紗亜弥のパリ初体験☆ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/03〜09/08
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●本文
●パリ旅行?
「えぇっ!? パリですか?」
紗亜弥は事務所で素っ頓狂な声を響かせた。彼女は演歌歌手。海外に行く理由など無い。
「ヴァルキリーインパクトのリザーバー役が依頼された。旅費もスタッフから出して貰えるって話でな、行ってみないか?」
黒髪の少女は豊かな胸元に手を当てた。鼓動の高鳴りが伝わり、端整な風貌は戸惑いに揺れ惑う。
「で、でも、あたしっ、外国なんて行った事がありませんっ!」
「何も一人で行けとは言っていない。勿論、現地の案内は信用できる者に依頼するそうだ。タダで海外旅行だぞ!」
「‥‥もしかして、ヴァルキリーインパクトのスタッフからお金もらっちゃったんですか?」
紗亜弥の問いに壮年の男は一瞬沈黙した。
「未だ貰っちゃいないさ。ただ、ウチの大事な所属歌手を海外へ送るんだ。依頼金は事務所にも入るって訳さ。どうだ? 若い内に世界を見聞きするのは悪い体験じゃないぞ」
「大丈夫かなぁ? 外国ってアブナイ所だって聞いてたけど‥‥」
確かに隙の大きそうな彼女だけなら危険かもしれない。
「知らない奴にひょいひょい着いていかなきゃ大丈夫だ。案内もいる筈だしな」
「‥‥分かりました。行って来ます(でも、どんな服着て行けば良いのかな? 持ち物とかも準備しなきゃいけないよね?)」
恐らくフランス語なんて、紗亜弥は学んでいない。否、学んだとしても頭が良いとは言えない彼女は覚えられないだろう。
それでもリザーバーを務めるだけなら問題ない‥‥と思いたい――――。
●紗亜弥の面倒見てくれる方(?)または現地観光案内してくれる方を募集
・面倒見てくれる方:
紗亜弥と共に日本からヨーロッパへ共に行ってくれた方(厳密に言えば、公開地域がヨーロッパなので、移動して共に来たという解釈です)。不安と期待に胸膨らます少女にアドバイスしたり、一緒にワクワクしながら面倒を見てくれる方を募集します。
・現地観光案内してくれる方:
パリ(シャルル・ド・ゴール)空港で紗亜弥と合流、現地観光案内してくれる方。何も知らない少女に名所や隠れたスポット等をガイドしてくれる方を募集します。彼女を驚かせるサプライズ企画もOKです。偶然出会って等、少女の物語をドラマチックに彩るもOKです(笑)。
・紗亜弥データ:演歌歌手兼ヴァルキリーインパクト控え選手。
ルックスとプロポーションを買われ、16歳で演歌歌手デビューした少女。仕事が無い時期もあったが、TOMITVの演歌番組に出た事を切っ掛けに、同格闘番組リザーバーとしてオファーを受け、格闘家の合宿参加などを経験。自分でも本業がどっちか分からないような状況らしい。
ネガティブ思考で甘えたがりだが、最近は様々な出会いにより前向きになった。
追試で遅刻する事が多く、頭は良い方ではないようだ。
●リプレイ本文
●パリ到着☆
空港に到着すると、前を歩いていたフリーカメラマンの、榊 太一郎(fa4479)さんが振り返り、懐から『歓迎! 紗亜弥君一行』と書かれた小さい布切れを出して見せたんです。
「こういう物は伝統と格式が大事だ。飛行機から降りた者には、こうやって挨拶をするものらしいからな」
横断幕らしいです。そうなんだ。真面目そうな男性で、あまり話し掛けて来ませんが、面白い方かも☆
『紗亜弥さん、達ですね?』
歩み寄って来たのは、茶髪のがっしりした背の高い男性です。
「ナニヤツでござる!」
七枷・伏姫(fa2830)さんが颯爽とあたしの前に飛び出しました。黒のスーツに黒のサングラスがステキな女性です。本当にボディガードに守られているんだ‥‥何か映画みたい。
「日本から連絡、依頼を受けている現地スタッフですよ。ワゴン車を用意して来ました」
「現地スタッフでござるか?」
彼は、ミーツォ・アムール(fa4508)さん。日本語上手いなぁ。
「ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「フツツカ? ウイ、こちらこそ宜しくお願いします」
『サーヤ、こっちヨこっちー!』
聞き覚えのある片言の日本語が飛び込んで来ました。視線を泳がせると、アドリアーネ・ロッシ(fa2346)さんが映ったんです。演歌歌手で何度かお仕事していたので、高野正人(fa0851)さんも気付いたみたいでした。あぁっ伏姫さんがまた身構えています。
「アドリ姐さんすね。七枷さん、大丈夫ですよ」
「アーネさん、お久し振りです☆ わっ!」
「サーヤが来るって知って、実はワタシも楽しみにしてたのヨ♪ 色々と観光マップにはないイイ所を下調べしたノ☆ 特にご飯は美味しいモノを食べたいものネ♪」
抱きついて喜ぶアーネさんの胸に顔を埋め、危うく気絶するところでした。
●パリ観光の中で
我を忘れて風景を眺めていました。当たり前ですが、建物とか雰囲気が日本と違います。
「わぁ〜☆ あっ、そんな‥‥」
太一郎さんが切るカメラのシャッター音に動揺しちゃいました。まさか車内で撮られるなんて。
「異国の景色にときめく表情を見逃す訳にはいかないからな」
‥‥うっかり涎ながして寝てるとこ撮られそうで油断できません。
「紗亜弥殿? あまりきょろきょろしない方が良いでござるよ」
「そうですね。治安は悪くありませんが、明らかに観光客と見えるのは狙われ易いですよ。スリに気をつけて下さい、こっちでは擦られたほうも悪いんです」
伏姫さんの注意に続いて、ミーツォさんが心得を教えてくれました。
「そう言えば行き先だが、パリ初心者はエッフェル塔と凱旋門が基本と本に書いてある。高い所からの景色は大好きでね。こういういかにもな写真を撮ってこそ、旅行という物だが‥‥」
「そうだな、パリと言えばエッフェル塔だ。地上の人間を蟻のように見下ろせるぞ!」
星磁さん? ニヤリと微笑んでこのコメントは‥‥。
彼は演歌歌手の群青・星磁さん。銀髪をオールバックに流して、スーツにサングラス姿のガッシリした体格の男性です。覆面演歌歌手の、群青・青磁(fa2670)さんと双子らしく、よく間違われるとか、日本を発つ前に動揺した感じで話してくれました。
フロントミラーに、だるま付き交通安全のお守りが揺れる中、あたし達は凱旋門へ向かいます。
「ここがシャンゼリゼ通りですよ。日本語風に言うと、極楽浄土通り‥‥ですね。西へ降りるとレストランも多いです。そういえば食事はどうされます?」
「折角パリに来たんだタニシ‥‥じゃねぇ! エスカルゴを食ってみてぇな」
「たッ、たにし!? 群青さんっエスカルゴってカタツムリですよね?」
「パリはカキが年中獲れるカラ海の幸も美味しいワヨ☆」
一寸ホッとしました。
「行ってらっしゃい、気をつけて」
ミーツォさんがワゴンに残る中、凱旋門を見学です。
「うわあぁ☆」
高さ49.5Mの優美な姿に圧倒されました。ナポレオンの戦いを描いた浮き彫りに、正人さんの細い目が真剣です。太一郎さんのシャッター音も冴え渡っていました。
『ボンジュール』
その後、アーネさんお勧めのオープンカフェでティータイム。そこで星磁さんがこんな事を言ったんです。
「俺の聞いた話なんだが‥‥パリでのヴァルキリーインパクトは中止されるみてぇだな」
「えぇっ? 中止、ですか?」
どうやら現地スタッフが巧く伝えていなかったようです。でも、あたし遊んでて良いのかなぁ。
「美術館も回ってみたいな。絵や彫刻は感銘を受けるもの。異国の文化に触れるのは良い事だ」
「そこちょっと興味あるんですよねー。温故知新、こういうのを見て、お仕事にいかせることもあるかもしれませんし? この柄は、今度衣装に活かせるなー、とか」
榊さんと高野さんが次の場所を選んでいました。
「デモ、美術館は少しお勉強っぽい雰囲気があるから、サーヤには合わないカシラ?」
「いえっ、美術館賛成です♪」
『あれ? 紗亜弥?』
聞き慣れた日本語で呼ばれたんです。驚愕に見開く瞳に映った理知的な女性は、各務 神無(fa3392)さん。相変わらず煙草を咥えてます。
「お久し振りです! まさかパリで会えるなんてっ」
「今は他の仕事が終わって少し休暇中でね。良かったら同行しても構わないかい?」
「大歓迎です♪」
「第2展望台で高さ115mだそうだ。カメラに収める高さとして悪くない」
観光客の列はスゴイです。何とか2時間位待ってパリの景色を一望しました。
「‥‥た、高いですね」
きっと第3展望台は目眩を感じたかもしれません‥‥。
「そう言えば紗亜弥はバイオリンで演歌を歌った事もあるんだってね? ‥‥広場とか見つけたら、歌ってみようか。私の本職は一応、これなんでね」
これ――とバイオリンケースを見せながら神無さんが言いました。ここで演歌ですか!? でも、神無さんの演奏も聴いてみたいな。異国の風景で唄うってどんな気持ちなんだろう? 不安だけど、コンコルド広場で歌う事にしました。
「成功でも失敗でも、きっと良い経験になると思う。始めるよ?」
「えっ? ちょっとッ? ‥‥!」
バイオリンの旋律が流れると、自然に覚悟が決まりました。ちょっと声は震えていたかもしれませんが、精一杯唄ったんです。
「ありがとうございました☆」
何人かが拍手してくれました。近付こうとする方を伏姫さんが阻んでいます。やっぱり、目立つ行為はマズかったかな?
「紗亜弥、挨拶しなよ」
あっ、伏姫さんに頂いたフランス語のガイドブック!
「め、め、めるしーぼくー」
あたしは慣れないフランス語で感謝を伝えてペコペコとお辞儀しました。その時です。
「君は確か‥‥演歌歌手の‥‥紗亜弥、だったか?」
「え? はい」
伏姫さんが阻む中、背の高いサングラスの男性が声を掛けて来たんです。あたし見上げてばっかり‥‥。
「あぁ、自己紹介がまだか。俺は記者を生業としている。良い機会だ、良ければ同行させて貰っても構わないか? 取材させて欲しい」
「同行は構いませんけど、取材ですか?」
御鏡 炬魄(fa4468)さんの言葉に、あたしは動揺しました。
「期待しているんだよ。君の声で君の始まりを聞かせて欲しい」
少し位ならいいかな――――。
「固くならず、有りの儘の自然な気持ちで答えてくれ。まずは如何して演歌の世界を選び歌おうと思ったのかを聞かせて貰おう。それと榊、良い写真を一枚くれないか? 記事の絵にするのでな」
「演歌を選んだのは偶然なんです。流されるままにデビューしたと思います。でも、演歌が好きですし、歌う事も大好きです。それに、沢山の方に幾つもの想いを頂き、沢山助けて頂きました。だから、想いに応えたい。そして、本当にあたしの演歌で心を癒す事が出来たら素敵だなって‥‥想いは力になるって分かったからッ、そんな気持ちをあたしの歌声で届けられたらって! あ、ごめんなさい‥‥」
色んな事を思い出して、涙が零れそうになっちゃいました。
「構わないさ。有りの儘を瞳が証明してくれた。続きは落ち着いてからにしよう。さて、此方も記者を名乗る身だ、観光が目的ならそれなりの場所を案内せねばな。何処が良い?」
セーヌ川のほとりにあるお城のような巨大なルーブル美術館を訪れました。建物事体が美術品のようです☆ 展示室は400室。あたしでも知ってる有名な像や肖像画など美術品は35万点とか。
「高野さん、楽しそうですね♪」
細い目を更に和らげ、展示品を見ながら幸せそうに微笑んでいます。
「なんとなく、衣装を作ったと仮定して見てますよ」
えっ、今こっち見ました? あたしの衣装とか想像してます? え、Hなのはダメですよ?
「楽しんでる?」
神無さんが歩いて来ました。
「あぁ、そう言えば紗亜弥は勉強が苦手らしいね? 良かったら勉強を見てあげようか。これでも人に教えるのは得意な方だし、求めるなら大学レベルだって教えられるよ?」
「最近の勉強の様子は僕も機内で聞きました。大学時代のノートも渡しましたしね」
「‥‥なに? 紗亜弥の彼氏?」
「かッ、そんな! 色々と面倒みて頂いている‥‥えっと、お、お兄さんみたいな‥‥」
「ふーん、なら私はお姉さんだね」
見つめる赤い瞳が温かく感じました。
●沢山の楽しい思い出を有り難うございました☆
「お疲れ様でした。俺も紗亜弥さんや皆さんとパリを巡れて楽しかったです」
「今度機会があれば、サーヤにはワタシの故郷のイタリアも案内してあげたいワネ」
「原稿が出来たら真っ先に送ってやるよ。携帯番号とアドレス、ありがとな」
「技術よりも感性だよ、紗亜弥」
初対面の挨拶と飛行機の中、パリに到着してからの様々な出来事‥‥。
その全てを語るにはノートが幾つあったも足りません。
再会した時に思い出ばなしが出来れば良いなぁ――――。