触手vs水着ガール南北アメリカ
種類 |
ショートEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/11〜08/15
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●本文
――サミィ・ライナー監督。
女性でありながら女性を恥かしめるような映像を撮る事を得意とする監督である。
噂では自分にない豊満な肉体のアクターや美女が限界の演技を受ける事から、ストレス解消か危うい趣味かと囁かれているらしい。
そんな彼女が夏に合わせて或る企画を持ち込んだ――――。
●触手VS水着ガール(正式タイトル:tentacle vs SexyGirl)
舞台はアメリカの或る海岸。
海水浴やマリンスポーツに興じる若者達に、未知の巨大海洋生物が襲い掛かる。
(予定シナリオプロットは打ち合わせで変更可能)
・Scene1:最初の犠牲者
夕暮れの海。一隻のクルーザーで冲に出て泳ぐ少女達がモンスターに襲われる。
海面に漂う鮮血と水着‥‥。
・Scene2:翌日発見されるクルーザー
海岸警備隊や海洋生物学者が動き出し、海岸は封鎖される。
しかし、無謀な若者達は興味本意で海へ。襲われる中、海岸警備隊と海洋生物学者に助けられる。そこで見た光景とは?
・Scene3:モンスターを退治せよ
海洋生物学者と海岸警備隊は武器を作成してモンスター退治に挑もうとする。そんな中、再び若者の無謀な行動を知らせる通報が!
・Scene4:戦う海岸警備隊と海洋生物学者
若者達を助ける海洋生物学者と、武器でモンスターと戦う海岸警備隊。その結末とは?
A:モンスターを退治してハッピーエンド。
B:モンスターを退治して安心した刹那、更に巨大なモンスターが出現!
C:襲われてピンチになる中、軍(水中用戦闘スーツ)の介入で解決。真相は謎のまま。
D:全員死亡。未知のモンスターには敵わなかったようだ‥‥。
E:夢オチ。
F:軍の介入と真相まで伝え、海岸警備隊や海洋生物学者に他言禁止を促がす。
G:その他(相談で決めましょう)。
●登場モンスター
3タイプいますが、全て出さなくてはならない訳ではありません。
・クラゲタイプ
大きさは大人の拳大だが、髪の毛のように細い触手は20m(予定)にも及ぶ変種。集団で漂っており、触れると刺胞によってピリッとした電気が流れるような痛みが襲い、何度も受けると身体が麻痺します。
・タコタイプ
体長30m(予定)の巨大蛸。太い八本触手の吸盤で吸い付き、捕食しようと襲い掛かります。動きは速くありませんが、墨を吐いて威嚇します。
・イカタイプ
体長10m(予定)の巨大烏賊。歯の付いた二本の長い触手で引っ掛け、八本の触手で絡み取り捕食しようと襲い掛かります。動きが速く、体当りを仕掛けて来る場合もあります。自分と同じ形の墨を吐いて撹乱します。
●募集区分
・水着ガール:(複数OK・常時水着着用なので若い女性のみ。心が女性でも却下)。
本編を彩るヤラレ役です(おい)。様々な演技とシチュエーションでアピールしましょう。
どのシーンに登場するのか決めて下さい(選択されないシーンはカットされます)。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
水着:どんな水着を着けるか決めて下さい。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
*口調は特に記されていない限り、アクターの設定口調とします。
・海岸警備隊:(複数OK・性別不問)
事件解明に乗り出す役です。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
服装:どんな服装か決めて下さい(水着になるなら水着も)。
武器:警備として最低所持しているであろう範囲まで。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
*口調は特に記されていない限り、アクターの設定口調とします。
・海洋生物学者(性別不問)
海岸警備隊と協力して武器を製造、モンスター退治に協力する役です。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
服装:どんな服装か決めて下さい(水着になるなら水着も)。
武器:モンスターに対抗する武器です。予定としては作るのみで本人は使用しません。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
*口調は特に記されていない限り、アクターの設定口調とします。
とくに対抗武器が物語の転機ですので、魅力的な武器をお願いします。
または、人体強化薬などで、獣化に転用も可能です。
・その他:(複数OK・性別不問)。
物語を面白く出来る配役も募集します(例えば、クルーザーの中で生き残った少女、少女とラブっている時に共に襲われる青年(笑)、モンスター誕生の原因を作った黒幕の存在とか等)。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
服装:どんな服装か決めて下さい(水着になるなら水着も)。
武器:軍人の場合、水中用戦闘スーツとなる予定。
演技:登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
●サポート
アクターの水着作成や、サミィの場合、シナリオアイデア提案が可能です。
基本的に撮影初日に配役に水着渡したり、シナリオアイデアをサミィに申請となるでしょう。
「‥‥あの、監督? VSじゃないのでは?」
「戦うだけがVSじゃないわ。このドラマの見所は、モンスターに襲われる少女達のセクシーなヤラレ方なのよ。つまり、メインはモンスターと少女。だからVSでいいのよ♪」
「‥‥また、セクシーなヤラレ方って何ですか。見所は、未知の化物と戦う警備隊じゃないのですか?」
「あー、それ? TV用の物語的オマケよ。どーせなら、そっちも一肌脱いでくれると映像的に良いわよね。ほら、何らかの事情で下着姿になるとか、ホラーにあるじゃない☆」
宇宙生物体液硫酸ホラーでは、クライマックスに宇宙服を着る為、主人公は下着姿になった。頭の良いサメホラーでは、通電を避ける為、ダイビングスーツを脱ぎ、下着姿を晒した才女という例もある。
そのようなイメージをサミィは描いているのだろう。
「やっぱり夏は海と水着とホラーよねぇ♪」
夢見がちな青い瞳を潤ませ、少女はアイスティーで喉を潤した――――。
●リプレイ本文
●プロローグ
――漆黒の闇にヘッドライトも点けず一台のワゴン車が走って行く。
ドライバーから見た視界はグリーンに彩られていた。恐らく暗視ディスプレイのようなものだろう。
映し出される風景は路上から左に逸れ、漆黒の大海原を捉えて車両は停車する。
「急いで!」
女の声と共にトランクが跳ね上がると、月明かりにバイオハザードマークが施された大きな容器が引き摺り出され、漆黒の大海に放り込まれた。やがて闇に響き渡る音と大きな水飛沫があがる。
優麗なラインの脚線美が月明かりに浮かび上がる中、魅惑的な太腿へ流れ、際どいラインで靡く黒いワンピースの裾を映し出すと、羽織った白衣を捉えた。更に視界は上がり、黒髪を潮風に揺らす凛とした端整な風貌に、満面の笑みを浮かべる若い女を映し出す。
「さてと。どんな風に育つか楽しみ楽しみ♪」
∴(CAST)ティシャ・ナカサト:由比美紀(fa1771)
●始まりの惨劇
――珊瑚礁が映るコバルトブルーの海中をゆっくりと突き進んでゆく。
やがてユラリと軌道を変えて浮上。
きゃっきゃ☆ とハシャぐ細い素足やヒップラインを舐めるように映す中、水面越しに揺らぐは陽光だ。
更に浮上して視界は夕日に染まる海上を映し出す。捉えるは海水浴を満喫する数名の少女達。
「アリス〜? アナタも一緒に泳ぎなよ」
一人の少女が呼び掛ける声の先に一隻のクルーザーが漂う。
視界はクルーザーへと吸い込まれ、ピンクのワンピース水着に身を包み、甲板でスヤスヤと眠る少女を捉えた。横たわる肢体のラインは未だ幼さを醸し出しており、潮風が撫でる金髪から覗く風貌も子供のようにあどけない。
『アリスったらー、聞いてるのー? 夕刻が近いから泳げなくなるわよー』
「うぅん‥‥うるさいよぉ‥‥」
∴アリス・ロンド:エリア・アサギリ(fa4280)
『きゃッ! ちょっと何?』『やッ! 何か触ったわよ!』『あんッ刺されたみたい‥‥クラゲ?』
アリスの穏やかな寝顔を映す中、次々と少女達が異変に声をあげ始めた。やがて水面を打つ音が響き、驚愕の色は恐怖の悲鳴へと変容してゆく。
『きゃああぁぁッ!!』『いやあぁぁぁッ!!』『アリスッ、助けを‥‥あぁッ!!』
「‥‥えっ?」
黒い瞳を見開き、金髪の少女は慌てて身を起こして駆け出すと、海面を覗き込んだ。
「ちょっと、どうしたの‥‥よ」
円らな瞳に映り込むは、赤く濁った海原と助けを求める友人達、そして波打つ巨大な物体の一部分だ。惨劇がアリスの瞳越しに展開され、少女達の断末魔と共に手摺を掴む手や足が戦慄く。
「うそ‥‥み、みんなッ、きゃんッ!」
刹那、クルーザーが激しく揺れた。恐怖で両足に力が入らない少女は容易く甲板に倒れ込むと、船体の彼方此方で軋むような音を響かせてゆく。再び手摺に這い寄り、海面を恐る恐る見下ろすアリス。
その時だ! 飛沫をあげ、物凄いスピードで蛇のような物体が迫って来る!
――いやああぁぁぁぁッ!!
アリスの悲鳴が響き渡る中、鮮血に染まった海面に少女達の水着がユラユラと漂っていた――――。
●触手vs水着ガール(tentacle vs SexyGirl)
――翌日。海岸に一隻のクルーザーが流れ着く。
砂浜は野次馬で溢れており、海岸警備隊が非常線を張ってこれ以上の接近を許さずにいた。
「ここから先は入らないでくださ〜い!」
帽子とサングラスで陽光を遮り、薄手のシャツにホットパンツの装いで声を響かせてゆく。両手を広げる若い女の胸元はシャツが左右に伸び、今にもはちきれそうだ。
∴アクア:カリン・マーブル(fa2266)
やや緊張感に乏しい口調だが、彼女は真剣に取り組んでいた。
程なく一台のオフロードカーがサイレンを鳴らして駆け着ける。姿を見せるはハイレグの鋭い競泳用水着にスラリとした細身を包み、海岸警備隊のジャケットを羽織った美女だ。颯爽と体型の割に大きな胸を弾ませ砂浜を歩いてゆく中、腰ほどはある白銀の長髪が潮風に靡く。
∴アンナ・ハンズ:森守可憐(fa0565)
「アクア、ご苦労様。クルーザーの方はどうですか?」
「ハイ、アンナ☆ もう仕事の準備は出来ているわよ」
どうやら職種は違うようだ。さしずめ水着のアンナは海に潜り行方不明者の捜索を務めるのだろう。
「それにしても、サメに襲われたとしても損害が酷いですね」
深い真紅の瞳がクルーザーの船体を見つめる。まるで何か物凄い力で押されたように、彼方此方が酷く歪む破損部分が覗えた。ガラス窓は全て割れている。
「座礁した感じでもないわよねー。鯨でも当たったのかな?」
『サメ? 鯨? どんな生物が体当りしてもこんな破損の仕方はしないわよ?』
二人の会話に割って入る女性の声。アクアとアンナが視線を流すと、瞳に映ったのは、ハイレグワンピース水着の上に白衣を羽織った未だあどけなさの残る愛らしい風貌の少女だ。黒髪を左側に纏めて結っており、円らな赤い瞳が悪戯っぽい色を湛える。
∴鉄 小夜:月影 愛(fa2814)
「あっ、ダメですよー、部外者はこれ以上近寄らないでくださいっ」
巨乳と手をバタつかせて慌てるアクアを余所に、アンナが穏やかに微笑んで見せる。
「あなたは? 詳しそうですね」
「海洋生物学者の小夜よ」
「OKです。アクア、本部に確認照合を。それでは、捜索にご協力頂きましょうか?」
「捜索〜? わたしはオフで来ているんだよ? なんでわたしがぁ〜」
「あら? 早いか遅いかの違いで、照合されれば直ぐに協力要請が入りますよ?」
「これだから役職は‥‥一夏のバカンスを何だと思っているのよ‥‥」
愚痴りながらも協力する覚悟が出来たらしい。そんな中、隊員の声が響く。
『生存者を発見しました! 少女1名、外傷はありません!』
「担架で運び出して! 病院に連絡〜! 急いでくださ〜い!」
口調は兎も角、テキパキと指示を出して駆け出すアクア。
彼女の視界で砂浜を進む中、クルーザーから担架で運ばれ、ぐったりと意識を失ったアリスを映し出した。
刹那、響き渡るアンナの緊迫した声。
「ちょっと! 待ちなさい! そこのモーターボート! もぉ、他の隊員はどこを見ているんですか!?」
「どうしたの〜? アンナ‥‥あぁッ、勝手にもーッ!」
白雪の如くしなやかな指が示す方角に浮かぶは一隻のモーターボートだ。双眼鏡の視界が重なり、若者を映し出す。
「若い男女が冲へ向かっています! 止めなければ‥‥」
「あん! 私も行きます〜」
「ちょっと待ちなさいよ!」
慌てて砂浜を駆け出すと、白銀の髪を揺らす美女を追い、アクアが豊かな二つの膨らみを弾ませる。その後を釈然としない面持ちで白衣を翻して追い掛けるは小夜だ。
海岸警備隊所有の小型クルーザーへ乗り込み、アンナが操舵を担う中、サイレンを鳴らして大海へと繰り出してゆく。
「なんで、最近の子は‥‥身体ばっかり大きくなって、言うことは聞かないのかしらね!」
「まったくですよー」
海洋生物学者が腹立たしげに洩らすと、アクアがサングラスを外して、茶色の稍垂れ目の瞳を向けた後、双眼鏡を覗きながら状況を告げる。
「止まったみたいだよ。海に跳び込みましたー。もぉ、楽しそうに‥‥な、に?」
刹那、呆れたような口調に動揺の色が含まれた。
「どうしたのですか? そこのモーターボートの人達! 今すぐ海から出なさ‥‥!?」
アクアに視線を流した後、備え付けられた拡声器で警告を響かせるアンナ。しかし、彼女の声も途中で驚愕に掻き消された。
明らかに若者達の様子が変だ。恐らくは悲鳴をあげていると思われる表情。海面を波打つ異常な動き。小夜が赤い瞳を研ぎ澄ませて身を乗り出す。
「何か海中にいるのよ! ヒレが見えないからサメじゃないわね‥‥」
「舵をお願いします!」
ジャケットからサバイバルナイフと拳銃を引き抜くと、アンナは甲板へ上がり、船首へ駆け寄った。
次第に若者のボートに近付く中、悲鳴が届き、海面が赤く濁る惨状を捉える。
「大丈夫ですか〜? 早く、こっちですー!」
銀髪の美女が銃声を響かせる中、甲板から半身を覗かせ、浮き輪を投げるアクア。口調が緊迫感に乏しいが、愛らしい風貌は真剣だ。少女が必死に泳ぐ後方へ放たれた弾丸が飛沫をあげるものの、逃げ遅れた青年が何かに襲われ鮮血に染まってゆく。軽く舌打ちするアンナ。
「効かない? 当たっていないのですか?」
銀髪を潮風に揺らし、片目を瞑りながら、両手で構えた拳銃から硝煙を吹かせる中、遂に青年は海中へと沈んだ。刹那、急速で海中を突き進む白い影を捉える。向かう先は、恐怖で足掻くように泳いで逃げる少女だ。物凄い飛沫をあげて獲物に迫る物体を追いながらアンナが弾丸を浴びせるが、勢いは止まらない。
「何かしら? 海蛇‥‥じゃないわよね」
「もう少しですー! 手に捕まってー!!」
その時、大きな飛沫を上げて何かが海中へ跳び込んだ。アンナが少女のサポートに身を投じたのである。懸命に背中を押して急がせる中、迫る飛沫へ振り返り、口に咥えた切先を輝かせる。
「ちょっと! 無茶だよ! アクア、この船に武器は無いの? 銃なら私だって撃てるわよ」
(「至近距離なら!」)
小夜が動揺の声を投げるが、美女は戦う気満々のようだ。急速に迫る白い影! それは巨大で太い蛇のようにも見えた。銃声を響かせる中、アクアの声が飛び込む。
「アンナ! 救出したわ! 早く戻ってー!!」
再び投げられた浮き輪を掴むと、クルーザーは大海を掻き分け出す。尚も弾丸を叩き込んだ刹那、巨大な水柱が噴き上がり、ビュルビュルと暴れる白い物体が飛沫の中に浮かび上がった。
「な‥‥なによ‥‥アレは」
巨大な触手のような物体を目の当たりにし、海岸警備隊と海洋生物学者の瞳が戦慄く。
尚も追い掛けて来る水柱を振り切り、クルーザーは惨劇の現場を離れるのだった――――。
――ピンッ、ピンッと規則正しい音が響き渡る。
病室のベッドに横たわるアリスの姿を映し出す中、心配そうに見つめるアクアの背後でドアが開き、白銀の長髪を揺らす美女と幼さの残る愛らしい風貌の海洋生物学者が近付く。
「アクア、生存者の様子はどうですか?」
「うん、命に別状は無いんだけど‥‥未だ目を覚まさないのよ。周辺探索の方は〜?」
ショートヘアーの金髪を揺らし訊ねるアクア。アンナは首を左右に振り、代わりに小夜が口を開く。
「‥‥辛うじて水着っぽい切れ端は見つかったわ、冲でしょ? サメに食べられた可能性もあるわね」
「生存者が何か見たとなると、目覚めてくれれば何か分かるのですが‥‥!?」
刹那、真紅の瞳が見開いた。アリスが切なげに眉を戦慄かせ、悪夢にうなされるように金髪を左右に揺らしながら気だるそうに身を捩る。
「ハァ、ハァ‥‥海、海から‥‥タコ、イカ‥‥ううん‥‥」
――タコとイカ?
「あぁ‥‥ありえない‥‥あんな大きいのが、みんなを‥‥やぁあ!!」
涙を散らせて黒い瞳を見開くと、ピクピクとシーツ越しの肢体を戦慄かせ、再び気絶するアリス。
「アクア、ナースセンターに連絡して下さい!」
「あ、はい! あら? はい、アクアです。‥‥了解ですー、至急本部に向かいますー」
「ねぇ、ちょっと話があるんだけど‥‥」
アクアが本部から召集の連絡を受ける中、小夜はアンナに瞳を流し、白衣の腕を組んだ。
●賭けのような対抗策
「武器は‥‥相手の大きさ次第ですが、捕鯨用の銛とかでしょうかねえ? あとはショットガンですかね? 電撃系も効くかどうか分かりませんが‥‥これは使えますかねえ?」
金髪を揺らしながら身振り手振りで対抗策を提案するアクア。しかし、上司は巨大生物説に疑いの目を向けているようだ。
「海中の巨大生物ねぇ。生存者の意識が錯乱しているのでないのかね?」
「私達も触手のようなモノを見ました。‥‥タコやイカが人を襲っているんですよー」
「なかなか面白い見解だねぇ」
声は上司のモノでは無かった。視線を流すと瞳にティシャが映る。話に因ると軍関係者らしい。
「なら、アナタ達はタコとイカの姿をハッキリと見たんだね?」
「‥‥い、いいえ‥‥見ていませんけど〜」
バツが悪そうに俯くアクア。刹那、ティシャからコロコロと陽気な笑い声が洩れた。
「なぁに? 海岸警備隊って証言の確証も得ずに動くんだぁ☆ (うふふ。あの子(たち)は、立派に成長したみたいだね♪)」
――オフロードカー内。
「学会より人命優先だから‥‥これ、使えるんじゃないかと思ったのよね」
小夜は白い太股の上に乗せたアタッシュケースを開き、中から一発の銃弾を取り出した。あどけない風貌に笑顔を浮かべると、楽しげに説明してゆく。
「毒薬弾よ♪ 海洋生物の毒を研究していて採取に成功した強力な毒薬☆」
「へー、化学兵器なんてゲーム位かと思っていました〜」
「銃弾はこれで全部ですか?」
アタッシュケースを覗き込んで美女が訊ねた。未知の巨大モンスターと対峙する対抗兵器にしては余りにも心細い弾数だ。
「仕方ないじゃない。実用テストも未だだし、採取するのは大変なんだからぁ」
ぷくっと愛らしく頬を膨らます童顔の海洋生物学者。刹那、アンナの美貌が崩れ、アクアがジトリとした眼差しを美女に流す。
「え? 今、何て言ったのかしら?」
「アンナ、本当に大丈夫なの〜?」
一抹の不安が過ぎったその時だ。
――ばんばんばんばんッ!!
突然車両のドアを激しく叩く音が響いた。慌てて窓に視線を流すが姿は見えない。刹那、下から勢い良く顔を覗かせる少女の姿(と共に視聴者を驚かせるような効果音)。
窓を開けると、背丈の低いアリスがピョンピョンと跳んでいる。身を包むは救出時の水着だ。
「アリス? どうかしましたか? てっきりホテルに戻ったかと‥‥」
「やっつけに行くんでしょ? 私も連れてって!」
恐らく再び訪れた病室での会話が耳に入っていたのだろう。
「だ、駄目です。民間人を危険に巻き込む訳にはいきません!」
ピシャリと告げるアンナに尚も少女は窓枠を掴んで食い下がる。幼いながらも金髪から覗く瞳は真剣だ。
「私の友達をみんな殺したんだよ? やられる姿を見てやるんだもん!」
「連れてってあげたら?」
「小夜さん、何を‥‥民間人ですよ」
「私も、民間人だけどね?」
海洋生物学者が満面の笑みを美女に寄せた。アンナの細い片眉がピクピクと跳ねる。
『巡回中の海岸警備隊へ! 先ほど若い女性がボートで海へ出ました。付近の車両は直ちに‥‥』
無線から飛び出したのは、またしても若者の無謀な行動を知らせる通報だ。
「こちらアクア、海岸は直ぐ近くですー。直ちに急行しま〜す!」
無線を取って告げる金髪の娘がエンジン音を響かせた。それでも手を離さないアリスが上目遣いで睨む。
『了解。どうやら早朝流れ着いたクルーザーに乗っていた者達の友人らしく、「仲間の仇を討つ」とか叫んでいたそうだ。極度の興奮状態と思われるので細心の注意を払ってくれ』
「え? 友人って由希じゃ‥‥」
どうやらアリスに心当たりがあるようだ。空かさず小夜が口を開く。
「説得に一役買ってくれるんじゃない?」
「アンナー、早く行かないと〜」
ステアリングを握り、焦りの色を浮かべるアクア。仕方なく美女がドアを開けた。
「早く乗りなさい!」
満面の笑みを浮かべる少女を乗せ、タイヤを軋ませながらオフロードカーは急発車すると海岸へと急いだ。ハンドルをアクアが捌き、サイドシートにアンナ、後部座席に小夜とアリスが映る。
「由希‥‥いやだよ‥‥もう、友達がいなくなるのは、いやだよ‥‥」
俯きながら顔色を曇らす少女の横顔を捉える中、太腿の上で固めた両手が小刻みに震えていた。やがて急ブレーキの耳障りな音と共にフワリとアリスの金髪が前へ流れ、後部座席へアクアが茶の瞳を向ける。
「着きましたよー! 急いで下さ〜い!」
海岸警備隊所有のボートへ乗り込む四人。サーチライトを点灯させ、エンジン音を響かせると、大海へと波を掻き分けてゆく――――。
●対決の中で‥‥
「さぁ! 出て来なさい! 私を仲間のように殺してみたら?」
月明かりに浮かび上がる黒のビキニに包まれた魅惑的な肢体が、ボートの上で叫んでいた。
∴御神・由希:御神・由希(fa2137)
円らな少女らしい黒い瞳は復讐に研ぎ澄まされ、大海一帯へ声を響かせるように縊れた腰を左右に振る中、首の後ろで三つ編みに束ねた黒髪と、二つの膨らみが悩ましげに揺れる。
だが、挑発と裏腹に美少女の耳に聞えるは小波の音のみだ。由希の曇った表情が夜空を仰ぐ。
「どうして? どうして来ないの‥‥撃ち殺してあげるから掛かって来なさいよ!」
銃声が数発響き渡った。再び天空へトリガーを絞ろうとした時だ。美少女に眩いサーチライトが向けられた。端整な風貌が僅かに歪む中、拡声器越しに響き渡るはアクアの声だ。
『そこの方、海上は封鎖されていますー! 武器を下ろして一緒に帰りましょう〜』
「来ないで下さい! 私の邪魔をしないで!」
銃口を向けて顎を引く由希。戦慄く肩は聞き覚えのある声でビクンと跳ね上がる。
『由希、アリスだよ! 無茶はしないで! こんなボートじゃ危ないよ! 早ッ きゃんッ!?』
――波打つリズムが変容した。
次第に揺れが激しさを増す中、黒いビキニの美少女は腰を落とし、豊かな胸元を、ゆさッと弾ませた。何かが海中から浮上している!? 由希の瞳に恐怖と歓喜が浮かぶ。
「き、来ましたね! 撃ち殺してやる!」
「駄目ですよ! そんな拳銃は効かないわ! さぁ早く、こっちへ!」
船首へ駆け寄り、左手を差し延べるアンナ。右手に携えるは一丁のライフルだ。互いの手が触れようとした刹那、大きな飛沫が噴き上がった。同時に白雪のような手首に何かが絡み付く。
「痛ッ! あんッ‥‥」
「うそッ!? アンナーッ!!」
次の瞬間、銀髪を棚引かせながら、美女が海中に引っ張り落とされた。アクアが頬に両手を当てて戦慄の色を浮かべる中、小夜が白衣を靡かせながら甲板へ飛び出す。赤い瞳に映るはドラム缶だ。
「ちょっと! 未だアンナがー!」
「幾ら彼女でも助からないわよ! 液体窒素とガソリンで相手を怯ませて隙を作るから、アクアはライフルを! いい、弾数が少ないし未実験だから、できるだけ胴体に近いところに当ててね‥‥きゃんッ!」
一際激しく船体が揺れ、小柄な海洋生物学者が手摺に飛ばされ座り込む。刹那、巨大な飛沫が盛大に頭上から降り注ぎ、白衣をびっしょりと濡らした。同時に半透明の軟体が張り付き、髪の毛にも似た細長い触手が小夜を刺激する。
「ひゃッ!? うあんッ、これって‥‥んんッ、ど、どくくりぁげ?」
次々に触手からの毒を受け、肢体の麻痺と共に口も回らなくなった。しかし、ここは海洋生物学者。何とか白衣を脱ぎ捨て、変種のクラゲから逃れる。
だが、クラゲが張り付いたのは偶然。巨大な飛沫は海中から何かが出て来た証だ。
『きゃあぁぁッ!!』
必死に膝を立てて腰を浮かせ、痙攣する両手を震わせながら小夜は苦悶に染まる顔をあげた。
驚愕に赤い瞳を見開く中、手足の自由を奪われ、うねる白い八本の触手に絡め取られるアンナを映し出す。背後に捉えたのは、鋭角のシルエットを模る傘状の巨大な頭部を海面から覗かせたモンスターの姿だ。
(「何て、大き、な、イカ、なの‥‥」)
麻痺が治るまで呆然と見上げるしかない。刹那、布地の裂かれる耳障りな音と共に美女の呻き声が響く。
「んあぁっ、ちょっと! やめッ‥‥いッ!」
アンナに迫った一際長い二本の歯の生えた触手は、ジャケットや競泳水着に引っ掛かり、美女の肢体が足掻く度に引き裂いてゆく。白い柔肌に触手が絡めば、歯の洗礼による激痛に身を弾ませる。
「あぁッ! やんッ」
銀髪が舞い踊る中、肢体を激しく捩らせる度に身を包んでいたモノが散らされ、月明かりに艶かしい白い背中が晒された。カメラは胸の膨らみギリギリのラインを下から煽り気味に映す中、顎を引いて視線を落とすアンナの頬が羞恥に染まる。
「な、なんてことを‥‥ひぁッ」
潤む深紅の瞳が恐怖を彩ると、びゅるびゅると二本の触手が白い柔肌を嬲ってゆく。
「んあぁッ! やぁッ、ひんッ」
瞳を瞑り、切なげに苦悶の色を浮かべて首を左右に振る度、谷間が弾み、激しく舞い踊る中、カメラに吹き掛かる鮮血が画面を深紅に染め上げてゆく。荒い息を吐く美女の哀切な風貌が僅かに映る。
「んんッ、ハァハァ‥‥も、もう‥‥えっ!? ‥‥い、いやああぁぁぁッ!!」
アンナの瞳が驚愕に見下ろされ、断末魔が響き渡ると共に赤い満月を映し出した‥‥。
「うそ‥‥アンナが食べられちゃったなんて‥‥こんな死に方‥‥酷いよぉ」
ペタンと腰を落とし涙を流すアクア。アリスは放心状態のまま、しなやかな足をガクガクと戦慄かせている。次の瞬間、再び海面が盛り上がるような激しい揺れが強襲すると、丸みを帯びた頭部と黒い眼球を覗かせ、太い八本の赤黒い触手で海面を弾く巨大なタコのモンスターが姿を晒す。
『きゃあぁぁッ!!』
「由希!? ‥‥ッ!」
悲鳴だけが操舵室まで響き渡った。
「アリスは逃げてー!」
ライフルを構えて甲板へ飛び出したアクアが巨大タコと対峙する。
「でも、胴体って‥‥ひッ!」
幾つモノ吸盤が覗える太く赤黒い触手が金髪の海岸警備隊員に迫る中、トリガーを絞った。一度は怯ませたものの、数本の触手を一気に伸ばして来る。
――また何もしないなんて嫌!
アリスが戦慄く足を踏ん張り、立ち上がると、一気に駆け出す。向かう先はボートに残ったままの友人。愛らしい風貌の瞳は研ぎ澄まされ、何かを振り切ったような、凛とした雰囲気を浮かび上がらせていた。
(「また何もしないで、出来なくて‥‥自分だけ助かるなんて、嫌だから!」)
甲板へ出たアリスの瞳に映るは、ボートで細長い髪の毛のような数本の触手に絡まれ、四つん這いで肢体をピクピクと跳ね上げる美少女の姿だ。ピンクのワンピース水着が宙を舞い飛び込んでゆく。
「由希ーーッ!!」
「ひぁッ‥‥ひぁりぃしゅ‥‥」
小刻みに痙攣しながら眉を戦慄かせる由希の瞳に、クルーザーから飛び降りたアリスが映った。次の瞬間、半透明な幾つもの軟体生物が海面に浮かび、花弁が咲くように触手を一斉に広げて、次々と少女を強襲して刺激を与えてゆく。刹那、白い触手と赤黒い触手もピンクのワンピース水着へ迫り、中空で拘束されたまま、奪い合うように水着を引き裂かれ、未熟な肢体は弄ばれる結果と化した。電気のような刺激と、鋭い歯で引っ掛かれる痛みに、吸盤で吸われる不快感も加えられ、身を投じた少女は、精神が壊れたのか、虚ろな眼差しでだらしなく微笑む。
「誰が、私を食べるの‥‥おいしい、よ‥‥ひゃん! あぁん! ふぁうッ!」
――なんて事なの‥‥。
麻痺が完治しない小夜が仰向けで小刻みに肢体を弾ませる中、はっきりした意識が惨状を捉えてゆく。
「だ、だめぇッ! このッ! いい加減に倒れてくださ〜い! いゃんッ!」
必死で戦うアクアの衣服は吸盤に持って行かれ、中に着用していた特注のワンピース水着で奮戦するも、弾切れと共にタコの触手が胸元の薄布に吸い付き、引き裂いていた。
「ひぁりぃしゅ‥‥きょ、きょめぇんなしゃい‥‥んんッ」
義憤に燃える美少女は既に抵抗する力すら失っており、アンナは恍惚とした微笑みを浮かべながら、それぞれの触手に四肢を絡まれ、引き裂かれそうだ。
「うあぁぁんッ、みんなで‥‥私を、んっ、たべたいの? はぁうぅんッ」
もはや、惨劇は止める事は誰も出来ない。
その時だ。涙で霞む視界に飛沫をあげて無骨なシルエットが次々と飛び込んだ。
或るモノは局部を覆うのみと化したワンピース水着だったボロボロの薄布で身を庇う女を助け、或るモノはクラゲの群れを炎の洗礼で一掃し、或るモノは奪い合う触手へ斬光を煌かせ、あられもない姿に赤面する少女を抱えた。
激しい轟音と奇声が闇に響き渡る中、小夜の瞳にも彼等は救いの手を差し延べる。
――軍が出てくるって‥‥それじゃぁ、この子は生物兵器だというの?
『大丈夫か? おい、キミ!』
生き残った四名は船の甲板で大海原を眺めていた‥‥。
「何なの? もっと早ければ‥‥アンナがあんな目に合わなかったのにぃ」
嗚咽を洩らすアクア。アリス、由希、小夜の顔色も曇り続けたままだ。
澄み渡る蒼穹と大海が、昨夜の惨劇を嘘のように感じさせた。
「あはは、もう少しだったのに、惜しかったね♪」
離れた場所から彼女達を見つめる者が陽気に笑う。惜しかったとはどちらの事を指しているのか?
――疲れてるよねぇ。
白衣にミニのワンピースから覗く脚線美が、ゆっくりと甲板を歩き、生存者達に近付いてゆく。
スと手に携えるは注射器だ。凛とした女の口元が薄く微笑み、鋭利な針が陽光に照り返していた。
――ゆっくり眠ると良いよ♪