えん歌だい♪アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
9.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/17〜09/21
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●本文
● PSFと連動する訳ではないが‥‥
「やはり旬に合わせるべきだな」
演歌担当プロデューサーは『えん歌だい』の課題を運動会と予定していたのだ。夏のAoSとも合わせるべきだったが、先に夏の題材は使っていたので断念した訳である。
「秋は運動、食欲、読書‥‥は難しいな、芸術の秋って所か。ネタは豊富かもしれないな」
彼の目的は二つ。若い視聴者を獲得する新しい演歌番組の成功と、番組で披露された歌をノースランドレコードでオムニバスCDを発売する事だ。
●『えん歌だい♪』出演者募集
番組が課題とするものでオリジナルの演歌を歌って頂くものです。
今回は『運動会』をテーマにオリジナルの演歌を歌って頂きます。
但し【PSF】の応援歌とは異なるので一方的応援ネタはNGとします。
「えぇっ!? じょーだん、ですよね?」
事務所を訪れた演歌歌手紗亜弥は、素っ頓狂な声をあげた後、小首を傾げて微笑んで見せた。
「冗談でわざわざ事務所に呼ぶ訳がないだろう? 本業の仕事だぞ?」
「それはうれしいのですが‥‥あたし、リザーバーで‥‥」
少女は【PSF】連動企画の格闘技にリザーバーとしてスケジュールが組まれたばかりだ。以前も過密スケジュールはあったものの、どうせならコンスタントに仕事が欲しい所であろう。
「なにも異国と往復しろって訳じゃない。打ち合わせや練習時間を本業に回してくれればいいんだ。無理ならキャンセルするが‥‥」
――無理?
「ま、待って下さい! やります! やらせて下さい!」
予想以上の反応に、壮年の男は冗談で取り出した携帯を落としそうになったものだ。
「‥‥紗亜弥?」
「あ、すみません。平気ですよ☆ 山奥のペンションとTV局も打ち合わせでも往復しましたから‥‥前より近いじゃないですか♪」
「出演できるかは作詞家や作曲家の募集次第だって事は分かっているな?」
「はい! よろしくお願いします!」
紗亜弥は頭を下げると、事務所から出て行った。また追試の途中で抜けて来たのだろうか。
「どうしたの? 浮かない顔色ね」
「あぁ、クリスティか。いや、からかい過ぎたとは思うが‥‥。頑張り過ぎた結果、傷を負ってしまった者も見て来たからな」
「自分のこと?」
壮年の男は神妙な顔つきのまま、煙草を取り出した。
●『えん歌だい♪』裏方募集
舞台演出、衣装担当、大道具、及び、紗亜弥の作詞作曲及び協力者を募集します。
●リプレイ本文
●紗亜弥強襲される
「おはようございます!」
あたしがドアを開けると、高野正人(fa0851)さんと木野菜種(fa1681)が驚いたように振り向きました。‥‥正人さんの場合は何となく細い目が少し開いたように見えたんです。菜種さんは茶色の瞳を見開いて、駆け寄って来たから分かりました。
「どうしたのよ!? いつもより早いじゃない?」
「いつもなら、あと1時間は掛かってましたよねぇ?」
あたしはニッコリと微笑んで見せました。
「実は、追試を受ける数が減ったんです☆ 高野さんや菜種さんのおかげですよ♪」
‥‥あれ? 反応がないなぁ。あ、追試って伏せてたんだっ。話題かえなきゃっ。
「えっと、高野さんは衣装ですか? 菜種さんは今回もあたしの歌を作って頂けるんですか?」
「今回はセットやらの大道具に集中しまっす。衣装は中松さんにお任せですよ」
「あたしは今回月見里さんのお手伝いで、作詞作曲補につくわね。まあ結局は今回も紗亜弥の曲に携わる訳だけどー。紗亜弥は色んな人の曲を歌ってみた方がいいかなってあたしは思ってるのよ」
ポリポリと髪を掻く正人さんと、豊かな胸元で腕を組む菜種さんが微笑みました。
すると、凛とした顔立ちで、切れ長の瞳が大人っぽい中松百合子(fa2361)さんと、大きな青い瞳の可愛らしい月見里 神楽(fa2122)さんが歩み寄って来たんです。
「スタイリストとして、出演者の衣装やメイクを担当させてもらうわ」
「神楽は沙亜弥さんの曲を担当するミュージシャンだよ。歌はまだ勉強中だから、歌手にはほど遠くて。でも将来は自分で作った曲を演奏しながら歌えるようになるのが目標なんだよ〜」
「ふつつかものですが、よろしくおねがいします!」
挨拶を後、あたしは室内を見渡しました。ソファーには三名の方が腰を下ろしています。菜種さんが紹介してくれた所、黒髪の女性が樫尾聖子(fa4301)さん、推理小説を読んでいる男の子が斑鳩・透馬(fa4348)さん、‥‥なんていうのかな? 身体の線が細くて、可愛いのに綺麗で、花のような感じの女の子が姫乃 舞(fa0634)さんです。
「私はタイムキーパーとして参加させて頂きます」
あれ? 聖子さんのイントネーションって関西の方かな。
「俺は舞台製作及び飾り付け、衣装や大道具及び小道具の準備などの手伝いをさせてもらう」
えぇっ? 年下みたいなのにっ! 何かクールで大人です。
「普段はポップス中心で演歌は初挑戦になりますので、至らない所も多いとは思いますが、一生懸命頑張りますので宜しくお願い致します」
舞さんがとても丁寧に深々とお辞儀したんです。あたしも頑張りました。
「えっと、今回は7名なんですね?」
その時、突然誰かが背中から両手を回して来たんです。
「ひぃやあぁッ!?」
あたしは思わず素っ頓狂な悲鳴をあげていました。誰でも驚きますよね?
「わーい紗亜弥ちゃんー久しぶりー☆」
背後から聞えた声に覚えがありました。視線を流すと、あたしの腰に抱き付いている、阿野次 のもじ(fa3092)さんが映ったんです。ターゲット認識♪ とか言いながら微笑んでいました。いつも、のもじさんには驚かされてばかり。
●課題は運動会
「運動会、っていうとやっぱり屋外ですよねぇ。撮影を外でやるわけにはいかないでしょうけど。書割で青空‥‥は幾ら何でも安っぽ過ぎますので、いっそ校舎の壁っぽい張りぼてで埋めてしまえば空が見えなくても問題ないですし、クオリティも上がるかな、と」
「そうだな、出演者の番号と名前の書かれたプレートなんかあると運動会らしいと思うが」
「あー、それ良いよね♪ 私さんせー!」
正人さんと透馬さんが打ち合わせる中、のもじさんが提案に歓喜の声をあげていました。そんな中、百合子さんがバスケットケースを抱えて姿を見せます。
「お弁当に太巻きやサンドイッチなんかも運動会っぽくていいかもね。はい、注し入れよ。スポーツドリンクとレモンの砂糖漬けを作って来たの」
砂糖漬けに細い目が反応しました。相変わらずもみじさんはハイテンション。
「うわぁー☆ お弁当さんせー!」
「楽しそうですね、のもじさん☆」
「んー学校はねー、ブランクあるから運動会はでれてなかったんだ‥‥そういうことでレッツ再チャレンジで楽しみ♪」
苦笑する可愛い顔が、どこか哀しそうに見えたのは気のせいかな?
「学校も運動会が近いんだよね。運動会は大好き♪ 神楽は玉入れは下手だけど、走るのは得意だよ。沙亜弥さんはどうなのかな?」
「んー、実は運動って苦手なんです。早くないけど障害物競争は好きですよ。なんていうか、次々にイベントクリアしているみたいで☆」
「紗亜弥、曲が出来たわよ。曲名は『かけくらべ』。最初月見里さんが出した曲名は漢字混じりだったから、あたしの案でひらがなに開いてもらったのね。この方が優しく感じられるでしょう?」
今回も獣化して仕上げて頂きました。菜種さん? あたしの漢字苦手なイメージでひらがなにしたんじゃないですよね?
曲が出来るとリハーサルが始まりました――――。
「運動会をテーマにした演歌て初めて聞きましたわ‥‥ええもんですねんー。あ、姫乃さんの入場、もうちっとだけ早くなりませんかね?」
ストップウォッチで曲の進行と尺を計る聖子さんが忙しそうです。
「はい、分かりました。もっと早く立てばよろしいのですか?」
「紗亜弥さん、いい? 緊張〜しながぁ〜ら、立ち並んでいぃ〜たぁ〜。みたいな感じだよ?」
「はい、神楽さん☆」
「OKです。ほな、私はキューシートのチェック報告して来ますわ」
いよいよ本番も近付いて来ました。え? 菜種さんが手招きしています。
「紗亜弥、最近忙しそうね。芸能人が忙しいのはいいことだけど、休める時にはちゃんと休みなさいよ? 紗亜弥はあなた1人しか居ないんだからね」
肩を優しく叩いて励ましてくれました。正人さんが言ってくれた言葉が思い出されます。
『んー‥‥頑張るのは美徳、ですけど。辛かったり困ったり、言ってくれなきゃわかりませんし。僕だったり、事務所長だったり、弱音もたまには吐かなきゃ。それをフォローするのが、先輩だったり上司の役割ですもん』
あたしは皆さんに支えられているんだ‥‥。休みかぁ‥‥ちょっとお願いしてみようかな?
●れっつびぎんで運動会! 貴方の心に響け! 『絶対快晴黙示録』
校舎の壁を背景に、運動会で設営される実行員テントが置かれており、中央には挨拶に使用する演説台が立っていた。静寂に包まれた舞台に人影はない。
そんな中、行進曲のような旋律が流れ出すと、プレートを掲げた透馬が歩いて来る。青いジャージ姿の少年に次いで一列に並んで来るのは、サーモンピンクのジャージに身を包んだ三名の少女達だ。
「選手宣誓!!」
のもじがビっと右手を挙げた。
「本日は私たちの心がけがよく全くのお天気! 快晴! 吸運! ご覧ください、雲一つない青空! うんトッテモ素敵☆」
ドタッっとコケる出演者達。演技力のない透馬と紗亜弥はイマイチだ。舞のみ演技経験者であり、白々しく見えないコケ方を披露した後、黒髪の少女へ苦笑気味のツッコミを入れる。
「いや、それ校長先生とか実況混じってるから‥‥」
運動会を演出した舞台は、まるでコントの様だ。視聴者に放送される時は、笑い声のSEが入っているに違いない。
「一番の旗はもらったー」
何事も無かったようにジャージを脱ぎ出すのもじ。細身を包んでいたのは、[2−A阿野次のもじ]なんて記されているゼッケンの縫われた白い体操着と紺色のブルマだ。
長い黒髪を揺らして駆け出すと、タンタンタン☆ と演説台の段を軽やかに駆け上がってゆく。同時に前奏が響き渡り、『借り物交渉』と曲名テロップが表示された。
少女は必勝ハチマキを額にキュッと結ぶと、円らな青い瞳を輝かせて歌声を紡ぎ出す。
――秋のあお空 白と紅が映えるこの日
踊る心がとまらない。あの子に見せるこの勇姿
風の様に駆け抜け 恋敵を突き放す♪
――だけど借り物の狩りに引き寄せたお題目
『好きな人』
おっちょこちょいに転ぶなよ
あの子の笑顔、目指してただ走れ
――恋の綱引きは(バックコーラス:おーえすおーえす♪)
机にかじりついてるだけじゃキメらない駆け引き――――。
のもじが段を降りると、タイミングを合わせて実行員テントで立ち上がるのは、舞だ。運動会の青空をイメージした青から水色のグラデーションの地に白い模様の入った着物に細身を包んでおり、黒髪の運動着姿の少女と擦れ違うと段を上ってゆく。清純派が売りの端整な風貌の少女は、どこか儚げな雰囲気を醸し出していた。
ポップス調の親しみ易い旋律が流れる中、丁寧に頭を下げると、円らな茶色の瞳に強い意志を湛えて歌い出す。
それは『運動会のわくわく感』を表現した歌詞。
前日から眠れなかったり。
天気予報を見てハラハラしたり。
朝早起きして運動会が開催される合図の花火の音を聞いてホッとしたり。
誰もが一度は感じた心境を、演歌のわびさびを崩さず、優れた歌唱力で歌い上げた。
続いてテントから歩き出したのは、紗亜弥だ。水色地のアメリカンスリーブのハイネックに、五分丈袖の肩口が大きく開いた白いショートジャケットを羽織っており、腰を包むは、スリットが入った紺色と水色のタータンチェックのプリーツラップミニスカートだ。黒い5分丈スパッツに包まれた足元を、かっちりとした形のスニーカーが飾っていた。スポーツウェアを意識しながらも、カジュアルにアレンジした衣装はキュートだ。カチューシャのように白い鉢巻をリボン結びにした黒髪を揺らし、同様にナチュラルメイクを施した少女は段を上がってゆく。
曲名テロップに『かけくらべ』と表示される中、流れ出す旋律は、民謡系の明るい感じの曲調であり、手拍子したくなるようなテンポだ。
――神楽と沙亜弥さんは年齢似てるから、歌詞みたいな経験あるんじゃないかな?
(「運動会を思い出しながら‥‥あたしらしく‥‥」)
――緊張しながら
立ち並んでいた出発点
走れば背を押す
両親の声 応援の声
太陽の下 晴れ舞台
見てて下され
――勝つか負けるか
それより大事な心意気
終れば迎える
両親の顔 安堵の顔
転ばず走れたこの一番
捧げる感謝
――太陽の下 晴れ舞台
捧げる感謝』――――。
紗亜弥は歌った。神楽の振り付け指導で学んだ仕草を取り入れながら。最後の歌詞の部分で、胸元に手を運び、伏せ目がちに瞳を細めると、感謝の気持ちを伝えた。
最後にクス球が割れ、紙吹雪が舞い振る中、百合子が作って来た弁当を食べて手を振る光景を映しながら、番組は幕を閉じようとしていた。
とくに、のもじは美味しそうに食べていたという――――。