ヴァルキリークリエイトアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/17〜05/21

●本文

●TVCM
 ――ヴァルキリーインパクト。
 これは立ち技のみの女子格闘技である。
 これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、春と共に新たな局面を迎えた。
 最強の戦乙女を決定するトーナメント戦の開幕である。
 さぁ、準備は整った! ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい!
 只今、ヴァルキリーインパクトでは舞台や乙女達を飾るクリエイター募集中!!

 ――ヴァルキリークリエイト。
 これは、ヴァルキリーインパクトの舞台や乙女達を飾るクリエイターを描いた記録である。
 ヴァルキリークリエイトとは、『コスチュームデザイナー』『入場音楽担当』『番組演出』『舞台装飾』等の言わば裏方を示す総称だ。
 ヴァルキリーインパクトプロデューサーはこう語る。
「確かに格闘技であるヴァルキリーインパクトは選手達が主役と言えるっス‥‥ッ言えます。しかし、エンターティンメントもこの興行の売りですから、ファッションやミュージック、舞台演出に装飾なども重要なんですよ。その辺にもスポットを当てるのは番組的に面白いじゃないかと、ですから(フェイドアウト)」
 ヴァルキリークリエイト。
 試合前に是非御覧下さい――――。
 

●募集区分
・コスチュームデザイナー(1〜)
 選手のコスチュームを製作する方です(担当選手名明記(複数OK))。
 アピールポイント明記。
 尚、番組の展開上、誰の衣装かは語れませんので注意して下さい。
 突起物や鉄製のものは止めましょう。

・入場音楽担当(1〜)
 選手の入場シーンの音楽を担当する方です。但し、既に出している音楽は却下です。
 アピールポイント明記(選手の何をイメージして作った曲か、どんなリズムの曲か等)。

・番組演出(1〜)
 TV演出や選手入場からリングにあがるまでの花道の演出を担当します。言うなれば、ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組かを決定する重要な部分です。対戦カードを決めたり、タイトルの雰囲気や視聴者に魅せる部分を構成して下さい(イメージは月ごとに開催されるKの番組参照)。

・舞台装飾(1人〜)
 大道具・小道具に相当します。演出と相談してどんな雰囲気の舞台を作るのか決めた上で作成に入ります。

○ノーリンク募集区分
・声優(1人〜)
 ヴァルキリークリエイトはナレーションで展開される予定です。どの区分のどんな部分にスポットを当てるのか、構成も考えて頂きます。台詞歓迎☆

○その他
・ヴァルキリーインパクトを盛り上げられる事があれば、手伝ってあげて下さい。

●今回の参加者

 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1766 AD(24歳・♂・豚)
 fa2492 アマラ・クラフト(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2605 結城丈治(36歳・♂・蛇)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3020 大豪院 さらら(18歳・♀・獅子)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3623 蒼流 凪(19歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

 ――ヴァルキリーインパクト‥‥。
 戦乙女達がぶつかりあうエンターティナー‥‥その一方で人知れず舞台や音楽を創る人達がいる‥‥私達は云わば裏方である‥‥故に私達はこう呼ばれている‥‥
 『ヴァルキリークリエイト』‥‥と――――。

「うんうん、確かに他の格闘技興行とは一線を隔したいよね」
「いっちょやりますか! やはりテーマを持って演出した方がイベントも盛り上がると思います」
「いいんじゃない、それ!」
「待って下さい!」
 ――荒れる会議室!? プロの仕事とは如何なるものか!?
『わっ、バカッ入るんじゃねぇーぞ!』
「要望を聞いて打ち合わせもしました」
 ――果たして、クリエイター達に何があったのか!? 知られざる裏舞台が今宵晒される!!

●コスチュームデザイナー会議
 この日、集まったのは5人のクリエイターだった。
「皆さんはじめまして。お忙しい所をどうも‥‥」
 ドアを開けて姿を見せたのは、結城丈治(fa2605)だ。スーツ姿のガッシリとした体格の男は、長身を曲げて愛想よく握手を求める。既に会議室にいた4名は腰をあげ、それぞれ自己紹介と挨拶を交わした。
 丈治が席に着くと共に、大豪院 さらら(fa3020)がドレスから浮かぶ豊かな胸元に手を当て口を開く。
「えっと、以前の興行でもコスチュームデザインをやらせて貰った私が現場の実質責任者という事でいいわよね?」
 ――いきなりのリーダー宣言である。
 しかも、この会議室では一際若さが目立つ少女は、恫喝するような雰囲気で、クリエイター陣を見渡した。
・さららモノローグ『あの時は、ぐだぐだやってても何も纏まらないと思いました』
「私は構いません。纏め役は必要だと思いますから」
 口を開いたのは蒼流 凪(fa3623)。さららと年齢は大差ないと思われる少女だ。他の3名も異論は無いらしい。では――と、責任者の少女が再び口を開く。
「今回の選手コスチュームで提案はありますか?」
 黒髪の少女が手をあげる。
「修学旅行の時期でもありますし、制服はいかがでしょう? テーマはスケバン大戦争とか」
「スケバン大戦争ですかっ!?」
 思わず素っ頓狂な声を高野正人(fa0851)が響かせた。
 しかし、周囲の目は奇抜な提案に食い付いている。
「へえ、『スケバン大戦争』かあ、ちょっとぶっ飛んでるけどいいんじゃない?」
「いいんじゃない、それ!」
「いっちょやりますか!」
 丈治が腕を組んで頷く中、さららがパンと両手を合わせて微笑んだ。鬼道 幻妖斎(fa2903)もゴツイ拳を胸元で固めて見せた。
「ち、ちょっと待って下さい!!」
 テーブルに両手を着き、腰をあげたのは正人だ。ツナギ姿の青年は、細い目に神妙な色を浮かばせると、ゆっくりと話し出す。
「僕は違うと思いますよ。叩き台としては構いませんが、コスチュームを着て闘うのは選手なんです。入念なリサーチが必要なんじゃありませんか?」
「私は凪さんの提案に賛同しますよ。やはりテーマを持って演出した方がイベントも盛り上がると思います」
 スーツ姿の幻妖斎が告げた。ガッシリとした体格の青年に、丈治、さららと続く。
「うんうん、確かに他の格闘技興行とは一線を隔したいよね」
「私も格闘技の衣装デザインに一つのテーマを持ち込もうというアイデアには大賛成です。それに選手の使いたいカラーはリサーチ済みです」
「使いたいカラーって、それだけですかぁ?」
・正人モノローグ『これは僕達の戦いだと思いましたねぇ。正直、かなりハードでしたよ』
 ――衣装にはそれぞれ意図がある。
 容姿を美しく見せる意図もあれば、世界観を表現する意図もある。では、格闘技の衣装とは如何なるものか? 選手の闘争心を掻き立てる意図が少なからずあるだろう。一任されているなら兎も角、先ずは選手の要望を聞き、その上で『プロ』としてアイデアを盛り込む提案をする。それが最も理想的であり、双方の意見を纏める手腕を発揮してこそプロの仕事ではないだろうか?

●入場音楽を創るものたち
 画面に映し出されたのは、どこにでもありそうなドアだ。
 微かに旋律が洩れ流れており、どうやら作曲中らしい。カメラマンの手がドアをノックする。
『わっ、バカッ入るんじゃねぇーぞ! 放送できなくなっても知らねぇーからなッ!!』
 ――やたら慌てた甲高い声が乱暴に飛び出した。
 編集すれば問題ないが、暫らく待つとドアが開く。いったいどんな人物なのだろうか?
「お、おぅ、待たせたな」
 ――顔を覗かせたのは褐色の小柄な少女だった。
 見た目からすれば14才位だろうか。乱暴な口調と裏腹に、愛らしい風貌をしており、円らな緑色の瞳が、幼さに拍車を掛ける。しかも甘ったるいロリータボイスだ。
 Tyrantess(fa3596)はドアを開き、カメラを招き入れた。
 刹那、画面に飛び込んだのは、露出度の激しい衣装を纏った姿だ。恐らく視聴者も飲料水を吹いたり、食事を詰まらせたり、近所迷惑も省みず、雄叫びをあげたりしているに違いない。それほどまでにアンバランスで危うい魅力を放っていたのだ。
『うわっ!!』
 思わず動揺の声を洩らすカメラマンに童顔の少女がキョトンとした表情を向ける。
「なんだよ? 気にするんじゃねーよ! どうよ? エロカッコイイだろ?」
 カメラが上下に揺れ、頷く。少女は満面の笑みを浮かべて、ボリュームのある赤毛を揺らしながら、露となった背中を向けると、デスクの横に置かれたエレキギターを携えて振り返った。早速進行状況を聞いてみると――――。
「あん? 入場曲の方はどうかって? 俺は4人の選手を担当するぜ。勿論、選手と打ち合わせ済みに決まってるじゃん。曲目だけ並べると『Behemoth Awaking』『Cute Little Dangerous Thing』『Explosion!!』『Lunatic Wolf』さ。会場で生演奏ビシッと決めるぜ★」
 なんて言いながら軽くウインク。まだまだ新人だが磨かれれば、道を踏み外す者達の屍を築く事だろう。

●続:コスチュームデザイナー会議
 ――あの会議から数日後、コスチュームのデザインと製作は進行していた。
 カメラに映し出されたのは凪が作成した衣装だ。濃紺のセーラー服の傍には赤いスカーフと引き摺る程に長いロングスカート。アフロのカツラや竹刀も見られる。同じく濃紺の男子用学生服や、サラシに長ラン、極太ズボンも用意されていた。少女にカメラが寄る。
「誰の衣装か、ですか? さぁ? テーマに沿って用意しただけですから」
 次に向かったのは丈治のデザインルームだ。
 ――準備されていたのは、白いセーラー服と体操服である。
「勿論、ここからが私の仕事です。素材は総エナメルで光沢を出し、スカートはピンク色でチェック柄のマイクロミニ、勿論、スコート着用が前提ですよ。こっちは、白いコットンに、ブルマはピンクのレザー製です」
 一方、幻妖斎は黒のブレザーや黒い特攻服を準備していた。
「ブレザーはベビーフェイス用です。衣装に光沢を出し派手さを際立たせ、スカートは超ミニ。こっちはヒール用ですね。レディース風のつなぎ服で背中に『夜露死苦』はお約束。胸は白いサラシを巻いて入場時にはチェーンや竹刀を持って登場して貰います」
 度々他のデザイナーからも聞えた言葉だが、ベビーフェイスやヒールとは女子プロレスで表現されるものである。勿論、双方同意済みなら問題は無いが、ヴァルキリーインパクトでは微妙な所だろう。
 そんな中、さららも同様に制服で固めていた。
「私は赤色を担当しています。ヤンキー系セーラー、ヤンキー系ブレザー、大正浪漫な羽織袴を用意しました。一名一名をリサーチして作るのは物理的に不可能ですから」
 ――果たして、そうだろうか? 最後に私は彼の元を訪ねてみた。
「選手の皆さんの衣装案は聞いて来ました。4名がきちんと要望に即したものを作らない時は僕が衣装やりますよ。その代わり、他に注ぐ時間が無くなりましたけどねぇ。先ずは、選手達にそれぞれの衣装を見て決めてもらいますよ」
 どうやら最悪の状況回避に努めるようだ。
 孤立する正人と結託する4名のデザイナー。彼等は視聴者にどのように映っただろうか。

●続:入場音楽を創るものたち
 ――私達は違和感を覚えていた。
 何故、音楽の打ち合わせが出来ていて、衣装が不可能なのか?
 もう一人の作曲家はどうなのだろう――――。
 ――コンコン★
「はい、どうかしましたか?」
 カメラの前に現れたのは、アマラ・クラフト(fa2492)だ。褐色の肌に緩いウェーブの掛かった長い灰髪と鋭く赤い瞳という、オリエンタルな雰囲気を醸し出す少女である。身を包むは、一挙動の度に春の霞の如く裾がひらめく、淡い桃色の着物だ。携えたエレキギターを置くと状況を話し出す。
「はい、音楽を担当する選手はTyrantessさんの担当を除く4名です。要望を聞いて打ち合わせもしました。曲目は『ヴァルキュリエ』『飛翔』『戦路(いくさみち)』『Shun−Puu(春風)』です」
 エンドクレジットで名前が横に流れる中、画面は黒くなり、白い文字に青年の声が被さる。
『花道の舞台演出ですか? 勿論考えてありますよ。でも、ここで言う訳にもいかないでしょう? ヴァルキリーインパクトの番組で確かめて下さい』

 ――舞台演出・ヴァルキリークリエイト撮影:AD(fa1766)。
 ――ナレーション:アマラ・クラフト。