人を片手一本で止めて言う。
「すまないが、一応規則なんで。規則と規律は重視しないとね」
 一方の飛龍は、どっしりと構えて記者たちを通さないようにしていた。
「取材のスケジュールは決まっている。まあ、今回は諦めてくれ」
 それを聞いた弱小の取材人たちは諦めるしかないのであった。

●控え室にて
「めーわくだろうが、ファンはファンってか」
 控え室の位置を示す看板を逆の通路に向けて移動させながら狂華は呟く。
 そして、控え室の場所まで戻ってくると同じく控え室の警備についている終夢と並んで立つのだった。
 と、そこにやってくるのは胸にスタッフのプレートをつけた青年。
 プレートはこの会場の専属スタッフならつけているものだが‥‥
「おい、アンタの担当はあっちだろ?」
 控え室に用があってという感じでやって来た青年のプレートの示している担当は入場担当。
 いぶかしく思った狂華は、相手の行く手をふさぐようにして問いかけたのだった。
「い、いやあ、突然控え室の担当になりまして‥‥」
 すると、あからさまに怪しい青年に視線を向けて隣にいた終夢が告げる。
「ここの担当は我々だ、君がする仕事は無いはずだが?」
「‥‥ちっ、ちょっと通してくれればいいのによ」
 どうやら、金で買収されたのかプレートだけを手に入れた記者のようである。
 強引に控え室の戸に手をかけようとするのだが、そんなことをこの2人は許さない。
 手首を握ると重心を崩させるように記者の手を引いて、くるりとドアから引き離してしまう終夢。
「さ、不審人物にはお引取り願いましょーかねぇ」
 押さえつけられた記者を前にして狂華が言うと、暫くじたばたしていた記者も慌てて逃げ帰っていったのだった。
 すると控え室の戸がちゃりと開いて主演女優の1人が顔をだす。
「なにかあったんですか?」
「いやいや、別段何も。あ、実は僕、本職はカメラマンでして。今度お会いする時は作成の場でお会いしたいですね」
「私は実はモデルだ。また機会があれば是非私を〜♪」
 こっそりと扉からのぞいたVIPたちに向かって売り込みを忘れない二人であった。

●舞台挨拶は波乱の予感
 控え室から舞台の袖までVIPたちについて歩いているのは影山志狼(fa0200)だ。
 まだ経験はそれほど無いとはいえ、日本でもファンの多い主演俳優や、それなりに名前の知れている監督とともに歩く。
 志狼は彼らを見つめて、いつの日か同じ舞台に立てることを決意するのであった。
 そして始まる舞台挨拶。
 やはり記者たちは、迷惑も顧みず禁止されている場所にまで入り込もうとするがそれはヘヴィ・ヴァレン(fa0431)が防いでいた。
「全く‥‥揃いも揃って大人気無えもんだよな」
 そんなことをつぶやいていたへヴィに誘導を終えた志狼が話しかけた。
「なあ、さっき連絡があった不審者の場所は分かるか?」
 すると傷の走った左眼を向けて、へヴィは顎で客席の一角を示す。
「ああ、あそこの通路際に座ってる。さっきから見てるが、やっぱり挙動不審だ」
 そういって2人は、静かに不審な男の近くへ向かうのだった。
 静かに挙動不審な男の背後に立つ2人。不審な男は2人に気付かないまま落ち着きなくそわそわと座っている。
 そして、挨拶も佳境をむかえ、監督が話を締めて拍手が巻き起こったときに突然男が立ち上がって前に駆け寄ろうとする。
 しかし、それは未然に防がれた。
「おっと、いい大人のするような真似じゃねえな‥‥ファンとして監督達の顔が見たけりゃ元の位置に戻りな」
 立ち上がりかけた男の肩をつかんで椅子に戻すへヴィ。
 男は結局志狼が、正規の警備員へと引渡したが、結局何がしたかったのかは分からないままである。
 こうして小さな波乱も無事鎮められ、無事試写会は終了することが出来たのだった。