ヴァルキリーインパクトアジア・オセアニア
| 種類 | シリーズＥＸ |
|---|---|
| 担当 | 切磋巧実 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | やや難 |
| 報酬 | 9.9万円 |
| 参加人数 | 10人 |
| サポート | 1人 |
| 期間 | 11/30〜12/04 |
●本文
●ＴＶＣＭ――これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、新たな局面を迎えた。
最強の戦乙女を決定するトーナメント戦である。今回は第２回最強トーナメント第２戦。
Ａブロック３位決定戦！ 聡明なるバイオリニストに対するは抜群のルックスにＪカップの美少女。戦いの旋律に揺れるのは！？
Ｂブロック３位決定戦！ 危うい魅力のＡＶ少女に対するはマルチタレント。小さな身体を駆使して如何なる戦いを描くのか！？
Ａブロック決勝戦！ ボーイッシュながら魅惑の肢体を舞い躍らせる格闘アイドル女優に対するは得物を狙う鷲の如き俊足のスタントマン。親友同士の戦いとは！？
Ｂブロック決勝戦！ 武術師とフリーシンガー。いずれも負けず劣らずのルックスと魅惑的なスタイルの激突！ 美肉の弾け合う戦いに期待が高まる！！
そして、前哨戦たるエキシビジョンマッチ！ 褐色の肌に溢れるバストはＬカップ！ トーナメントじゃなくてもイイ！ 俺達はキミの艶やかな戦いだけで十分だ！ 再び妖艶なる美女は姿を現わすのか！？ そして魅了される対戦相手は！？ 否、妖艶なる美女をマットに倒すのは誰なのか（グランド戦はありません）！？
さぁ、準備は整った！ ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい！
只今、ヴァルキリーインパクトでは出場者募集中！！
☆尚、番組の対戦カードは予告なく変更される場合があります。
●試合形式
グローブを嵌めての２分２ラウンド制。
２ノックダウンシステム。
投げ、関節技は無し。膝蹴りＯＫ。手足以外での攻撃、及び背後からの攻撃は反則。
勝負はＫＯ・ＴＫＯ・判定で決定。
エンターティンメント性を高くしており、衣装は組み技が無い為自由（但し金属物が付いたものは禁止）。制作サイドである『ヴァルキリークリエイト』と打ち合せて下さい。
●募集区分
・ヴァルキリー（格闘技未経験者参加ＯＫ）
試合を行う選手です（これまで出場していなくても参加ＯＫ）。
【コスチューム】
自由（但し、クリエイトの方と連携していない場合、描写は最小限とさせて頂きます）。
【対戦相手】明記して下さい。
【格闘スタイル】空手とかテコンドーとか。
【自己ＰＲ】インタビューや対戦前のスクリーン等で表現される予定です。
【試合の組み立て】どのように試合を組み立てるのか明記。
１Ｒ：（前半）（中盤）（後半）
２Ｒ：（前半）（中盤）（後半）
【得意技（コンビネーション等）】
得意技は有利に展開した選手がフィニッシュで発動できます。
サポート参加があれば、特訓したとして、対戦者と同じレベルだった場合、有利に展開できるかもしれません。体力／格闘／軽業 から１つ選択して下さい。
・実況
状況を視聴者に伝える方です。選手のキャッチコピー等明記。
殆ど実況で状況が伝えられます。自分の個性を出せるよう台詞を決めておくのも一興です（実況がいなければ地の文章で表現されます）。
・控え室リポーター
選手の控え室をリポートする人です。普通は遠くから様子を窺うのみですが、勇気があれば突撃して見ましょう（笑）。どんな事を訊ねるのか事前に打ち合わせましょう。
・解説者
格闘技を生業としている方で、試合の状況に解説を入れる方です。
ヴァルキリーインパクトは素人も参加可能な格闘技ですので、無名でなければ担当できます。
・セコンド
選手につくセコンドです。出番は少ないですが、セコンドがいると対戦中にアドバイスを受けて有利に展開できるかもしれません。体力／格闘／軽業 から１つ選択して下さい。
尚、紗亜弥やリザーバーを入れても特殊効果（？）は発動しません。
・紗亜弥トレーナー（サポート参加）
エキシビジョンマッチで紗亜弥が指名された場合、トレーナーとして１日を使い特訓する事が可能です。
尚、彼女のレベルはサポート参加者の数で変化します。体力／格闘／軽業 から１つ選択して下さい。
●リザーバーＮＰＣ：枠が合わない、エキシビジョン希望などに指名できます。
＊紗亜弥（演歌歌手）
闘う演歌歌手。事務所に騙され嫌々出場したり合宿を経て、成長を見せたか！？ 最近デビュー１周年を迎えた。番組で秋の味覚を食べ過ぎて体重を気にしているらしい。
＊フォビトン・フルート（女優）
ＳｔｅｅｌＧｒａｖｅのＴＶ版アルマイトの旗宣伝に来日か！？ セミロングヘアの眼鏡美少女。
＊法衣 麻奈華（学生）
やる気はあるがチャンスに恵まれない未知数の格闘大好き娘。 誕生日がクリスマスイブでなかなか複雑な人生を送って来たらしい。前回リザーバーとして初参加、エキシビジョンマッチで奮戦するも敗戦。緊張していたのか、様々なハプニングで会場を別の意味で沸かせたようだ。
●リプレイ本文
●第２回ヴァルキリー最強決定トーナメント第二回戦花道に捉えたのは、クリエイターが描いた北欧神話の女神『ヴァール』。ゆっくりとズームアウトする中、冬のイメージを醸し出す北欧風の雪世界の中にヴァールが映っていた。更にカメラが引けば綿で作られた雪景色が花道に白銀世界が広がってゆく。
今回の大会テーマは冬。雪やクリスマスというモチーフで形作られていた。
この雪上に彩られるが如しリングこそ、ヴァルキリー達が戦うコロシアムなのだ。
●エキシビジョンマッチ１
＜只今よりエキシビジョンマッチを開催します！ 選手入場！！＞
ギターとベースの旋律が流れる中、ベルの音が奏でられてゆく。Ｊ−ＰＯＰを連想させるメロディにスポットライトを浴びたのは、叢雲 颯雪（fa4554）。魅惑的な肢体を、氷の如き青いイメージの雪模様を脇の辺りに混ぜたタンクトップと、ジーンズタイプのショートパンツに包んでおり、動き易さを重視した衣装だ。
『雪の化身に身を変えて、新たに疾き戦乙女が舞い降りる』
キャッチフレーズが響き渡ると共に紙吹雪が舞い、上部モニターに明朗快活そうな愛らしい風貌がはにかむ姿を映し出す。
「えっと‥‥あの、頑張りますので、どうか宜しく御願いします！ 紅白の時はムリだったけど、今回なら大丈夫なんじゃないかな。楽しみにしてよっと♪ そう言えば姉（ねえ）が来れなくてゴメンって言ってたよ。何でも、先の『NiA』の会場を見て来るとか。あんな事になったのに物好きだよね」
朗らかに微笑む颯雪。どうやらトーナメント出場予定選手と深い間柄らしい。それにしても紅白の時とは何を指し示すのか？ その答えは続いてスポットライトに照らされた少女の姿で知る事となる。
『音の道と拳の道、共に厳しい花道をただひたすらに進むのみ』
対戦相手はリザーバーの紗亜弥。花道をはにかみながら歩く様を、颯雪はウキウキと恋人を待ち侘びるように円らな青い瞳で見つめていた。
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
ゴングと共にストレートロングヘアを靡かせて、一気に間合いを詰めたのは颯雪だ。紗亜弥がビクッと戸惑う中、グローブが立て続けに唸る。開始早々のラッシュに客席が沸く。対する少女はガードも避けも間に合わず、ダメージを重ねた。
――私が頼れるのは速さだけ。他の人みたいなセンスなんて無いし、そもそも私は銃使いだからね。
中盤に差し掛かると少女はバックステップで間合いを開いた。豊かな胸元と肩が隆起する中、呼吸を整えてゆく。しかし、相手は演歌歌手といえどトレーニングも試合の経験も少なからずある。
――今なら□ボタンと○ボタン連打でッ！
ジャブと廻し蹴りで攻めに転じる紗亜弥。だが、反撃の洗礼は空を切るばかりだ。艶やかな黒髪が舞い踊り、華麗とも思える程に躱してゆく。颯雪の青い瞳は楽しそうだ。
――そうだ‥‥少し考え方を変えて、自分の拳を銃に見立てて戦ってみようかな？
避け中心から攻めと後退を織り交ぜ、ヒット＆アウェイに転じる。相手の突きや蹴りは弾丸、躱した後に空かさず銃口を向ける如き戦法だ。しかし、紗亜弥が簡単に倒れない中、ゴングは鳴り響いた。
（「隙を突く事は出来るみたいだね。スタミナさえ持続すれば‥‥」）
＜Ｒｏｕｎｄ２ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
颯雪はボクシングスタイルを貫く。前半から再びパンチの連打を叩き込み、ペース配分を計算するかの如く、時折回避に専念しながら攻撃に転じた。かなりパンチの洗礼を浴びているものの、紗亜弥は倒れない。見方に寄っては少女のタフさが際立つ。
――まだ戦える！ 当たらないけど、最後まで立つんだ！
互いに予想外の展開だったかもしれない。颯雪のパンチは少女にダメージを与えるものの、ダウンまで運べず、対する紗亜弥はダウンを覚悟しての参戦だったが、大きな衝撃は受けていなかった。
――いくよ！
軽いフットワークでワンツーを繰り出した後、颯雪はピタリと動きを止める。様子を窺うような青い瞳に捉えられ、紗亜弥は導かれる如くジャブを放った。刹那、弾けたのは互いのグローブの洗礼だ。カウンターを狙ったが格闘センスが伴わず互いにダメージを負った。両者がよろけるものの、大きな痛手とはならなかったらしい。少女が不敵に微笑む。
――やっぱり無理だったか‥‥。
ここでゴング。判定の結果、颯雪が勝利を納めた。拍手が響き渡る中、互いに健闘を称え合う。
「もし良ければ、私の友達になって貰えるかな？ 何と無くだけど、貴女となら上手くやれそうな気がするから」
「え？ はい！ ふつつかものですがよろしくお願いします！」
「うん♪ ふと思ったんだけど、姉（ねえ）と戦ってみたいと思う？ ほら、いつもセコンドで見てるから、如何なのかなって」
「えぇっ！？ 無理ですよ。言ってる事も全然わかんないし、あたしにはボスキャラですよぉ」
「ふーん、伝えておくよ。姉を強いモンスターって紗亜弥さんが言ってたって☆」
困惑の色を浮かべて素っ頓狂な声をあげる中、愉快そうに颯雪は踵を返して声援に応えてゆく。控え室に戻ったら訂正して貰わねばなるまいと、少女は胸元で拳を固めた。
●エキシビジョンマッチ２
ジャズを連想させる軽快なピアノを伴奏に、クリスマスらしいベルや鈴の音色を思う存分鳴らして明るい旋律が奏でられてゆく。スポットライトに照らされたのは、尻尾、手首、足首に茶毛玉をつけ、濃淡の模様を施した焦茶のレスリングスーツにガッシリとした褐色の肢体を包むティタネス（fa3251）だ。付け角オプションがトナカイをモチーフにしたものとイメージさせる。それにしても、なんと力強いトナカイだろうか。上部モニターで茶のセミロングヘア娘が温厚そうな眼差しを向ける。
「トーナメントには参加できなかったけど、こんな形で参加できて嬉しいよ。今回も精一杯頑張るんで、みんな応援よろしく！」
続いてスポットライトを浴びたのはリザーバーのフォビトン・フルート。映画とＴＶドラマの宣伝を兼ねての来日である。
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
――相手の力量はわからないし、最初は様子見かな。相手は女優だし、顔には当てないようにしないとな。
ゴングと共にティタネスはガードを固めた。その隙に見栄え良く蹴りやパンチを叩き込むフォー。ここはセンス以前に演技力で格闘家になりきっているようだ。しかし、大きな壁で練習しているかの如く、褐色の娘は微動だにしない。
――ちょっとなに？ 当ててるのに弾き返されるって？ あ、動い‥‥！
ティタネスが突風の如きジャブを懐に叩き込み、ローを放った刹那、少女はマットに崩れた。
＜ダウン！＞
どよめきが客席から流れる中、白い脚は既に赤く腫れている。拍子抜けしたのはティタネスだ。
――えぇっ？ 少し攻めただけなのに‥‥。
天然ボケの彼女はバカ力の上に力加減が下手な自分をしっかり忘れていた。しかし、力の差は明白。ここで試合を長引かせるのも相手に失礼だ。まさかアメリカドラマ界から敵視される事も無いだろう。
――紗亜弥とやった時みたいに、この辺りで一気に攻めに出て、決めに行かせてもらうよ。
相手は既に戦意を消失しているかのようだ。それでも女優魂で手数は増やす。だが――――。
ガタイの割りに素早くティタネスは踏み込むと、渾身のボディーブローを叩き込んだ。手加減したつもりでさえダウンを奪った渾身の洗礼は、文字通り少女を宙に浮かせ、引き抜くグローブと共にフォーは意識を失いマットに沈んだのである。
２ノックダウンでティタネスは無傷で勝利した。
●Ａブロック３位決定戦
いよいよステージはトーナメント本戦へと駒を進める。
ベルの音色が長めに響き渡る中、速いリズムのドラムとエフェクトをかけたエレキギターの旋律が奏でるは、クリスマスの定番ソングのメタルアレンジバージョンだ。神聖なる雰囲気にスポットライトを照らされるＭＡＫＯＴＯ（fa0295）は、白基調のレオタードに魅惑的な肢体を包み、シスター風に上半身を紺色の布地が纏っており、アクセントに十字架のデザインが施されていた。花道を歩く度にゆさりゆさりと揺れる胸元は正に聖母の象徴か。共に歩く『トナカイ』が対照的だ。
「デート相手にはすっぽかされたけど、その分余計に気合入れてくよ！」
リングに上がってフードを脱ぐと、照明に艶やかな金髪が優麗に舞い揺れる。照明に晒された風貌は正に美少女。思わず客席の野郎共がデートの言葉に断末魔の如き悲鳴を響かせた。
続いて流れる旋律は、ベルの音色がバックで星空が瞬くように流れるピアノのメロディーだ。それは冬の夜空のイメージのクラッシック曲をアレンジしたもの。スポットライトを浴びるは神楽（fa4956）。魅惑的な肢体を濃紺ワンピース水着に包み、銀糸でオリオン座の刺繍が施されており、星座はベルト部分が括れた腰に来るよう配置されている。冬空より、今氷の乙女が舞い降りた。上部モニターで長めの黒いショートヘアのクールビューティが、起伏に乏しい表情で淡々と語ってゆく。
「これまで稽古してきた技が実戦で役に立つのかを確かめます」
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
――先手を取らせる訳にはいかない！
ゴングと共に両者一斉に間合いを詰めた。身長は互角、女神が微笑むとすれば風の女神か武神か。先手を取ったのはＭＡＫＯＴＯだ。ジャブのワンツーを軸に左右のローキックを薙ぎ放つ。強烈な蹴り技に神楽がグラリと体勢を崩した。普段は見せない表情が僅かに苦悶を彩る。
――クッ！ なら、カウンターを狙うよ！
金髪の美少女は前半同様にローキック狙いで攻めていた。身長や体格が同等の場合、下段の間合いは突きと等しい。刹那、クールビューティのグローブが叩き込まれた。体勢を崩すものの、ダメージは少ない。その証拠に追撃に転じた神楽は前蹴りで弾かれたのだ。体勢を崩した所に金の突風が唸り、鎖骨へグローブが炸裂。度重なるローで脚が踏み留められず、仰向けにマットへ崩れた。
＜ダウン！＞
ＭＡＫＯＴＯのパンチは大きなダメージにならない。だが、脚へ蓄積した痛みは大きかった。戦慄く足で蹴りを放ってもブロンドヘアは沈まず、ゴングが響き渡る。
（「相手はガードしないみたいだね。動きが止まったらと狙ってたけど‥‥」）
――脳裏に浮かぶ金髪の少年との特訓。
『中途半端に手数増やすより個々の精度を高めろ！ 得意分野に持ち込んで勝負しろ！ なにやってんだよバカ姉、容赦無くやるぞ！』
九条・運と各種型稽古やスパーや組み手を集中して行った。あまりの暴言振りに本気で遣り合ったが‥‥。
「手数より精度か‥‥愚弟の癖に言ってくれるよ」
＜Ｒｏｕｎｄ２ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
――ともかく、動きを止めない！
神楽が一気に間合いを詰める中、ＭＡＫＯＴＯは夫婦手（メオトーデ）に構えを変え、ゆっくりと間を詰めて行く。日本伝流兵法本部拳法と呼ばれる最古の空手流派の構えだ。連続して繰り出されるクールビューティの洗礼に、左右の手を連動させ、どちらも自在に攻め手、防ぎ手に切り替えながら攻めを防いで一撃を返す。
――なんだ？ この構えと攻撃は？ 日本拳法だと！？ くッ！
ＭＡＫＯＴＯは狙いを胸から鎖骨周辺に搾り、グローブを叩き込んで注意を上に持ってゆく。対する神楽はカウンターを狙って手を休めなかった。しかし、１Ｒと戦法を変えて来た金髪美少女の攻守に優れた構えは、予期せぬ瞬間を突かれ、肝臓や水月等ボディ狙いで抉り込まれる。蹴り程ではないがＭＡＫＯＴＯのパンチは重い。鈍い衝撃に肢体を彩るオリオン座が捩れた。次の瞬間、全体重を乗せ、全筋力を持って打ち込む正拳突きが炸裂！ 神楽は派手に吹っ飛び、マットに沈んだ。
＜ダウン！＞
何とか立ち上がり再びカウンター狙いで攻撃に出たものの、蓄積したダメージに星の輝きを煌かせて少女は二度目のダウンに崩れた。
●Ｂブロック３位決定戦
ハープの音色がアップテンポにリズムを刻む上に、高音と低音のベルが踊るように舞い奏でられてゆく。スポットライトを浴びるは、因幡 眠兎（fa4300）。白のバトルスーツに身を包み、赤いベストとブーツに柔らかい毛玉の飾りをアクセントにした衣装は紛れも無くクリスマスカラーだ。
『両の拳に勇気を込めて、向かい風を切り開く』
キャッチフレーズと共にモニター内で、緩やかな黒いウェーブロングヘアの小柄で童顔の少女が円らな赤い瞳を真っ直ぐに向ける。
「相手が誰でも油断はしない、全力でいくよ‥‥！」
続いてベルを細かく刻み、妖精が跳ねるように響かせるストリングスのメロディーが流れる。スポットライトを浴びるは、ウェディングドレスの如く衣装を纏う阿野次 のもじ（fa3092）だ。
「僕さボクサー！」
響き渡った声に凍りつく場内。しかし、少女は気にせず、タタタタタンッと花道を駆けると、ブーケとドレスを脱ぎ放った。浮かび上がるはフリルの飾る、愛らしい衣装に細身を包む姿だ。長い黒髪を靡かせて軽く舞う様は正に雪の妖精。
『一歩前へ踏み出す勇気！ ピンチ上等チャンス到来☆』
上部モニターに映し出された黒い長髪の可憐な少女がＶサインのポーズで陽気に振舞う。
「ありったけの全てをぶつける。だから皆見て皆持て勇気！」
のもじは何時でもハイテンションだ。流石の眠兎も圧倒されそうである。
「何よ、あの娘‥‥私より小さいじゃない。それにボクサーって言ったよね」
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
アップライトに構えて様子を窺う眠兎。対するのもじはピーカブースタイルから突貫！ そう、この試合はボクシングスタイルでの戦いだ。スピードは雪の妖精が一枚上手だが――――。
――いけッ！ Ｄｅｍｐｓｅｙ Ｒｏｌｌ！！
左右に黒髪を舞い躍らせて肉迫するのもじ。しかし、眠兎は円らな赤い瞳を細めて微笑んだ。次いで薙ぎ放たれたのはローキック。ジンっと沁みる鈍い衝撃に尚も間合いに飛び込もうと挑む妖精は、前のめりに体勢を崩してマットに倒れた。
＜ダウン！＞
確かにのもじはウェイトが軽い。しかし、格闘センスが伴っていなかった。
（「私の必殺ジョルトアッパーを未然に防ぐなんて、流石は私のライバル！ けど、負けるとしても自分の全てを出し切って負ける！ それが阿野次のもじ☆ 」）
白い脚を戦慄かせながら立ち上がってファイティングポーズ。
（「ふーん、立ち上がったんだね。でもね、高度な技の真似事なんて私には通じないんだよ」）
尚も身体を真直ぐに構えるスタイルで徐々に間合いを詰めてゆく眠兎。傷ついた妖精は体勢を整えるべくバックステップで間合いを開けてゆく。ここはウェイトの勝利か。緩く流れるウェーブロングヘアを左右に揺らして接近するものの、間合いはなかなか縮まらない。
――技術で劣り、体格で劣りリーチもない。小柄な眠兎さんよりなお小さい自分にできること！
のもじがタンッとマットを蹴って飛び込んでゆく。
――それは強打の中に踏む込み、彼女より低く深く沈んでの超接近戦を挑むこと！
妖精の円らな青い瞳に眠兎が映り込む。
――避けられるなら躱してみせてよね！
放たれる牽制のジャブに、のもじが揺れる。空かさずレバーブローを叩き込み、線の如く細い腰が悶える中、アッパーから左右のフックを薙ぎ振るった。黒髪を靡かせ、妖精が横に吹っ飛ぶ。
――いいものをもらったよ‥‥おやっさん‥‥。
＜ダウン！＞
２ダウンにより、眠兎が勝利を掴んだ。
●Ａブロック決勝戦
大空を飛翔する大鷲をイメージする如き雄大な旋律が響き渡ってゆく。ここまでポリシーを重視すれば選手が誰なのかも自ずと想像できるだろう。スポットライトに照らされたのは、灰と銀で吹雪をイメージしたマントを靡かせ、雪を連想するかのような少し白っぽい色使いの衣装の尾鷲由香（fa1449）だ。腰に鳥の羽をアクセントにした装飾は、大鷲をイメージしたものか。
凛とした風貌の娘が鋭い緑色の瞳を研ぎ澄ます。
「手の内を知っている分やりづらくもあるが全力でやるまでさ！」
『氷雪を吹き飛ばす暴風。風が逆巻き、空の果てを目指す』
次いで轟いたのは雷鳴だ。時折大きなシンバル音が鳴り響き、ベースの低音で雪雲と、スローなドラムがゆっくりと一歩を踏み出すように奏でられてゆく。スポットライトを浴びるは、ブリッツ・アスカ（fa2321）。雷のイメージをメインとし、冬らしさを醸し出す露出控えたバトルスーツに、雪雲の灰基調に霰と稲光の刺繍が施されていた。
モニターの中、ボーイッシュな端整な風貌の娘が意気込みを伝えてゆく。
「まずは、この大舞台で由香さんともう一度戦えることを嬉しく思う。由香さんは俺の大事な親友で‥‥今、一番追いつきたい相手でもある。この壁を乗り越えられるだけの力が、今の俺にあるかはわからないけど。‥‥今日は、１２０％の力で勝ちに行くっ！」
『冬の稲妻は雪の前触れ。響く雷鳴が雪雲を呼び、あの空を閉ざすか』
リングで待つ由香と花道を歩いてゆくアスカの眼差しが交錯する。
『親友対決。雷鳴と暴風、頂点へと至るのはどちらだ！！』
「またこの舞台で戦うことになったな、久し振りの手合せ、良い試合にしようぜ」
「この壁を俺を乗り越えてみせる。アっちゃん☆スペシャルを食らわしてやるよ」
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
――さぁ、やろうぜ、お互いどれだけ腕を上げたかこのステージでぶつけ合おう！
ゴングと共にガードを固めて間合いを詰め、インファイトに持ち込むべく肉迫せんとするアスカ。対する由香は間合いを計ると、半身に転じてサイドキックを叩き込んだ。文字通り吹っ飛ぶ格闘アイドル女優。たわわな膨らみを揺らして仰け反る中、荒鷲が爪を剥く如く一気に間合いを詰めた。振り上げられるアッパーに駄目押しの膝が空を切る。
＜ダウン！＞
しかし、アッパーのダメージは高くないようだ。アスカがファイティングポーズを構えて立ち上がった。
（「序盤から飛び交ってくれるな。膝が入っていたらヤバかったよ」）
（「手の内を分かっているからこそ、勝機に焦ったな。簡単に懐に入らせる訳にはいかねーよ」）
不敵に微笑む由香。相手が得意なのは蹴りの間合い。ならば距離を詰めれば潰せる。理屈は簡単だ。しかし、スピードは鷲に軍配が上がっている事に、アスカは未だ気付いていなかった。否、気付いていたのかもしれない。それでも蹴りのレンジは殺しておかねばならないのだ。
――お互いパンチに関しては攻撃より防御が得意なはず！
再び間合いを潰しに掛かるアスカ。だが、相手を上回るスピードが無ければ揺さ振りは掛けられない。動きを見極めて膝裏を狙った由香のローキックが弧を描いて炸裂！ 一気に体勢を崩した所にグンと振り上げた脚が飛翔すると、荒鷲が爪を研ぎ澄まして急降下！ 獲物と見極めた茶のショートヘアに襲い掛かる。
――踵落としッ！
鈍い衝撃と共に脳裏で☆がスパークした。☆って漫画だけじゃなく本当に見えるんだとアスカは朦朧とする意識の中で感じたかもしれない。霞む視界で鷲は飛び交い、ミドルキックを薙ぎ放ち、次いで間合いを詰めた右ストレートと左アッパーのコンビネーションが炸裂すると、廻し蹴りが突き刺さった。訳が分からないまま、視界が傾き、肢体を打ち付けるマットの衝撃が襲う。
＜ダウン！＞
２ダウンにより、由香が優勝を得た。親友対決という事もあり、馴れ合いが展開するかと予想した観客は暫し呆然としているようだ。やがて拍手と歓声が静寂を打ち破った。うら若き乙女達が涙を流して嗚咽を洩らしているが、恐らくアスカのファンであろう。
試合後はいつも以上にがっちりと握手を交わした。
未だ終わった訳じゃない。二人の友情と闘志は消える事のない炎なのだから‥‥。
●Ｂブロック決勝戦
いよいよ今回の最終戦が始まろうとしている。
流れるような低音をバックに、雪のような戦いとかけ離れた穏やかなイメージでベルの高音が一定のリズムを刻む中、アジ・テネブラ（fa0160）がスポットライトを浴びた。白いワンピースドレスに魅惑的な褐色の肢体を包み、雪結晶のレースが清楚さを醸し出す。
モニターに映し出された端整な風貌の少女が、胸元に垂れる銀の三つ編みをサラリと揺らした。
「今回は確りと応えないといけませんね‥‥格闘者としてね」
『ヴァルキリーの舞台に舞い降りるは、白く儚い雪の精か‥‥それとも、銀嶺の頂に座する、三千世界を凍てつかせる氷界の女王か！？』
続いて、力強い中国琵琶をメインに揚琴を伴奏っぽく、徐々に激しくなる火の粉が弾けるように鈴の音を混ぜながら響き渡ってゆく。スポットライトに照らされるは、白いレオタードに魅惑的な肢体を包み、アジアンクロスで赤い東洋風模様の腰布とケープを纏った竜華（fa1294）だ。
凛々しい顔立ちの娘がウィンクを投げて意気込みを告げる。
「自分の信じた拳で切り開く。懸待一致は中国拳法が本場よ☆」
『女王に対峙すは、白き焔。轟火拳嵐、今その熱で氷雪を溶かさんとす！』
第１回優勝選手が不参加な事から、第２回トーナメントでのアジは女王だ。美女競艶！ 静かな氷か、それとも激情の炎か！
観客の声援に応えていた銀髪ポニーテールの娘が、アジに緑の視線を投げた。
＜Ｒｏｕｎｄ１ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
ゴングと共に間合いを詰め、俊足の牽制ローを放つアジ。刹那、竜華の緑色の瞳が鋭利な輝きを見せる。口元に浮かぶは妖艶かつ不敵な笑み。
――蹴ってる最中は動けないでしょ♪
次の瞬間、鈍い衝撃が両者の間で弾けた。相打ち狙いで叩き込んだロー。互いに強烈なインパクトを浴びた反動故か、三つ編みの銀髪とポニーテールの銀髪が優麗に舞い、端整な風貌が苦悶を浮かべる。
――カウンター‥‥だね。
――身長が高い分は私の方がダメージを与えた筈ッ。だけど‥‥。
両者は体勢を整えるべく間合いを開く。パンチにしろ蹴りにしろ、脚にダメージが残ったまま攻めるのはリスクが大きい。互いに隙を窺うか警戒する如く反時計周りに動きながら睨み合いが続く。
否、アジは迂闊に手を出さぬようにしていたのだ。一方、竜華は体力任せの爆発的な飛び込みの隙を窺っていたが、スピードが伴わなければ分は悪い。形意拳の崩拳は長い物を相手に刺すが如く突き込む動作の技だ。
――どうしたんだよ？ 攻めないのかな？
――得意の牽制ローを放ってきなよ。誘っているのか？
暫しの膠着状態の中、銀髪を靡かせて低い体制から懐に潜り込むアジ。円らな青い瞳に隙を見せた竜華のボディを捉えた。同時に攻撃に転じ、カウンターを狙う。再び両者に衝撃が炸裂する。苦悶の色を浮かべたのは青い瞳の少女だ。緑色の瞳を研ぎ澄まし、追撃のコンビネーションを繰り出そうとした刹那、ゴングが鳴り響いた。
＜セコンドアウト＞
アナウンスが響く中、客席からどよめきが溢れ出す。リングから解き放たれるは白いワンピースドレス。照明を浴びるは、レースやフリルが着飾る白いビキニ姿のアジだ。褐色の谷間が健康的かつ野性的な彩りを放ち、肌を露としたお色直しに野郎共が雄叫びを轟かせる。
「ここからが本領発揮だよ」
僅かに頬を染めながら竜華に言い放った。
「恥ずかしいならやらなきゃいいのに‥‥でも正直、悔しい。こんな隠し技を用意してたなんて。いっそこのレオタードの胸元を力任せに」
「だ、だめだよっ、試合が止められちゃうよ！」
勿論、彼女の冗談だ。動揺するアジをからかってみたのである。
＜Ｒｏｕｎｄ２ ｒｅａｄｙ Ｆｉｇｈｔ！！＞
様子を窺うアジに対して距離を縮めてゆく竜華。牽制が飛び込む気配は無い。静寂の中、そのまま間合いは詰まり、パターンの少ないコンビネーションを叩き込んだ。タイミングを合わせて洗礼を躱してゆく中、回避しながらミドルとローを織り交ぜて蹴りを薙ぎ放つ。スピードに乗った回避からの攻撃にカウンターが合わない。
――もう、カウンターは狙わせないよ！
アジは間合いを疾風の如く詰め、牽制のジャブを叩き込んだ。これには竜華の戦術が裏目に出た。三つ編みの少女は先に撒いたコンビネーションの罠を警戒し、攻めに転じたのである。つまりカウンターを避けて手数で突いてゆく。激しい動きにビキニの膨らみがたわわに揺れ、観客の声援もヒートアップ。
――このッ！ 冬の衣装って決めてたじゃないか！ どうして水着なのさッ！
刹那、繰り出したグローブから標的が消えた。瞬時に懐に飛び込み、脇腹へフックを叩き込む。次の瞬間、アジは僅かに驚愕の色を浮かべた。
――効いていない！？
瞬時に間合いを蹴りに転じ、しなやかな脚を薙ぎ振るう。だが、ハイキックを竜華は狙い待っていた。しかし、スピードはアジが秀でている。カウンターとは相手が攻撃して来ると同時に狙いすましてパンチや蹴りを放ち、大きなダメージを与える事だ。相手の力も利用する事から本来持っている攻撃力以上の力が発揮される。しかし、それは同等のレベルでこそ効果的なのだ。しかもアジはカウンターを完全に警戒していた。
褐色の鞭が洗礼を放ち、竜華が脳を揺らす。緑色の瞳に映る少女は再び姿を消し、次の瞬間、顎へグローブが叩き込まれた。かなり低い大勢からのカエルアッパーだ。
ここでゴング。判定の結果、竜華１ポイント、アジ２ポイントで勝利の女神は褐色の少女に微笑んだ。
「ありがとう！ やっぱり良い試合になったね‥‥！」
アジが健闘を称え合う為に握手を求めると、竜華も応えて固く握手を交わす。
「次があったら負けないわ。いざとなったら特訓するんだから☆」
そう、互角の勝負であった。スピードのアジとパワーの竜華。どちらかが特訓をしていたら戦局は大きく変わった可能性も秘めていたのである。
尤も選手が望めばの話ではあるが‥‥。
●結果
現在の順位は以下の通りである。
・Ａブロック優勝：尾鷲由香
・Ａブロック２位：ブリッツ・アスカ
・Ａブロック３位：ＭＡＫＯＴＯ
・Ａブロック４位：神楽
・Ｂブロック優勝：アジ・テネブラ
・Ｂブロック２位：竜華
・Ｂブロック３位：因幡 眠兎
・Ｂブロック４位：阿野次 のもじ
続いて最強決定戦へと駒を進める。トーナメント最終戦だ。
・尾鷲由香ｖｓアジ・テネブラ
・ブリッツ・アスカｖｓ竜華
・ＭＡＫＯＴＯｖｓ因幡 眠兎
・神楽ｖｓ阿野次 のもじ
果たして荒鷲をアジは止められるのか！？ 戦乙女達の闘いの行方は！？
――メインイベントの準備は整った！！
次回ファイナルバトル：１２２６ＯＫ？
