ヴァルキリークリエイトアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 9.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/30〜12/04

●本文

●TVCM
 ――ヴァルキリーインパクト。
 これは立ち技のみの女子格闘技である。
 これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、春と共に新たな局面を迎えた。
 最強の戦乙女を決定するトーナメント戦の開幕である。
 そして、再び大晦日合わせで、第2回最強トーナメント戦が始まろうとしていた。
 迎えるは11月30日合わせで開催される『第2回最強トーナメント第2戦』。
 さぁ、準備は整った! ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい!
 しかし、ここに来てクリエイター不足の危機が訪れていた。このまま彩る者達の戦いは終わってしまうのか!?
 只今、ヴァルキリーインパクトでは舞台や乙女達を飾るクリエイター募集中!!

 ――ヴァルキリークリエイト。
 これは、ヴァルキリーインパクトの舞台や乙女達を飾るクリエイターを描いた記録である。
 ヴァルキリークリエイトとは、『コスチュームデザイナー』『入場音楽担当』『番組演出』『舞台装飾』等の言わば裏方を示す総称だ。
 今回はテーマのようなものがない。季節は冬。
 厚着で季節に合わせるか? こんな季節こそ夏を連想させるのか? いずれにしてもヴァルキリー次第であろう。
 また、クリエイター不足も何とかしなければならない。そう、彩りが足りなかったのだ。
 コスチューム、入場音楽、演出、舞台装飾、番組ナレーター。
 そして新たに、番組入場音楽、番組リポーターが追加された。打開策になるのか!?
 クリエイター達は如何にして戦乙女達や舞台を染め上げるのか!?
 ヴァルキリークリエイト。
 試合前に是非御覧下さい――――。
 

●募集区分
・コスチュームデザイナー(1〜)
 選手のコスチュームを製作する方です(担当選手名明記(複数OK))。
 アピールポイント明記。
 尚、番組の展開上、誰の衣装かは語れませんので注意して下さい。
 突起物(柔らかいものはOK)や鉄製のものは止めましょう。
 選手と打ち合わせて要望に添いながら個性を演出して下さい。

・入場音楽担当(1〜)
 選手の入場シーンの音楽を担当する方です。但し、既に出している音楽は却下です。
 アピールポイント明記(選手の何をイメージして作った曲か、どんなリズムの曲か等)。

・番組演出(1〜)
 TV演出や選手入場からリングにあがるまでの花道の演出を担当します。言うなれば、ヴァルキリーインパクトがどんな雰囲気の格闘番組かを決定する重要な部分です。タイトルの雰囲気や視聴者に魅せる部分を構成して下さい(イメージは月ごとに開催されるKの番組参照)。

・舞台装飾(1人〜)
 大道具・小道具に相当します。演出と相談してどんな雰囲気の舞台を作るのか決めた上で作成に入ります。

○ノーリンク募集区分
・声優(1人〜)
 ヴァルキリークリエイトはナレーションで展開される予定です。どの区分のどんな部分にスポットを当てるのか、構成も考えて頂きます。台詞歓迎☆ ナレーション時の口調など重要です。

・リポーター(1人〜)
 クリエイター達のリポート担当です。こんな事を質問するので宜しく――と、クリエイター達と打ち合わせしておきましょう。

・番組音楽(1人〜)
 クリエイター達の静かなる戦いを彩るBGM担当です。オリジナルの音楽を作成して下さい。

○その他
・ヴァルキリーインパクトを盛り上げられる事があれば、手伝ってあげて下さい。

●今回の参加者

 fa0072 レディ・クレセント(20歳・♂・蛇)
 fa0658 梁井・繁(40歳・♂・狼)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1533 Syana(20歳・♂・小鳥)
 fa3161 藤田 武(28歳・♂・アライグマ)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)

●リプレイ本文

●静寂に包まれた一室で
 銀髪をオールバックに流した壮年の男は、細い顎に手を運び、時折考える素振りを見せてはペンを走らせていた。眼鏡に映し込むのはタイミングシートだ。
「まず最初はやはり今回の総合的な企画会議からであろう。舞台設営は工具の使われる音などを背景に、様々な場面をナレーションしよう。コスチュームは選手の衣装作りの大変さを上手く表現できるかだな。入場音楽‥‥これも選手の個性を出す物‥‥と、そして、選手の入場‥‥か」
「シゲさん、スタンバイOKです」
 スタッフが顔を出すと、梁井・繁(fa0658)は赤い瞳を和らげ、ニヤリと微笑んだ。
「今回もよろしく頼むよ」
 スーツ姿の男はスックと立ち上がり、収録スタジオに向かう。今回もナレーターは一人だ。静寂に包まれた室内で台本を開き、落ち着き払ったベテラン声優は安定感のある声を紡ぐ。

●ヴァルキリークリエイト
『今宵は『第2回最強トーナメント第2戦』‥‥前回に引き続き、かなりの熱戦が繰り広げられること必至である。スタッフも熱の籠もった企画会議が始まっていた』
 会議室のテーブルを囲むは五人の男女。プロデューサーの鬼王丸・征國(fa0750)、衣装デザインを務める高野正人(fa0851)、花道演出を担う藤田 武(fa3161)、視聴者にも馴染みの顔ぶれである。そして、今回入場音楽を引き受けたSyana(fa1533)、舞台演出の紅一点白虎(fa0756)が加わっていた。因みに彼女は入場整理での手伝いと女性選手の部屋での世話も引き受けている。
 静寂に包まれた会議室の『静かなる戦いの始まり』を伝えるかの如く、スモーキー巻(fa3211)の作曲したBGMが、比較的スローテンポかつ力強く、堂々とした旋律を刻んでゆく中、黒髪をオールバックに流した渋い風貌の男が口を開く。今回の征國は、がっしりとした身体をライダースーツに包んでいた。普段の和服姿に見慣れている所為か、なかなかワイルドなおじさんだ。
「今回は雪・クリスマスをイメージした興行にしようかのう。白く清楚な感じと北欧神話等の荘厳さ、クリスマスの妖精達の可憐さを出せればと思うのじゃが」
「それなら北欧神話路線に戻って、誓いの女神ヴァールを描こうと思うよ。正々堂々と戦うと誓った戦乙女達を見守る女神としてちょうどいいと思うんだよね」
 武は「名前がヴァルキリーに似ているなんていう寒い冗談はともかくとしてさ」と、茶の短髪を掻きながら、子犬のような瞳で微笑んで見せた。雰囲気を和ませる気遣いだろう。
「ふむ、北欧神話と氷雪の戦乙女達という感じじゃな」
 征國の鋭い緑色の瞳が、白い布地を頭に巻いた細目の青年を捉える。プロデューサーの不敵な笑みは、期待と安心感を現わしているようだ。正人はポリポリと頭を掻いて穏やかに笑う。
「本職は大道具なんすけどね。楽しいし歓迎ですが‥‥。そうすねぇ、前回はお化けネタでしたし、今回は明るくいきたいすね。選手の要望を後から聞いてみますよ」
 武、正人の軽いトークに場に笑みが洩れた。流れを円滑に活発な意見を出せるようにするのも、会議には必要だ。次いで茶の長髪をサラリと揺らし、青年が眼鏡に浮かぶ瞳を和らげ、隣の少女を映す。視線を感じた白虎はシャギーレイヤーの白髪を揺らし、端整な風貌に僅かばかり驚きの色を浮かべた。
「お先にどうぞ」
「あ、はい。私も、花道の演出をします。そのほかに、リングの装飾、イスの準備など大道具の仕事のサポートをします」
「女の子に力仕事は大変だよね、僕も手伝うよ」
 同じ現場となるであろう武が穏やかな眼差しを向けた。彼は連携を重視する考えである。時間があれば他の人の仕事も手伝い、仕事を特に決めてない人や少ない人には手伝ってほしいと願っていた。より良くした方がいい事に関しては、他の人の意見も取り入れたいと思うからだ。
「ありがとうございます。でも、本職はスタントマンですから気にしないで下さい」
 猫のような円らな茶の瞳を和らげ、少女は微笑んで見せた。どうやら場数は色々と踏んでいるらしい。最後にSyanaが口を開く。
「僕も高野さん同様に選手と入場音楽の打ち合わせですね。雪や冬のテーマで伺ってみます」
「ふむ。では、高野殿とSyana殿に任せるとしよう。藤田殿と白虎殿とはまた次の打ち合わせじゃな」
『腰を上げる一同。どうやら今回のテーマは決まったようだ。今回はどのようなドラマが繰り広げられるのであろうか?』
 クリスマスソングに近い感じの優しい旋律が奏でられる中、会議室は暗転してゆく。

●クリエイターレポート
 画面に映し出されたのは、見目麗しき『女性』だ。流れるような黒い長髪に浮かぶ端整な風貌はメイクを施されており、身体のラインをくっきりと浮かび上がらせる優雅なドレスに細身を包んでいた。
「今回の全ての舞台を作るいわば‥‥縁の下の力持ち的裏方の皆様の様子をレポートさせて頂きますレポーターのレディ・クレセントですわ。と、申しましても皆様お仕事中ですから、お仕事の邪魔にならない範囲でですわね」
 レディ・クレセント(fa0072)はマイク片手に微笑むと、早速背中を向けて歩き出す。次第に工具の奏でる音が聞こえる事で、舞台設営現場に近付いている事が読み取れる。
 足場が悪いのも全く気にせず‥‥とはいえ、軽業に秀でている訳ではないので、艶かしいドレス姿は危なっかしいが、『彼女』とカメラは花道を映し出した。
『工具の音が響く特設会場‥‥素晴らしい舞台で素晴らしい戦いをさせるために、皆頑張っている。とりわけ、花道の部分は、選手にとっての文字通り「花道」なので様々な趣向をこらしている』
「あ、花道に絵を描いている方がいますわ」
 レディが捉えたのはベストを纏った小太りな青年だ。カメラを回り込ませて絵は映らないようにレポートを開始する。
「女神、ですわね? どんな女神なのかしら?」
 黒いストレートロングヘアを左手で押さえ、腰を低く屈めてマイクを向けた。武が答える。
「この女神は、誓いを破ったら恐ろしい復讐をする女神でもあるけど、ギリシャ神話みたいに自ら勝手に復讐をする訳じゃないから、リングの上での戦いにより相応しく思うんだよね。もし反則したら、恐ろしい復讐が待っているという感じで、いい勝負をみんな心がけてくれたら嬉しいと思うよ」
「フェアプレイを望んでって事ですわね。応援しておりますわ★ あ、向こうにもいます。早速レポート致しますわ」
 続いて映し出されたのは黙々と作業を続けている白虎だ。
「紙ふぶきを作っているんです。今回のテーマは雪や冬ですから」
 少女は「綿も用意すれば装飾も冬らしくなると思います」と微笑んでみせた。
「正に裏方のお仕事ですわね。でも、地味な作業も選手を引き立たせるのに重要って事ですわね。頑張って下さい」
 労った後、レディはカメラに身体を向けて、次の現場へ移動する事を伝える。
「続いてコスチューム制作現場を見て参りましょう」
『コスチューム‥‥それは選手の個性を最大限に示す物。見た目の派手さを損なわないように、縫製の方も万全にしなければならない‥‥派手な動きをするので、その辺が非常に大変だという事らしい』
 映し出されたツナギ姿の青年は電話の応対に追われていた。レポートに答える余裕も皆無といった感じだ。少しのんびりした彼のBGMも心なしかテンポが早く感じられる。打ち合わせは神経を使う為か、何時になくテンションが高い。
「うぃーっす、結構いつもどおりなところに冬アレンジなイメージでしょうか? ふむふむ、頑張りまっする‥‥はぁ? リザーバーとの試合スかぁ?」
「‥‥どうやら激戦のようですわね。では、先に入場音楽制作に行ってみますわ」
 上品に笑うものの、レディの表情は頭の上に汗マークでも浮かんでいるようだ。気を取り直してSyanaの許へ歩いてゆく。
『入場音楽作曲‥‥コスチュームと同様に、その選手の個性が良く出る物。これで戦闘に対する集中力をMAXに持って行くので、非常に重要なアイテム』
 青年はレディの来訪を快く迎えてくれた。カメラが映し出す室内に楽器は見当たらない。『彼女』は慌てて唇に手を当てる。
「あ、ごめんなさい! もしかすると打ち合わせ中で作曲は未だですの?」
「僕はパソコンで作曲するんです。楽曲をサイトで発表したり、効果音も趣味レベルで配信中なんですよ」
 さりげなく宣伝して微笑むSyana。
「今回の入場曲は選手のイメージや衣装に合わせてみました。曲のイメージが膨らみすぎて纏めるのが大変でしたけどね」
「どんな曲になったのか楽しみにしてますわ★」
 ドアの前まで見送りに出てくれた青年にエールを送り、レディは作曲現場に別れを告げた。刹那、カメラに顔を向け、やや興奮気味に口を開く。
「あら、丁度いいですわ! 選手の方にもレポートしてみましょう♪」
 人差し指を見せて軽くウィンクすると、レディは通路を駆け出した。

●再び会議室
「これが今回の対戦カードじゃ」
 鎮痛な面持ちで征國は資料を一同に配った。スモーキー巻の彼をテーマとした三味線のBGMも何処か哀愁が漂う。そして映し出される変更の赤字が目立つ資料。BGMは慌ただしい雰囲気をイメージした賑やかな旋律を奏で、時計の針の音を表現した早いテンポのドラムで『時間に追われる』様相を刻んでゆく。途中で度々シンバルが鳴り響き、その度に楽器が増えて曲が一層賑やかになるのは、『変更がある度どんどん混乱の度を深めていく』象徴だろうか。
「トーナメントだと、早々と相対強者と当った人が抜けるのが痛い。4人リーグ×2という提案を行いたいと思うのじゃ」
 つまり総当たり戦である。しかしリスクは無い訳ではない。シリーズが長期に跨り、選手のスケジュールも縛る事となるだろう。だが、2007年から新規に開催する新たな試みとしては悪くない。
『新たな局面を迎えようとするヴァルキリークリエイト』
 達成感をイメージさせる緩やかで堂々としたイメージの旋律が流れると、会議室はズームアウトしてゆき、暗転と共に花道を映し出す。
『女神達の華やかな戦いの場‥‥それが、ヴァルキリーインパクト。今宵、どのようなドラマが待っているのか!』
「Opening」
「Winter Tune」
「The Chosen Ones」
「Ticking Away」
「Finally‥‥And The Battle Starts」
 作曲:スモーキー巻
 スタッフロールが流れる中、次第に本編のオープニング曲に移行するような旋律を奏でながら番組は幕を閉じてゆく――――。

 改めて番組を確認した茶髪の青年は腕を組んだ。
「やはり個々のクリエイターBGMは練り込み不足だったかな‥‥」