BEAST CAGE!南北アメリカ

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/29〜12/05

●本文

「今宵、獣たちの饗宴が幕を開ける‥‥」
 どんっとポスターに張り出されたのは、プロレスマッチの告知。
 運営団体名は【BEAST CAGE】
 新興のプロレス団体で、正統派から異端、ベテランから若手まで幅広くそろえた注目の新団体だ。
 なお先日、日本にてW−1に出場したグレッグ・“キングベア”・レックスもこの団体に移籍した1人である。

 今回のプロレスマッチは【BEAST CAGE】主催のイベントだ。
 【BEAST CAGE】はエンターテインメント色の強い団体であり、パフォーマンスに力を入れており、所属レスラーには、それぞれ獣に関わる二つ名が冠されているのも特徴の一つであった。
 今回のメインイベントは【BEAST CAGE】の中でも、抜群の人気をほこる“ライオンハート”レオンと、これまた大人気ヒールレスラーの“R・D”の対戦である。
 豪奢な金髪と端正なマスク。鍛え抜かれた肉体と時折覗く獰猛な表情が大人気のレオン。
 見あげんばかりの巨漢で、不気味な漆黒のマスクと毎回異なる背中の竜のペインティングが凶悪な“R・D”。
 ファン注目の的の一戦であった。

 この2人の対戦を最大限に派手な形でイベントのプロデュースしてもらうのが今回の依頼である。
 獣たちの王と言わんばかりの威風堂々たる“ライオンハート”と実力こそ全てと無言で示す凶悪な“R・D”。
 双方の持ち味を存分に示すように試合のプロデュースをしてもらいたい。

 具体的には、試合前の紹介と登場シーンの演出、あとは音楽や映像素材など。
 あらかじめトレーニング風景を撮るも良し、短い映像素材を作るも良し。
 生演奏で入場するのも良し、バイクで乱入するのも良し。
 レスラーの個性を生かした派手な演出をしてください。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0072 レディ・クレセント(20歳・♂・蛇)
 fa0614 Loland=Urga(39歳・♂・熊)
 fa1716 真鳥・昴(24歳・♂・鴉)
 fa1819 ミハイル・チーグルスキ(44歳・♂・狐)
 fa1861 宮尾千夏(33歳・♀・鷹)
 fa2105 Tosiki(16歳・♂・蝙蝠)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa2411 皐月 命(17歳・♀・アライグマ)

●リプレイ本文

 画面に映し出されるタイトルは『BEAST CAGE』。
 番組の始まりを告げる派手なロゴと音楽。今までの名場面のフラッシュ。
 騒々しいアイキャッチは一瞬で過ぎ去り、画面は試合会場へ。
 四面に巨大なスクリーンが掲げられた薄暗いスタジアムの中央にはライトに照らされたリング。
 轟々と響くファンたちの声に、うねる人波。
 カメラがぐるりと会場を眺め、ぱっと画面が切り替わると今度はスタジアム内の薄暗い廊下を歩くレポーターの後姿が映る。
 すたすたと廊下を歩くレポーターがくるりと後ろを振り向くと、カメラはズーム。
「本日の戦いはファン注目の一戦。百獣の王が勝つか暴君たる赤き竜が勝つか‥‥それでは、2人のインタビューも前にこの戦いにいたる道のりを振り返ってみたいと思います!」
 Loland=Urga(fa0614)の言葉と共に、画面は中継から映像素材へと切り替わる。

 画面に再びアイキャッチ。最初は“ライオンハート”レオンの紹介映像が表示される。
 なお紹介映像はテレビ放映と同時に会場にも映し出されているようである。
 画面にはトレーニングに励むレオンの姿が。
 複数のカメラが場所を変えてレオンの様子を遠くから写し、ちらりと画面の端にはカメラを抱えた皐月 命(fa2411)も。
 時折カメラに向かってにっこりと笑って手を振ってみたり、なかなか愛嬌を見せるレオン。
 しかしリングの上での表情は一変し、獲物を狙う肉食獣の視線を練習相手の後輩たちへと向ける。
 スケジュールに沿った緻密な練習の様子がつぎつぎと映し出され、レオンの日常をイメージした明るい映像が続く。
 最後にレオンへとインタビューしているメイの姿が。
「今回の相手は強敵だね‥‥それでも、私の負けた姿なんて想像もできないけどね」
 ウィンクを一つ、レオンの映像は幕を閉じた。
 再び画面は切り替わり、続いて“R・D”の紹介映像が流れる。
 黙々と練習場の片隅でトレーニングマシーンに向かう“R・D”。
 カメラには一切視線を向けず、淡々と同じ動作を繰り返す様は鬼気迫るものがあった。
 様々な練習風景が映し出されるが、あまりにも圧倒的な力量の差から、練習生との訓練では実力の片鱗すら現れていないかのようだ。
 そして最後に、ロードワーク中の“R・D”に対してメイが突撃インタビュー。
「‥‥邪魔だ」
 がしゃりとカメラをつかまれて、慌てるメイの声とぶつりと途切れる映像。

 そして、画面は中継へと戻り、画面にはランドが。
「さぁ、試合開始まではまだ暫くの時間がありますが、今日のために進められた準備の様子も見て見ましょう」
 画面に映し出された映像は、数日前のスタジアム。がらんとした空間に資材が運び込まれている様子が表示される。
 画面右下にテロップで表示されたのは、数日前の日付。
 会場の設営から、イベント開始までをダイジェストで見せるのである。
「おい、まだ届かないのかっ!!」
 スタッフ用の無線に檄を飛ばすミハイル・チーグルスキ(fa1819)が画面に映る。
 少しくたびれた様子でのミハイルは、全体の統括者としての位置づけのようだ。
「‥‥やれやれ、マネージャーか秘書が一人ほしいところだよ。まったく」
 呟くミハイル。だがあいにくと最後の言葉はマイクが拾わなかったようであった。
 画面は変わって制御卓へ。ばちんばちんとスイッチを入れたり消したりしているのは宮尾千夏(fa1861)。
「よし、特殊効果の仕込みは完璧ね! それじゃリハーサル行ってみるわよ」
 画像編集で会場内に写す予定のアイキャッチを映し出しながら、千夏の声が響く。
 再び画面は切り替わり、今度は音響の制御卓へ。
「最近スランプなんだよなぁ‥‥」
 そんな声が聞こえそうなほど、憔悴しきっているのは真鳥・昴(fa1716)。
 難航しているのか、いろいろとメモを片手に他のスタッフと話し合いながらの作業の様子がちらりと映る。
 リングが組み立てられ、会場が設営されていく様子。次々と準備が整っていく会場と素材の様子。
 忙しげに立ち働くスタッフの様子。そして当日、試合開始前の会場の様子。
 そこで唐突に画面は中継へと戻る。カメラの前にはランドが立っている。
「さて、それでは試合まであと数分となりましたが、インタビューを行いたいと思います」
 カメラが動くと、その先には“ライオンハート”レオンの姿が。
 マイクを向けるランド。試合を前にしても不敵な笑みを崩さないレオンに質問を投げかける。
「さて、質問はたった一つです。この試合への意気込みは?」
「‥‥ま、最高の試合を見せたいと思ってるよ。最高の勝ち方を、ね」
 獰猛な笑みを浮かべるレオンがアップで映る。そして画面は切り替わり、控え室から花道へとあるいていく“R・D”の姿が。
「試合前の意気込みを!」
 マイクを手にしたインタビューアーのレディ・クレセント(fa0072)が向かうのだが、無視してリングへと足を進める“R・D”。
 その後姿をカメラが虚しく映すのだった。

 次の瞬間、照明が消え暗闇に包まれた会場へとカメラは切り替わる。映し出されるのは闇だけ。
「‥‥獣の檻。リングという檻に放たれた獣は何を魅せるのか‥‥」
 静まり返った会場に響くアナウンスの声。
 その声の余韻が闇の中に吸い込まれていくのと同時に、スポットライトがリングを照らす。
 そこに響いたのはピアノの音色。
 御影 瞬華(fa2386)が演奏する生のピアノの音色が会場に響く。
 画面に映し出されたのは、背中に大きな黒い羽をつけてピアノを演奏する御影。
 テロップで「Erst(エーアスト)」という曲名と、作・編曲:御影瞬華 協力:Tosikiの文字が。
 主旋律のピアノは静かで単調な音色を響かせ後を追いかける落ち着いた弦楽の響き。
 その中でスポットライトに照らされた花道の端、金の獅子を象ったゲートの下に白いガウンを纏ったレオンの姿が現れる。
 徐々に勢いを増すピアノの旋律にあわせ、まるで優雅なダンスを躍るかのように進むレオン。
 まるで王侯貴族のように威風堂々と、ゆっくりと花道を進むレオン‥‥と、そこで突然オーケストラが途切れる。
 音高く響くドラムと加速するビート。白の外套を脱ぎ捨てて、レオンがリングへと駆ける。
 その背を押すように、破裂音と共に舞い散る薔薇の紙ふぶき。
 颯爽とリングの上にレオンは降り立ち、ピアノの音がゆっくりと余韻を響かせながら消えていくのだった。

 広い広い会場から残響が消え、一瞬の空白。
 そこに響いたのは、低い低いパイプオルガン。
 曲名「カミング・スーン」作・編曲、演奏:Tosikiのテロップと共に、ぼんやりと映し出されたTosiki(fa2105)の姿。
 背中には蝙蝠の羽が見え、さながら悪魔が自分の主を待ちわびているかのように、音楽が響く。
 一音一音が長く伸ばされ、おどろおどろしい響きが会場を埋め尽くしたその時。
 竜を象ったゲートがぼんやりと浮かび上がり、後ろからの明かりに照らされて姿を見せる“R・D”。
 逆行ではっきりと見えないその姿。頭はすっぽりと真っ黒なフードで覆われており、その姿はまるで死神だ。
 足元にもくもくと白煙が湧き上がり、一歩一歩ゆっくりと歩を進める“R・D”。
 単音が和音に、長い音がアルペジオに。徐々に高まりを見せるパイプオルガンの音色の中、観客たちはさっきまでの熱気も忘れて身震いをする。
 高まるパイプオルガンは、びりびりと響くほどに。叩きつけるようにして響いていたその音は、リングに上った“R・D”がローブを脱ぎ捨て、背中のドラゴンのペイントが画面に大映しになると同時に、ぴたりと止まった。
 一瞬の静寂。
 そして、高々と打ち鳴らされるゴングの音。観客たちの歓声。
 とたんに熱気を帯びたアナウンスと、ちゃっかり解説席に座るレディの声。
 こうして試合が始まり、番組が動き出すのだった。