雪上のブラッドダンサー南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/10〜02/14
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●本文
●イントロダクション
――緩く踏み締められる雪は幸せだ。
安定した運動が行え、的確に身体を動かす事が出来るから‥‥。
雪を覆われた世界『スノエル』。
吹きつける風雪は視界を鈍らせ、体温を奪い。
雪が積もれば歩くのも困難となる。
まして、水でも撒かれた日には容易に走る事や、強力な銃の反動にも耐えられないだろう。
大きな振動でも起こせば濁流の如く雪崩が飲み込んでゆく。
ここは血も凍るような地獄なのだ。
そんな世界でも戦争を起こしてしまうのが人間である。
スノエルでは二つの陣営『プリンシパル』と『リバイズ』が長きに渡る内戦の歴史を刻んでいる。
古き伝統と規律を重んじる貴族主義のプリンシパルに対し、改革を謳うリバイズはプリンシパルの王都陥落を目標として侵攻に踏み出した。
軍事産業の介入により、飛躍的に進歩した兵器でリバイズは次々とプリンシパルの領地を蹂躙し、順調に王都を目指していた。
しかし、プリンシパルにも同様に異なる軍事産業が介入。防衛ラインは次第に強固となる。
そんな中、カリアッハ山脈を越えねばならない状況下を強いられたリバイズの小隊は、駐屯基地を築き、プリンシパル防衛拠点『イグルー』を落とす任務に準じていた――――。
●概要
このドラマは雪山を舞台とした『プリンシパル』と『リバイズ』の攻防を描くSFアクションです。
主な視聴者獲得は若者。ハードでシリアスな内容より娯楽作としての方向性に重点を置き、双方の攻防から生まれる宿敵同士の戦いや人間模様を描きながら、相乗効果としてトイやゲームの購買意欲を高める事が目的です。先に言えば大局は全く関係ありません。アクターの皆様は、魅力的なキャラクターを演じるのが役目です。
●陣営の簡単な設定
【プリンシパル】任務:イグルー基地防衛。
イントロダクションの通りで、中世の騎士をイメージとして捉えて下さい。服装も優雅で気品が漂うものが用意します。実用性より機能美を優先する傾向。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(最大人数までOK)。
8mの人型兵器です。防衛用として短時間使用に特化されており、ホバリング機構を持つ機動性重視の短期戦タイプ。基本外観はシャープな造形で、高貴さが漂う鎧のような感じです。装甲は薄く、燃料消耗が激しいのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(剣)、銃器(銛のようにワイヤーの付いた射出アンカー機構『ツイッグアンカー』装備)があります。その他、雪上用アクションに適した武装1追加OK。
【リバイズ】任務:イグルー基地攻撃。
プリンシパルに反乱する形となっており、同志の集団的なイメージとして捉えて下さい。野外活動が多い事から、実用性重視の防寒着を着用(中は薄着でも何でもOK)。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(1機または副座型か2機まで)。
8mの人型兵器です。基本外観は流線型なフォルムの傘状上半身下に、武骨な腕部や脚部があります。このデザインは雪上行動の特殊性とリアルさを強調しており、雪が機体に積もらず、腕や脚を風雪から守るようなイメージとなっています。脚部は長いスキー板を履いたようになっており、安定性を保つ為に杭上の突起が施されています。装甲は強固ですが、機動性は鈍いのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(腕部から射出する杭『ステークピアーズ』)、銃器があります。その他、雪上用に適した武装1追加OK。
・ブラッドダンサー
タイトルにもなっているリバイズの特殊部隊です。SGの機動力不足を補う為、スキーやスノーボード(ときにはスケート)を駆って機動戦を繰り広げるエキスパート。生粋の軍人より、スカウトされた学生等の若者が多いらしいです。
●募集区分と提出資料
このドラマは8名を二つの陣営に分けて展開します。4対4が望ましいですが、偏っても構いません。基本的に、リバイズのイグルー基地攻撃に対処するプリンシパルという知恵比べ的な展開の中で、互いに宿敵を感じてゆく物語となっています。
―――――――テンプレート―――――――
【勢力】プリンシパルかリバイズ。
【名前】役名または芸名そのままでも構いません。
【設定】どんな立場で、どんな性格のキャラクターを演じるのか。
【役割】双方のSG乗りか、リバイズのブラッドダンサーか、プリンシパルの白兵部隊か選択。
【補足】機体名や色。装備、服装、得意、苦手など補足する設定がある場合に活用して下さい。
【演技】今回の主なプロットです(打ち合わせで変更OK)。台詞や行動を明記して下さい。
・起:イグルー基地攻略の為に侵攻するリバイズ部隊(所謂リバイズの顔見せ)。
・承:敵の侵攻に対する為に出撃するプリンシパル部隊(プリンシパルの顔見せ)。
・転:優勢に展開するリバイズ部隊に苦戦するプリンシパル部隊(誰が誰を攻撃してどうなるのか簡潔に明記)。機転を利かせるか、予め仕掛けたトラップで自然を味方にして難を凌ぐプリンシパル指揮官。
・結:撤退を余儀なくされるリバイズ。互いに指揮官同士が宿敵を感じあう中、次回へ。
【次回】展開要望があれば記して下さい。こんな演技をしたいから、こんなシチュエーション希望等。
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●サポート
裏方担当。フイルムに余裕がある場合、サポートしたアクターとのシーンが流れるかもしれません。
例)サポートしたアクターへ衣装(脚本/弁当)を渡して激励。演技指導をするなど。
但し、初日のみですから、ニュアンスを間違えないで下さい。
●リプレイ本文
●改革という名の下に
――カリアッハ山脈リバイズ駐屯基地。
慌しく出撃の準備を運ぶ中、アキラ(北沢晶(fa0065))は白いスキーウェア風の装備に袖を通し、長い黒髪を払うと赤いバンダナを締め直す。ロッカーに伸ばした手には一枚の写真。瞳を和らげる中、青年の背後からブルーグレイの防寒着に身を包むラグナ・アルフェロフ(長束 八尋(fa4874))が、緊張気味に声を掛ける。
「作戦開始ですね、頑張らないと‥‥おや? 誰ですか?」
「この戦いが終わったら結婚するんですよ」
アキラが幸せそうに答えると、少年はイヤープロテクタ付きインカムを装備しながら、少女のように愛らしく微笑む。内戦で親を失いリバイズに拾われたショックで記憶がやや曖昧だ。
せめて仲間の幸福は祈りたい――――。
――何処に居ても探して連れ還る‥!
ここにも1人、写真を見つめる少女がいる。サユリ・ナラシノ=愛称サラ(森里碧(fa4905))はリバイスのSG乗りだった婚約者の行方不明を機に参戦した元学生だ。愛らしい風貌に決意の色を浮かべると、萌葱色と朱のパイロットスーツに細身を包み、ジッパーを引き上げてロッカールームを出る。刹那、視界に飛び込んだのは、ニッコリと微笑むナシアス・フロイト(Even(fa3293))の顔だ。緊張の所為か、思わず美貌が崩れる。
「な、何ですか? 覗こうとしてた訳じゃないですよね!」
「酷いなぁ、サラちゃん。初陣にあたって一言だけアドバイスしようとしてただけなのに」
嘆く青年にサラは詫び、真剣な眼差しで言葉を待つ。ナシアスが少女を見据える。
「いいですか‥‥カルロス隊長にセクハラされたら、すぐに僕らを呼ぶんですよ?」
「‥‥はあ? ナ、ナ、ナシアスさんッ」
からかわれたと気付き、頬を膨らます中、ナシアスは駆け出した。拳を振り上げながら追うサラ。同様に格納庫へ歩く者達は聞き慣れた名言に微笑んだ。
ドアが開かれると冷気が肌を刺す。防護シャッターは閉じられているものの、壁一枚の先は極寒の山だ。寒さに怯んだサラの背後からカルロス・L・ジュデッカ少尉(コーネリアス・O(fa3776))の声が響く。。
「ラグナとナシアス、朝飯食ったか? ウォーミングアップは終わりかい? サユリ‥‥サラ、か。よろしく、実戦は初めてだったね」
ハイネックの黒ニットから覗く端整な風貌で、野性的なヤサ男が「寒いね」と笑いながら、真っ白なSG『イスカリオテ』のコクピットへ昇ってゆく。小隊長であり、サラのパートナーだ。
「どうした? キミの席は私の後ろだが‥‥朝食が未だかな? それとも」
「こ、子供だと‥‥女だと‥‥見縊らないで下さい! 技術では負けません。あの人に恥じません!」
今日2度目の名言が響き渡った。緊張緩和の軽口なのは分かる。しかし、気負いから反発しつつ、サラはシートに潜り込んだ。
鈍い起動音が響き渡り、イスカリオテがスキー板のような脚部を駆動させながら、ゆっくりと動き出す。次いでブラッドダンサー達がスノーボードを抱えながら駆けて行き、機体ボディから下ろされている『ブラッドダンサー運搬用ポケット』へ飛び乗る。
「ブラッドダンサー搭載確認。昇降ウインチ上げます」
こうして小隊はプリンシパル防衛拠点攻略の為、雪山へ踏み込んだ――――。
「敵勢力圏進入! 索敵、開始します!」
緊張気味の上擦ったサラの声が報告する中、カルロスが太い腕を組んだ。
「敵が気付いて捕捉されるまでどの位かな。ゆっくりティータイムでもしていてくれれば良いが」
技術的に長距離レーダーに対処する術はない。どう足掻こうと踏み入ればキャッチされるのだ。
そんな緊張感を抱きながら、鉄の棺桶は鈍い足取りで進んでゆく。遠方から捕捉されたのも気付かず。
――正確な情報をいち早く掴むのが大切。命令を待ってる暇は無い。
プリンシパル防寒服の後姿が双眼鏡で侵攻を確認していた。ヘルメットの下から一房だけ延びた後ろ髪が風雪に揺れる。侵入警報の直後、リサ・コリンズ(各務・皐月(fa3451))は物陰に隠れながら周囲の状況を探り、敵の種別や武装等を確認していたのだ。
●防衛部隊出撃
――時は数刻遡る。
「敵さんはお茶の時間もくれないらしいね」
プリンシパル防衛拠点『イグルー』に警報が響き渡ると、読み掛けの歴史書を放り出し、オスカー・フォン・ケンプ中将(鬼道 幻妖斎(fa2903))は将官用の私室から出てゆく。SG部隊司令官の青年がノンビリと格納庫へ向かう中、機体に乗り込むシリア・イェンネフェルト(シーヴ・ヴェステルベリ(fa3936))の姿を捉えた。
「こんな所で無駄死にする必要はないよ、皆給料分働いたら帰って来ればいい。‥‥リサはどうした? 欠席かな?」
「命令を待たずに偵察へ出たみたいですよ。敵SGは1機とか情報が入りました」
気の抜けたエールで緊張を解きほぐそうとしたが、部下である若い娘の対応から必要なさそうだ。
オスカーはSG『ロキ』のコクピットへ滑り込むと、先陣を切ってカタパルトに移動する。
「SGロキ出るぞ!」
強烈なGがコクピットを強襲する中、灰色のSGが勢い良く射出された。
次いでシリアの髪色に合わせたかの如き、深紅のSG『スティンガー』がカタパルトに乗る。
「所詮は正規軍じゃない反乱分子、軽く捻ってやるわよ☆ シリア、出るわ!」
先に出たロキに続き、スティンガーが雪原ギリギリでホバリングしながら雪飛沫をあげてゆく。
●雪上のブラッドダンサー
「敵SG確認。砲撃開始。ブラッドダンサーチームは中距離援護をお願いします!」
相変わらず声に緊張を伴わせ、サラは額にあげていたスコープを下ろすと、カルロスが口を開く。
「砲撃準備、脚部をロックする。敵は2機か、やや数では劣るが‥‥若者達に期待するかね」
スキー板のようなイスカリオテの足に脛の装甲が被さり、衝撃で粉雪が舞う。黄色で『この者を賛美せよ』とヘブライ語で記された腕部が駆動し、遠距離砲を向ける中、運搬用ポケットに載っているラグナ、ナシアス、アキラが各々のスノーボードにシュプールを描かせ散開した。
視界に敵機を確認すると同時、イスカリオテの砲口が轟く。雪柱が吹き上がるものの、回避されたようだ。優麗な鎧の如きフォルムが雪飛沫をあげて滑走してゆく。
「くっ、当たらない!」
「リラックス、リラックス、深呼吸してみようか」
笑顔で後方に顔を向けるカルロス。少女の口元は苛立ちを浮かべていた――――。
「あれ1機で攻めようっての? 実力の違いを見せてあげるわ!」
『待て、シリア。迂闊だぞ!』
不敵な笑みを浮かべ、オスカーの制止を無視して真紅の機体が加速する。タイミングを合わせ、サラの駆るスノーモービルが追走しながら機関銃を撃ち捲くってゆく。捉えたのは、シティアーバン迷彩のスノーボードを駆るラグナだ。銃弾の洗礼が放たれるものの、巧みなトリックで翻弄し、次々と射線を潜り抜ける。
――当たらない‥‥。
「やるね‥そう来なくちゃ♪ でも‥‥これでどうかなっ」
スピンと共に宙を舞い、ハンドガンの銃声を響かせるラグナ。粉雪が舞う中、ヘルメットに火花が散り、体勢を崩すと共に素顔が晒された。
――女の人!?
勝ち気そうな女の瞳が少年を捉え、トリガーを絞る。
「弾切れ!? ‥‥後退します」
何とかスノーモービルを制御し、ターンの飛沫を描きながらサラは戦場を離脱。
ラグナは追撃せず見送っていた――――。
――全ては回線に割り込んだナシアスの宣戦布告かもしれない‥‥。
『スリーサイズは? 今度デートしましょー』
シリアの赤い瞳が忙しなく追うのは、赤いスノーボードを駆り、シュプールを描く青年の姿だ。トリガーを絞り捲くるものの、冗談のように命中せず、絶え間なく軽い挑発が響く。
『おっと、危ない危ない‥‥随分と照れ屋さんなんですね。でも激しいのも好きですよ』
「女とみて馬鹿にしてるの!? SG乗りですらない相手に! あんッ、なに?」
視界に銃口から硝煙を棚引かせるラグナを捉えた。ズームした少年の口が開く。
『随分身軽なSGだけど、機動戦を制するにはまだまだかな?』
「また回線にッ! んあッ! またやられた? やんッ! カメラが‥‥ッ」
鈍い振動と共に機体が沈む。脚部駆動系を断ち切られた証拠だ。次いでナシアスの対SG用ペイントボール弾が隙を突き、視界を潰した。空かさずラグナが連携攻撃を要請する。
「サラ、今だよ!」『り、了解!』
何度目かの轟音が響き渡り、スティンガーが爆炎に染まった。恐らくシリアの受けた衝撃は相当なものだろう。エリートと言えど、焦りの色が浮かぶ。
『大丈夫ですか? 顔を見せて下さいよ。泣いちゃいましたか?』
視界に捉えられない声ほど、怖いものはない。まるで数人の男に取り囲まれているような戦慄が疾った。冷静な判断が出来ず、肩を抱く。
『‥‥リア‥‥シリア! 何をしている!? チッ、長距離射撃だと‥‥離脱できるか?』
その頃、オスカーはアキラの無反動砲とイスカリオテの砲撃に行く手を阻まれていた。『やっぱり美人が相手じゃないとねぇ』とか狙いが外れる言い訳にサラは苛々したものだが‥‥。
「離脱? でも隊長‥‥カメラが‥‥! そうよ、補助視認窓があったわッ‥‥伊達にSG乗りに選ばれてないのよ‥‥いつまでも舐めないで!」
風雪に見舞われ、頭部カメラが使用不能になった際の対応として、小窓が用意されていた。シリアは冷静さを取り戻し、銃身のツイッグアンカーをイスカリオテに撃ち込むと、ワイヤーを高速で巻き上げて一気にブラッドダンサーから離脱。飛沫をあげて急速接近する真紅の機体に、サラが戦慄く。
「あたらない! なんて速さ‥‥!」「サラ、ステークピアーズだ!」
「遅いわ! ‥‥! 弾切れ!? チィッ」
一気にワイヤーを開放させながらホバリングで機体を横に流す。振り子の作用と遠心力で雪飛沫を舞い上げてスティンガーが急速に離れてゆく。コンソールパネルが距離を刻む。
「80、90、100‥‥ッ」
銃を手放し、そのまま戦線から離脱した刹那、次々と爆炎が描かれると共に大地が揺れ、雪の濁流が戦線を分断した。予め仕掛けて置いたトラップを起動させたのである。オスカーは始末書を提出した新入社員のような面持ちで呟く。
「ふぅ、是で暫く静かにしてくれると良いんだけど。これでこのポイントの切札は無いな‥‥」
辛くもブラッドダンサーを始めとする小隊は難を逃れた。
「せっかくダンスがノッてきたところだったのに‥‥」
ナシアスが残念そうに呟く中、ラグナは拳を握り締める。
「悔しいです、もっと‥‥強くなりたい」
「命あってのものだね、って奴ですよー」
お気楽そうにアキラがシュプールを描いて合流。次いでカルロスの声が響く。
「総員退避! ‥‥オスカー」
濁流は壁と化し、苦い顔で呟く中、砲撃が当てにならない機動力の敵機に、サラは慄くばかりだった。
――これが、これがSG戦なの?