ヴァルキリーインパクトアジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/03〜03/07

●本文

●TVCM
 ――今、世界には様々な格闘技が溢れ、TVで放送されている。
 男達は鍛えた拳や技を酷使し、最強という称号を得る為に闘い合う。
 だが、戦う戦士は男ばかりではないのだ。今や女がリングに上がり様々な格闘技に身を投じている。
 そう、時代は戦乙女を必要とし、現代に甦らせたのだ!!
 ヴァルキリーインパクト。これは2ラウンド制による立ち技のみの格闘技である。
 白魚の手をグローブという武具で固め、魅惑的なボディを様々なコスチュームが彩りを与え、艶やかな長髪が揺れ、しなやかな白い足が薙ぎ振るわれ、スカートが舞う!
 彼女達が桃の節句で再び降臨! 今度のヴァルキリーは果たして!!
 近日、TVスポットが当らなかった戦乙女達の肢体が公開される!!
 只今、ヴァルキリーインパクトでは出場者募集中!!

「ひな祭り合わせスかッ!?」
「ヴァルキリーインパクトは未だ需要がある! 乙女の日にやらないでどうする!?」
「雛人形のような衣装で闘うのも綺麗そうよね☆ 卒業シーズンだし、セーラー服とかブレザーとか♪ 演出の幅も広がるんじゃない?」
「前回は初回と同じセットでしたからね。演出家のクリエーター魂ももえるでしょう」
 敢えて品の良い眼鏡を掛けた青年は『もえる』を頭の中で平仮名にして言った。どうでもいい事だが‥‥。
「‥‥はぁ。それでまた募集はプロお断りなんスね? ええ、女性選手はOKなのは分かってるス」
 彼が確認しているのは男子プロ格闘家の話だ。プロレスラーは試合をしてこその存在。いざ試合が近い時期に打ち合わせでスケジュールが取れない、または試合に出場できない選手を危惧しての条件は今回も出されているらしい。
「それから前回の試合だが、今回からはキッチリしておけよ。差別とか心の問題じゃない」
「そうね、どうしても男性は力が強いわ。それに戦乙女という売りも霞んでしまう‥‥」
「実はTVを観て気に入った選手が‥‥では萌、いえ、もえるどころか萎えますからね」
 ――何のブライドだ優男。
「‥‥了解ス。違反者には罰金とラウンドガールでもさせるス!」
「おいおい、せめて解説席に適当に座らせておけよ‥‥」
 こうして3月3日に向けて、ヴァルキリーインパクトは再び動き出したのである――――。


●試合形式
 グローブを嵌めての1R2分2ラウンド制。
 2ノックダウンシステム。
投げ、関節技は無し。膝蹴りOK。手足以外での攻撃、及び背後からの攻撃は反則。
 勝負はKO・TKO・判定で決定。
 エンターテイメント性を高くしており、衣装は組み技が無い為自由(但し金属物が付いたものは禁止)。

●募集区分
・ヴァルキリー(若い女性であれば格闘技未経験者でも参加OK)
 試合を行う選手です。コスチュームは自由。
 格闘スタイル・得意技(コンビネーション等)・自己PR・どのように試合を組み立てるのか明記。
 参加者には染色体チェックが行われます。心が女性でも参加できません。

・コスチュームデザイナー
 選手のコスチュームを製作する方です。アピールポイント明記。
 選手紹介時に記録映像としてデザイナー紹介が流されるかゲストとして映ります。
 注意点:突起物や鉄製のものは止めましょう。

・入場音楽作曲家
 選手の入場シーンの音楽を担当する方です。但し、既に出している音楽は却下です。
 アピールポイント明記(選手の何をイメージして作った曲か、どんなリズムの曲か等)。

・実況
 状況を視聴者に伝える方です。選手のキャッチコピー等明記。
 殆ど実況で状況が伝えられます。自分の個性を出せるよう台詞を決めておくのも一興です。

・控え室リポーター
 選手の控え室をリポートする人です。普通は遠くから様子を窺うのみですが、勇気があれば突撃して見ましょう(笑)。後は選手との駆け引きです。

・番組演出
 TV演出や選手入場からリングにあがるまでの花道の演出を担当します。言うなれば、ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組かを決定する重要な部分です。タイトルの雰囲気や視聴者に魅せる部分を構成して下さい(イメージは月ごとに開催されるKの番組参照)。

・解説者
 格闘技を生業としている女性で、試合の状況に解説を入れる方です。
 ヴァルキリーインパクトは素人も参加可能な格闘技ですので、無名でなければ担当できます。

・セコンド
 選手につくセコンドです。出番は少ないですが、セコンドがいると1R目の闘いによりアドバイスを受けて有利に展開できるかもしれません。

・ラウンドガール
 2R戦ですので1R終了時に登場します。コスチュームは自由。アピールポイント明記。当然ながら台詞はありません。笑顔で目立ちましょう(笑)。

*男性でプロまたは格闘技経験者は控えて下さい。皆様の舞台は他にある筈です☆

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1679 葉月竜緒(20歳・♀・竜)
 fa2196 リーゼロッテ・ルーヴェ(16歳・♀・猫)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa3094 レベッカ・スチール(18歳・♀・竜)
 fa3116 ヴィクトリー・ローズ(25歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●桃の節句 戦乙女再降臨
 相変わらずの四角いリング上空をカメラは捉える。番組担当者は雛祭チックな演出を出せないものかとぼやいたらしいが、舞台を彩る演出家がいないのでは仕方が無い。否、魅力的なヴァルキリー達がいるからこそ、変わり栄えのしないセットでも彩りを与えるのだ。彼女達が主役なのだから‥‥。
「はい、おおきに〜☆ ‥‥やないわ。こんばんわ、うちの顔、覚えていますか〜?」
 映し出されたのは、関西弁を無理に標準語に修正して話す葉月竜緒(fa1679)だ。首の後ろで結ったピョンピョンと跳ねた癖っ毛の黒髪が愛らしい娘は、満面の笑顔で手を振って見せる。ヴァルキリーインパクトフリークなら、2度選手として参戦したのでお分かりだろう。視聴者の中には驚いている者もいるに違いない。
「今回は実況を務めさせてもらいます。それじゃ、毎度お馴染み火の玉レポーター・リーゼロッテを早速、呼んでみましょう、今回は選手のどんな一面を引き出してくれるのか? ロッテ〜〜」
 実況から振られると共に『ロッテの☆突撃レポート♪』と書かれた看板が映り、赤い瞳の銀髪少女、リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)が口を開く。今回は何時ものスーツ姿ではなくセーラー服だ。若干16歳の彼女だけに細い身体に相俟ってグッと来るものがある。
「今まで観てきた人達にはお久しぶり。今回始めて観る方達には初めまして♪ もはやこの番組のレギュラーコーナーと言っても過言ではないこのコーナーを担当するレポーターのリーゼロッテ・ルーヴェが、今回も選手達に突撃レポートを敢行します」
 早速駆け出したセーラー服の背中をカメラが追う。余談になるが、本当は十二単にしようと思ったのだが、走り回る関係上身軽なセーラー服にしたという裏事情があるらしい。確かに十二単で駆け回るのは疲れそうだし、転んだら大変な事になる。
 スカートを揺らして走る少女が辿り着いたのは、燐 ブラックフェンリル(fa1163)の控え室だ。ドアが閉まっており、ロッテは何も考えずにノブを回して開いた。
 ――あ‥‥。
 映し出されたのは、ふわふわの銀髪を揺らし、今正に衣裳に片腕を通した瞬間だ。健康的な褐色の肢体がキワドイラインで固まった。慌ててドアを閉めて、カメラに向けて苦笑するロッテ。こんな時は笑って誤魔化すしかない。視聴者の中には録画するべきだったと思った者もいただろう。
 暫らく苦笑する少女を映した後、ギィィッと鈍い音をたてたドアの隙間から顔を出す燐。普段から冷たく見える整った風貌は、ジトっとした緑色の瞳を流し、一層冷たい。
「‥‥何の用ですか?」
「はーい♪ ロッテの突撃レポートでーす☆ 試合に掛ける意気込みなんか訊きたいのですけど〜」
 努めて陽気に振る舞う少女。しかし表情は困惑の色を浮かべているのは仕方が無い。試合が終わったら謝りに行こう。そう決心したロッテだった。兎も角、褐色の少女にマイクは向けられ、燐は涙を浮かべながら口を開く。着替えを全国に見られた為か、感動に因るものか微妙だ。
「僕は体力だけしか自信のない素人だけど、試合の数日前からレベッカさんに基本だけレクチャーして貰ったんだよね。だから、頑張らなきゃ。相手の攻撃を受けて、耐えて、渾身の一撃を最高のタイミングで狙っていけたら良いかな」
「あ、有り難うございました☆ 試合頑張って下さい!」
 ロッテはエールを送ると再び走り出す。訊きたい事はあったが、対戦相手に聞けば良い。兎に角、今は気マズイ控え室から去りたかった。頑張れロッテ!!
「今、対戦相手の控え室に向かっています。早速意気込みを訊いてみます!」
 映し出されたのは、穏やかな笑みを浮かべて小首を傾げた銀髪の少女だ。たおやかな雰囲気のレベッカ・スチール(fa3094)にマイクを向ける。
「格闘家としてはまだまだ新人で至らない所だらけですが、ガッツだけは誰にも負けない自信は有ります、今日は力一杯頑張りますので宜しく御願いします」
 言葉遣いの丁寧さと、おっとりした雰囲気が『ガッツ』とか『力一杯』とか似合わない少女だ。
「あの、対戦相手の燐選手に基本をレクチャーしたって本当ですか?」
「はい☆ 格闘の経験が無いと仰られたので、試合の一週間位前から、格闘の基本を教えて差し上げました。試合で大怪我されるのは困りますから♪」
「有り難うございました☆ 試合頑張って下さい! 以上、ロッテの☆突撃レポート♪でした〜」
 実況にカメラが戻り、竜緒を映し出す。
「はい、レベッカ選手は余裕があるって感じでしたね。では、CMの後、いよいよ開始です」

●第一試合:燐 ブラックフェンリルvsレベッカ・スチール
『(只今より、ヴァルキリーインパクト第一試合を行います! 選手、入場!!)』
 歓声とどよめきに客席が震えた。スポットライトに照らされ、花道を歩いて来る少女は、シースルー素材の外套を纏っているのだ。オマケに何故か錆の浮いた鎖が付いており、首と腰に軽く巻き付けて、垂らしてある。キワドイ衣装も相俟って危ういシチュエーションを漂わす衣裳の燐は、羞恥に頬を染めて一層危険な世界を際立たせていた。本人曰く、妖精のイメージだったが、所属団体から『ただの妖精じゃつまらないから、急遽囚われ妖精』になったらしい。勿論本人は泣きたいほど恥かしい筈。思わず竜緒は口をあんぐりと開けて選手紹介を忘れる所だ。
『か、格闘経験無し、しかし、リングに上がる情熱に思わず昔の姿が重なります。今日はどんな試合を見せてくれるのか!? アイドルとして培った打たれ強さが大番狂わせの期待を膨らませるは新たな格闘挑戦者! 燐 ブラックフェンリル!』
 続いてスポットライトに浮かび上がった少女は、着物を闘いやすく袖と裾を短く切った感じの、『和』を基本にした衣裳を身に着けて登場した。相変わらず、たおやかな身のこなしで微笑んでいる。
『ついその美しい容姿に目が行きがちですが新人ながら格闘家としての実力も目を見張るものがあります。華麗にリングに舞うはレベッカ・スチール!』
 歓声が止まぬ中、リングを降り立った刹那、緑の瞳が研ぎ澄まされた。レベッカの瞳に映るは、錆の浮いた鎖を外す燐の姿だ。丁寧な口調はそのままだが、声色にハリが浮かぶ。
「お互い頑張りましょうね」
「はい、僕も勝つ為に戦うからね!」
『(セコンドアウト! Round1 ready Fight!!)』
 ――試合に勝つにはどうすれば良いか‥‥。
 自身の能力を知り、相手を良く見て、考える。散発的に攻撃しながら動き回って疲れさせるのは?
 駄目、それじゃ先にバテちゃう――――!!
『あぁ、動かない燐選手に先ずはレベッカ選手のボディブローが炸裂した! 燐選手堪えます。その隙にレベッカ選手が距離を取った!』
「どうしましたか? ガードが間に合っていませんよ?」
「ま、まだまだ僕は平気だよ」
『両者睨み合いが続きます。シースルーの衣裳を艶かしく揺らしながら、ゆっくり時計回りに動いています。次に仕掛けるのは‥‥っレベッカ選手、一気に懐に詰めてボディに連打だ! 燐選手ガードが追い着かない! どうやらレベッカ選手はパンチ主体の攻撃が得意戦法‥‥っここでローキックだ! 体勢を崩した所に‥‥脇腹へ廻し蹴りッ!! 執拗にボディと足を攻めています』
 レベッカの攻撃に観客がどよめく。彼女の技は動きが激しく、パンチを叩き込む度に着物の合わせ目から白い膨らみでチラチラと揺れ覗き、薙ぎ振るわれる蹴り技では、裾が捲れてしなやかな足が曝け出された。全ての攻撃を食らっても崩れない褐色の少女に、フフン♪ と微笑む。
「まあ☆ やっぱりスタミナはあるみたいですね」
「‥‥どういう事だよ。ボディと足ばっかり狙っちゃって」
「あら? だって、女の子の顔へは攻撃出来ませんから☆」
 意外そうな顔色を浮かべ、レベッカが微笑んだ。つまり、彼女を信じれば顔面を狙われる心配はない訳だ。燐が冷たい緑色の瞳を研ぎ澄まし、不敵な笑みを浮かべる。
 ――相手の攻撃を受けて、耐えて、渾身の一撃最高のタイミングを狙って‥‥。
 褐色の肌が踏み込んだ。詰めたスピードだけを見れば、燐は速い! そのまま少女は正拳突きを叩き込み、肘、裏拳、掌底とコンビネーションを食らわせた。
『速い! スケスケの衣裳が照明に照り返し、正に妖精が光を散らせて舞い踊っているようだー!!」
 ――淀みなく! 全ては一番自信ある一撃の為の道!!
『あぁッ、しかし! レベッカ選手、しっかりと腕でガードしていたーッ!!』
「そこだよ!」
 グローブを叩き込んだ後、バックステップで跳ぶと宙返りと共に大技を繰り出す。
『跳んだ!! 空中で宙返りです! 正に妖精が見えない羽根で飛んでいます! そのまま褐色の踵が振り下ろされ‥‥あぁッ、届いていない!?』
 燐は「あんッ!」と短い声をあげ、マットに尻を強打して尻餅を着いた。空かさずレフリーが割って入る。倒れた相手への攻撃は反則なのだ。尤も、レベッカも起き上がるのを前屈みになって待っていたが‥‥。そこでラウンド終了のゴングが鳴り響いた。
『(セコンドアウト! Round2 ready Fight!!)』
『先ほどは大技を見せた燐選手でしたが、全て攻撃を食らっているものの動きの軽快さは健在です』
「お尻、大丈夫でしたか? 凄い音がしていましたよ?」
「平気だよ。次は当てるから!」
「まあ☆ でしたらそろそろ幕引きが必要ですね♪ スタミナでは燐さんが上のようですし」
「だったら疲れた所を僕が畳み掛けるよ!」
 一見、互いに優劣が見られない闘いだったが、プロの目には明確な答えが浮かんでいた。レベッカのボディブローとローキックは確実に燐へダメージを蓄積させ、逆に妖精の舞いは全て着物の少女にガードされていたのである。しかも、的確な間合いとタイミングによるインパクトは、格闘の経験で培われるもの。次第に褐色の少女は足を引き摺る結果となる。
 ――まだ僕は元気なのにッ! 足が重くなってる!?
 ――僅か7日間でこれだけ学んだのは褒めてあげますよ。
『あぁッ! 動きが鈍った燐選手の脇腹に白い足が薙ぎ放たれたッ!! しかし未だ倒れないぞ! だが、時間がぁッ!!』
 2Rの闘いは終わりを告げた。結果はレベッカの判定勝ちである。

●ロッテの☆突撃レポートぱーと2♪
「はい、ロッテです。やはり格闘技経験の差って感じでしたね☆ では、次の選手達に突撃レポートを敢行しちゃいましょう♪」
 またもや少女の細い背中は駆け回り、控え室に辿り着いた。映し出されたのは、茶のボサボサショートヘアの尾鷲由香(fa1449)だ。早速、ロッテが口を開く。
「今回で2戦目ですね。意気込みをお願いします」
「おッ、覚えていてくれたのか? 嬉しいな。今回、戦いに参加した理由は前回とは違い自分の為、かな、より強い奴と戦いたいから参加したぜ。あたしの場合はバーサーカーだろうけどな」
「ばーさーかー?」
 如何にも意味が分からない口振りで少女が繰り返すと、由香が微笑む。
「試合みれば分かるぜ。まあ、勉強しな。今回の相手は決して油断出来る相手じゃねぇから少し慎重にいかせてもらう、面白くないかもしれないけど勘弁な」
「そんな事ないですよ、頑張って下さい! では、次の控え室へ向かいます」
 再び駆け出す少女に『おうッ』と由香が応える中、無事にロッテは辿り着く。編集でカットしても良いようなものだが、何か期待しているのか。
 カメラが映し出すは格闘アイドルの異名をもつ、ブリッツ・アスカ(fa2321)だ。短めの茶髪娘は向けられたマイクに応える。
「試合を見てくれ。今はそれだけ」
「え? それだけ、ですか? 今回2戦目ですよね? 頑張って下さい! (カメラに向き直り)出場2戦目同士の二人、どんな試合が繰り広げられるか楽しみです☆」

●第二試合:尾鷲由香vsブリッツ・アスカ
『(只今より、ヴァルキリーインパクト第二試合を行います! 選手、入場!!)』
 歓声が響く中、浮かび上がるは、膝丈の深緑迷彩スパッツに暗緑のタンクトップを身に着けた娘だ。華やかさよりも機能性重視で挑むらしい。
『鋭い眼光はまさしく獲物を狙う大鷲のごとく相手を威嚇する! テコンドーの強烈な蹴りは今回も相手を圧倒するのか!? スタントマンとしての身軽さも見せてほしいところ! 尾鷲由香!』
 続いて姿を見せた娘は、打掛風の着物を羽織って花道を歩いてゆく。着物からスカイブルーに彩られたセパレートのリングコスチュームとホットパンツが覗く。
『一度リングに上がれば誰もスパークする彼女を止められない! その鋭い蹴りは相手をショートさせるか!? その多才さからアイドルとしても活躍中! 稲妻娘の異名のごとくしびれる試合展開が楽しみです。ブリッツ・アスカ!』
 リングに降り立つと同時、勢い良く着物を放り投げた。豊かな胸元に疾るはホワイトシルバーの稲妻だ。中性的なベビーフェイスとアンバランスな二つの膨らみに、観客達は早くもショート寸前か。
『(セコンドアウト! Round1 ready Fight!!)』
 ――スピードもパワーも相手が上だが、技術と作戦で覆せないほどではないはず!
『さあ、出場2戦目同士のヴァルキリーの闘いが始まりました! おぉッ、アスカ選手一気にダッシュ! そのまま浴びせ蹴りだ! しかし、由香選手腕をクロスしてガード。躱さないのは受けて立つ意志表示か!? 倒れたアスカ選手跳ねるように体勢を立て直します。レフリーが仕切り直して‥‥またもやアスカ選手、左右のローキックを放った。だが、これも膝を上げてガード。続いてアスカ選手の前蹴り!』
 ――至近距離での攻撃を警戒させる前に対処されたか‥‥。
『アスカ選手、いい動きです。薙ぎ放つ蹴りの度に客席がどよめきます! 揺れる! 揺れる! おっと、由香選手、ローリングでグローブを合わせて来た!』
 ――チッ! 全て受けられている! 尾鷲は接近戦を狙っているのか? それとも様子見?
『ここでゴングです。これはアスカ選手判定で有利か! ここで一旦CMです』
『(セコンドアウト! Round2 ready Fight!!)』
『さあ、2Rです。アスカ選手、早くも左ロー! またロー! しかし、またもやガード! ん! またロー‥‥と見せ掛け踏み込み様に、ボディに右の膝蹴り! ‥‥いや! 由香選手の振り抜くようなアッパーが顎を捉えていた!! アスカ選手グラリと揺れます! そこへ膝蹴りのお返しだ!』
 ――なッ!? 速いッ! くはッ!
 鈍い衝撃を脇腹に受け、アスカの表情が歪む。抜群の格闘センスで叩き込まれれば、呼吸すら止まる威力が膝蹴りにはあるのだ。況して由香は身長も高い。重い一撃に稲妻娘の稲光は止んだ。
『2Rで形勢逆転! 接近戦を嫌がると見せた作戦が読まれていたのか!?』
 ――悪いな、接近したのが命取りだ。尤も、あたしも接近戦は伏線のつもりだったがな!
 由香の足が十分に腰を捻り、薙ぎ振るわれた。一陣の突風の如く放たれた一撃にアスカの捌きも受けも間に合わない。
『アスカ選手ダウン!』
 何とか最後まで闘ったが、判定で由香が勝利を納めた。対戦後、アスカに歩みより、握手を求める。
「いい試合だったよ」
「これでも事前にVTR等で相手のクセを入念に研究したんだけどなぁ。カウンターでヤラレタって感じか。次は俺が勝つよ!」
「あぁ、楽しみにしている」
 二人は固く握手を交し、再戦を誓い合うのだった。

●ロッテの☆突撃レポートぱーと3♪
「はい☆ またまたロッテです。渋い試合でしたねぇ♪ なんていうか、真剣の闘いって感じがしました。サムライです、はい。では、次の選手達に突撃レポートを敢行しちゃいましょう♪」
 ロッテの背後に映るは控え室のドアだ。流石に時間削減に踏み切ったらしい。カメラが優麗な金髪の美少女を映し出す。円らな緑の瞳が愛らしいMAKOTO(fa0295)だ。視界が流れ、にんまりと微笑む銀髪の少女を映す。
「皆さんに首から下を見せられないのが残念です。期待して良いですよ〜。後で個人的に聞きたい位です。では、意気込みをどーぞ☆」
「打撃戦は久し振りだからね、楽しんでくよ♪」
「余裕ですね〜」
「そんな事はないけどね、古巣に戻った気持ちでガンバルよ♪」
「はい、頑張って下さい! 後でまたお邪魔しますね。さぁ、次に行きましょう!」
 少し疲れたロッテの背中をカメラが追う。セーラー服とスカートの隙間から素肌がチラチラ覗き、制服姿も悪くないものである。
「ハァハァ、では、早速、聞いて、みましょう」
 鍛え方が足りないぞロッテ‥‥は、兎も角、カメラは赤毛の若い女を映した。ヴィクトリー・ローズ(fa3116)から視界が流れ、再びニンマリする銀髪の少女。
「どうやらダイナマイツな対戦になりそうですよ〜。意気込みをお願いします」
「うーん、なんていうかぁ、闘争の血が疼くってカンジぃ?」
 褐色の細い顎に指を当てると、緑色の瞳をチョイあげて、ローズは答えた。なんか容姿とイメージの違う口調に一瞬ロッテは固まる。一言で言えば――軽い。
「そ、そうですか。頑張って下さい。では、一旦実況に回して、私は個人的にオフレコさせて頂きます」
 画面は暗転するがロッテの声だけ流れる。
 ‥‥えっとぉ、どうすればこんなに胸が大きくなるんですか?
 うーん、なんていうかぁ〜
「(流れてたよロッテ)はい、では、CMの後、いよいよメインを飾る試合をお送りします」

●第三試合:MAKOTOvsヴィクトリー・ローズ
『(只今より、ヴァルキリーインパクトファイナル試合を行います! 選手、入場!!)』
 客席からどよめきが上がった。スポットライトに照らし出されたのは一際木目細かな美貌の少女だ。ライトの光すら弾くようなオーラを放つMAKOTOは、小袖の着物を羽織って花道を歩いてゆく。
『その実力だけでなく柔らかな容姿も人気の一つか!? 容姿端麗実力兼備! 俳優としても格闘家としても大好評活躍中! 誰もが知っているMAKOTO!!』
 観客は声高らかに声援を響かせた。数多の格闘技の試合やドラマを務めて来た美少女が、遂にヴァルキリーとなって参戦したのだ。リングに上がると同時、美少女は羽織っていた着物を優雅に脱ぎ捨てる。再び津波の如くどよめきが溢れた。3サイズはB103W59H88のJカップ! 一挙動の度に白いランニングシャツのようなコスチュームが、弾けるように揺れるが、二プレスはちゃんと着用している。兎も角、竜緒は実況が大変そうだ。
 続いてスポットライトが照らされると、流れる旋律は卒業シーズンに定番のように歌われる日本の歌をロック調にアレンジした曲だ。銀の紙吹雪が舞う中、桃色の着物に身を包み、紫の袴と赤の編み上げのブーツ姿の褐色の女が、燃える如き鮮やかな赤い髪を揺らしながら花道をゆく。
『新人ながら格闘家としてその実力、センスは参加者中ナンバーワン! プロレスとは勝手が違う中どんな戦いを見せてくれるのか!? 眠れる竜が今、目覚める! ヴィクトリー・ローズ!』
 観客はリングに上がったローズに期待したが、どうやら桃色の衣を脱ぐ事はないようだ。ロッテの前振りが妄想を掻き立てただけに残念そうな顔色が目立つ。次回はサービスしてくれるのか? ローズ!?
『(セコンドアウト! Round1 ready Fight!!)』
 ――センスは僕が劣るけどプロとしての場数はこっちが上だよ。自力で勝機を手繰り寄せてみせる!
 ――先ずは布石を敷いちゃうってカンジ?
『実力派同士の対戦が今始まりました! MAKOTO選手、左構えのまま軽やかにステップを刻んで様子を窺う。揺れます! 対するローズ選手、動いた! 左ミドルキックだ! 同時にMAKOTO選手はローキック! おっと、互いに体勢を崩す。両者のスピードに遜色は見当たらない!』
 ――僕のガードが間に合わない!? 間合いを詰めるべき!? ガードに徹して様子を見る!?
 ――流石に片足を上げた状態で掬われたらマズイってカンジ? ‥‥っていうかぁ。
 隙の少ない打撃を与えようとしても、自分の能力を凌駕していれば命取りだ。スピードが同等なら見誤った方が負ける!
『ローズ選手、再びミドルキック! MAKOTO選手ガードが間に合わない! ローズ選手踏み込んだ! 左ストレートブロー! うーん僅かの差で当たる! 続けて右のジャブ、左フック、そのまま戻して左ストレート! MAKOTO選手、ガードが間に合わないながら、空いた腕でジャブやフックを散らす! ローズ選手ガードせず打ち合いに出た!! 女子プロレスラーの意地炸裂か!!』
 そう。ローズは打ち合いでのガードを考えていなかった。対するMAKOTOはガードが追い着かないながらも、空いた腕で接近戦を得意とする八極拳で応戦。間合いが詰まる中、互いにローキックを炸裂させた。
『ローズ選手、ローは脛をあげてガード! MAKOTO選手の白い足が赤みを帯びて来ました!』
 ――そろそろイケルでしょぉ!!
 ローズの左ミドルが脇腹に吸い込まれてゆく。MAKOTOは反射的にグローブでガードに転じた。刹那、赤い髪の女は褐色の足をグンと伸ばし、美少女の顔面を捉える。
 ――しまった! ミドルと見せたハイ!
『左ハイ炸裂! MAKOTO選手が揺れたぁ! あぁ、ここでローズ選手、顔面目掛けて前蹴りだ! 金髪が舞い踊り、美少女が仰け反ったーッ!! ここでゴングです! MAKOTO選手ゴングに救われました!』
『(セコンドアウト! Round2 ready Fight!!)』
 ――やってくれたよね。今度は僕本来のリズムで攻めるよ!
 MAKOTOは右構えにスイッチしてリズムを刻んだ。揺れる胸元は浴びた前蹴りによる血で赤く染まっていた。対するローズはミドルレンジで動向を窺う。
 ――右構えならイケルってカンジぃ?
『さあ、2Rは両者睨み合いで始まりました。どちらが先に動くのか!? 蹴りか! それとも踏み込んでパンチか! 一瞬の判断が勝敗を分かつ試合ですッ! あ、ローズ選手動きました! 左フックだ! しかし、この距離では当たりませ‥‥違う! 軸足を大きく反転させてのバックスピンキックだ!! 空を切った左フックに合わせてMAKOTO選手も踏み込んでいる!!』
 MAKOTOは振脚で身体全体の捻りや回転を右正拳突きに注いで叩き込んだ。しかし、後ろ廻し蹴りのモーションに入ったローズを確実に捉えられず、踏み込まれた為、薙ぎ放った蹴りもダイレクトにヒットしなかった。金髪の少女は再びスイッチして左構えに戻る。
 ――今だよ! ‥‥ッ!?
 ――距離が詰まったなら好都合だしぃ!
『ローズ選手そのまま再びジャンプしてのバックスピンキックだ!! MAKOTO選手ガード間に合わないーッ!! 再び揺れたーッ!!』
 その後、MAKOTOは空手と八極拳の技を駆使してのコンビネーションで激闘を繰り広げた(因みに冲捶と呼ばれる馬歩衝捶は兎も角、グローブの掌底で殴りつける鉄槌はグローブマッチ的にマズイ。次回参戦があったら気をつけよう)。
『MAKOTO選手、僅かに疲れが見えて来たようです。ここでゴングが鳴りました!』
 僅差の判定だったが、ローズが勝利した。
「やはりガードが間に合わない事と体力を消耗した事がMAKOTO選手の敗因でしょうか。しかし、この二人だったからこそ見応えのある試合となったのは言うまでもありません。次の試合まで鍛錬を続ける事で、MAKOTO選手も十分勝算はあるでしょう。再び合間見える時は来るのか!? ヴァルキリーインパクト桃の節句に再降臨、実況葉月竜緒でお送りしました」