ヴァルキリークリエイトアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
07/17〜07/21
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●本文
●TVCM
――ヴァルキリーインパクト。
これは立ち技のみの女子格闘技である。
これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、新たな局面を迎えた。
最強の戦乙女を決定するトーナメント戦もいよいよクライマックス!!
さぁ、ラストバトルだ! ヴァルキリー達よ、最後の戦に身を焦がすがいい!
クリエイター達よ、ラストバトルの舞台と乙女を飾るのはキミ達の仕事だ!!
只今、ヴァルキリーインパクトでは舞台や乙女達を飾るクリエイター募集中!!
――ヴァルキリークリエイト。
これは、ヴァルキリーインパクトの舞台や乙女達を飾るクリエイターを描いた記録である。
ヴァルキリークリエイトとは、『コスチュームデザイナー』『入場音楽作曲家』『番組演出』『大道具(小道具)』等の言わば裏方を示す。
ヴァルキリーインパクトプロデューサーは前回をこう語る。
「声優さんにナレーションして戴いて、新たな彩りを与えられた感じで良かったですよ。照明演出や神話の女神を描いた演出も良い感じでしたね。音楽も選手に合わせて工夫されてGOODでした。‥‥要望スか? 季節は夏じゃないですか? 艶やかな衣装を期待したいですね。水着+αって感じだとセクシーにラストを飾れるんじゃないスかね?」
ヴァルキリークリエイト。
試合前に是非御覧下さい――――。
●募集区分
・コスチュームデザイナー(1〜8人)
選手のコスチュームを製作する方です。アピールポイント明記。
尚、番組の展開上、誰の衣装かは語れませんので注意して下さい。
突起物や鉄製のものは止めましょう。
・入場音楽作曲家(1〜8人)
選手の入場シーンの音楽を担当する方です。但し、既に出している音楽は却下です。
アピールポイント明記(選手の何をイメージして作った曲か、どんなリズムの曲か等)。
・番組演出(1or2人)
TV演出や選手入場からリングにあがるまでの花道の演出を担当します。言うなれば、ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組かを決定する重要な部分です。対戦カードを決めたり、タイトルの雰囲気や視聴者に魅せる部分を構成して下さい(イメージは月ごとに開催されるKの番組参照)。
・舞台装飾(1人〜)
大道具・小道具に相当します。演出と相談してどんな雰囲気の舞台を作るのか決めた上で作成に入ります。
○ノーリンク募集区分
・声優(1人〜)
ヴァルキリークリエイトはナレーションで展開される予定です。どの区分のどんな部分にスポットを当てるのか、構成も考えて頂きます。
台詞歓迎☆ というか、ナレーション時の口調など重要です。
●リプレイ本文
●収録から映像へ
『それではシゲさん、そろそろ始めますよ』
窓ガラス越しにスタッフが、梁井・繁(fa0658)の名前を呼んだ。
銀髪をオールバックに流した壮年の男は、眼鏡の奥に浮かぶ温和そうな赤い瞳を和らげ、二カッと微笑んで見せた。
「はいはい、いつでも構わないぞ。この手の番組系ナレーションというのは昔から良くやっているんで、まぁなんとかなるだろう」
スクリーンに秒読みが映し出されると、繁はマイクに口を近づけた。
安定感があり、どこか安心感と存在感の高い声が紡ぎ出されてゆく――――。
『今回のヴァルキリーがトーナメント最終章‥‥最後と言うこともあって、スタッフの気合いも最高潮のようである』
画面に映し出されたのは白い建物だ。テロップで『ヴァルキリークリエイト企画会議初日』と表示され、優麗な長い銀髪と陶磁の様な肌を覗かせる、フェイテル=ファウスト(fa0796)の細い背中をカメラが追う。青年が切れ長の冷たい緑の瞳をカメラに向けた。俳優である彼に馴染みの視聴者もいる事だろう。
「ここがヴァルキリークリエイトの企画会議室です。どんな会議が行われているのでしょうか?」
普段の演技やインタビューと異なり、敬語で伝えてゆく。リポーターを演じる事に徹するようだ。
ノックと共にドアが開き、室内が映された。ここでシゲさんのナレーションが入る。
『さぁ、今回はどのような舞台を組んでいくのであろうか?』
カメラが捉えたのは、志羽・武流(fa0669)だ。
「ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組か、ですね。季節は夏なので、浜辺での格闘をイメージした雰囲気にしたいと考えていますが、どうでしょう?」
柔らかそうな長めの茶髪を揺らし、赤い瞳で一同を窺うと、眼鏡に映り込む、藤田 武(fa3161)が口を開く。
「それ良いんじゃない♪ 夏をイメージということなら花道には北欧神話に出てくる波の乙女の一人であるブローズグハッダを描こうかな?」
温和そうな小太りの青年が両手を合わせると、円らな黒い瞳を潤ませて楽しそうに微笑む。彼は前回も戦乙女を花道に描いて彩りを与えた功労者だ。
「壮絶な感じが出そうですね。タイトルロゴは‥‥そうですね、水を印象付ける青と、燃える炎を印象づける色にして、タイトル背景は『真夏の砂浜』をメインイメージとしましょうか。衣装と音楽はどんな予定ですか? 高野さんはクリエイトに過去2回参加していますし、要領も掴んでいるでしょう」
武流に振られて顔を向けると同時、カメラが横に流れて、高野正人(fa0851)を捉える。
「そうですねぇ。プロデューサーの意向からも夏を意識したもので僕も他意はありませんよ。選手の方々に要望も聞いていますが、殆どは水着や海を意識した注文ですなぁ」
茶髪に白いタオルを巻いたツナギ姿の青年が、腕を組んで現状を告げた。細目を流すと、音楽担当の、スモーキー巻(fa3211)へ振る。清涼感を醸し出すスーツ姿の青年が、サラリと長めの茶髪を揺らして温和そうな顔をあげた。
「作曲は一緒に仕事予定の方が未だ来ていないけど、要望は確認したよ。やはり、夏っぽい雰囲気で衣装と合わせるみたいだね」
『どうやら打ち合わせは順調に進んでいるようだ。夏の海をモチーフとした舞台とは如何なるものだろうか? 一つ一つ彩るクリエイター達をフェイテルさんと追ってみよう』
●舞台設営に汗を流す者達
『工具の音が響く特設会場‥‥万全の状態で、選手達の戦いをさせるために、皆頑張っている』
舞台への演出は今回最も大掛かりだった。彼方此方で作業員がグラインダーや溶接機の火花を散らせる中、紺碧の塗料が塗られ、マリンブルーの客席が設置されてゆく。ハンマーで強度調整や、電動ドリルの響かせる音も相当なものだ。
『とりわけ、花道の部分は、選手にとっての文字通り『花道』なので重点的に工夫を凝らしている』
材質の安全を確認し、指示を飛ばす武流に、フェイテルが近付き、歯切れ良く、大きめの声で訊ねる。
「今回のポイントは何処ですか?」
「そうですね、ブローズグハッダは海の巨人エーギルの娘の一人で、両親は船を遭難させる神様‥‥だそうですが、北の海の荒れを演出するには丁度良いです。派手な演出を控え、高波レベルに済ませますが、花道が波、というイメージなので、会場は大海原を、リングは『大海原に浮かぶ小さな孤島』を想定していますよ。浜辺も考えたのですが、試合ともなるとこちらのほうがいいかな? と、そっちは藤田君に任せています」
「仕事の遣り甲斐について、やって良かったと思える一瞬は?」
「難しいですね。俺は脚本家が本業ですから‥‥。ただ、描いた舞台をドラマチックに感じて貰えれば嬉しいかな。皆で力を合わせて、良いものにしたいです。その達成感こそ、遣り甲斐であり、やって良かったと思える瞬間じゃないでしょうか」
「有り難うございました。頑張って下さい」
『フェイテルさんが次に向かったのは、花道に真剣な眼差しを向け、身体を丸めて筆を動かしている青年だ』
「前回は、ヴァルキリーを直接描いたけど、今回はちょっと捻ってみたよ。尤もヴァルキリーほどの知名度はないから、変にもとの神話に執着せずに日本人が普通に見ても美しいと感じるような絵にしようと思うけどね」
温和な瞳は研ぎ澄まされ、会議室とは異なるプロの表情に汗を浮かばせてはタオルで拭き、わき目も振らずに『血まみれの髪という名前の乙女』を描いてゆく。タイミングを合わせてフェイテルが同様のインタビューを試みた。
「試合を盛り上げる下準備をするのが僕らの仕事。是非いい試合を選手の人たちが演じて、お客さんが大いに盛り上がって、今後に語り継がれるようなものになったら良いな」
●孤高のコスチュームデザイナー
『コスチューム‥‥それは選手の個性を最大限に示す物。見た目の派手さを損なわないように、縫製の方も万全にしなければならない‥‥その辺が一番大変なところ』
カメラが映し出すのは、モザイクの掛かった衣装に取り組む正人の姿だ。作業台の傍にノートやデザイン画が散らばっており、前回出場した選手の衣装写真がボードに窺えた。フェイテルとカメラマンに気付き、線の如く細い目を向け注意を促がす。
「あー、あんまり映さないで下さいよ、彼女達の採寸データとかもあるんですからね」
刹那、電話が鳴り響き、受話器を取りペンを持つ青年。
「あー、はい。そうです、ウェットスーツを2着。それと、セット一式。はい、加工は僕の方でやりますんで、はい‥‥あと、注文していた布地は予定通りですね? はい、お願いしますー」
『どうやら大掛かりな衣装になりそうである。その後も高野さんが電話と格闘する姿を何度か見掛けた。今回は一人であり、なかなか大変そうだ。ここでフェイテルさんがインタビューを試みる』
「過去ヴァルキリークリエイトに連続で取り組んだプロとして、現在の心境はいかがですか?」
「これでクリエイトも最後、ですかね。流石に感慨深いですなぁ、綺麗に纏めたいですよ。‥‥あ、電話が、失礼しますよー、はい‥‥藤田さん? 買い出しはその通りです。あ、それから甘いモノも‥‥」
静かにカメラが引いてゆき、音もなくドアが閉じられた。
●音の魔術師
『入場音楽作曲‥‥コスチュームと同様に、その選手の個性が良く出る物』
カメラがドアに近付くと、『必ずノック』『返事を確認してから入室』の注意書きが貼られており、ギターの音色が洩れ流れていた。
『これで戦闘状態をMAXに持って行くので、非常に重要なアイテムである。曲作りに集中する為か、注意書きが研ぎ澄ました空気を感じさせる』
――コンコン☆
「フェイテルですが、カメラを入れてよろしいですか?」
『あッ、待って下さいね! 僕がドアを開けますから』
暫らくすると、巻がカメラの前に姿を見せて苦笑い。
「待たせちゃったね、どうぞ」
室内へカメラが入ると、映し出されたのはベースギターやエレキギター、そしてノートパソコンに携帯型デジタルオーディオプレーヤーだ。ギターを携えて椅子に腰を下ろし、青年が微笑む。
「驚いたかい? 作曲は殆どギターで行い、パソコンで編集して様々な楽器と組み合わせているんだよ。ギターの音色だって、こうやってパソコンで操作すると三味線の音色に変わるんだ。勿論、これは曲作りでイメージを実際に耳で聴いて感じる事が目的だけどね」
『譜面に音符を記していくのは昔の話でいうところか。それもその筈、彼は音楽プロデューサーであり、演奏家ではない。フェイテルさんがマイクを口に運ぶ』
「入場音楽という事ですが、いかがですか?」
「そうだね。選手のイメージも固まって来たし、僕の音楽で闘志を燃え上がらせてくれたら感無量だよ」
「はい! 照明、歩調に合わせて下さい。ここでスポットライト! OKです!」
演出を務める武流の眼差しを捉えながらエンドロールが流れ、武、正人、巻を次々と映し出した。
『いかがでしたかな? こうして4人のクリエイターが作り上げたものが、間も無く融合され選手達を彩る事になるだろう』
ナレーションの中、暗い花道の入口からカメラが引いてゆく。
『女性達の華やかな戦いの場‥‥それが、ヴァルキリーインパクト!』
照明が花道に照らされ、歓声のSEが響き渡る中、番組は終わりを迎えるのであった――――。