CalendarGirlアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/11〜12/15

●本文

●来年へ向けて
「えぇっ!? あたしのカレンダーですかぁ!?」
 紗亜弥は素っ頓狂な声を響かせた。予想通りの反応に所長はニヤリと微笑む。
「時期的には遅いがな。紗亜弥のカレンダーを制作販売する事が決まった」
 アイドル歌手なら兎も角、少女は予想もしていなかった仕事に戸惑い気味だ。
 しかし、実際に演歌歌手もカレンダーを出している。
 例えば、中高年のおば様から人気の、宇宙から怪獣退治にやって来る映画の主題歌も歌った青年演歌歌手のカレンダー人気ランキングは10位内に入っているそうだ。
 尤も、彼の場合は人気も格も段違い。ただ、カレンダーは宣伝にも繋がるし、ルックスとプロポーションが良い少女なら新たなファンを獲得できる可能性も秘めているのだ。
「‥‥あたしのカレンダーですか」
 何だか恥ずかしくなったのか、頬を染めて俯く少女。不安も脳裏に過ぎる。
 ――売れなかったらどうしよう‥‥。
 紗亜弥は未だ学生だ。店先で自分の撮られたカレンダーを見掛けたり、売れ残れば他の生徒に見られる場合もあるだろう。心無い言葉を浴びせられる可能性もある。
 この企画はメリットも多いがリスクも伴っているのだ。
 言葉に詰まる少女へクリスティが声を掛ける。
「やりたくなかったらいいのよ? でもメリットはあるわ。このままの仕事量で満足するか、仕事の幅を広げるかはアナタ次第よ」
 ――あたし、次第‥‥。
「わかりました、ふつつかものですがよろしくおねがいします!」
 少女はペコリと頭を下げた。

●カレンダー撮影スタッフ募集
 紗亜弥のカレンダーは『表紙』『1、2月』『3、4』『5、6』『7、8』『9、10』『11、12』の7枚構成となります。
 それぞれ、カメラマン、衣装、メイク、マネージメント、その他雑用を募集します。

・カメラマン(複数OK)
 紗亜弥に指示してカレンダー用の写真を撮るのが仕事です。巧く乗せて良い写真を撮りましょう。
 複数で受け持つ場合は7枚から選択しておいて下さい。

・衣装(複数OK)
 紗亜弥のカレンダー撮影用衣装デザイン制作が仕事です。
 複数で受け持つ場合は7枚から選択しておいて下さい。

・メイク(複数OK)
 紗亜弥のカレンダー撮影時のメイクが仕事です。
 複数で受け持つ場合は7枚から選択しておいて下さい。

・マネージメント(複数OK)
 カレンダー用の舞台(アジア圏内に限ります)を決めてスタッフを的確に目的地へ移動させるのが主な仕事です。
 スタッフの撮りたいイメージに合わせて場所を確定させましょう。

・雑用(複数OK)
 主に紗亜弥の身の回りの世話、スタッフの手伝い等が仕事となります。

・その他:相談により必要となる場合に割り振って下さい。
 例えば季節に拘るなら撮影は背景をCGとの合成やセットを使用するなら、担当が必要となるでしょう。

●今回の参加者

 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa2177 縞八重子(27歳・♀・アライグマ)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa3161 藤田 武(28歳・♂・アライグマ)
 fa4479 榊 太一郎(25歳・♂・狼)
 fa5220 御徒圭哉(17歳・♂・狐)

●リプレイ本文

●撮影の為に集まって頂いた方々は
「カメラマンとして撮影の一部を担当する」
「雑用でもなんでもいいから、僕の出来る仕事をしていくよ。いい加減な仕事はしないようにがんばろうっと♪」
「僕としても、一年以上一緒にやってきてやり甲斐感じてますもん。どーせ独り身ですからクリスマス含めて年明けまで強行軍でもドンとこい、ってそれじゃカレンダーの意味ないですが」
「カレンダーね‥‥。いい場所を色々と候補地として出してみなくちゃね」
 榊 太一郎(fa4479)さん、藤田 武(fa3161)さん、高野正人(fa0851)さん、縞八重子(fa2177)さんが来てくれました。中松百合子(fa2361)さんがバスケットを持ち上げて微笑みます。
「素敵なカレンダーになるようにしなきゃね。差し入れはカスタードプリンよ。紗亜弥ちゃん、期末テスト頑張ってね」
「えー、期末テストってどんなお菓子でしたっけ〜」
 ‥‥忘れたいです。あ、初めましての方ですね。
「弟がよろしくと言っていました。彼のようにはいきませんが、今回は微力ながらお手伝いさせて頂きます」
 渉外担当的な役回りの巻 長治(fa2021)さんが手を差し伸べました。弟さん? 巻さんって!?
「ふつつかものですがよろしくお願いします!」
「ファンの皆様が納得いくようなモノが作れるように頑張りますよ?」
 彼はカメラマンの有珠・円(fa0388)さん。色黒でバスケとかしそうな感じの方です。
「今回は紗亜弥さんのお世話の仕事をやらせて頂きます。専門的な事は何もできませんが、紗亜弥さんに関わる事、衣装やメイクなどの雑用をしたいと思っています。ギターも弾けるので、疲れた時には言って下さい。色々と努力します。雑用係みたいなものですので、好きに使っちゃって下さい」
 長い髪を首の後ろで縛っているのが印象的な御徒圭哉(fa5220)くんです。いえ、好きに使っちゃってなんて‥‥真面目な男の子なのかな?
「えっと、ギターお願いするかもしれません。ふつつかものだけどヨロシクね☆」
 あ、年齢が近いと何か楽かも。そんな中、八重子さんが口を開きます。
「さて、良いかしら? 色々と調査と検証をしたんだけど、殆どスタジオ撮りでCG合成になりそうだわ。遠距離の移動は紗亜弥ちゃんも疲れるでしょうし‥‥ね。あたしは必要な道具とか揃えてみるわ。上手く撮影が出来るといいわね」
 苦笑してます。長治さんと八重子さんの仕事は難しそうでよく分かりませんが大変そうです。

●撮影ですっ
「表紙は最新曲『ラフランス』の衣装でいこうか」
 円さんの声が聞こえる中、あたしは百合子さんにメイクをして貰っていました。京紫地に菊と薄紅色の小花を散らした着物を着て、髪をシニヨンに纏めてます。慣れた手つきが気持ち良いです☆
「あの、これお願いします」
 あたしが花型のコサージュを見せると、切れ長の瞳が和らぎ、微笑んだ気がしました。
「あら☆ いいわよ」
 これで準備完了です! いざ冒険の旅へ!
「‥‥はいリラックスリラックス♪ 顔作らなくていいぞ。はいチーズ☆」
 きっと緊張してラスボスに挑むような感じだったと思います。円さんの向けるカメラのレンズが機械仕掛けのモンスターに見えて――――。
「ひゃっ!」
 その時でした。レンズから何かが飛び出したんです。あたしは思わず胸元に両手を運び、驚きの声をあげて首を竦めると瞼を閉じました。そして響く大らかなカメラマンの笑い声。
「え〜?」
 レンズから飛び出したのはバネ仕掛けの人形だったんです。あたしは思わず頬を膨らまして睨んでいたと思います。でも、今もバネで忙しなく伸縮する様子を見ていると、可笑しくなっちゃって‥‥。
「はい、戴き♪」
「はい? え? 今の撮ったんですかっ!? えっ? 嘘っ?」
 多分、大きな口を開けて笑っていました。まさか表紙って‥‥。それ、酷すぎますっ。
「さて、本番いこうか。一回爆笑してからの顔の方が柔らかい顔になるんだよね★」
 なんて言いながらウインクしてカメラを構えました。もぉ、意地悪ですよ。
 でも、その後は不思議な位、緊張感が抜けたように撮影は続いたんです。低くて甘い声がまるで呪文のようにあたしを動かすみたい。あ、でも魔法使いの呪文には気をつけなきゃ☆。

 ――1〜2月。テーマは新年。そういえば今年もあと僅かなんだよね。
 あたしは桜色の豪華な振袖に着替えて、髪をアップにして簪で留めて貰うと、オレンジやレッド系の色でメイクをして貰いました。派手かなって思ったけど、流石プロです☆ あ、正人さんが武さんと楽しそうに正月の室内セットを運んで来ました。今度のカメラマンは太一郎さんです。
「それじゃ、紗亜弥君は室内セットで正座をしてくれ。‥‥そう、次に雑煮の御椀を持って、そのまま味見してほしい」
「え? 食べていいんですか?」
「その方が気分が出るだろう。大丈夫だ、食べてる所は撮らない」
「えっと、それじゃ、いただき、ます」
 まさか正月前に雑煮が食べられるなんて‥‥あ、美味しい☆ 誰が作ったのかな? でも逞しくぶっきらぼうな具の切り方は太一郎さんぽいかも♪ でも料理は見た目じゃなく味だよね☆
「ふぅ〜ご馳走様でしたぁ‥‥!?」
 え? 今パシャ★ って音しませんでした?
「よし、OKだ」
「お、お、おーけーだじゃないですッ! 撮らないって‥‥」
「ああ、食べている所は撮らなかったぞ。食べ終わった瞬間を狙って不意打ちで撮らんとは言ってない。うん、なかなか自然だ」
「あ、当たり前じゃないですかっ! 自然ですよぉ」
 詐欺です! あたし騙されているのかな? 今度こそバラエティのカメラを武さんが‥‥。
「え? 何かしら? 紗亜弥さん怖いわよ?」
 いけない、思わず睨んでしまったかも‥‥じゃあ、圭哉くん?
「な、何か御用ですか? 僕、頼まれた事を忘れていました? ギターですか?」
「え? ううん‥‥何でもないよ。ギターは撮影後に頼むかも」
 そんな走って来なくてもいいよぉ。真面目なんだから☆

 ――3〜4月。テーマは卒業式と入学式です。
「中松さん、あたしのデビューも大正学生風の袴だったんですよ」
「そう、じゃあ髪はハーフアップで袴に合わせて落ち着いた色のリボンが良いわね☆ メイクはオレンジベージュ系で清楚に演出してみましょう♪」
 懐かしいなぁ。初めての衣装も正人さんが作ってくれたんだよね。さて、次は魔法使いさんです。
「ハイカラさん系元気いっぱいと、おしとやかモード両方撮ってみようか。最初はしっとり目に‥‥そう、良いぞ。少しずつお元気娘になってみようか‥‥そう、楽しそうにはしゃいで、今日は入学式だ。桜も風に舞って喜んでいるぞ」
 流石に桜は正人さんのセットでも舞いません。でも、想像すると楽しい気持ちになってクルクルと回っていました。恐るべし言葉の呪文っ。

 ――5〜6月。テーマは初夏。何か、時を駆けているみたいで不思議です☆
「ワンピース、ですか?」
 高原をイメージしているらしく、正人さんが白いワンピースと麦藁帽子を持って来ました。
「サイズは‥‥また成長とかしてませんよね? 僕にしたって一目見て見抜けるほど変態ではないので、変化あるなら自己申告お願いしまっす」
 へ? あたしは思わず視線を自分の胸元に下ろしてから、暫く固まっていたかもしれません。
「な、なに言ってるんですかっ! そんな着れないほど‥‥ってセクハラですっ。やっぱり高野さんはエッチな細い目であたしを見ていたんですねっ」
「‥‥やっぱり」
 あ、固まった。そんな中、百合子さんがあたしの肩を押してメイクルームに誘います。
「はいはい、顔真っ赤にして凄んでないでメイクするわよ‥‥(フォローしてあげるから貸しね☆)」
 綺麗に髪をストレートに梳いて貰い、グリーンのアイシャドーと、ピンクローズのリップを施す中、正人さんは緊張を解すつもりで言ったと教えてくれました。あぁ、百合子さん大人の余裕だなぁ。八重子さんも経験豊富そうだよね。後で謝っておこ‥‥でも何て言おう。セクハラ大丈夫です☆ ?
「‥‥あの、榊さん‥‥これって」
「知らないのか? ジェンツーペンギンの等身大ぬいぐるみだ」
 じゃなくて‥‥どうしてセットの高い場所に? え? 立つんですか?
「ああ、そしてペンギンを見てくれ。コイツは36キロの速さで泳ぐんだ。ペンギンの中では最も速いんだぞ。しかも、コウテイペンギン、キングペンギンに次いで3番目に大きい」
「へぇ〜、キングおぶペンギンなんですねぇ‥‥って、撮りました?」
「ああ、OKだ。自然な反応の表情が撮れた」
 太一郎さん‥‥次は信じませんよ?

 ――7〜8月。テーマは夏の夜。
 男の子が読む漫画雑誌のグラビアみたいな水着でなくてホッとしました。
 淡いピンク地に桜柄の浴衣を着付けて貰い、若草色の帯と躑躅色の丸ぐけ紐で締めます。髪は後に纏めて毛先を遊ばせて、メイクはグリーン系で切れ長風のアイメイクにピンクのグロスを施して貰いました。
「わぁ、スイカですっ! もう冬なのにスイカですよ」
「宅配も進化したからね。おっと、食べないぞ。少し見上げるような角度で撮ってみようか。そこに蛍がいるんだ。淡い光が綺麗だろ?」
 照明落としたから、違うものが見えそうで怖いです。蛍‥‥蛍の光〜っ。

 ――9〜10月。テーマは秋の恒例。
「グレーでシルク素材のギャザードレープカットソーに、黒に近い焦げ茶の1つ釦テーラードジャケット、落ち着いた茶色の膝丈フレアスカートと膝までの黒のブーツ。髪は下ろして、ベージュ系のメイクね。アンバービーズネックレスとシャンパンゴールドのマフラーを巻いてコーディネート☆」
 一気に着る衣服が増えました。でも、さすがスタイリストさんです。
「銀杏並木で、木に寄りかかって読書という構図を撮ってみよう。しおり代わりの落ち葉を一枚持って貰えると良いかも知れんな。‥‥ん? どうした?」
「寄りかかった途端に倒れたりするんじゃないですか? そこを撮るんですよね?」
 ちょっと先制攻撃すると、太一郎さんが髪を掻いて溜息を吐きました。
「高野さん、セットは問題ないと証明してくれないか?」
「酷いスよ。そんな手抜き僕はしませんて」
「いえっ、手抜きじゃなくてっ! あ、あの‥‥この前は、ゴメンなさい。緊張ほぐしてくれたんですよね?」
「あー、気にしてないですよ。セクハラし過ぎたかなって僕も思いましたから」
 ――あの二人は絶対にお似合いだと思う‥‥間違いないな。
 あれ? 太一郎さん、なに安心したように微笑んでいるんですか?
「誤解は解けたかな。普通に読書好きな子の演技をしてもらって、普段の紗亜弥君とは少し違った魅力という物を見てみたかっただけだ。これまでは変に演技やポーズをするより素の表情の方が魅力的だから自然な感じで撮っていた」
 うぅ‥‥失敗です。その分、演技でめいよへんじょうです。

 ――11〜12月。イルミネーションバックにロケ。
「申し訳ありません。撮影許可は得られたのですが、早朝『撮影の為に』イルミネーションの点灯は予算不足でした」
「都内のクリスマスイルミネーションだから時期的に全く問題なしと思っていたけど、甘かったわ」
 円さんの希望で早朝点灯の交渉を長治さんに頼んでいたそうですが、巧くいかなかったようです。八重子さんも予想外な状況に苦笑気味でした。
 あたしは襟をFOXティペットで、リボンを綺麗に蝶結びにした白のケープ付プリンセスラインのロングコート羽織り、インナーに黒のハイネックと焦げ茶のミドルブーツに白いカシミアの手袋。髪はウェーブに巻いて、パッチリしたアイメイクにピンクのグロスを施して貰ったまま、ロケバスで待機して状況を見守りました。すると、円さんが口を開きます。
「許可が下りただけでも成功だ。幸いスタッフは多い。皆、人払い頑張っていこー!」
 正人さん、長治さん、八重子さん、武さん、圭哉くん、そして百合子さんが散らばって行きました。あたしも円さんの許に向かいます。
「風邪ひかせないように頑張って撮らなきゃね。お、雪だ!」
 粉のような雪が舞い降り、イルミネーションにキラキラと輝きました。
「このチャンスは逃せない! 最高のシチュエーションだ! さあ、立って。ウエストアップで撮影するよ」
「はい!」
 こうして、あたしのカレンダー撮影は奇跡の贈り物と共に幕を閉じたのです。
 皆さん有り難うございました。そして、お疲れ様でした☆