忍者VSミュータント南北アメリカ

種類 ショート
担当 雪端為成
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 5.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 12/01〜12/10

●本文

「‥‥こ、この作品はきっと歴史に残るっ」
 ぐっと拳を握って感動の涙を滂沱と流しているのは1人の青年。
 彼はヨハン・トビアス。若き映画プロデューサーだ。
「よし、早速スタッフを集めなきゃ‥‥えーっと、配給会社はあそこでいけるし、資金もとりあえずは‥‥」
 手元の手帳を見ながら方々に電話をかけはじめるヨハン。
 一日も早く映画を作らなければという決意に燃えているのだが‥‥そこへやって来たのは1人の女性。
「ん? ヨハン、次の映画が決まったのか?」
 長身でくわえタバコがトレードマーク。ヨハンの姉でエディターのエリザである。
「あ、姉さん。うん、良い原案を手に入れてね。これはきっとすごい作品になるよ!!」
「ほー‥‥どれどれ」
 ヨハンはエリザに冊子を渡す。その表紙にはこう書かれていた。

『ニンジャVSミュータント 〜ホワイトハウス夜の死闘〜』

 ‥‥エリザしばし沈黙。
「あー‥‥すごい作品になることは確かだな。いろんな意味で」
「でしょう? よし、さっそく脚本に監督に、カメラに‥‥」
 そんな弟の様子を見て、エリザはがっくりと肩を落とすのだった。

 ●映画スタッフ&俳優募集
 ・監督
  映画全体の雰囲気を決める。例えばアクションにするか、コメディにするか。
  いない場合はプロデューサーが用意したNPCになる。

 ・脚本家
  原案から得たアイディアでシーンを2つまで作る。出演者や監督と相談して、シーンを作っても可。
  いない場合は、監督と同じくNPCとなる。

 ・ニンジャ役
  数名。全身覆面でカラフル忍装束。勘違い忍者なのでおかしな技を使うこと前提。
  羽を出して飛んだり、火を噴いたり、土に潜ったり。
  完全獣化を覆面でうまく隠して演技することが求められている。

 ・ミュータント役
  数名。こっちはまんま完全獣化で。
  どちらかというと能力を使わず力技で。銃器とかの使用も推奨。

 ●原案
  アメリカはホワイトハウスに忍び込む影があった。
  彼らはアメリカ政府の転覆を狙う秘密組織が放った特殊な訓練を受けた超戦士“ニンジャ”である。
  彼らを阻止できるのは、アメリカが擁するミュータント特殊部隊。
  獣と化して戦うミュータントと人知を超えたニンジャたちの戦いが始まる。
  以上、これのみ。

 アイディアで、配役を増やしてもかまわない。
 脚本、監督との協議してストーリーを膨らますことも可能。
 また脚本家や監督が複数いても問題はない。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 fa0376 伊集院・帝(38歳・♂・虎)
 fa0413 フェリシア・蕗紗(22歳・♀・狐)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa1024 天霧 浮谷(21歳・♂・兎)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa2196 リーゼロッテ・ルーヴェ(16歳・♀・猫)
 fa2435 アリーセ・フォクター(22歳・♀・兎)

●リプレイ本文

 眼下に広がる夜景。現立ち並ぶ高層ビル。
 芸術の域に達した機能美を見せる摩天楼、その最上部に5つの人影が。
 ありえない格好、しかし強烈な存在感。
 古風な忍者装束を身に纏った5人のニンジャがそこには立っていた。
 そんな中近づいてくるヘリの音。サーチライトが一瞬彼らを照らす。一瞬の光と闇。
 再びサーチライトが彼らの場所を照らした時、そこには誰もいなかった。

『ニンジャVSミュータント』
 英語のロゴとその後ろに漢字。忍の文字の一部が手裏剣になっている。
 次の瞬間ミュータントのロゴには弾痕が刻まれ崩れ落ち、忍者のロゴには刀が一閃、タイトルロールが始まる。
 監督・脚本協力に敷島オルトロス(fa0780)の文字。
 そして、画面は移って行く。

 和室でお茶を立てているフェリシア・蕗紗(fa0413)。
 艶やかな黒髪に和服、古式ゆかしい大和撫子である。
 ふと袖から携帯を取り出すと、内容を一瞥。
 瞬転、フェリシアの華やかな着物がピンクの忍者装束に、さらにはその姿までもが花吹雪の向こうに消える。
 後に残ったのは、数枚の花びらのみであった。
 続いて映し出されたのは、道を行く伝ノ助(fa0430)。
 耳にはイヤホン、パーカーにニットキャップの若者だ。
 ふと携帯を取り出すと、画面を一瞥。にやりと笑みを浮かべると、路地へと入り込む。
 その路地を覗くと、そこにいる筈の彼の姿が影も形も無いのであった。
 場面はスポーツジム。かなりセクシーな格好でインストラクターをしている竜華(fa1294)が映る。
「リーン、先に上がるよー」
 同僚の声を受けて、1人ジムの片づけをする竜華。
 誰も見ていないのをちらりと確認すると、手に持っていたダンベルや重りを次々投げ始める。
 すると視線を向けずに放った背後の棚にさえ、ぴったりと収まる道具類。
 にっと笑みを浮かべると彼女は更衣室に消えていくのだった。
 場面変わって、広々とした座敷。中央に座すのは忍者装束の天霧 浮谷(fa1024)。
 そして今まで他に誰もいなかったその座敷に、すっと3人のニンジャが姿を現す。
「参上仕りました、お頭」
「‥‥俺のことは“ドン”と呼べっ! 他の呼び名は許さんっ!」
「ははっ! ‥‥ところで『月光』の姿が見えないようですが」
「‥‥否」
 すると今まで姿のなかった白装束のニンジャが天霧の後ろに不意に現れる。
 現れた『瞬神の月光』。演じるはリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)。
「これで“猫”・“狐”・“狸”・“虎”の全員が集まったな」
 不敵に笑みを浮かべて言う“ドン”。
「今回の任務は、過去最高の難易度の任務だ‥‥」
 するりと巻物を広げるドン。そして暗転、場面が切り替わる。

『ホワイトハウス地下・作戦本部所属特殊部隊控え室』のテロップ。
「まったく、秘密部隊ってのはピザ屋にも秘密なのが痛いぜ」
 ピザの箱をいくつも抱え、ピザを齧りながら部屋に入ってきたのは伊達正和(fa0463)。
 テロップには『パープル』。
「また、そんなに脂っこいもの食べて‥‥昨夜頑張ったから精でもつける気?」
 にまっと笑いながらパープルをからかっているのは小野田有馬(fa1242)。『アリマ』とテロップが流れる。
 そんなやり取りの横で、自分の机に向かって黙々と銃の整備をしている紅一点はアリーセ・フォクター(fa2435)。
 そして視線を向けた先には、リーダーの伊集院・帝(fa0376)が片腕で重そうなバーベルをひたすら上げ下げしてる姿。
『アリーセ』『隊長カイザー』と表示される中、アリーセが銃をとりだす。
「‥‥暑苦しいわ」
 空気の音と共に打ち出されるプラスチックの弾。それは壁を反射するとカイザーの額のにぱちりと当る。
「そうは言うがな、日々の鍛錬が物を言うんだぜ?」
 軽々とバーベルを戻すと、額をかきながら苦笑を浮かべるカイザー。
 そんな日常の風景を、突然異音が切り裂いた。
 コンソールが、赤い表示と共に音を立てる。侵入者ありと。
 それを見てメンバーはそれぞれ装備を身に付けるのだった。

 深夜のホワイトハウスの前庭に人影が音もなく舞い降りる。
「‥‥そこにいるのは誰だ! ‥‥うっ、撃てェ!」
 姿に気付いたのか、ホワイトハウス屋上のスナイパーが弾丸の雨を降らす。
「作戦開始だ‥‥散!」
 弾雨の中一瞬にして5つの影は姿を消すのだった。

「‥‥あの見張りを頼む」
「御意」
 ドンの言葉に応える“猫”瞬神の月光。次の瞬間には、扉の前に立っていた見張りの背後に移動する。
 一閃で崩れ落ちる2人の見張り。
 そしてあっという間に最奥へと侵入する忍者たち。
 月光は音もなく忍び寄り見張りを倒し、“狸”の伝はヌンチャクを振るい、黒服を撃退する。
 その時。
「‥‥今までとは違うのが来たっすよ」
 緑の“狸”が言った。
 雨あられと銃弾が降り注ぐ廊下を走り抜けていく“狐”のフェリシア。
 巨大な扇子で銃弾を弾き、彼女の体が花びらの塊と変じ、弾が素通り。さらに怪しく光るその瞳を向ければ黒服は同士討ちを始める始末。
「‥‥まったく、税金の無駄遣いだな」
 廊下を悠然と歩いて来るはアリーセ。
「どけっ! そいつは私の相手だ!」
 両手に軽々と二丁のマシンガンを掲げ、鉛の豪雨をフェリシアに見舞う。
 高価そうな壷や絵画を吹き飛ばしながら、荒れ狂う鋼の暴風雨。しかしフェリシアも反撃。
 一瞬の隙をついて接近し、華麗なハイキック。しかしアリーセの哄笑が響く。
「ククク‥‥ハァーッハッハッハ。効かないね!」
 月光の下で見る見るうちに傷がふさがり戦いは振り出しに戻るのだった。

 白虎の装束の“虎”リーンが黒服に囲まれている。しかし、リーンの放ったゼロ距離からの拳で、数人の黒服がまとめて吹き飛ぶ。
 遠距離から撃たれたサブマシンガンの弾幕は、グランドピアノを倒し盾にして防御。
 しかし次の瞬間、彼女の背後にアリマが現れた。
「背後がお留守よ♪」
 巨大な猫の手から伸びる鋭利な爪。その爪がリーンの喉を裂こうとするが、間一髪リーンが肘打ち。
 肘を後ろに跳び退りながら受けたアリマは、床を跳ね壁を蹴り、天井すら足場として縦横無尽に飛び跳ねる。
 拳を見舞うリーンだが、豪腕は空を切るばかり。そしてリーンの一撃が壁を破壊し、戦いの舞台は中庭に移るのだった。

 屋上を駆け抜ける“ドン”。
 彼を追って空を翔る姿があった。
 背中に翼を広げた竜の姿。パープルは両手のマシンガンで眼下に銃撃する。
 さらにその行く手に黒服の一団が現れ、道をふさぐ。
 絶体絶命かと思われた瞬間、黒服の只中に白装束の“猫”、瞬神の月光が現れ、一瞬で黒服を殲滅する。
 そして2人で、突破しようとしたその瞬間。
「ここは、通さねぇよ。帰りたければ俺を倒して行きな」
 暗がりから現れたのは虎の頭の巨漢。カイザーが無手で悠然と歩いてくる。
「‥‥言っとくが加減はしねぇ、覚悟するんだな」
 次の瞬間彼の背後に月光が現れ、その首をかききろうとするのだが‥‥、
「おらぁ!!」
 屋上を強烈に踏みつけると、なんと屋上が陥没し、月光はたたらを踏む。
 そこに叩き込まれたのは、空中からのパープルの弾丸。弾雨は月光の体を捕えたかに見えたのだが、そこにはマネキンが。
 しかし、現れた月光を再び追撃するカイザー。屋上の一部を破壊するほどの攻撃に巻き込まれ、月光は闇に消えていくのだった。
 ドンに銃弾の雨が降り注ぐのだが、それを跳躍してかわすドン。
 パープルが歯噛みして言う。
「ちょこまかと逃げ回りやがって!」
「逃げてばかり? うるさいっ、勝てばいいのだっ!」
 しかし、そこに再びカイザーが。手には引き抜いた中庭の大樹。
 大木の一撃を回避しながら、空中に逃れたドンは取り出した巨大な手裏剣をカイザーに投擲。
 当ったかに見えた手裏剣をカイザーはなんと歯で噛み付いて受け止めてる。
「‥‥今だ、“狸”!」
 唐突にドンが声を上げる。
 すると、パープルの足元に転がっていた死んだはずの黒服がパープルの足を掴む。
「くっ! 生体反応なんてなかったぞっ!」
 驚愕するパープルは羽ばたくと空に舞い上がり、“狸”の伝は黒服の偽装が緑の忍者装束と変じる。
「地獄に落ちろー!!」
「死なばもろとも! 必殺・微塵隠れ!」
 急降下するパープルを巻き込んで、伝は自爆攻撃を仕掛け、2人は爆発に包まれるのだった。

 中庭に移動した“虎”のリーンは噴水を背中に周囲をうかがっていた。
 しかし次の瞬間、背後に再びアリマが。
 もろとも噴水に落ちるリーンとアリマ。アリマの爪で、リーンの装束が破れ白い胸元が覗く。
 しかし、さらにリーンが爪を振るうと、リーンの白い肌は水底へと沈んでいくのだった。

 戦闘の最中、手に持った世界最強の破壊力を誇るリボルバーを掲げたアリーセはその銃口を遠くに向ける。
 そこには、戦闘中で気付かないドンの姿。
 とっさに射線上に躍りこんだフェリシアは、銃弾を胸に受け、ふらふらと後ろに下がると、崩れた壁から外へと転落していくのだった。

「さぁ来るがいい。ミュータントの“ドン”よっ!」
 告げる忍者の“ドン”。
「これで終りだっ!!」
 巨木を振るう隊長のカイザー。
 幾度にもわたる攻防の末、ついにドンは、弾き飛ばされ屋上の端を掴むも、ついに力尽き落ちていくのだった。

 朝日が昇る。
 ぼろぼろのミュータント部隊の面々は、お互いに肩を貸して集まっていた。
 1人姿の見えないパープル。しかし‥‥、
「ははは、天国の門番に追い返されちまったぜ♪」
 爆発に煤けた姿を見せるパープル。そして一同は嬉しそうに笑いあうのだった。
 そのシーンにエンディングテーマが流れ、スタッフロールへと移り変わる。
 そして全てが流れたあとに、ふと画面が切り替わる。


 そこは都会の雑踏。人並みで混雑するありふれた風景。
 歩みを止めない人々の中で、突然足を止める平凡な5人。どこにでもいそうな5名は顔を伏せる。
 再び彼らが顔を上げると、その顔は死んだはずの忍者たち。
 ドンがにやりと笑って腕を振ると、手裏剣が放たれる。
 その手裏剣がこちらへ近づき突き刺さると、画面がぶつんと暗転する。
 −FIN−