ベルトレスの旗南北アメリカ

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/05〜12/09

●本文

●Mission03
 ――SGD配備施設。
 人型の巨兵が腰を降ろして眠る中、素っ頓狂な声が響き渡った。
「何だと!? メンテナンスできないとはどういう事だ!?」
「それが‥‥外装が二重にコーティングされており、解体も出来ない材質で‥‥」
 強奪したアルマイト軍の試作機SGDのメンテナンスを施そうとしたが、皮膚のような材質が邪魔をして内部も映し出せないらしい。有り得ない。そんな高度な技術を敵軍が取得しているならベルトレス軍は勝てない。
「不死身の機体か。だが、それが我が軍にもあるという事は大きな戦力だ。数の時代は終わったのかもしれんな」
 同時に技術主任は寂しげな眼差しで人型の兵器を見つめた――――。

 ――ベルトレス軍上層部。
「文字通り、モンスターを敵軍は作ったという事になるな」
「しかし、謎が多過ぎるのは問題でしょう。何とかしなければ‥‥」
「敵の玩具に期待するのもバカバカしいではないですかな。我々開発2課が製造中のSGGが完成すれば」
「SGGとは何だね? 技術少将」
「SteelGraveGenocide。巨大殺戮用SGです。文字通り鉄の棺桶ですよ」
 SGと呼ばれる兵器が有人型なのには理由があった。先の戦争で誤作動が起きたのだ。この事件で両軍共に民間人を含めた大量虐殺が無人兵器により行われ、それ以後、兵器は有人型とする取り決めが行われたのである。
 尤も、それ故にパイロットの手腕が戦局を塗り替え、二つ名までもつ戦士も現れた訳だ。戦争とはセンスの秀でた者にとって、最も社会的貢献と出世が約束された社会と言えるかもしれない。
「SGGねぇ、語呂が悪いな」
 SGGは全長25mの巨大SGとの事である。
 映し出された機体は腕部の欠如したバランスの悪いものだった。強固な装甲に包まれており、全方位武装が配備された殲滅型の機体という。但し、欠点があり、機動性は鈍い。敵のビーム兵器は弾き返せるが、実弾は当たる前に迎撃しなければならないとの事だ。
「その為、反応の良いパイロットが必要となります。敵機体を強奪した‥‥ラサでしたか? 彼をテストパイロットに任命したいのですが‥‥尤も、負担が大きい分、使い捨ても考慮の上で」
 負担が大きいとはサイズが小さければ周囲の感覚も人の運動に近い。巨大な分、僅かな操縦ミスが命取りとなり、神経を研ぎ澄まさなければならない訳だ。鉄の棺桶の部品として――――。
「SGDの謎が解明できなければ考慮しよう」
『ヘッドハンターから連絡が届きました。アルマイトSGD開発責任者との交渉成功』
 テーブルを囲む男達は様々な表情を浮かべた――――。

●どちらか相談で作戦を決めて下さい。
【SGD奪還阻止・デンバー基地を守れ!】
 デンバー基地がアルマイト軍に発見された。恐らくSGD奪還も予想されるであろう。部隊は敵の潜入と攻撃に備えて防衛の任に当たって欲しい。
<シナリオの流れ>
01:それぞれSG、強奪したSGD、生身に分担して警戒。
2A:森林地帯、基地周辺、基地内部で敵と交戦して見せ場を演出。
2B:敵の作戦を食い止められず防衛失敗の演出。

【アカギ博士を保護せよ!】
 SGDには謎の部分が多く、製造過程すら確認できない事が判明した。部隊はベルトレスへ亡命を希望しているSGD開発責任者のアカギ博士を保護するのが任務である。博士の車は市街地から海岸へ向けて移動中との事だ。
<シナリオの流れ>
01:アカギ博士の乗る車を発見。接触を試みるとアルマイトのSGが阻止すべく戦闘開始。
2A:敵SGと戦闘を行い、撃破の見せ場を演出。
2B:敵SGやSGDの攻撃により、保護失敗、撤退時の演出。

☆どちらのシナリオもAB両方を演出して下さい。

●キャスト募集
 ベルトレスの旗では、大型SG輸送機部隊員を募集します。
【大型SG輸送機部】名称未定=相談で決めて下さい。
・配役:階級明記。
・役名:登場人物の名前です(本名で出演してもOK)。
・設定:どんなタイプのキャラクターを演じるか明記(設定なければ口調はアクター)。
・得意:操縦・索敵・攻撃・回避・防御・援護から選択。
・内部:単座or複座。
・機体:搭乗するSGの名称/タイプ選択/カラー。
・外観:SGの外観特徴です。
・特性:SGの性能的な特徴を1つだけ(例えば飛行可能とか追加武装など)。
・<シナリオの流れ>に合わせて演技及び台詞など。

☆SGガーメントの主な仕様は以下の通り。
 ベルトレス軍SG『ガーメント』の発展型。直角的なシルエットを模る鋼鉄の機体は、用途に合わせてフォルムがそれぞれ異なっており、衣服を意味する名称から、基本ベースに装甲を『着る』事で、様々な局面に対処できるよう設計されている。
・搭乗型である。
・単座or複座。
・機体タイプ。
【索敵重視】ノーマルより性能は高い広域レーダー装備型。武装無。
【ノーマル】平均的な性能。肩:ミサイルポッドorビームキャノン砲or腕:ガトリングガン。
【装甲重視】機動性は劣るが装甲は厚い。肩:小型ミサイルポッド 腕:ビームガン。
【装甲排除】機動性は高いが装甲は無い。腕:ビームガン・スピア。

●強奪されたSGDキャストを募集します。
【SGD】(複数OK)
 生身にメカニックな装甲と武装を装備して人型兵器を演じて頂きます(半獣化OK/獣化NG)。
 外見はアクターのものとなります。
・機体名称:SGDの名前です(本名で出演してもOK)。
・搭乗人数:単座か複座(2名まで)か決めて下さい。搭乗者(NPC含む)も明記。
・搭乗場所:コックピットの場所が身体の何処か明記(CG合成されるので安心して下さい)。
・武装設定:スタイルに合わせて、どんな武装か設定して下さい(或る程度何でもOK)。
・機体外観:外観特徴です(どんな服状の装甲か、身体の何処に装甲があるか等)。
・機体設定:性能的な特徴を1つだけ(例えば飛行可能とか)。
・<シナリオの流れ>に合わせて演技及び台詞など。

*文字数の都合上、SGDは『アルマイトの旗』をご確認ください。お手数お掛けします。

●NPC
 ラサ少尉(男)20代後半。
 やや少年ぽさが抜けない青年士官。階級は大尉だったが、敵新型SG強奪失敗と部隊員戦死者が出た事で少尉に降格。前線から遠いグランドキャニオン近辺を大型移動基地で偵察任務に転属。
 結構無鉄砲。恋愛に関してはかなり鈍感である。
 ラサ少尉の癖、愛用の情報端末にリルケの詩集を入力しており、スタンバイ時に聞いている(第2回追加)。
 彼の追加設定して頂けると採用される場合があります。

●サポート参加
 大道具、小道具の設定及びSG(SGD)デザイン補足など。所謂裏方を担当して頂きます。

●今回の参加者

 fa0043 皇・皇(21歳・♂・一角獣)
 fa0558 クールマ・如月(20歳・♀・亀)
 fa2712 茜屋朱鷺人(29歳・♂・小鳥)
 fa2724 (21歳・♀・狸)
 fa2832 ウォンサマー淳平(15歳・♂・猫)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa3308 ヴァールハイト・S(27歳・♂・竜)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●a flag the beltres――Mission03
『アカギ博士ですね? ベルトレス軍です。指令を受けて保護に来ました。このまま海岸まで走って下さい』
 車のラジオからノイズ交じりに流れたのはリョウ・テンガ准尉(皇・皇(fa0043))の声だ。アカギはルームミラーで後方を覗う。捉えたのはオートバイ。博士は不敵な笑みで唇を歪ませた。
 車は何事も無く海岸まで辿り着く。見渡せば幾つかの倉庫が暗闇に浮かび上がる。アカギは停車すると次の指示を待った。すると鈍い機動音と共にベルトレス軍SGが姿を見せる。緑色の機体はゴテゴテと分厚い装甲が無骨なフォルムを浮かび上がらせており、見るからに鈍そうだ。
『マリィ曹長、AHを向けてくれ』
「了解です准尉。まあ、信用していないは気持ちは分かりますけどねぇ」
 マリィ・エン=グランツ曹長(クールマ・如月(fa0558))の駆る『鈍亀(ドンガメ)』がゆっくりと背中を向ける。アカギの視界に飛び込んだのは大きな赤い眼球だ。リョウの依存型SG『アナザーヘッド』が車体を舐めるように赤いレーザーを放ってゆく。
『御心配なく。爆発物や発信機の類が無いか走査させて頂きます』
 ――爆発物だと?
 その時だ。上空から眩い閃光が迸り、鈍亀に曲がりくねった刃の短剣が浴びせられた。視界に飛び込んだのは黒いマントの如き外装を展開させたアルマイト軍SGDだ。
「空から降って来るなんてアリぃ!?」
 強襲にコクピットが激しく揺れる中、マリィはトリガーを絞りビームガンを放つが、一気に後退する少年の如き機体は洗礼を弾き飛ばした。尚もロックオンした標的にミサイルの白煙を棚引かせるが、命中するもののダメージは見られない。現実を目の当たりにリョウは唇を噛んだ。
「アカギ博士、車から降りて俺のバイ‥‥ッと!?」
 青年はバイザーに映る機体に眼鏡の奥に浮かぶ青い瞳を見開く。頭上に飛び込んで来たのは、端整な風貌の巨人だ。全身を漆黒のアーマーに包み、頭部はヘルムとゴーグルでガッチリと守られた姿はブラックドラゴンと呼ぶに相応しい。叩き込もうとする鋼鉄の腕部が展開し、放電するリングを曝け出すと、機械に詳しいリョウは慌ててスロットルを回す。
「冗談じゃない! 人間相手に使うもんじゃないだろ! うああぁぁッ!」
 辛くも致命傷は凌いだものの、青年は単車と共に宙を舞い、冷たい暗黒の大海へ飛沫をあげた。呆気に取られたような響きで褐色の娘が声をあげる。
「あら〜、派手に飛んだ事〜。こちらマリィ、作戦は失敗しました」
『了解した。各機、全力でアカギ博士を保護せよ! 私はアカギ博士周辺の敵を仕留める!』
 サクラ・ミクラ中将(銀城さらら(fa4548))の指示が通信機から飛び込む中、SGによる強行作戦が展開されてゆく。
「ポエニクス了解‥‥SGDか、剣呑なシロモノだな。ダモクレスの剣にならなければいいが‥‥」
「イシル了解しました! 偉大な博士をお迎えに上がりましょうか」
「J・Mラジャー。クールにやらせて貰うぜ」
「ヴァールハイト了解。へっ、敵さんのおでましか、派手に歓迎してやるぜ。喰らいな!」
 精悍な男が瞳に捉えたのは輸送車両から姿を見せる1機のSGDだ。不敵な笑みと共にトリガーを絞ると、予め仕掛けて置いたミサイルポッドが遠隔操作で白煙を棚引かせて襲い掛かった。深い青色の全身鎧を纏った、重量感溢れる巨人が爆炎に包まれるが、その姿はダメージを見せない。ヴァールハイト・シュテルン少尉(ヴァールハイト・S(fa3308))は両肩にゴツイ衝角(ラム)状の追加装甲を施した迷彩色のSG『バイソン』のコクピットで感嘆の口笛を鳴らす。
「歓迎が足りないってか? 邪魔すると怪我するぜ!」
 援護に駆ける巨人に肩を突き出しながら飛び込むバイソン。刹那、シートに強烈な衝撃が襲う。ゆっくりと視界に浮かび上がるは、セクシーな女性型フォルムのSGDだ。輸送車両から出撃したのは2機。『彼女』は光学迷彩を展開させていたのである。切っ先が閃光を放ち、SGへ洗礼を振るう刹那、銃声が巨大な少女に火花を散らせた。大型の狙撃ライフルを装備したポエニクス伍長(茜屋朱鷺人(fa2712))の駆る迷彩色のSG『モノケロス』だ。
「お人形さんたちのパーティはお預けだな。遠距離から地道に潰させてもらう」
 強力な一撃によろめくセクシーガール。しかし、容易に装甲を貫かせない。その隙にガッシリとした青い装甲の巨人は車両へ駆け出した。
「可愛げのないお人形さんたちだぜ。モンスターの間違いだろ」
 どうやら敵機は4機のSGDのみ。だが、先の基地襲撃時同様、SGはSGDの敵ではない。それ故にアカギ博士の保護は最優先である。
「フランケンシュタインがビクター恋しさに参上って事か? カートゥーンにもならないぜ」
 脚部のホバリングを活かして側面や背面に回りこんで滑るように戦場を『バッファロー』が駆ける。J・M伍長(ジョニー・マッスルマン(fa3014))の駆る、単眼で左右対称のシンメトリカルなフォルムのSGがミサイルやビームを撃ち捲くるものの、致命傷を浴びせられない。これでは接近して格闘戦に持ち込んでも効果は期待できないと、クールに判断していた。
「くそッ、ガトリングガンじゃ歯が立たないのか!」
 上空ではイシル・プラネス曹長(ウォンサマー淳平(fa2832))の駆る小型飛行ユニットを装着した白銀のスレンダーなSG『スマートボール』が博士を保護しようと接近を試みるが、なかなか降下を許さない。少年の黒い瞳が眼下のSGDを羨望の眼差しで捉える。
「いいな‥‥あれ」
 女神を模した外観で、手・足・胸部・頭部に飾り鎧を装備しており、女性型の敵機よりも魅惑的なフォルムを放つSGD『ミナル(結(fa2724))』。戦闘中の動き一つ一つでさえ優麗で美しい。
 イシルは奪取したSGDの趣味な外観に惚れ込んでいた。特にミナルには「自分が乗りたかった」とか「量産化されれば自分も」とか想いを巡らしている。アイドルの隠れファンである彼らしい。
 刹那、視界に飛び込んで来たのは黒竜の装甲を纏いし巨大な少年だ。操縦技術を駆使してスマートボールを捉えた鉄拳が叩き込まれる。
「速いッ、ここでやられたらラサ少尉が‥‥うわあぁぁッ!!」
 白銀の破片を散らせて爆炎に染まる機体は落下した。
<アカギ博士の保護が最優先です。戦闘により距離が離れています>
 陽気で元気そうなAI『RURI』の声がコクピットに響き渡っていた。少女のような声が知らせる度にサクラの美貌は戦慄く。
「煩い! 貴方は黙って私の命令を遂行すればいいのよ、鉄人形」
<鉄人形に変わりないですけど、任務は任務です。味方の機体がダメージ増大中です。鉄人形ならアレの方が相応しいです。その内に弾薬もエネルギーも切れてしまうでしょう>
「煩いと言っている! 敵の識別信号を流し、相手を撹乱、隙を突くって言ったのは誰よ!」
<‥‥試作機ですから☆ 怪しまれたとしても不思議ではありません。私は提案しただけで>
「言い訳か!? とにかく黙って! なんでコッチはビームガンで敵はレール砲の尻尾があるんだ! しかも飛行可能だと!?」
<‥‥試作機ですから☆ でも幸いなのは機体の数と性能です>
 RURIは臆する事なく分析データを羅列した。
「武装が弱いだと? なぜそれを教えない! 各個撃破は鉄則だろうに!」
<ですから‥‥>
 黙れ! の一言で一喝。サクラはビームガンの銃口に装甲が貧弱な少年型の機体を捉える。
<当ててみせる!>
 ミナルにより放たれた閃光に敵機は焼かれ、黒煙を舞い上げた。腹部の拡散ビーム砲がフラッシュを放つ所を見ると、大破には至っていないらしい。
<センサーを妨害されました☆>
「役立たず‥‥」
 戦況はアルマイト軍の優勢に展開していた。
 SGでの攻撃は殆どダメージにならない装甲。そして尋常ではない兵器の数々。ベルトレス軍とて精鋭が揃っているだけにゼファークラスのSG相手なら容易に作戦を遂行できただろう。
 だが、アカギ博士は車の中で焦っていた。
 ――むぅ、馬鹿者が‥‥此のままではお前らも死ぬぞ!
 真昼の如き閃光が膨れ上がった。次に一面を爆炎が包み込み、強烈な衝撃が大地と空気を揺らす中、周囲の建物が紙屑の如く吹き飛んでゆく。アカギ博士は体内に戦術核兵器を仕込んでおり、自爆したのだ。幸いなのは体内に埋め込める程度の威力であり、被害は小さい事かもしれない。
 ベルトレス軍SGの大破は免れないものの、戦死者はいなかったと予想される。そして回収に来たシュバルツシルトは見た。
「これがSGDなのか?」
 傍で護衛していた機体は最もダメージが大きく、腕や脚部が吹き飛んだSGDも確認できた。そして、強固な装甲にコーティングされた外装から覗く白いモノは骨だろうか? 内部の赤黒いモノと滴る赤い液体は焼け爛れた故に浮かばせる幻影か。
『こちらラサ。サクラ中将、帰還して下さい。イシル、どこだ? 応答しろ! イシル曹長!』
「‥‥こちらイシル‥‥帰還、します。やっぱ女神はお前しか、居ない、よ」
 血塗れの指が捉えたのは、コクピットで微笑むグラビア。少年はSOS信号を発して瞳を閉じる。
 たった一人の狂気が全てを崩壊させた。両軍共にダメージは大きく、SGDの謎は解明される事なく終演を迎えた。否、これは新たな戦局への幕開けだったのかもしれない。