ゾンビVS水着ガール2南北アメリカ
種類 |
ショートEX
|
担当 |
切磋巧実
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
9.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
02/13〜02/17
|
●本文
●誕生日なんだもん☆
――ゾンビVS水着ガール(正式タイトル:LivingDeadvsSexyGirl)
新作水着と武器のコラボレーションと題したコンテストが開催される会場で描かれた、ゾンビとの血みどろバトル作品である。
生き残った3人の水着ガールが見た街の風景は、夥しいゾンビの数に覆われた世界だった――――。
あれから1年。サミィ・ライナー監督は職権乱用‥‥もとい、待ち望むゾンビファンの為に、続編の作成に乗り出す。それはもう満面の笑みを浮かべていたという。
「ケーキの時にね、VS水着シリーズでスライムは? って聞かれたのよね〜♪」
「はあ、それでは今回はゾンビではなくスライムですか?」
助手の声に、金髪の少女は顔を向けて眼鏡の奥で瞳をキッと研ぎ澄ます。
「やーよ〜、バースディはゾンビって決めてたの♪」
恍惚と瞳を潤ませるものだろうか。しかし、ならば何ゆえスライムと出すのだ?
「スライムもいるのよ☆ 何故か皮膚は溶かさないけど、他のものは何でも溶かす突然変異ね♪」
「‥‥無茶苦茶ですよ。どんな原理の生き物ですか」
「B級に原理なんていらないわ! それにね、生クリームゾンビとかも出して集大成って面白くない?」
助手は思う。この監督は物語を収拾するつもりが無いと。すると、サミィは訝しげに顔を覗き込んだ後、プロットを説明してゆく。
「基本は続編ね。前回のアクターがいたら同じ設定で出演して貰うつもりよ。それでね、ゾンビと戦う中、まだゾンビ化していない人達と巡り合うの☆」
それはゾンビ映画セオリーそのままだ。それで?
「スライムが出るのよ」
「は?」
「衣服を溶かされて逃げ込んだ水着ショップで水着になるの! これでゾンビVS水着ガ〜ル♪」
両手を合わせてキャッキャとハシャぐ少女。挙句は触手も出そうかしら♪ なんて言う始末だ。
「そうね、あの軍みたいのが絡むのも面白いわね。触手で生き残った少女達が特殊武装で雪崩れ込むとか♪」
「監督ッ! オチは!?」
●ゾンビVS水着ガール2(正式タイトル:LivingDeadvsSexyGirl2)
舞台はゾンビに埋め尽くされた街から始まる。何とか生存者達は寄せ集まり、ある建物に固まる事で凌いでいた。
今回は誰が何処で登場するかが重要である。その辺の打ち合わせはしっかりと行って頂きたい。
●基本プロット(相談により変更OK)
・Scene1:集う人々
生存者がゾンビと戦いながら或る建物(相談で決めて下さい)へ集まるまでを描く。元々先に拠点としている者がいて助ける方向でも構いません。
・Scene2:謎の生物
何とかゾンビの魔の手から逃れると、建物にスライムが出現。衣服を溶かされ、ギリギリで逃げ惑い戦う中、地下プール(予定)から触手生物出現(予定)。次々と命を落としてゆく仲間達。
・Scene3:神の悪戯的ハプニングの連鎖
このまま建物に立て篭もるにも限界だ。スライムは増え始めて天井から衣服を溶かす。否、下手すれば窒息死だ。触手の化物は暴れ出し、建物の窓が割れ、ゾンビが雪崩れ込む。生き残る為には戦うしかない。
・Scene4:脱出――どうやって?
何名脱出するかと手段はお任せします。基本、バラバラになるのは禁止。エピローグは選択式。
A:町から脱出するが世界はゾンビに覆われていた‥‥。
B:脱出したが仲間が実は噛まれていて‥‥。
C:脱出したが待ち構えていた人物により聞かされる真相(要募集区分『その他』)。
D:脱出失敗時に軍の特殊部隊介入(要募集区分『その他』)。
E:誰も脱出できず‥‥。
F:夢オチ‥‥。
G:宇宙(馬鹿な!)へ脱出。しかし、謎のカプセルが接触して‥‥。
H:その他(相談で決めましょう)。
●募集区分
ゾンビや生物に襲われて、やられちゃう場合は順番を明記して下さい。
・水着ガール:(複数OK・水着着用済み・前作登場アクター優先)。
本編を彩る主役です。何らかの事情で登場から水着もコチラ。様々な演技とシチュエーションでアピールしましょう。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
水着:どんな水着を着けるか決めて下さい。
武器:ゾンビ等と戦う時に使用する得物です。
実在する格闘武器〜射撃武器までOK。何故か日本刀なんかも用意されていたりします。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
・逃げ延びた人:(複数OK・性別不問・本職歓迎)。
辛くもゾンビから逃げ延びた人々です。様々な演技とシチュエーションでアピールしましょう。交友関係等色々と設定して下さい。触手VSで生き残ったキャラ等もOKです。展開により水着になる場合は、どんな水着か明記。
役名;演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
武器:ゾンビ等と戦う時に使用する得物です。
実在する格闘武器〜射撃武器までOK。何故か日本刀なんかも用意されていたりします。但し職業に無理があるものは使用しないで下さい。ここはリアルにお願いします。
演技:要の部分です。シーンごとに登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
・その他:(複数OK・性別不問)。
物語を面白く出来る配役も募集します(例えば、ゾンビは自然発生ではなく、原因を作った黒幕の存在とか等)。触手VSで生き残ったキャラ等もOKです。
役名:演じるキャラの名前です。芸名でもOK。
性格:演じるキャラの性格です。
武器:ゾンビと戦う時に使用する得物です(所持していなくても構いません)。
演技:登場場面を演出して下さい。台詞歓迎☆
・ゾンビA〜:(複数OK・性別不問)。
簡単な短い単語と呻き声が基本。何故か生クリームゾンビは喋り、思考もあります(生クリームゾンビに食われると、生クリームゾンビになってしまうようです)。
エキストラとCGがあるので他にやりたい配役があればゾンビでなくて構いません。
役名:水着ガールの友人等の場合明記。
服装:服装や容姿演出は特殊メイキャップアーチストに希望を言えます。
武器:基本的に武器は持ちませんが、刃物系や職業に関するモノは持ってOK。。
演技:難しい役ですが、ゾンビ化する前の仕事等を個性で演出してみましょう。誰を襲うかも明記。
尚、TV作品なので臓物描写はNGです。
●サポート
アクターの水着作成や、サミィの場合、シナリオアイデア提案やプレゼントが可能です。
基本的に撮影初日に配役に水着渡したり、シナリオアイデアをサミィに申請となるでしょう。
●リプレイ本文
●3days later
――閑散とした街の光景に風が吹く。
状況を理解せずに街を訪れたとしたら、テロか戦争によりゴーストタウンと化したのだと思うだろう。
だが、この街から動くものが消えた訳ではないのだ。
息を殺して耳を澄ましてみればいい。聞こえるだろう‥‥夥しい死霊の蠢きが――――。
<SE担当により、サミィ監督を始めとした出演者達の声を数パターンサンプリングし、合成させたゾンビの夥しい呻き声が次第に大きくなる>
●LivingDead vs SexyGirl 2
<タイトルの後、サミィの注文を聞き入れ、恐怖を煽る中にロック調のリズムが刻まれる中、滑るような視点で崩壊した街を映し出し、死霊に蹂躙された刻の惨劇を映し出す>
「なんなのだお前達は」
幾つもの手が突き出され、何故かタキシードを着込んでいる端整な風貌の洒落た男が戦慄く。
「な、何をする貴様らー!? た、助け‥‥」
<ブラックアウト。何かを切り裂き、咀嚼する如き不愉快な音が響き渡った>
∴SE&BGM:工口本屋(fa4421)
(CAST)
∴由希:御神・由希(fa2137)
∴カナカ:佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378)
∴アリア:エリア・アサギリ(fa4280)
∴セイル・バーナー:壬 タクト(fa2121)
∴レディ・アン:金田まゆら(fa3464)
∴アルザック・バクナル:辰巳 空(fa3090)
――荒れ果てた道端で釣り竿が何度も振るわれる。
刹那、ピンと張る糸。重みを伴い手繰り寄せられると、ルアーに引っ掛かった人間の手が引き摺り出されてゆく。フィッシング遊びに興じるは、一糸纏わぬ生クリーム塗れの少年だ。
∴生クリームゾンビ(ショーン):シーザー・N(fa4450)
白く細い裸体の彼方此方に赤黒いドレンチェリーが浮かび上がっているショーンが収穫に笑む。
「ショーン?」
眼鏡の奥に浮かぶ不安げな青い瞳で覗き込むのは、長い金髪の小柄な少女だ。ゆっくりと少年は顔を向けるとヨロヨロと立ち上がり、新鮮な獲物に向かってゆく。少女は戦慄きつつ間一髪で躱し駆け出す中、逃がすまいと追い始めるショーン。
「あごっ」
注意が散漫なのか道端の街頭にぶつかって呻き声をあげると、生クリームゾンビは転倒した。
∴directed:サミィ・ライナー(fz1019)
●生き延びた人々
映し出されたのは赤いロングヘアの一見お嬢様風で大人しそうな美少女だ。裕福な令嬢を醸し出すドレスに魅惑的な肢体を包んでおり、眼鏡のレンズ越しに浮かぶ愛らしい青い瞳が戦慄の色を浮かべる。
「いや‥‥来ないで‥‥」
カナカは壁を背にしてゾンビの群れに取り囲まれていた。呻き声を共に両手を伸ばし、ジワリジワリと間合いを詰めてゆく。少女は瞳に決意を宿すと、徐にスカートへと両手を運ぶ。刹那、布地が捲りあがると同時、艶かしく白い太股が覗く中、右手に護身用の銃と左手にナイフを構えた。一際高い呻き声をあげた死霊が飛び込むのを皮切りに、乾いた銃声が鳴り響く。弾丸の洗礼に血が舞い、尚も迫る相手に鋭利な切っ先を滅茶苦茶に振り回す。血飛沫が吹き荒れ、美貌が返り血に染まってゆく中、激しく薙ぎ振るう挙動に合わせて豊かな二つの膨らみが弾んだ。
「ハァ、ハァ‥‥うっぷ」
叩き込んだ洗礼の惨状に、吐き気を催すカナカ。夥しい群れは次々と押し寄せる。このままでは弾も切れ、1体を相手している内に襲われるだろう。少女の瞳に絶望が滲む。
「逃げちゃ駄目なの?」
カナカの視点で周囲を見渡す。逃げ道はない。1体のゾンビが一歩踏み込んだその時――――。
派手にタイヤを軋ませ、やたらゴツイ大型車両が向かって来た。ウインドーから白い腕を覗かせ、構えたサブマシンガンを奏で捲くる。バラ撒かれる洗礼に次々と死霊が血飛沫を散らせて吹っ飛んだ。少女は戦慄きながら両手で耳を塞ぎ瞳を閉じる。絶え間ない銃声と共に返り血が跳び、その度にピクンと白い脚が震えた。車のエンジン音が迫る気配に、恐る恐る瞳を開く。刹那、ボンネットでゾンビ共を跳ね飛ばし、勢い良くドアが開いた。
「早く! 早く乗って!」
「え? どうして‥‥」
――水着なの?
サミィ作品フリークなら気付くだろう。豊かな胸を血塗られた三角ビキニで包む愛らしい黒髪の美少女こそ、惨劇のステージから生き残った娘‥‥LivingDeadvsSexyGirlの出演者と。これでこそ正当な続編である。
「早くッ!」
戦い慣れたような響きに急かされ、カナカは慌てて助手席に乗り込んだ。急速にバックして死霊を肉片へと変え、ギアを入れながらフルアクセルで激走する。
「逃げ込む場所に心当たりは!? ガソリンが限界なの!」
「え? もう直ぐショッピングモールが見えますけど‥‥大丈夫でしょうか?」
取り敢えず何ゆえ凶悪な面積の水着なのかは置いといて、助けに来てくれた少女の円らな瞳がとても心強く感じた。由希が不敵に微笑む。カナカが視線を追うと、ショッピングモールの大きなウインドーに群がるゾンビ共を捉えた。しきりに叩いているように窺える事から、店内は年中無休という訳でもなさそうだ。進路に邪魔な死霊を轢き潰し、車両は裏口に周る。
「搬入シャッターがある筈よ!」
「でも、閉じているんじゃありませんか?」
「銃は使えますよね?」
その意味は直ぐに知る事となった。
カナカがシャッター傍のドアノブを銃で撃ち抜く間、徘徊するゾンビへ向けて由希は援護射撃を担う。程なくドアが開き、シャッターの上昇スイッチを押した後、車両はバックでサブマシンガンの旋律を奏でながら店内へ入り、下降スイッチを入れて防衛に転じる。
「ドアを塞いで!」「は、はい!」
僅かな時間だったが、少女達には長く感じた事だろう。バリケードをドアに積み上げ、2人は背中合わせに腰を落として安堵の息を洩らした。
「ハァハァ‥‥これで何とかなりましたね」
「ハァ‥ハァ‥‥ま、まだです。店内に潜り込んでいない証拠はありません」
「そ、そんなっ!」
カナカが素っ頓狂な声をあげ、肩越しに由希へ戦慄に彩られた顔を向けた時だ。店内から笛の音が響き渡った。ピクンと肩を弾ませ顔をあげる。
「笛?」
「生存者がいるんです!」
少女達は重い腰をあげ、搬入口から店内へ続くドアを開け、駆け出してゆく――――。
――アリアは食品の陳列された棚の下に隠れていた。
小柄な少女は戦慄きながら床に蹲り、震えるフルートの音を響かせる。ふと人の気配を感じ、円らな黒い瞳を見開くと、恐る恐る姿を晒した。
「た、助けにきてくれたの?」
床に人影が映り、アリアは駆け出す。刹那、急に立ち止まり、走っていた方向に金髪が揺れた。響いて来るのは低い呻き声。少女は戦慄く脚で後退すると、背後からも人影が過ぎる。
視界はアリアの目線となり、忙しなく前後に流れる中、陳列された商品が人影に当たって崩れた。映し出されたのは食い千切られた痕も生々しい死霊の姿だ。
「お、おかあさん‥‥!」
変わり果てた母に呆然する少女の背後で呻き声が大きくなる。ゆっくりと姿を見せる男のゾンビ。アリアは恐怖で振り向く事も出来ず、立ち尽くす。
少女を中心として天井から周囲が映し出されると、既に辺りは生きた屍の徘徊する地獄と化していた。フルートの音にゾンビが寄せ集められた様相と化したのである。
「い、いやぁ‥‥だれか、たすけて‥‥ッ」
再びフルートを吹くアリア。しかし、救いの手は差し伸ばされない。そうしている間にもゾンビは迫り、白い肩に手が伸びた。振り向く少女の表情が恐怖に染まる。
「ひッ! いやあぁぁッ」
咄嗟に駆け出すと同時、布地が悲鳴をあげると共に、アリアの衣服が肩口から切り裂かれた。窮地は凌いだものの、目の前に迫った死霊が覆い被さる。小柄な少女に切り抜ける術は無かった。組み敷かれたアリアの許に、夥しい群れが集う。
「やぁ、だれかーっ!! いやあぁぁッ」
抵抗虚しくゾンビの口が迫るその時――――1発の銃声と共に死霊の頭が吹っ飛んだ。次いでサブマシンガンが唸ると、赤い花が次々と咲き誇り、返り血が顔を覆うアリアを染め上げる。
「ひッ、ひいぃぃん」
「大丈夫ですか?」
駆け寄った女の優しそうな声。少女が手を退けると薄く微笑むカナカが映った。視線を泳がせれば、銃を撃ち捲くる由希を捉える。鮮烈な光景で果敢に戦う水着お姉さんの姿は勇ましく映った事だろう。
「どうして‥‥水‥着?」
「さ、逃げましょう。立てますか?」
優しく起こすと由希の許へ急ぐ。不意に死霊が何度か行く手を阻むが、カナカもアリアを背に庇いながら拳銃で応戦した。今はこの幼き少女を守るべく戦うしかない。
「由希さん、生存者はこの娘だけみたいです!」
「そう! でも戻れそうにないわ。エレベーターを使いましょう。こっち!」
「ちょ‥‥エレベーターですか!?」
「階段や通路で挟み討ちに会うのとどっちが良いですか?」
進路を確保しながら何とかゾンビの群れを侵入させずに済ませ、エレベーターは上昇した。安堵の息を洩らすカナカが問う。
「何階に向かうのですか?」
「最上階まで行きましょう。途中の階は危険です」
エレベーターは最上階で止まる。最後のマガジンを差し込み、ゆっくりと開くドアへ銃口を向けた。次第に外の光景が見えてゆき、安堵の色と共に銃を下ろすと、隠れる場所を探して周る。
カナカが見つけたのは、スタッフ用の一室だ。これだけ大きなショッピングモールなら事務室のようなものが各階にあっても不思議ではない。
辺りを見渡す少女の背中に魔の手がゆっくりと忍び寄る――――。
甲高い悲鳴が響き渡った。
アリアはビクッと肩を弾ませ、由希が豊かな二つの膨らみを揺らして駆けつけてドアを開く。
「カナカ!? ‥‥!?」
腰を捻ったままペタンと尻を着いている少女と共に映ったのは、同じく尻餅を着き、ラフな衣装に身を包む黒髪の端整な風貌の青年だ。サブマシンガンの銃口も向けられ、ずり落ちた眼鏡のまま情けない声をあげる。
「うわあッ、ま、待ってくれ! 僕はセイル・バーナー、こ、この近くの会社で働いているアルバイターだよ!」
後に事情を聞くと、付近にあるコンピューター会社の仮眠室で休んでいた所、気がつくと社内には誰もいなくなっており、代わりに社内を徘徊していたゾンビに襲われ、命からがら、ショッピングモールに逃げ込んで隠れていたらしい。
「それより、どうしてこんなことになったんだ? 一体何が起きているんだよ!」
興奮気味に経緯を話した後、戸惑いも露に由希の肩を揺すった。
「私も何が起きたのか分かりません。ファッションショーの会場で待っていたらゾンビに襲われて‥‥」
「私は‥ショッピングセンターでお母さんと買い物中に襲われて‥お母さんもゾンビになって‥‥私は隠れていたんだけど、自分を勇気付けるためにフルートを吹いたの‥いつもそうしてたから‥‥」
「あたしは外に出たら様子が変で、それからゾンビに襲われて‥‥逃げ回って‥‥」
真相が解明されず、落胆の色も露にガックリと項垂れるセイル。
「これが悪い夢なら、すぐに醒めて欲しいよ‥‥」
「‥‥取り敢えず、これからどうするか考えませんか?」
4人は最上階から野外を見下ろせる場所に出た。相変わらず眼下に映る光景はホラー映画そのもの。
「あんな大勢に囲まれたら‥‥拳銃やナイフなんて‥‥」
「おい! あの救急車、こっちに向かっているんじゃないか?」
「あ、サイレン鳴らしたよ」
「これ以上ゾンビ増やしてどうするの! まさか!? そのまま入り口に突っ込むなんて事は‥!」
しかし、救急車は次々と死霊を轢き飛ばしながら裏口へ周って来る。馬鹿では無いようだ。
「ドアを開けてあげましょう!」
カナカが言った。セイルは口に出さないが戸惑っている。アリアは不安げな瞳を由希に向け言葉を待つ。
「そうですね‥‥シャッターを壊されても困ります」
「下へ降りるのかい!? 僕は‥‥アリアちゃんとここに残るよ」
青年は小刻みに震える手に鉄パイプを構えて見せた。
「分かりました‥‥アリアをお願いします。でも、安全そうな階段を知っているなら教えて下さい」
――フロントウィンドーの視界が急ハンドルと共に激しく揺れる。
路上に蠢くゾンビを次々と弾き飛ばし、救急車は裏口に迫ってゆく。暫くすると小さなドアが開き、2人の少女が銃声を響かせる姿が確認できた。ドライバーの愛らしい唇が微笑むと、タイヤを軋ませながらターン、テールを向けて突っ込んで来る。
「危ないよー、退いてー!」
「え? 嘘ッ、由希さん!」「ドアを全開にして中に入って下さい!」
突貫する如くバックで迫る中、カナカと由希は衝突スレスレで逃げ込んだ。刹那、紙一重で停止する救急車。リアの搬入ドアを開き、姿を見せたのは、何故か兎の着グルミだ。
「よいしょっと、このままバックしてドアを塞ぐから離れていて」
唖然とする中、女の声で伝えた着グルミが再び運転席にヨタヨタと向かうと、アクセルを踏み込み、救急車で入り口を塞ぐ形となった。
「兎‥‥ですよね?」「うん‥‥視界は悪そうだけど、噛まれる心配は少ないかもですね」
本当か? 本当にそうなのか――――。
●非日常的平穏の中で
「私はレディ・アン☆ 謎の着グルミお姉さんだよぉ♪」
最上階フロアに辿り着くと、彼女は穏やかな愛らしい声で伝え、兎の頬に両手の指を当てると、小首を傾けた。集まった者達との間に冷たい風が吹くような静寂が過ぎる。
「‥‥謎の着グルミお姉さんだよぉ♪」
「分かったから、このデカイ頭だけでも脱いでもらえないかな」
セイルが髪を乱暴に掻きながら溜息を吐いた。状況故に愛らしい兎の着グルミも怪しく見えて仕方がない。こんな人物が殺人鬼だったりする。最年少のアリアもカナカの腰に両手を回して怯えているようだ。
「えー? 謎の着グルミお姉さんが着グルミ脱いだら謎の着グルミお姉さんじゃないじゃない〜」
「謎の着グルミお姉さんじゃなくてもいいんだよ!」
セイルの声に『しゅん』とする着グルミ。仲裁に入るのは由希だ。
「えっと‥‥いいじゃないですか。それより、食料や武器の補充をしたいですね。ここって銃砲店はないんですか? ミリタリーショップでもいいんですけど‥‥出来れば、シャワーと着替えもしたいのですが‥‥」
豊かな胸を抱くように肩を抱き、改めて頬を染めると、自分の姿に恥らう。アリアは思わず自分の小ぶりな膨らみに手を当てた。思えば、傍のカナカも母性的な容姿を際立たせている。
「ん? どうかしましたか?」
「う、ううん。私も‥‥食べ物とか集めた方がいいと思う」
セイルが顎に手を運び、口を開く。
「そうだね。武器と食料は必要だ」
こうして安全を確認した後、店内スピーカーから軽快な音楽が流れる中、5人のショッピングが始まった。
外は地獄だが、金の心配もせずに買物が出来るのは至福の刻に違いない。カナカとアリアは仲の良い姉妹のようにショッピングカートを押しながら駆け回り、セイルとアンは食料を確保してゆく。由希はガンショップで得物を揃えた。もう『あの時』のような迷いはない。
「これだけ弾もあれば店内のゾンビは掃討できそうね。あ、そうだ、着替えなきゃ‥‥緊急避難ですよね、非常事態ですから」
カートを押して向かうのは衣服売り場だ。陳列してあった水着やツナギを拝借し詰め込み周囲を見渡した。
――サブマシンガンとコンバットナイフを構え、静寂に包まれた一室の照明を点ける。
点滅を繰り返し、見つけたシャワールームが淡く照らされた。このフロアに死霊はいないようだ。由希は何度か周囲に視線を走らせると背中を向け、腰ほどはある三つ編みを解き、水着の紐に手を回す。乾いた音と共に赤く染まった上下の水着が床に落ち、コックを捻る音と同時に水滴が勢い良く清涼なリズムを刻んだ。
「はふぅ☆」
湯気が発ち込める中、魅惑的なラインを浮かべる若い柔肌を水滴の雫が滴り流れてゆく。少女の背中で長い黒髪が優麗に流れ、安堵と愉悦に甘味な声を洩らしながら、恍惚とした表情で水滴を浴びた。
だが、由希は気付いていない。直ぐ傍で天井から滴る緑色の粘液の存在を――――。
――拠点は日々優雅な生活空間へと変わってゆく。
店内のゾンビ掃討も行われ、完全に安全は確保された。衣食住は快適さを湛え、消費期限の名の下に豪勢な料理がテーブルに並んだ事もある。
外界と遮断されたとはいえ、ここは小さな楽園といえただろう。あれが動き出すまでは――――。
「アリアちゃん、シャワー浴びに行きましょうか♪」
カナカの声に少女が微笑み駆け出した。2人は通い慣れつつある通路を歩き、シャワールームへ向かう。楽しそうに談笑する赤毛の少女をアリアは見上げた。刹那、緊迫感を伴う効果音と共に、天井に蠢く緑色の物体に焦点が重なる。
「あぶないッ」
思い切り身体ごと当たり、カナカを突き飛ばす。「きゃっ」と短い悲鳴をあげて赤毛の少女は床に倒れながらも、四つん這いのまま腰を捻って背後を覗った。驚愕に見開いた青い瞳に映し出されたのは、緑色の粘液状の物体を背中から浴びたアリアの姿だ。ペタンと腰を落とした少女が足掻く中、粘液は滴りながら幼い肢体を這いずりまわる。そればかりか、次第に衣服が溶解され、白い柔肌が晒されると共に、粘液の化物が赤く変色した。ピクンピクンと戦慄きながら、少女が荒い息を吐く。
「ハァハァ‥おねえちゃん‥‥にげ、て」
「な、何なの!? この娘から離れて!」
切っ先を疾らすものの、ダメージは無いようだ。しかし、銃で撃つ訳にもいかない。意を決してカナカはスライムに指を掛け、強引に引き離そうと試みる。名残惜しそうに粘液の糸を引きながら、アリアから放されてゆく度、痛みなのか、身体を弾ませ吐息を洩らした。
「うぅんッ、あぁんッ」
「こいつー‥‥!? や、やん! 服が‥‥!!」
アリアを諦めた粘液がカナカのドレスに吸い付く。急いで背中のファスナーを下ろし、躊躇う事なく衣服を解き放った。薄暗い照明に艶かしく赤のビキニが映える。
「逃げましょう!」
カナカは少女の手を引っ張り、拠点へ急いだ。しかし、グッと腰を引き、制するアリア。振り返って見ると、柔肌も露に、溶かされた服を纏い、真っ赤になって上目遣いで恥ずかしがる姿が映った。セイルという異性にあられもない恰好を見せたくない気持ちは分かる。
「服を選んでいる暇はありません。そこの水着売り場で急いで着替えましょ」
しかし、丁度いいサイズのものは汚れていたり破られており、なかなか合うのが見つからない。仕方なく選んだ容姿に似合わぬセクシーなビキニ姿に、カナカは驚きの色を浮かべた。危うい色香が漂うが、局部を何とか覆い隠す溶けた布地よりはマシだろう。
「か、可愛いですよ。さ、行きましょう」
ニッコリと微笑んだ後、再び手を引っ張った刹那、アリアの白い足首に得体の知れない触手が瞬時に巻きついた。「きゃっ!」と悲鳴をあげ、ガクンと体勢を崩す。
「アリアちゃん! な、今度は何の化物よ!」
フロアの角へ引き摺り込もうとする太い触手に向け、機関銃を轟かせる。堪らずのたうちシュルシュルと戻ってゆく物体をカナカが戦慄の色で見つめる中、アリアが懐に飛び込んだ‥‥。
――事態の急変は拠点にも顕われていた。
「ゾンビの次はスライムだって!? 一体どうなってるんだ!」
セイルが苛立ちを露に叫んだ。何時の間にか緑色の粘体生物は天井に溢れ出し、ボトボトと落下する。そんな中、緊張感のない声を響かせたのは着グルミだ。
「わぁ、ベトベトだぁ‥‥」「おい、兎溶けているって!」
戦慄き指差すセイル。アンはとくに慌てず、背中を向けて着グルミを脱ぎ出した。ファスナーから魅惑的なラインを描く白い背中が覗き、ロングパレオに包まれた艶かしいヒップが飛び出る。長い黒髪が舞う中、曝け出されたのはビキニを身に着けた魅惑的な肢体だ。顔半分を覆うサングラスを掛けると、何事もなかったように振り返る。
「わったっしの武ー器を知ってるかーいっ♪ モップ、胡椒、ライター!」
「おいおい、それって粉塵爆発だよね? 危険じゃないかなぁ?」
『皆さん! ここから出て下さい!』
切迫した響きで駆けて来るのは、由希、カナカ、アリアだ。その背後で幾つモノ触手が追い縋る姿が映った。
「‥‥どこから出て来たんだよ」
セイルが額を押さえたのは想像できるだろう。
●悪夢の連鎖
追って来る触手を銃で蹴散らし階段を駆け下りてゆく。どの階層も天井にスライムが張り付いており、足音に合わせて落下して来るようだ。粘液の洗礼を浴び、由希はツナギを脱いで再び魅惑的な肢体を晒す。カナカやアリア、アンとセイルとて同様だ。酸雨の如く次々と衣服を溶解させてゆく。
「もぉっ、こうなったらっ!」
赤毛の少女が怒りを露に浮かべると、ライターとスプレーを駆使して簡易火炎放射器をスライムに浴びせた。何処で覚えたというツッコミは無しだ。お嬢様風だが、衣服の下は赤いビキニの水着だったのだから。
銃声が撒き散らされ、紅蓮の炎がスライムを燃やす戦場が硝煙に霞む。刹那、アリアの握るフルートに触手が巻きつき奪ってゆく。お姉さん達は戦闘に必死だ。誘うように笛を運ぶ触手を追い、階段を昇ったその時、柔肌の腰目掛けて別の触手が絡みつき、息を呑む少女が一気に悲鳴と共に宙を舞う。
「アリアちゃん!?」「駄目! もう追い着けないわ‥‥」
カナカの肩を引き止める由希の表情も辛そうだ――――。
――あうっ、やあっ‥‥。
触手に運ばれる中、ボタボタと落下するスライムの粘液を浴び、既に水着は機能を果たさない状態だった。スライムが肢体に張りつく度に、力が抜けるような感覚が襲う。そしてアリアの瞳は映し出された光景に戦慄く。幾つモノ触手が蠢く中にフルートを奪い返すと、様子を窺うように囲む触手が一斉に少女へ飛び込んだ!
フルートの音色が断末魔の如く響き渡った――――。
「な、地震だって!?」
建物が激しい振動に襲われる。彼方此方から触手が巨大な針のように壁を砕き現れ、衝撃でスライムが一気に落下する中、至る所でガラスが弾けるように割れた。一気に雪崩れ込んで来た死霊の夥しい群れが包囲してゆく。流石に由希の表情も戦慄を浮かべる。
「囲まれる前に効率よく撃退して!」
カナカは火炎放射と銃で燃やし崩し、アンがふわりと広がるパレオを翻しながら蹴り技の洗礼を叩き込んで死線を潜り抜けていた。
「効率よくって‥‥どうすれば‥‥このッ! こいつッ!」
<「‥‥かゆ‥ウマー‥‥痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃ」>
鉄パイプを薙ぎ振るい、タキシードゾンビを殴り倒すセイルが叫ぶ中、ひゅんッと首に巻きつくのは釣り糸だ。得物を落とし、苦悶の色で糸の先を窺う。
「‥なっ‥‥釣竿‥‥? うわああああっ!?」
リールが巻かれ、思いっきり引き寄せられてゆくセイルの瞳に映ったのは、生クリーム塗れで笑むショーンの迫る口だった。
壮絶な断末魔が轟き、甘いマスクが齧られる音が響く。
●悪夢の真相
――ヘリのタービンが唸り、死霊の蠢く街を眼下に飛来する。
ショッピングモールが黒煙を噴き上げる光景を捉え、急降下してゆく。
「生存者を発見! 救出に移ります。‥‥はい、了解しました」
ヘッドセットで指示に仰ぎ、アルザック・バクナルは後部の兵へ赤い瞳を流す。
「収容します。周囲の化物共を掃討! ‥‥!? 何ですか、あれは?」
青年は驚愕に瞳を見開く。巨大な太い触手があらゆる窓や入り口から飛び出して来たのである。ブンブンとノタウチ回り、逃げる少女達を追い掛けているようだ。
ガトリングガンが咆哮を轟かせる中、死霊共が次々と肉片へ変容してゆく。由希とカナカは何とか局部を覆う布切れと化した水着の胸元を揺らし駆け抜ける。アルザックは「急いで!」と叫んだ後、苦笑する。
「これはこれは‥‥水着のファッションショーでもあったのですか。収容完了、上昇と共にミサイル発射!」
空を裂くような音と共に一発のミサイルが放たれ、ショッピングモールが爆炎に染まった。
突風が髪を揺らす中、水着も溶け掛けたかなり際どい姿を晒した少女達は、頬を紅潮させながら股間に両手を滑り込ませて首を竦めている。腕で左右から押し寄せられた胸の谷間と膨らみが一層刺激的だが、少しでも兵の視界を遮ろうと必死のようだ。
「不謹慎ですよ。後ろを向いていなさい」
アルザックの一言に兵が素直に従うと、青年はクールに微笑んで、軍の『生物化学兵器開発チーム』所属の研究員と告げた後、真相を語り出す。
「元々このウイルスは単に死体を戦力として使う為の物で‥手始めに近くの墓場の死体に試したのですが、あそこまで変異・凶暴化するとは‥‥。でも、あのウイルスは‥宿主が死なないと活性化しないのですよ。さて、あなた達がいつか、死んで墓場に入って起きて来られても困るので‥抗血清を打っておきます」
つまり、ゾンビウィルスの実験失敗が巻き起こした事件という訳だ。由希が怒りも露に睨む。
「そんな事を‥‥街で実験したというのですか? そんな事の為に? 多くの人が‥‥友達になれたかもしれない‥‥人‥達、まで‥‥」
カナカと由希は折り重なるように崩れた。アルザックは2人に毛布を被せる。
――お休み‥‥いい夢を‥‥。
ヘリは空を翔る。機体に吹き飛ばされた緑色の粘液と触手が巻き付いている事も知らず――――。
●Happy Birthday☆
暗転すると共にエンドロールが流れる中、打ち上げを兼ねた誕生パーティーが映し出された。出演者の中からタクトが一歩踏み出し金髪少女に微笑む。
「サミィ監督、お誕生日おめでとうございます。中国茶の茶葉と、茶器のセットです。最近僕が中国茶にハマっていて、監督にもお勧めしたいなと思ったので。良かったら助手さんとの飲茶にでもどうぞ☆」
「あら、中国茶なんて珍しいわね、ありがとう☆ 大事に‥‥きゃうッ」
待てなかったのか、まゆらが着グルミのまま抱きついた。
「サミィ監督誕生日おめでとう! プレゼントは武者サンダーだよー」
「え? いいの? ジャパンのトイじゃない♪ ダークヒーローなスプラッターも合いそうね☆ ありがとう、コレクションに加えておくわ」
「誕生日おめでとうございます! プレゼント用意しました。ドレスとイヤリングです、どうぞ。いつぞやのようなことはしないので安心して下さい」
微笑みながら本屋が差し出したのは、優雅なドレスとダイヤのイヤリングだ。
「そ、そお? なんか悪いわね、ありがとう☆」
サミィは早速イヤリングを耳に留めると、小首を傾けて彼を見上げた。
「どお? 似合うかしら?」
本屋がどんな表情だったかは画面で確認して貰おう。サミィはアクター達に振り向く。
「ちょっと打ち合わせが足りなかったようだけど、良く撮れたと思うわ。美男美女も多いし、由希とエリアはサービスを忘れていないし、佳奈歌とまゆらも剥き甲斐があったわ♪ 男性陣も出番を見極めて演じてくれたし、また続きをやりたいわね。みんな、お疲れ様☆ (実はね‥‥)」
これでもフィルムがオーバーして編集に苦労したのよ――――。