ゾンビVS水着ガール南北アメリカ
種類 |
ショートEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/13〜02/17
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●本文
――ゾンビ。
またはリビングデッドや死霊と呼ばれ、数多のホラー映画やゲームで恐怖を振り撒くB級モンスターとして認知されているモンスターである。数で押し寄せ、食らった人間をもゾンビとしてしまう終わらない恐怖の連鎖に、視聴者は戦慄を覚えた事だろう。
「‥‥ゾンビやりたい」
ボソリとブロンドヘアの少女は呟いた。溜息と共に困惑の色を男が覗かせる。
「いきなり何を言い出すんですか? 何もこの時期にやらなくたって‥‥」
季節は冬真っ只中。寒い季節にホラーは向かない。勿論冬を舞台とした作品はあるが‥‥。
「やりたいやりたいやりたーい!!」
サミィ・ライナー監督はジタバタと手足をバタつかせる。これでは子供と一緒だ。聞けば自分の誕生日には自分の好きな作品を撮りたいとの話だ。男が溜息を吐いて訊ねる。
「枠は取れそうですから何とかなりますが、どんなゾンビ作品を作るんです?」
「バトルホラーよ♪ ゾンビと水着の少女達が様々な武器で戦うの☆」
サミィは眼鏡の奥に青い瞳を爛々と輝かせながら恍惚の色で両手を組む。とても♪や☆が似合う言葉ではないが、黙っておこうと男は決めた。
●ゾンビVS水着ガール(正式タイトル:LivingDeadvsSexyGirl)
舞台はアメリカのとあるホール。
そこでは『新作水着と武器のコラボレーション』と題したコンテストが開催されていた。
つまり、水着を着けた少女がアメリカ軍協力による実銃を手に、セクシーさを競うというコンテストだ。事実、似たようなビデオ(水着で銃撃ったり、戦車乗ったり)は販売されているので珍しくない。
兎に角、賞金か名声か、実力試しか思い出つくりか騙されたか、様々な理由で少女達は会場の控え室に集う事になる。
●基本プロット(相談により変更OK)
・Scene1:共同控え室の中で――少女達の花園。
少女達はデザイナーが用意した新作水着を試着しながら、テーブルに並べられた銃器を選択していた。さっそくポーズを決めてイメージトレーニングする者もいれば、寛ぐ者もいる。しかし、待ってもスタッフが呼びに来る気配は無かった。
・Scene2:控え室を出て様子を見に――蠢くゾンビの群れ。
会場の様子を見に行こうと控え室を出る少女達(全員でなくて構いません)。幾つかドアを開けて先に進むと、一人の軍人と遭遇。確か、武器取り扱いの注意点を教えてくれた人だ。早く戻れと告げる。通路に現れるはゾンビの群れ。
・Scene3:血塗れ遊戯――武器を手に脱出を決断する少女達。
このまま控え室に閉じ篭っていても埒が明かない。会場から外へ脱出するか、それとも裏口から脱出するか、どちらにしても建物にゾンビが徘徊している可能性が高い。幸い武器はある。少女達は強行突破を決断するのだった(最大の見せ場です)。
・Scene4:会場脱出――エピローグに待つものは‥‥。
何名脱出するかはお任せします。エピローグは選択式。
A:脱出したが町全体がゾンビの群れ‥‥。
B:脱出したが仲間が実は噛まれていて‥‥。
C:脱出したが待ち構えていた人物により聞かされる真相(要募集区分『その他』)。
D:会場脱出。どうやら外にゾンビはいないようだ。ハッピーエンド。
E:誰も脱出できず‥‥。
F:夢オチ‥‥。
G:その他(相談で決めましょう)。
●募集区分
・水着ガール:(複数OK・常時水着着用なので若い女性のみ。心が女性はゾンビ役)。
本編を彩る主役です。様々な演技とシチュエーションでアピールしましょう。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
水着:どんな水着を着けるか決めて下さい。
武器:ゾンビと戦う時に使用する得物です。
実在する格闘武器〜射撃武器までOK。何故か日本刀なんかも用意されていたりします。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
・水着デザイナー:(複数OK・性別不問・本職歓迎)。
本編シーン1で登場するデザイナーです。主役達の水着も実際にデザインして頂きます。
役名;演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
演技:演技力は必要ありません。実際に水着デザインして頂きます(色なども明記)。台詞歓迎☆
女性なら控え室にも登場できます。
・軍人:(性別不問)。
本編シーン2で登場する軍人です。責任者として銃器を輸送して来ましたが、そんな仕事しかさせてもらえない失格軍人です。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
武器:ゾンビと戦う時に使用する得物です(登場時は弾切れの拳銃)。
控え室まで入れた場合:実在する格闘武器〜射撃武器までOK。何故か日本刀なんかも用意されていたりします。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
どのシーンまで出るかはお任せします。
・ゾンビA〜:(複数OK・性別不問)。
本編シーン2から登場するゾンビです。簡単な短い単語と呻き声が基本。
エキストラとCGがあるので他にやりたい配役があればゾンビでなくて構いません。
役名:水着ガールの友人等の場合明記。
服装:服装や容姿演出は特殊メイキャップアーチストに希望を言えます。
武器:基本的に武器は持ちませんが、刃物系や職業に関するモノは持ってOK。。
演技:難しい役ですが、ゾンビ化する前の仕事等を個性で演出してみましょう。誰を襲うかも明記。
尚、TV作品なので臓物描写はNGです。
・その他:(複数OK・性別不問)。
物語を面白く出来る配役も募集します(例えば、トイレに行っていて助かった子供とか、ゾンビは自然発生ではなく、原因を作った黒幕の存在とか等)。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
武器:ゾンビと戦う時に使用する得物です(所持していなくても構いません)。
演技:登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
●リプレイ本文
●超高層ビルが建ち並ぶ夜の街を眼下に、一機のヘリがローター音を響かせて飛んでゆく。
視界はヘリ後方を映した刹那、急降下してゆき、俯瞰から見える未だ明かりが煌煌としている夜の街並の路上へ滑り込む。更に加速をつけて地面スレスレを突き進み、目まぐるしく角を曲がり、飾られたホールの中へと吸い込まれた。
会場には多くの記者やカメラマン等が談笑や挨拶を交し合っており、壁際には軍服姿も見掛けられる。視界は場内を捉えた後、再び急加速。ステージから通路へと流れ、一室のドアを越えて華やかな共同控え室を映し出す。そこには魅惑的な少女達がおり、デザイナーが用意した新作水着を試着したり選んだりとハシャイだ声に溢れている。そんな光景とテーブルに並べられた銃器がミスマッチだ。視界は一人の軍服を着込んだ少女を映し出す。胸まで伸びた黒いストレートヘアに青いバンダナを巻いたホリィは腕を組んだまま溜息を吐く。
(CAST)ホリィ:滝川・水那(fa0836)
若い軍人の瑠璃色の瞳に映るは、負けず劣らずの若い娘ばかり。楽しそうに白やピンクのワンピースタイプの水着を広げる能天気なミキの声に視界を流す。
「この水着可愛い☆ あ、こっちのも良いかな♪」
(CAST)ミキ:由比美紀(fa1771)
ホリィは再び溜息を洩らした。
「あの、この銃って有名なんですか?」
澄んだ穏やかな声に視線を流すと、白銀のロングヘアに深い真紅の瞳が美しい見目麗しい少女が、武骨な拳銃を両手に乗せてたおやかに微笑む姿が映った。ホリィは白雪のような肢体を包む白いワンピース姿のカレンを舐めるように見つめる。
「えっと、そんなに見ないで下さい。ちょっと恥かしいんですから」
(CAST)カレン:森守可憐(fa0565)
ハイグレの股間を隠すように、しなやかな足を交差させ、カレンは頬を染めながら上目遣いで困惑の表情を見せた。思わず見惚れてしまった軍服の少女は我に返る。
「あ、ごめんなさい。あなた着痩せするタイプなのね。これはイタリアの拳銃です。3点バースト射撃が可能な機関拳銃で、映画なんかにも登場しています」
「へぇ〜♪ 映画のヒロイン気分になれますね☆ ‥‥きゃッ」
ゴツイ拳銃を構えてポーズを取るカレンが短い悲鳴をあげた。視線を落とすと縊れた腰に触れるホリィの手が映る。真紅の瞳が戸惑いの色を浮かべる中、黒髪の少女の手が薄布に包まれた肢体を弄りだす。一挙動の度に白銀の長髪が舞い、艶かしい声が漏れる。
「もっと腰を落とす、足はもっと開く、腕はこんな感じね。ほら、様になるポーズでしょ♪」
「ん、あ、ありがとう、ございます‥‥私、柔軟体操しなきゃ‥‥ひゃんッ」
愛らしいヒップラインを両手で庇い、ピョンと跳ねるカレン。背中が丸見えになるほど大胆に開いた後ろ姿が艶やかだ。興味半分、ジェラシー半分に少女をからかった後、ホリィは銃器に真剣な眼差しを注ぐ娘を捉える。由希の豊かな膨らみを包むには些か役不足な白の三角ビキニが艶かしい。
「見栄えを気にして大きい銃にすると、必然的に重い銃になる‥‥悩みますねぇ」
(CAST)由希:御神・由希(fa2137)
アサルトライフルからサブマシンガンへ、そしてハンドガンと次々と手に取っていく少女の黒い瞳に映ったのは弾薬やスペアマグだ。思わず素っ頓狂な声をあげる。
「この箱‥‥AMMO? な、何で実弾が置いてあるんですか、それも大量に‥‥」
「このコンテストは軍の協力の元で開催されています。リアルな演出の為に実銃と実弾が用意されているのです。危険が無ければ控え室に自分がいる必要はないでしょ?」
「日本人なら、日本刀よね♪」
銃器の並ぶテーブルの端に置いてあった日本刀を握り、由希に緑色の瞳を流し、妖艶な微笑みを浮かべて見せるのは、慧莉だ。ブルーを原色としたビキニを身に着けた白いショートヘアの娘は、左手を腰に当て、ライバル心も露に、豊かな膨らみを誇張して見せる。
(CAST)慧莉:大宗院・慧莉(fa2668)
太刀を薙ぎ振るう度に激しく揺れる慧莉の胸元に溜息を洩らすホリィ。視線は流れ、どっかりとソファーに座り、悠然と足を組んだまま出番を待つ赤いセミロングヘアの褐色娘を捉えた。もみあげのように伸びた編み髪が個性的だ。軍人の視線に気付き、露出が高い紫のビキニを纏ったノラが細い片眉を跳ね上げる。
「あん? なんだよ‥‥」
(CAST)ノラ:シヴェル・マクスウェル(fa0898)
「銃はもう選んだのですか?」
「どれでも構わない。ステージにあがる前まで決める」
今回のコンテスト参加者の中で一番態度がでかい。流石にホリィの表情は不愉快さを僅かに浮かばせたが彼女は鍛え抜かれた軍人だ。簡単に喧嘩を売ったりしない。
「‥‥そうですか。分からない事があれば聞いて下さい」
「あぁ、そうさせてもらう」
サブマシンガンを隣のソファーに放り、小柄な少女が黒髪を揺らして腰を落とす。ミキはピンクのワンピースから伸びた足をブラブラと退屈そうに揺らしながら笑顔のまま口を開く。
「誰も呼びに来ないね〜」
「とっくに始まってていい筈だよな? トラブルでもあったか。それなら連絡のひとつでも寄越せというのに。‥‥様子を見て来るか」
少女の言葉を受けて、ノラが面倒そうな口振りで腰をあげた。ホリィも腕時計に瞳を落とす。
「確かに時間です。マイク軍曹に連絡を」
「いや、私が見て来る。おまえ達はどうする?」
軍人の言葉を断ち切り、褐色の娘が視線を流した。茶色の瞳に映る由希が口を開く。
「私は待っています」
「うーん、そうですね〜。私も待っています‥‥」
不審に思いつつ頬に手を当てて考え込んだ後、カレンも残る事を告げた。刹那、パタパタと駆け出したのはミキだ。
「あ、待って! 私も行くよ、ここにいても退屈なだけだもんね☆」
「自分は銃器の管理も兼ねて残ります。何かあれば直ぐに戻って下さい」
「あぁ。それじゃ行って来る」
ノラは肩越しに視線を流し、控え室のドアを開けた――――。
会場へと続く通路は静寂に包まれていた。響き渡るは二人の少女の靴音のみ。胸元に両拳を固め、ミキが不安げな表情で引き締った褐色の背中を付いてゆく。
「ねぇ、静か過ぎない?」
「映画ならテロリストに襲撃されたって感じだな」
「テロリストォ!? 脅かさないでよぉ‥‥ひゃッ!?」
刹那、勢い良く目の前のドアが開き、少女はビクンと肩を跳ね上げた。ミキを庇うように身を廷してノラが瞳を研ぎ澄ます。視界に映るのは一人の男だ。野暮ったい訓練服に三角帽を被った軍人は手にイタリア製のショットガンを構えていた。マイク=ロイヤーの表情がニヤリと緩む。
「おやおや、良い眺めだな」
(CAST)マイク=ロイヤー軍曹:Loland=Urga(fa0614)
「軍人か? なんで銃なんか構えてるんだ!」
「‥‥色々と説明したい所だが、今は暢気にしてる場合じゃねえ。とっとと控え室へ戻って武器を取れ! さもないと化け物たちにやられるぞ!」
「化け物だと?」
「えっ、なにこれ‥‥」
訝しげな表情を見せるノラの背後で、ミキが顔を覗かせマイクの背後を震えながら指差す。彼女の視界に映るは、夥しい数で蠢く人影だ。低い呻き声を響かせ、鈍い足取りでゆっくりとコチラに向かって来る。衣服はボロボロに裂け、皮膚には傷が刻まれており、血塗れだ。少女は異質な群衆を見つめてオロオロと動揺の色を見せる。
「もしかしてドッキリ、とか?」
「ったく‥‥悪趣味なサプライズは止してくれ‥‥」
刹那、軍人の肩越しに青白い醜悪な顔が飛び込んだ。汚れた歯で食らいつこうと大きく口を開ける。ミキの悲鳴が響く中、マイクは肩眉を跳ね上げ、首を傾げると同時、振り返って銃声を響かせた。硝煙の匂いと共に派手に化け物が後方へ吹っ飛ぶ。
「ドッキリなら俺も美女の柔肌に食らいつく方を選ぶがな。さぁ、戻るぞ!」
再び瞳を研ぎ澄ませて銃口を向ける。乾いた銃声が鳴り響くと共に視界はゾンビの群へと急速に迫り、腹部へ吸い込まれる中、銃創と引っ掻き傷の走る赤い背景に黒いタイトルが浮かび上がってゆく。
●ゾンビVS水着ガール
視界は揺らめきながら控え室に戻る二人の水着姿と、時折背後にショットガンを構えるマイクを追ってゆく。緊迫感を高める音楽が奏でられる中、視界は軍人を越え、滑る様にノラとミキの駆けるヒップを追いながら、前方のドアへ迫る。褐色の手がノブを廻し、室内に残った少女達を映した。口元に手を当て、カレンがビクンと肩を跳ね上げ、慧莉が悠長に訊ねる。
「きゃッ、どうしたのですか?」
「あら、騒がしいわね。どうかしたの?」
ノラ、ミキが控え室内に駆け込み、続いてマイクが外を警戒しながら入って来た。ショットガンを手にした軍人の男が突然女の園に飛び込んで来たのだ。短い悲鳴と動揺が溢れる。対して男は、瞳に映るセクシーな水着美女達の肢体を見つめ、二ヤリと口元を緩ませた。
「これはこれは最高の眺めだな」
「マイク軍曹!? 何かあったのですか?」
「よぉホリィ、今は手が放せない状況でな。バリケードを作る! 手伝ってくれ」
「ゾンビだよ〜! 会場に一杯いてコッチに向かって来てるの!」
今にも泣きそうな声と眼差しでミキが告げた。一瞬なんのジョークかと呆気にとられる一同。しかし、ノラとマイクは荒い息を吐きながらテーブルを移動させていた。どうやら事実のようだ。
「悪趣味なジョークではないようですね」
「え、えぇ。私も手伝います」
由希とカレンも周囲を見渡し、簡易バリケードを築く為に動き出した。刹那、ドアが激しい音をたて、積み上げたテーブルやソファーが揺れる。
――ガタッ! ガタガタガタガタッ‥‥。
「中に‥‥入って来ようとしているのですか?」
「ここでこうしてても埒が明かない! 外に出よう。誰かここの構造に詳しい者はいないかな?」
戦慄の表情を浮かべるカレンを余所に、ノラはビキニの上からショルダーホルスターを掛け、拳銃を納めながら少女達に視線を流す。口を開いたのはブルービキニの慧莉だ。
「スタッフなら兎も角、詳しい人なんていないわよ。まぁ、武器と私をアピールするよい機会ですわ」
両腕を広げて肩を竦めた後、白いショートヘアの娘は変に落ち着いた口振りと共に、刀身を引き抜く。どうやら闘う気満々のようだ。慌てて素っ頓狂な声をミキが響かせる。
「え〜〜ッ!? 闘うなんて無理だよぉ。‥‥由希? 何をしてるの?」
同意を求めようと潤む眼差しを泳がせると、視界に映った白い三角ビキニの少女に訊ねた。黒髪の娘は弾薬をあるだけスペアマグに詰めながら、袋に放り込んでいるのだ。
「何って、強行突破の準備ですよ。無限弾倉なんてゲームの中だけですからね」
「えぇ〜〜!? 本当にここを出る気なの〜!?」
ペタンと腰を落とし、遂にすすり泣いてしまうピンクワンピースの少女。尚もゾンビの群が小刻みに耳障りな音を響かせる中、覚悟を決めたマイクがホリィを見つめる。
「俺が囮になるから、その隙に脱出しろ」
「マイク軍曹!? 何を‥‥無茶です!」
「ホリィよく聞け! やつらが俺達の知っているゾンビなら簡単に諦めたりしないだろう。それに、こんなドアも何時まで持ち堪えるか分からん! おまえが彼女達を守ってやれ」
「‥‥マイク‥‥自分は‥‥」
「良い目の保養をさせて貰った。できればキミのセクシーな姿も見たかったがな」
「‥‥生き残って、気が変わらなかったらいつでも‥‥」
涙を指で拭い、ホリィは微笑みを浮かべて敬礼する。それに応えるマイク。暫しの沈黙後、軍服の少女は踵を返し、男の指示通りに動いた。
「皆さん、窓から脱出します。各自、武器を持って急いで!」
幸い控え室は一階だ。カーテンを一気に開くと小さな窓があるものの、ここに集まった少女達はコンテスト出場者。閊える心配も無い。ホリィを先頭に各々銃器を手に窓から身を滑らせてゆく。
「強行突破なんて、私には無理だよ〜。あぁん、待ってよー」
流石に泣いてばかりもいられない。ミキはサブマシンガンを持って駆け出した。マイクは最後に少女達のヒップラインを堪能し、穏やかな笑みを浮かべた後、全員が控え室から出ると、精悍な表情を浮かべて瞳を研ぎ澄ます。
「さて、どうせ左遷された身だ。待っているのは広報関連の資材業務‥‥最後位は軍人らしくってな!」
バリケードに蹴りを入れると、築いた山が崩れてドアが僅かに開く。青白い血塗れの腕が幾つも伸びて、渇望する眼光がマイクを捉えた。男がショットガンの銃口を向ける。
「さあさあ、謝肉祭のミンチになるのはてめえらだぜ!」
銃声を響かせるマイク。硝煙が舞う中、薬莢が床に転がり、ゾンビが血飛沫を噴いて吹っ飛ぶ。何度も弾丸を込め、洗礼を叩き込んでゆく。しかし、ドアの隙間を掴んだゾンビが吹き飛ばされると同時、ドアは壊れて夥しい群が吐き出されるように控え室に雪崩れ込んで来た。如何に歴戦の勇士だとしても、たった一人で対峙するには戦慄を覚える光景だ。広めの室内に入り込んだ化け物等は次第に散らばり出し、銃口が左右に狙いをつける状況へと転じる。刹那、軽い音が響いた。
「チッ、弾切れかよ! 次はメインディッシュと行こうか!」
マイクは腰から二本のアーミーナイフを引き抜き、左右に眼光を流しながら構えた。男の揺れる視線に映るのは、呻き声を洩らしながら腕を突き出す血塗れの化け物共ばかりだ。改めて見れば、軍服やスタッフジャンパー姿も見掛けられた。一斉に群がる中、軍人は刃を薙ぎ振るい、最後の抵抗を見せる。血飛沫が舞い、マイクの視界が飢えたゾンビの顔と伸びた手を映すと共に赤く染まってゆく。
ふっ‥‥綺麗な女性を手助けできたし、これで満足さ――――。
●血肉の宴
窓から抜けると高い壁の間を細い通路が左右に伸びていた。ホリィは左右に視線を疾らせ、様子を覗う。通路の横には建物へ入るドアも確認できるが‥‥。
「会場の入口へ向かうなら右の通路に進むのが妥当です。様子を見て来ます。待ってて下さい」
ゆっくりと慎重な足取りで先を進むホリィ。通路の先は左に折れているようだ。軍用銃を構え、瑠璃色の瞳に緊張感を映す中、ゆらりと月明かりに人影が飛び込む。立ち止まって銃口を向けた刹那、背後で勢い良くドアが開き、ゾンビの群が雪崩れ込んで来た。一斉に響き渡る少女達の悲鳴。
「ここから早く逃げて!」
立て続けに銃声を響かせるホリィ。頭部を撃ち抜かれたゾンビが血を噴いて崩れてゆく中、彼女の背後に人影が迫る。若い軍人は少女達の安全を確保する為、ドアから溢れ出すゾンビに必死の洗礼を叩き込んでいた。拳銃が弾切れを知らせ、マガジンを床に落として交換、更にトリガーを絞る。
「マイクが命懸けで守った少女達をやらせはしないわ!」
視界はホリィの背中を捉え、ゆっくりと近付く。肩まで迫った時、顔を向けた表情が戦慄に染まる。
「ひッ、きゃあぁッ! くッ、やッん‥‥あ、あぁ‥‥ッ!!」
背中から鮮血を舞い散らせ、床に崩れるホリィ。抵抗を示す声が漏れる中、裂けた背中の傷に一斉に青白い腕が伸びると、布の裂ける音と共に絶叫が響き渡り、幾十ものゾンビが少女を埋め尽していった――――。
――水着に肢体を包んだ少女達は走っていた。先ほどまで聞えていた銃声は途絶えている。
ノラを先頭に彼女達は左へ伸びた通路を進んでいるのだ。再び控え室の脇を通る事となったが、幸い窓から出る運動能力は無いのか、群は一箇所に集まって腰を落としていた。床に広がる血溜まりが状況を理解させる。
「控え室を見るんじゃないよ! 真っ直ぐ前を向いて走るんだ! ‥‥ッ!?」
暫らく先を駆けていた褐色の娘が立ち止まった。訝しげに慧莉が訊ねる。
「どうしたのよ、追い着かれちゃうわよ? ‥‥あら?」
緑色の瞳に映るは建物へと続くドアだ。つまり、再びホールに戻らなければ先は無い。ノラが振り返り、少女達を見渡す中、カレンと由希、そしてブルービキニの娘が頷くが、ミキだけはヒステリックに泣き叫んだ。
「わ、私は嫌だよ! きっとゾンビがいるよぉ!」
「じゃあ、どうすればいい? この行き止まりで待つのか? 見ただろう! ホリィはやられたんだ! あの群が一本道のここに辿り着くのも時間の問題だぞ!」
「ノラ、待って下さい。ミキ? 私達は生き残らなければならないのです。その為には立ち止まっては駄目、分かりますよね?」
「心配しないで☆ ゾンビが来ても刀の錆にしてあげるわ♪」
「そうです。私達はこれ以上、一人も欠けてはなりません」
励ますもののピンクのワンピース水着の少女はメソメソと泣くばかりだ。褐色の娘は諦めて舌打ちすると背中を向ける。
「勝手にしな。‥‥ドアを開けるよ」
鈍い音を軋ませ、ドアが開く。視界に広がるのは古びた一室だった。床は木で作られており、壁も木製のようだ。物置なのだろうか? しかし、奥には扉が見える。
「‥‥ホールが建つ前からある取り壊さなかった建物か?」
「でも、このドアの奥はホールと繋がっているのではないでしょうか?」
「慎重に進みましょ☆ 床が崩れたら大変だわ」
「えぇ‥‥こんな格好では木が刺さるかもしれませんからね」
四人は用心しながら中へと入って行く。ペタンと座り込んだまま泣き続けた少女は、ゆっくりと涙で腫らした顔をあげる。周囲は静寂に包まれ、時折響く低い呻き声に慌てて腰をあげた。
「あ、待ってよ。置いてかないでよ〜」
半泣きで後を追うミキ。一瞬ガクンと身体が沈む感覚に襲われた刹那、少女の露となった足は痛んだ床を突き破り、そのまま落下してゆく。
「きゃあぁぁぁッ!!」
「ミキッ!?」
慌てて床に出来た穴を見下ろす少女達。手を差し出すが捕えられる事も叶わず、ピンクの水着が鮮やかな光沢を浮かばせながら闇の中へと落下して行った。次に耳に飛び込んだのは水飛沫の音だ。
「え? まさか下に水が溜まっているのですか?」
「でしたらミキは無事なのかもしれません」
「でも、この穴に落ちるのはゴメンだわ」
「ミキーーッ!!」
ノラの叫びが聞えたか否か、少女の返事が届く事は無かった――――。
「‥‥ぷはッ! え? プール?」
辺りは闇に包まれてよく見えない。何となく水溜りではない事だけは感じられた。しっとりと黒髪を濡らした少女は、不安げに瞳を潤ませる。兎に角、出よう。肩に掛けたイスラエル製のサブマシンガンの重さが疎かったが、ミキは泳いで端に向かおうとしていた。
――Wouuu
低い呻き声が闇に響き渡り、少女は泳ぐ手足を止めて視線を振る。
「だ、誰か、いるの?」
戦慄の表情を浮かべる中、水面が弾ける音が四方八方から響き渡った。
――何かが近付いている! それも大勢‥‥。
ミキは小刻みに震えながら銃口を闇に向け、トリガーを絞る。乾いた銃声が連射され、マズルフラッシュに傷だらけの青白い顔が照り返す。少女は瞳を見開き、震える唇から声を発した。
「あ、嫌だ、こっち来ないでよ! いやあぁぁッ!!」
腰を捻って銃弾をバラ撒くと、次々に向けられた銃口に照り返してゾンビの群が映し出されてゆく。既に半狂乱の少女はトリガーから指を離さず、絶え間なく銃声を響かせ捲る。
「銃声!? ミキか!? み‥‥」
ノラは言葉を失った。再び穴に駆け寄る少女達の瞳に映ったのは、マズルフラッシュに照り返すミキを取り囲む様に迫ってゆく夥しいゾンビの集団だ。
「退いて下さい!」
由希がサブマシンガンを構えて眼下に狙いをつけてトリガーを絞った。
「ミキ! フルオートなんてやってたら弾が直ぐに切れます! 基本はバーストファイアで、危ない時だけフルオートです!」
『いやッ、来ないでぇ! 触らないでぇ! あれ? もっと出してよ! 弾が、いやあぁぁぁッ!』
銃声が途切れた刹那、大きな飛沫と共にミキの身体にゾンビが群がり、水面が深紅に染まってゆく。誰もが顔を伏せ、瞳を閉じた。結果は見るまでもない。
――ギシッ‥‥。
ミキが開け放ったままだったドアの方から鈍い軋み音が響き渡った。屈んだ姿勢のまま、ゆっくりと視線をあげると、狭い通路に群がったゾンビが浮かび上がる。その中の一体に由希は躊躇した。
「マイク‥‥さん」
腹部は血塗れでボロボロの軍服を着たゾンビは、低い呻き声と共に青白い顔を向けて血だらけの腕を伸ばす。次に響き渡ったのは、断続的な銃声だ。血が足から迸る中、マイクはガクリと膝を着く。白い三角ビキニの少女は銃口から硝煙を漂わせながら、瞳に力を滾らせた。
「ぜ、絶対生き延びてやる!!」
由希を始めとした少女達がゾンビの群に銃口を向ける。刹那、背後で一際大きな音が響くと、ドアを打ち破って別の集団が雪崩れ込んで来た。正に八方塞の絶望的状況。
「こっちは任せて!」
床を蹴って群に跳び込んで行ったのはブルービキニの慧莉だ。右手に日本刀を煌かせ、左手に小太刀を構え、妖艶な微笑みと共に巨乳を揺らしながら切先を薙ぎ振るう。ボロボロの腕が切り落とされ、首を撥ね、胴を真っ二つに斬ってゆく。忽ち白い髪と柔肌は返り血を浴びて赤く彩られるものの、鮮烈なほどに艶やかだ。躍動する肢体の中、緑色の瞳が鋭利に研ぎ澄まされる。
「大宗院流奥義・背櫛!」
疾風の如く慧莉はゾンビの背後に回り込み、残像を描いて刀身を何度も同方向に音速の速さで疾らせた。ラストの一刀を放った刹那、まるで櫛で梳いた時の様な赤い傷が次々と浮かびあがり、切り刻まれたゾンビが肉片となって崩れる。
「まあ! 慧莉ってサムライマスターかしら?」
かなり嘘くさいがB級ホラーならではの見せ場と言えよう。かつて、迫るゾンビの群を音速の枝きり鋏で切り刻み、肉塊の山を築いて煙草を吸うなんて映画の一シーンもあったものである――――。
「ああもう! ちっとも当たりゃしない!」
ノラは拳銃で応戦するが一向に命中しなかった。引き締った筋肉の腕なら照準も安定するかと思われたが、何処か欠点があるのか、瞬く間に弾切れを知らせる軽い音が響く。
「チッ、使えないな! 私の遣り方でやらせてもらうぞ!」
舌打ちと共に銃をゾンビの群に放り投げると、紫のハイレグから伸びた健康的な太股に手を運ぶ。不敵な笑みと共に引き抜いたのは二本のナイフだ。ノラは散らばり出したゾンビ等に対応できない仲間のサポートに専念する様に立ち回った。白い三角ビキニの少女に近付くようなら斬りつけ、ブルービキニの娘に迫るようなら長身を活かした廻し蹴りを薙ぎ放ち、ゾンビ共は滑稽なほどの将棋倒しで崩れてゆく。しかし、ノラとて全てをカバー出来るものではなかった。
「生き残るには撃つしかないのですね‥‥!? あっ」
カレンの銃口が躊躇いに揺れる。深紅の瞳に映るのはスタッフだった者の姿。ホールを訪れた際に道に迷った時、親切に控え室まで案内してくれた青年だ。屈託の無い笑顔は失われ、曲がった首から血を滴らせながら、ギラギラした眼光で白いワンピースの少女を渇望するように腕を伸ばしていた。
「‥‥ごめんなさいッ!」
彼女がトリガーを絞ろうとした時だ。ゾンビの群からヤケに素早い動作で飛び出した影が横に跳ぶ。カレンは焦りを覚えて銃口を向けた刹那、少女は瞳を見開く。
「ホリィ‥‥」
否、ホリィだった存在が前屈みの体勢で白いワンピースの少女を捉えていた。軍服は彼方此方が破れ、下着や肌が露出しており、身体に刻まれた大きく引っ掛かれた傷痕が生々しい。死後から時間が短い所為か、動きが機敏なゾンビは一気にカレンに飛び掛かった。
「きゃあぁぁッ!」
タックルを受けた状態の少女は木板の壁をブチ破り、隣の部屋へと突っ込む。うつ伏せに倒れ込んだものの、肌に感じたのは生暖かい柔らかさと黒い飛沫だ。一瞬キョトンとした表情を見せる。
「ごふッ、えっ、泥? ‥‥はッ!」
今はそれ所では無い。カレンは四つん這いで泥状のモノを掻き進んだ。刹那、同じく突っ伏していた汚れた腕が伸び、少女の大きく開いた背中の布に指を掛け引っ張り出した。
「ひッ、いや、放して! やッ、あぁんッ!」
慌てて泥を掻き足掻く中、首の後ろで結ばれた紐がプツンと切れ、戸惑いの色を浮かべながら必死に逃れようと努める。次第に身体が泥だらけに染まると共に、鋭利な爪跡が白い肌を鮮血に染めてゆき、白かった薄布が耳障りな音を響かせ破れ続けた。刹那、突然身体が軽くなり、魔の手から解放されたカレンの肢体が勢い良く泥に突っ伏す。這いつくばって進んだ為、少女は殆ど裸に近いが泥がカモフラージュしていた。
「ハァ、ハァ、ハァ‥‥あぁッ! ん、に、逃げなきゃ‥‥」
自慢の白銀ヘアも既に泥塗れ、背中の痛みに悲鳴をあげながら身体を起こそうとした時だ。
「ひあんッ! くぅんッ、やんッ、ホリィ、やめてッ、うぅんッ、痛ッいあぁんッ!」
飛び掛かったゾンビがカレンの肢体を力任せに仰向けに転がし、食らいつこうと顔を近付けた。必死に抵抗するが力の差は明白だ。泥塗れの柔肌は足掻いた分、鮮血に染まり、伸びた手が肉を掴むと少女は仰け反って悲鳴をあげた。次の瞬間、柔らかい膨らみにホリィが噛み付き、泥塗れの肢体は涙を散らせ、絶叫と共に力を失った――――。
●死霊の夜明け
カレンの絶叫が反響する中、ホールには夥しい人だった者の山が累々と築き上げられていた。
視界は血が飛び散った通路を突き進み、少女達の荒い息遣いが漏れる。姿を見せるゾンビは銃弾に崩れる者あれば、刀に首を撥ねられる者もいた。
『無事に出られたら熱いシャワーを浴びなきゃな!』
『えぇ、絶対生き延びてやる!!』
『見て! ホールの入口よ!』
視界は血で彩られたステージを跳んだように上下し、小刻みに揺れながら大きな装飾の扉を開けた。一瞬、目の前が真っ白に染まる――――。
ノラの汚れた赤い髪が風に揺れた。紫色だったハイレグ水着娘の後から息を弾ませ、白かった三角ビキニの豊かな胸を揺らして由希が顔を見せ、青かったビキニの胸元も同様に、慧莉の返り血塗れの顔が映る。三人の魅惑的な水着姿の背中へ視界は回り込み、朝日に浮かぶ町の風景を映し出す。彼方此方で炎が燻り、ショーウインドウの硝子窓は割れ、路上では幾十の車両が大事故の様相を描き出し、アスファルトは血で染まっていた‥‥。まるでテロリスト事件か、戦争が起こったかのような光景だ。
呆然と立ち尽くす水着ガール。ノラが言葉を失う中、黒髪の少女は、袋の中の弾薬を覗いて残弾を確認する。白髪の娘は妖艶な風貌を僅かに崩して、肩を竦めて見せた。
「まだアピールしなくちゃダメなの?」
両手の血塗れナイフを握り締める紫ビキニに身を包んだ褐色の娘。
サブマシンガンを構えて瞳を研ぎ澄ます三角ビキニの少女。
血塗れの日本刀と小太刀を交差させて妖艶な笑みを浮かべるブルービキニの娘。
それぞれ得物を構える三人の少女を捉えた視界がゆっくりと引いてゆく中、断続的にホール内を映し出し、マイク、ホリィ、ミキ、カレンが他のゾンビ達と共にゆっくりと起き出す。
「熱いシャワーは未だお預けか‥‥」
視界は再び三人の水着ガールから急速に引く光景に転じ、ゾロゾロと群がり始めた蠢く夥しい人影を次々と流してゆき、地獄と化した超高層ビル街の町全体を映し出した――――。