えん歌だい♪アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/05〜07/09

●本文

●或る日の事
「よし、10曲確保だな。食べ物でのオムニバスCDとしては今回までとするか」
 演歌担当プロデューサーは『えん歌だい』に手応えを感じて次の課題を模索していた。
「やはり夏の食べ物だろう。夏祭系は次に回して、今回は『海と夏の食べ物』でいこう! 理想で言えば海の家で歌が流れて売上に貢献できると良いよな」
 彼の目的は二つ。若い視聴者を獲得する新しい演歌番組の成功と、番組で披露された歌をノースランドレコードでオムニバスCDを発売する事だ。
「かだいかだいと‥‥」

●『えん歌だい♪』出演者募集
 番組が課題とするものでオリジナルの演歌を歌って頂くものです。
 今回は『夏の食べ物』をテーマにオリジナルの演歌を歌って頂きます。
 例えば、アイス、ソフトクリーム、かき氷、焼き蕎麦やラーメンも何故か浜辺の店で売れますね。食べ物としていますが、夏はやはり飲み物もありです。在り来りな食べ物や飲み物を貴方の演歌で彩ってみませんか(ネタ被りしないよう打ち合わせましょう)。

「すみませんッ遅くなりました!」
 事務所を訪れた演歌歌手紗亜弥は、セーラー服の胸元を弾ませながらドアを開けると、荒い息を吐いて膝を支えた。どうやら追試があったらしい。それでも最近の彼女は表情に活気が満ち溢れている。イベント参加経験や、様々な歌手、格闘家との出会いにより、色々と自分を見つめ直したようだ。早速、壮年の男が仕事の件を話す。
「えん歌だいの方に出てもらうぞ。まあ、言うまでもないが、出演できるかは作詞家や作曲家の募集次第だ」
「はい、また行ったり来たりになると思いますが、2度目なら少し慣れると思います!」
 どうやらスケジュールがまた重なっているらしい。
「そうか、無理はしないでくれよ‥‥とも言えないか。今が大事な時期だ。頑張ってくれ!」
「はい! よろしくお願いします!」

●『えん歌だい♪』裏方募集
 舞台演出、衣装担当、大道具、及び、紗亜弥の作詞作曲及び協力者を募集します。

●今回の参加者

 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1681 木野菜種(23歳・♀・亀)
 fa2346 アドリアーネ・ロッシ(30歳・♀・狸)
 fa2472 守山千種(19歳・♀・ハムスター)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa4060 猫宮・牡丹(15歳・♂・猫)

●リプレイ本文

●紗亜弥駆逐される
「お控えなすって!」
 あたしがドアを開けた途端、くるっと振り返った少女は、袖を捲って可愛らしい真顔で睨みます。
「問われて名乗るもおこがましいが私、姓は阿野次、名はのもじと申します! お気軽に『いっちゃん』とお呼びくだせえ!」
「‥‥えっと、お、お控えなすって、さ、紗亜弥です」
 あたしも見様見真似で挨拶しました。きっと笑顔は引き攣っていたかもしれません。すると――――。
「ってな感じでーよろしく☆」
 一転、可憐な笑顔を浮かべると、阿野次 のもじ(fa3092)さんは円らな青い瞳の目もと斜め45度っぽいVサインでポーズを取りました。てな感じと言われても‥‥。あーっ! 木野菜種(fa1681)と高野正人(fa0851)さんがクスクスと笑っています。
「レッツらドン☆」
 聞き覚えのある声が飛び込みました。絹の様な黒いショートヘアと凛とした愛らしい笑顔は、富士川・千春(fa0847)さんです。あたしはぎこちなく同じように腕を掲げました。
「‥‥れ、れっつらどん」
「演歌百花繚乱以来よね☆ 守山さんは知ってるみたいね。CMのお仕事で共演しているりなさんよ」
「おはようございます! 愛瀬りなと申します。よろしくお願いいたします」
 え? えぇっ!? 愛瀬りな(fa0244)って‥‥。
「あの国民的演技派アイドルのーっ!?」
 気品と色香を併せ持ったりなさんが、にっこりと微笑んでいました。あぁ、後光が射しているようで目眩を感じます。細いけどスタイルいいなぁ。神様はズルイです。
「でも、演歌初体験! 元より歌い手といたしましてはまだまだ新人以下ですので‥‥紗亜弥ちゃんをはじめ、皆様から『歌の心』をたっぷりと学ばせて頂きたいと思います!」
「そ、そんなっ、勿体無いお言葉ですっ!」

●みんな頑張ってます
 今日は作詞作曲を担当してくれる菜種さんと衣装担当の正人さんとの打ち合わせです。今回はセットも大きく、相変わらず大変そう。細い目が眠そうに見えて心配です。
「かき氷ですか?」
「そうよ、何か浮かんだかしら?」
 豊かな胸元で腕を組み、菜種さんが正人さんに訊ねました。
「‥‥メロンシロップー」
「えっ? メロンシロップあたしに掛けるんですかぁ? 酷いですー」
「「えっ?」」
 二人が驚いたように振り向きます。違う? 正人さんがブンブンと頭を横に振っていました。やっぱり眠いのかな? チラリと流し目を彼に向けてから、菜種さんが溜息を吐きます。
「なにバカなこと言ってるのよ? 高野さん、何か想像してたかしら?」
「いえ、僕は‥‥あ、そだ。紗亜弥さん、コレ、僕の学生時代のです。役立てて下さい。無理するよりは体を大事にしないとですしね」
 あたしに差し出したのはノートでした。うわ、びっしりだ!
「有り難うございます☆ が、頑張ります♪」
「さぁ、今回の作業も獣化してやったんだから、レッスン続けるわよー♪」
 頼もしいです☆ 菜種お姐さん。

「エメラルドの輝き♪ ゴーやBOMBゴーやBOMB♪ 夏バテ解消だけじゃない物足りない序にリュウマチにも聴けー目指せ撲殺系番長演歌歌手! 凶器はGOYA! 中途で殺人事件発生ー!」
 向こうの方で、いっちゃんが不思議なリズムを口ずさんでノートにペンを走らせていました。
「やはり海沿いの花火大会って言うのが良いかもですね〜♪ バーベキューをしながらビールを片手に花火鑑賞‥‥行きたいですね〜☆」
 たおやかに微笑んでいるのは大和撫子な癒し系の守山千種(fa2472)さん。言ってる事が大人だなぁ☆ すると、いっちゃんが突然振り向きます。
「そうだよ! EDで課題の食べ物を皆で食べて番組を締めるってどうかな?」
「それって、あたしはかき氷たべて良いんですかぁ♪」
「紗亜弥、美味しいからって、かき氷食べ過ぎちゃダメよ?」
 あう、菜種さんがクスっと笑いながら釘を刺しました。あ、りなさんが嬉しそうに駆けて来ます。
「ねぇ♪ 自己流で『お腹から声を出す』事を調べて練習しましたが、こんな感じでしょうか?」
 なんて言いながらスリムなお腹に両手を当てると、声を響かせました。こんなに有名なのに、一生懸命で健気です☆ TVで綺麗な人が天然っぽい所を見せると魅力的に感じてたけど、りなさんもそんな感じでステキです♪

●海! 家! 嵐と水着はなしよ☆
 早朝を連想させる薄暗い照明に浮かび上がったのは、ステージに設営された『海の家』のセットだ。
 大道具担当の正人曰く、ありがちじゃなくて敢えてオーソドックスがコンセプトらしい。
 海の家からスポットライトに照らされたのもじが姿を見せる。衣装は鮮やかな白基調で、大きな緑色が存在を主張する着物だ。小柄で細身の少女が清純派を醸し出す中、曲名テロップが表示される。
『流しそうめんの逆襲☆エピソード2 INTOゴーヤちゃんプル』

 ――流れるままに流されてー私の恋はすくえずじまい
 赤い糸はただ一本。貴方につながっていなかった‥‥♪
 紡がれた歌声は意外にも悲哀感に満ちており、一人の寂しさを漂わせた。可憐な風貌は切ない。細い指が携えた沖縄三味線をゆっくりと爪弾く。
(べん‥‥べん‥‥べん‥‥べんべんべんべんべん♪)
 次第に弾く弦は加速し、三味線は掻き鳴らされた。のもじの表情が、カラっとした8月の天気を醸し出すように華やくと、歌声も元気にテンションを上げる。
 ――流れ流れて沖縄へ(メンソーメン♪)
 水の中から火の中へー水気未練を振り切って
 人生も苦味もほほほりゴーヤの魅力
 固いといわずに島豆腐。色々合わせて彩り緑(ちゃんプルちゃんプル♪)

(「なんて強烈なインパクト‥‥。あっ」)
 ふと視界に猫宮・牡丹(fa4060)を捉えた。細身の少年は俯き、緊張しているようだ。初仕事らしく小刻みに震えており、端整な褐色の風貌で銀髪が合わせて揺れる。
(「途中からだったから‥‥打ち合わせにも顔ださなかったな‥‥。取り敢えず、初めての仕事‥‥上手く行くと良いな‥‥っ!?」)
 背後に人の気配を感じて牡丹が振り向く。青い瞳に映ったのは微笑みを浮かべる紗亜弥だ。
「‥‥な、なんだ? ボク、そろそろ出番なんだけど」
「ごめんね、緊張してないかなと思って‥‥。えっと、リラックスして頑張ってね☆」
 小首を傾げるに合わせ、結い髪がサラリと揺れる。彼女とて場数が多い訳ではない。一時は仕事すら殆ど無かったのだ。少年は背中を向けると静かに口を開く。
「ボクは緊張なんかしてないぞ。おまえとは違うんだ」
「うん、そうだね☆」
 スタッフのGoサインに牡丹はステージへと向かう。照明が降り注ぐ中、紡ぎ出すのは、ポップな感じの民謡をイメージさせる歌だ。まだまだ発声も安定感に乏しかったものの歌い上げた。積極性が無ければ生き残れない。これからの芸能経験が、彼を成長させる事だろう。

 続いて海の家から千春が現われた。星空のような濃い青を基調とし、ラムネの泡の如き白に、銀を鏤めた着物は爽やかさを演出している。しかし、細身で淑やかな美少女が携えるはエレキギター。和服にギターで新路線開拓を目論んだ訳である。曲名テロップに『星祭りの夜』と表示され、意図して歌詞に携帯や横文字を入れた演歌は、抜群の歌唱力で歌声を響き渡らせてゆく。紡がれるテーマは七夕祭りとラムネだ。

 ――星祭りの空は いつもご機嫌斜めだけど
 今年は姿を見せた 紅い頬のアンタレス
 夜を待てず 東の川を追いかけた

 あなたにしか届かない 光る数字で綴った(つづった)願い事
 ストラップで笹に吊るすには ちょっと大きいから
 二つ折りにして あなたからの声を待つわ

 湘南の4番線で降りれば 星祭り
 ビー球を開けられないわたしに 冷えた瓶を頬に押し当て
 短冊に願いを書いていた子供の頃ように あなたは笑う
 星空の下輝くアルタイル 弾ける泡のように白く煌いて――――♪ 

「次が出番ね。前回も今回の曲もそうなんだけど、紗亜弥そのものを見てほしいって想いをあたしなりに込めてみたつもり。だから紗亜弥。あなたも心込めてしっかり歌ってきなさいね」
「(あたし、そのもの‥‥)はい! 行って来ます!」
 ぽむっと肩を叩き、紗亜弥を送り出す菜種。波の音が響く中、緑を基調とした着物には、氷をイメージした水色に近い白い柄が袖や裾を彩っており、清涼感を醸し出す。波音がフェードアウトすると共に、寒色系の切ない響きの前奏が流れ、曲名『こころ』を少女はゆっくりと静かに紡ぎ出してゆく。

 ――夜の海、波打ち際に1人たたずむ娘
 赤、青、緑‥‥ 様々な鮮やかなる色の衣を身にまといし日中の暮らし
 人は華やかなる衣に目を奪われる
 衣に隠されしは娘の心。細かく滑らかな白き心。それはまるでかき氷がごとく
 見てもらいたいことを人は見ぬ。気付いてほしいことに人は気付けぬ
 夜の海、娘は1人、華やかなる衣を脱ぎ捨て心を解き放つ
 いつか、誰かに、素朴なる心の味を気付いてもらえる日を想い――――♪

 淡々とした歌声は最後まで貫かれ、マイクを下ろすと同時に曲がフェードアウトしながら波音が響き渡っては静かに消えた。

 次に海の家からりなが歩み出す。スポットライトに映える類い希な美少女が身に包む衣装は、濃い緑の帯に西瓜の瑞々しさをイメージした薄赤の浴衣だ。派手過ぎず、彼女の清楚さを引き出している。曲名は『西瓜慕情』。見た目が地味でも、中には鮮やかさが隠れている。しっかりとした種もある。そんな力強さと女心をテーマにした恋愛歌だ。

 ――表面上は何も思ってないように強がりな自分だけれど
 心の中では、力強く貴方を想っております――――♪

 曲調とテンポはスタンダードな演歌ながら、歌に合わせて横に揺れたり、手で引き止めるような仕草を加えた振り付けは、さすが演技派といった所だろう。

 取りを飾るべく千種が暖簾を潜って姿を見せた。黄色を基調とした浴衣は金魚柄で、爽やかさを醸し出す。単純な七・五調で紡がれる歌は、これから始まる夏を期待する明るい感じの盆踊りを連想させる。

 ――夏がきたきた 夏がきた
 さざなみ遠くに 水の音
 鈴虫りんりん 蝉の声
 今日も一日 楽しもう

 沖には花火が 鳴り響く
 海の浜辺の 仲間達
 赤白黄色の 極彩色
 今日も一日 楽しめた――――♪

 優れた歌唱力で歌い上げると、海の家へ戻ってゆく。スポットライトが追う中、出演者が課題となった食材を前に手を振る光景が映し出された。
 とくに、のもじはゴーヤちゃんプルを美味しそうに食べていたという――――。