ヴァルキリークリエイトアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 7人
サポート 1人
期間 11/01〜11/05

●本文

●TVCM
 ――ヴァルキリーインパクト。
 これは立ち技のみの女子格闘技である。
 これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、春と共に新たな局面を迎えた。
 最強の戦乙女を決定するトーナメント戦の開幕である。
 そして、再び大晦日合わせで、第2回最強トーナメント戦が始まろうとしていた。
 さぁ、準備は整った! ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい!
 只今、ヴァルキリーインパクトでは舞台や乙女達を飾るクリエイター募集中!!

 ――ヴァルキリークリエイト。
 これは、ヴァルキリーインパクトの舞台や乙女達を飾るクリエイターを描いた記録である。
 ヴァルキリークリエイトとは、『コスチュームデザイナー』『入場音楽担当』『番組演出』『舞台装飾』等の言わば裏方を示す総称だ。
 今回はWEFのハロウィン企画と連動する事となっている。つまり――――。
 ――テーマはハロウィン。
 コスチューム、入場音楽(テーマにマッチする感じのリズム等)、演出、舞台装飾まで、ハロウィンで彩らなければならないのだ。
 果たして、クリエイター達は如何にして戦乙女達や舞台を染め上げるのか!?
 ヴァルキリークリエイト。
 試合前に是非御覧下さい――――。
 

●募集区分
・コスチュームデザイナー(1〜)
 選手のコスチュームを製作する方です(担当選手名明記(複数OK))。
 アピールポイント明記。
 尚、番組の展開上、誰の衣装かは語れませんので注意して下さい。
 突起物(柔らかいものはOK)や鉄製のものは止めましょう。
 選手と打ち合わせて要望に添いながら個性を演出して下さい。

・入場音楽担当(1〜)
 選手の入場シーンの音楽を担当する方です。但し、既に出している音楽は却下です。
 アピールポイント明記(選手の何をイメージして作った曲か、どんなリズムの曲か等)。

・番組演出(1〜)
 TV演出や選手入場からリングにあがるまでの花道の演出を担当します。言うなれば、ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組かを決定する重要な部分です。対戦カードを決めたり、タイトルの雰囲気や視聴者に魅せる部分を構成して下さい(イメージは月ごとに開催されるKの番組参照)。
 対戦カードが無い場合、ランダムとなります。

・舞台装飾(1人〜)
 大道具・小道具に相当します。演出と相談してどんな雰囲気の舞台を作るのか決めた上で作成に入ります。

○ノーリンク募集区分
・声優(1人〜)
 ヴァルキリークリエイトはナレーションで展開される予定です。どの区分のどんな部分にスポットを当てるのか、構成も考えて頂きます。台詞歓迎☆

○その他
・ヴァルキリーインパクトを盛り上げられる事があれば、手伝ってあげて下さい。

●今回の参加者

 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1435 稲森・梢(30歳・♀・狐)
 fa2748 醍醐・千太郎(30歳・♂・熊)
 fa3161 藤田 武(28歳・♂・アライグマ)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4871 ソレイユ(17歳・♂・狸)

●リプレイ本文

●番組成功の為に
 稲森・梢(fa1435)は長身を丸めて食い入るようにモニターを眺めていた。
 肩で切り揃えられたシャギー系の灰髪から覗く吊り目は、鋭利に研ぎ澄まされており、尖った顎に細い指を添える。神秘的な風貌が捉えるは、ヴァルキリークリエイトの映像だ。
 ――私もナレーターとして、精一杯彼らの仕事振りを伝えるよう努力したい!
 クリエイター達の打ち合わせ光景を見る中、梢の豊満な胸に『仕事を成功させよう』という彼らの意気込みが伝わり、熱く高鳴った。
「よし! 本番入るわ、宜しくお願いします」
 女優はマイクの前で息を整え、容姿同様に繊細で美しい声を響かせてゆく。

●もう一つの戦い――ヴァルキリークリエイト放送
 ――この戦いにより、戦乙女に『華』が与えられる。
『この番組は、ヴァルキリーインパクトの選手達を裏で支えるスタッフの奮戦する様子をお送りします』
 ――スタッフ内会議。
 この一室で演出の方向性や担当が決定される――――。
 画面はテーブルを囲む会議室を映し出した。
「お疲れさまです♪」
 あどけない風貌の美少女が差し入れの弁当をテーブルに置いてゆく。梢が協力を頼んだベスが邪魔にならないよう小声で気を遣う中、鬼王丸・征國(fa0750)が労った後、ゴツイ手を精悍な顎に運ぶ。
「戦乙女には以前関わったし精一杯頑張ろうの。より楽しく、エキサイティングな人気番組になるよう一助を目指そうではないか」
 黒髪をオールバックに流した壮年の渋い男は、演出を担当するようだ。次いで、上品なスーツに身を包む醍醐・千太郎(fa2748)が太い腕を組んで口を開く。
「俺は舞台装飾を担当させてもらう。本職がプロレスラーだからリングの設営などにも慣れているからな」
「僕は今回も花道に絵を描きたいな」
 舞台装飾の一端を担うべく話し出すのは藤田 武(fa3161)だ。彼は過去二回の大会で、花道に手腕を振るって来たのである。
「ハロウィンと言うことで、若く美しく気高い雰囲気の魔女を描こうと思うよ」
 楽しそうに小太りの青年が子犬のような瞳を輝かせる中、スモーキー巻(fa3211)が口を開く。
「僕は入場音楽担当かな。高野さんも何時もの仕事を引き受けるのですよね?」
 青年は茶髪を揺らして穏やかな眼差しを高野正人(fa0851)に向けた。何度か仕事を共にしたらしく、お互いの領域を理解しているような響きである。
「そうすねぇ。尤も、誰か衣装を担当するなら他の手伝いとかしますけど?」
 頭に白い布地を巻いたツナギ姿の青年は答えると、線の如き細目を褐色の少年に流した。ソレイユ(fa4871)は赤毛から緑色の瞳を覗かせ口を開く。
「俺はなんでもいいです」
 彼は未だ仕事の経験が少ないらしい。これから芸能界で自分の道を決めてゆく事だろう。

 ――選手達との打ち合わせ。
 各々担当する項目について選手の希望を聞き、それによって作業を行ってゆく――――。
『実はこの辺が最も重要な点だ。試合で戦う選手のトレーニングを割き、限られた時間で打ち合わせを行い、演出、衣装、音楽を昇華させなければならない。この部分が順調に進行しなければ、纏まりの良い構成は期待されず、各担当作業に皺寄せが入り、失敗する事さえ有り得るのである』
 ここで労力を費やすのは、征國、正人、スモーキー巻の三名だ。携帯と幾つもの電話を駆使し、基本を構築してゆく。彼らの作業部屋は着信音や電話のベルが鳴り止まない正に戦場だ。
「そうじゃのう、コミカルでなくシックに全体を纏めるのぢゃな? 次に対戦カードじゃが問題ないかのぅ? ふむ、了解ぢゃ。ではキャッチフレーズじゃが‥‥」
『特にマッチメイクは演出の要である。トーナメント大会ではリーグ分けが後々まで響く。バランスを見越してカードを選ばなければ、観客を盛り上げる試合にすらならない場合もあるのだ』
「ええ、そうす。鬼は和風スかねぇ? さすがに電撃鬼娘なんてことにはならんと思うのでご安心をばー」
「曲の方も衣装に合わせるかい? OK、分かったよ」
『衣装と入場音楽は選手のテンションを向上させる重要な要素。故に相乗効果を考慮した打ち合わせが必要不可欠である。選手の方も演出、衣装、音楽を同時に決めねばならない為、互いに労力と交渉力が駆使される駆け引きの戦場と呼べるかもしれない』
「そっちはどうじゃった?」
「衣装は何とか、後は材料を注文してデザインを纏める事すかねぇ」
「希望を出してくれた人に関しては、だいたいその方向で行けそうだよ」
『三人はノートに連ねた資料を手に、会議室へと向かう。ここから先は試合で結果を見るしかなさそうだ』

●それぞれの戦い
 画面に映し出されたのは、スラリとした梢の後姿だ。カメラが歩いてゆく彼女を追う中、行く手に征國を捉えると、差し入れを渡して一息入れて貰いつつ経過を伺う。
「シックに纏めたそうだけど、どんな感じかしら? マッチメイクはどんな構成で決定したの?」
「明るく賑やかではなく、抑え目な大人の色気とか出せれば嬉しいかの。マッチメイクは総合的なポテンシャルが近い人同士が当たるようにしておる」
 太い腕を組んで、要所要所を的確に伝えた。
「キャッチコピーはいかがかしら? 何か指針でも?」
「テーマはハロウィンぢゃからの。その辺で全体キャッチを決めて、入場時も同様に選手の個性と希望を合わせて決めたのぢゃ。希望が取れなかった選手に関しては、上の指示に従うしかないのぅ」
『渋い顔が残念そうに曇った気がしました。しかし、それもスケジュールの都合で仕方がないのかもしれません。彼は精一杯頑張ったのだから‥‥。私は次に衣装担当に差し入れを渡すべく、同じように伺いました』
「どんな所に注目してほしいかしら? それと、衣装で気をつけた事は?」
「今回の衣装はハロウィンって事で、コミカルではない舞台演出と合わせて纏めた部分を注目って所でしょーか。気をつける事は、やはり『これは嫌だ』ってもんは作らないって事ですねぇ。後はプロポーションが魅力的な方も沢山おられますし、ポロリにならないよう配慮しましたよ」
『女性の色気を出す過激な衣装だけなら楽と彼は言いました。激しく動く格闘技の衣装という事で、そのバランスが大変なのかもしれません。続いて音楽担当に向かうと、「暫く待って」から彼は姿を見せたのです』
「入場音楽を決めるポイントは何かしら?」
「勿論希望を最優先したけど、特に希望が出なかった選手に関しては、コスチュームのモチーフ、これまでの大会で使った曲、選手の特性やファイトスタイルなどを判断材料にし、僕の方で決めさせて貰ったよ」
『観察眼と情報分析が必要だったようです。どんな音楽に仕上がったのかは、本編に期待するしかありません。私はいよいよ会場の設営に足を運びます。プロレスラーの彼は、音響小道具の配線等が描かれた会場の見取り図に沿って慣れた手つきで会場の基礎設営に汗を流していました』
「会場のイメージを聞いても構わないかしら?」
「演出担当や他の担当者、選手の希望を第一に採用し、ハロウィンといってもあまりコメディ色を出したくないので、あくまで夜をイメージしたセット作りをしているつもりだ」
『彼はそう答えると、鉄柱やマットを自ら担いでリング作りに加わります。豊富な経験は滞りなく円滑に会場を形にしてゆきました。花道に当たる所で、青年が絵を描いています』
「会議で話した魔女かしら?」
「そうだよ、全体と調和させることを第一に、あくまで舞台の一部であって、僕の作品ではないんだから、選手が入場する際に番組が盛り上がるよう意識して、絵を描きあげるよ。尤も、絵は従の存在だからね。あくまで主役は選手なんだから、選手を食うような主張をする絵にはしないよ」
「あなたはこの作業に日数を?」
「みんなが万全の体制で仕事を仕上げられるよう、休憩をちゃんと取る為に飲み物を調達して配ったり、仮眠している人を見かけたら毛布を一枚余分にかけるみたいな、健康悪化の要因にならないよう、気をつけるように心掛けたかな。服のデザインの勉強もさせてもらいたかったよ。どんな選手にどういう演出をすればいいかというのはいろいろ人によってやり方が違うから、僕の幅を広げたいと思うんだよね」
『でも、手伝いは若い人に任せたから‥‥。と、彼は朗らかに笑いました。そういえばあの少年は何か見つけたのでしょうか?』
「色々と雑用を手伝って分かったけど、何がやりたいのか分かっていないと出来ない事だと思ったな。僕は未だ表舞台をやりたいのか、裏方をしたいのか分からないけど、今は何でも経験してみようと思ったんだ。決めるのはそれからでも遅くない」

 ――こうして彼らの見えない苦労と情熱を注いで、戦乙女を彩る『華』が用意された。
 裏方と呼ばれる戦場で戦い抜いた戦士達がつかの間の休息を得る中、彼らの作り上げた世界も今は静かに眠っている。
 会場が満員の観客に溢れた刻、私達に如何なる世界を見せてくれるのであろうか。
 間も無く、世界は目覚めようとしている――――。