えん歌だい♪アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/03〜03/07

●本文

●先ずはTV局確保♪
「よぉーし! 今月は2本立てだ!」
 先ずは3月3日合わせの番組枠を確保し、えん歌だいプロデューサーはガッツポーズを漲らせた。
「次はLIVEとなるが仕方あるまい。兎に角、3月は忙しいぞ!」
 3月3日は『桃の節句』と『雛祭り』だ。『卒業シーズン』を絡める事も可能だろう。
 そして3月14日は『ホワイトデー』。3月は日本のイベントが割りと多いのである。
 4月下旬から放送された『えん歌だい』。遂にあと1ヶ月で1年を迎えようとしていた。

・『えん歌だい♪』出演者募集
 番組が課題とするものでオリジナルの演歌を歌って頂くものです。
 今回のテーマは『雛祭り』。
 桃の節句や卒業をテーマに盛り込むのも問題ありません。

●雛祭りで演歌☆
「演歌で雛祭りですか? はい、わかりました」
 事務所を訪れた演歌歌手の紗亜弥は、何時になく落ち着いたリアクションだ。所長は煙草を口に咥えたまま呆然と刻を止める。
「どうした? 体調でも悪いのか? 何時もなら、えぇ〜!? 演歌で雛祭りですかぁ!? だろ?」
 ――気持ち悪いですよ‥‥所長さん‥‥。
「い、いえ、雛祭りならアリかなって思ったんです」
 はにかんで見せる紗亜弥に、所長は残念そうだ。
「そうか‥‥まあ、次に期待させてもらうとしよう。ワルキューレとまた被っているが、選手も配慮してくれる事を期待するか」
 次? 男は今月2回分ある事を少女に伏せた。ニヤニヤとほくそえみながら――――。

・『えん歌だい♪』裏方募集
 舞台演出、衣装担当、大道具、司会、及び、紗亜弥の作詞作曲及び協力者を募集します。
 紗亜弥を雛祭りで染めて頂ける方、スタッフ一同お待ちしております。

●今回の参加者

 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1681 木野菜種(23歳・♀・亀)
 fa2472 守山千種(19歳・♀・ハムスター)
 fa2544 ダミアン・カルマ(25歳・♂・トカゲ)
 fa2638 九重・コノヱ(16歳・♀・小鳥)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa2712 茜屋朱鷺人(29歳・♂・小鳥)
 fa3161 藤田 武(28歳・♂・アライグマ)

●リプレイ本文

●えぇっ!? お雛様ぁ!?
 そりゃ驚きますよ。あたしが遅れて打ち合わせにやって来ると、決められていたんです。
「今回は雛祭りですか〜♪ 日本らしい行事ですので、今回は気が楽ですね〜☆」
 着物に羽織姿で両手を合わせ、守山千種(fa2472)さんが微笑みながら眼鏡の奥で瞳を和らげます。気が楽じゃないですよ〜。お雛様は千種さんで‥‥。
「あたしは司会も務めますから☆」
 え、えーと‥‥。周囲を見渡すと、衣装の高野正人(fa0851)さん、あたしの曲を作ってくれる木野菜種(fa1681)さん、セット製作のダミアン・カルマ(fa2544)さん、舞台演出の藤田 武(fa3161)さん、歌手のDESPAIRER(fa2657)‥‥演歌では夜倉紗無さん。そうだ、お雛様は‥‥。
「雛祭り、ですか‥‥懐かしい、ですね‥‥」
 久し振りの雛祭りに感慨深気な表情で遠くを見つめているようでした。あたしの声も聞こえていないみたい。再び周囲を見渡すと‥‥初めまして、かな?
「どうも、新曲が出来たから唄わせて貰おうじゃん♪」
 着物姿からイメージできない仕草で茜屋朱鷺人(fa2712)さんが挨拶してくれたんです。あたしは挨拶を返すと、最後に残った少女に視線を向けました。同じ位の年齢かな?
「去年の1月まで演歌の仕事もしてたのよ。え? どうして演歌に復帰したって? わたくしをからかう為に面白半分でマネージャーが仕事を取って来るのよね」
 ホワイトブローチはステキなんだけど、物々しい装備の九重・コノヱ(fa2638)さんが事情を話してくれました。あっ、コノコノちゃんがお雛様を‥‥。
「わたくしは歌に合わせて衣装もイメージしているの。かつて雛祭りの雛人形は武家子女など身分の高い女性の嫁入り道具の重要な家財の一つに数えられていたという事から、思い出と感謝を唄うつもりよ」
 へぇー。関心しているとダミアンさんが口を開きます。
「僕はあまり詳しい知識が無かったので勉強してきました。一口に『雛人形』と言っても色々種類やルーツがあったりして、想像するよりずっと奥が深い物なんだね」
「‥‥流し‥雛‥‥」
 ぼそりと紗無さんが独り言のように呟きました。先に続くようでもないので、再びダミアンさんが続けます。
「‥‥そ、そうだね。色々調べてる時、雰囲気を掴む為にひなあられの手作りにも挑戦したんだ。よかったら休憩時間に皆さんで食べて下さいね」
 わー☆ ひなあられー♪ 家事全般が得意なだけに美味しそうです☆
「それにしても、さすが『去る』の3月。あっという間に時間が流れてくわね」
「へぇー、猿の3月なんですか。菜種さん、物知りですね〜。じゃ、4月は何の動物かなぁ」
 一瞬あたしを見る茶の瞳がジトリとした感じがしました。
「前の曲はシリアスだったから、バランス取る意味でも明るくいくわね。紗亜弥も‥‥はい、笑顔でねー☆」
 ふええええ〜っ。あたしに近付くと両手で頬を摘まんで「むにーっ」とか言いながら引っ張ったんです。いひゃいですよぉ‥‥。あ、武さんが穏やかに口を運びます。
「雛祭りと言う事で、金屏風や五人囃子みたいなものを用意すると雰囲気が出るかな? 着物や巫女の格好を用意して歌手に歌って貰うのも面白いかもしれないね」
「そうですね、セットは雛壇をイメージに捉え、屏風や花、道具類を大きく作製し、背面に飾りましょう。屏風の絵柄は満開の桜の花枝を華やかに描き入れ、裏面に川面を流れる桜花の絵柄を落ち着いたイメージで描き、歌い手によって背景を変える事が出来るようにします。藤田さん、屏風の絵をお願いできますか?」
「うん、描くのは僕の得意技だし嬉しいよ★」
 順調に打ち合わせが進んでます。ここで正人さんが腕を組みながら細い目を向けました。
「紗亜弥さんはお雛さまーってことで動き難くならない程度にどんどん豪華に十二単みたいに重ね着してもらいましょうか」
「足元、気を付けて転ばないようにね☆ 紗亜弥♪」
 クスッ☆ じゃないですよ、菜種さん。この後、試着して何度も転びそうになったのはヒミツです。
 あ、そういえば、お内裏様は誰なんですか? ルックスだと朱鷺人さんかな?
「五人囃子や右大臣の役はエキストラにやってもらえばいいかな?」
「あ、でも‥お雛様が紗亜弥さんならお内裏様はあんまり人にやって貰いたくないような。なんか‥‥(悔しいってゆーか)」
 武さんに次いで正人さんが口を開きました。なんか最後が聞こえ難かったですけど‥‥。でも、菜種さんにアイデアがあるみたいで、軽い素材の人形になったんです。

●えん歌だいオンエアー
 ゆっくりと照明に舞台が浮かび上がってゆく。
 今回のセットは雛壇の三段飾りを連想させるものだ。赤いカーペットを床に敷き、『籠』『重箱』『御所車』といった道具が配置されており、満開の桜の花枝を華やかに咲き描いた屏風が「らしさ」を醸し出している。えん歌だい♪ セット担当2回目を担うダミアンの力作だ。
 前奏が流れる中、スポットライトを浴びた桃柄の着物に身を包む大和撫子美女が、清楚さを醸し出しながら微笑みを浮かべて歌声を紡ぎ出す。安定した歌唱力で歌い上げると、たおやかにお辞儀をして再びマイクを口に運ぶ。
「今宵3月3日は雛祭り、日本らしい桃の節句の行事ですね☆ 司会を務めさせて頂きます、守山千種です。今回の課題は『雛祭り』、皆さんにはどんな思い出がありますか? それでは唄って頂きましょう☆」
 千種が退くと同時にスポットライトに照らされたコノヱが姿を見せる。小柄な少女の衣装は桃をイメージした愛らしい着物だ。右手にマイクを持ち、空いた手には花を咲かせた桜の枝を持っている。
 旋律が流れる中、紡ぎ出されるは『結婚式を明日に控えた嫁入り前の女性が、雛人形を見て雛祭りの思い出と共に両親との思い出や今まで育ててくれた事への感謝を表す』という歌だ。
 若さ故か、未だ歌唱力に安定感は低いものの、思い出の部分を歌う時はしみじみとした表情を浮かべ、両親への想いを歌う所では、感謝と別れの淋しさを表現するかのように胸元に桜の枝を抱いた。
 伝えるべき事は視聴者に感じて貰えた事だろう――――。

 続いて雛壇の前に歩いて来たのは、精悍な風貌の朱鷺人だ。
「今日は久々の新曲───嫁に行くな妹よ、をお送りします。聞いて下さい」
 甘酒の如く甘味なメロディーが奏でられる中、紡がれる歌は『ふたりきりの兄妹だった妹との追憶の日々』。
 時に情熱的に、時に切なく、男は拳を軽く効かせながら安定した歌声で唄い綴った――――。

 ――照明が薄暗く絞られてゆく。
 舞台裏でダミアンが6枚の屏風を素早く裏返す中、暗めの青いライトを動かす事で、淡い光が流水を演出すると、簡素ながらもやや明るめの着物を細身に包む紗無がステージに立つ。紡ぎ出される旋律は明るくも暗くもなく淡々としたものだ。曲は『流し雛』。正人の演出が武の描いた小川の絵を効果的に映し出していた。
 歌の視点は流し雛から始まり、人の穢れを引き受けて、川を流れる様を紡ぐ。次いで流し雛を見送る側の視点で唄われ、流し雛は儚く見えるが、それは人も同じ。いつか沈む時まで、時間という川を流れていくのみと、優れた歌唱力は『流される雛も、流す人間も実際は大差ない』事を説く。
 刹那、テンポは少し下げられ、一曲分の思いを『意外性と真意』に込めて切々とサビを歌い出す。

 ――だから私は祈る。
 せめて一対の流し雛のように、最期の時まで愛する人と寄り添っていたいと――――。

 達観したような切ないテーマが、希望と願いに彩られた瞬間であった‥‥。
 歌い上げると共に、紗無も流されるように舞台から捌けてゆく。同時に司会の少女が再び現れる。
「それでは、今回のトリはお雛様に締め括って頂きましょう☆」
 千種の声に誘われるかのように、三人官女の一人を演出した衣装に魅惑的な肢体を包む菜種がステージに向かう。続くは桃色の十二単と豪華な装いのお雛様に彩られた紗亜弥だ。正人の適度な衣装製作により、動き難いという事はなさそうだ。
 三味線を構えた娘が一段雛壇を上がり、明るく楽しそうな旋律を響かせてゆく。音頭とまではいかないものの、思わず手拍子をしたくなるような曲調だ。少女も満面の笑みを浮かべてリズムを取り、歌声を紡ぐ。
 それは『雛飾りの準備から雛祭り当日の様子、そして最後の片付け』までを描いたものだ。

 ――仕舞っていた雛人形を出して並べる大変さ だけどそれもまた楽しくてわくわくと。
 3月3日・桃の節句、着飾りお雛様と並んで記念写真。
 お澄まし顔も白酒一口、頬はほんのり桃色・桜色。記念写真がまた1枚。
 祭りも終わりお片付け、寂しい気持ちをぐっと抑え、お雛様来年また会いましょう――――。

 歌い上げると菜種は紗亜弥を雛壇の最上段に導き、お内裏様を模った人形の隣に座らせると、三人官女の一人として位置に着いた。次いで、ダミアン、正人、武がセットの背後から姿を見せ、雛壇のセットを押してステージから捌けてゆく。お雛様は片付けられなければならないのだ。
 照明が雛壇で満面の笑みを浮かべる二人に絞られる中、交代するように司会がスポットライトを浴びる。
「はい☆ お雛様も無事に片付けられましたね。それでは、来年の雛祭りまでさようなら〜☆」
 穏やかな笑みで千種が手を振る中、カメラはゆっくりと引いて番組は終わりを迎えた――――。