えん歌だい♪OTHERアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 03/14〜03/18

●本文

●3月は日本のイベントが割りと多い
「よぉーし! 今月は2本立てだ! やるぞ! やるぞ! やぁるぞおぉぉ♪」
 えん歌だいプロデューサーは早速ライブの枠を確保した。
 3月14日は『ホワイトデー』。これに合わせようと考えたのである。
 4月下旬から放送された『えん歌だい』も遂にあと1ヶ月で1年を迎えようとしていた。

・『えん歌だい♪』出演者募集
 番組が課題とするものでオリジナルの演歌を歌って頂くものです。
 今回のテーマは『ホワイトデー』。
 バレンタインデーのお返しを渡すのも良いでしょう。

●ホワイトデーで演歌☆
「演歌でホワイトデーですかぁ!?」
 事務所を訪れた演歌歌手の紗亜弥は素っ頓狂な声を響かせた。所長は煙草を口に咥えたまま何故か涙目で感無量といった表情を浮かべている。
「これだよなぁ、これでこそ紗亜弥だ。気を遣ってくれても嬉しいぞ」
「はい?」
 小首を捻ってポカンとする紗亜弥。壮年の男を除いて事務所員は少女に機転が働いたとは思っていない。まあ、黙っていても支障はないだろう。尤も‥‥。
「だって今月2回もあるなんて驚きますよぉ」
 男は今月2回分ある事を少女に伏せていた事実をスッカリ忘れていたようだ。そんな事は置いといて、紗亜弥は顎に人差し指を当てて反対側に首を捻る。
「でも、ホワイトデーで演歌って‥‥あたしの曲を書いて頂ける方いるのかなぁ?」
 原則(!?)、バレンタインデーのお返しだけに、先月のイベントが成立していなければ成り立たないホワイトデー。女性の歌い手には難しい課題かもしれない。義理とか、貰えないとかネタは少なくないとは思うが、難題をクリアしてこそプロというものだろう‥‥。
「紗亜弥は誰かにあげたのかしら?」
 何度も首を傾げる少女にクリスティが声を掛けた。
「あ、はい☆ 沢山あげましたよ♪ 所長さんにもあげましたし、スタッフさんとか、沢山のレシピを教えて頂いたので、バリエも豊富だったと思います☆」
 満面の笑顔で答える紗亜弥。壮年の男はバツが悪そうに髪を掻いて苦笑する。
「3倍‥‥返しとか、期待してないよ、な?」
「3倍返し? 必殺技か、おーばーすきるってやつですか?」
 ――だから何の話だ‥‥。
「あら? そんな野暮な事を聞くの? そんなの今時の女子高生には当然よねぇ?」
 妖艶な微笑みに事務所の男は戦慄を抱いたという。話題だ! 話題を変えねばッ。
「そりゃ本命なら俺だって3倍でも10倍にでもしてやるさ。尤も、勘違いされても迷惑な話だろう? まあ、そんなとこだな。それより紗亜弥、個人的に渡した奴はいないのか?」
「‥‥ヒミツです☆」
 常等手段と知ってか否か、少女ははにかむ笑顔で答えた――――。

・『えん歌だい♪』裏方募集
 舞台演出、衣装担当、大道具、司会、及び、紗亜弥の作詞作曲及び協力者を募集します。
 紗亜弥をホワイトデーで染めて頂ける方、スタッフ一同お待ちしております。
 ‥‥いや、少女をホワイトデーで染めるのは難しいだろうとは思いますが。

●今回の参加者

 fa0851 高野正人(23歳・♂・アライグマ)
 fa1681 木野菜種(23歳・♀・亀)
 fa1774 味鋺味美(26歳・♀・蛇)
 fa2472 守山千種(19歳・♀・ハムスター)
 fa2481 喜田川光(37歳・♂・狸)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●先ずは打ち合わせ
 喜田川光(fa2481)さんが持参したクッキーを戴きながら、和気藹々と課題について話し合います。
「今回はホワイトデー‥ですから、お返しがどんな物になるのかわくわくする女の子や、予想外の男性からお返しがあってビックリ仰天な女の子‥‥とか言うのが面白いでしょうかね?」
 いつものように着物姿で上品に両手を合わせると、大和撫子な雰囲気を醸し出しながら守山千種(fa2472)さんが楽しそうに笑顔を振り撒きました。
 すると、分厚い黒縁眼鏡を掛けたツナギに身を包む女性の方が口を開きます。
「ホワイトデーなら‥‥学校‥‥桜‥‥って感じかしら? でも、実際は桜なんてこの時期どこも咲いてないけど、まぁ早咲きの寒桜って事にすれば問題ないかしらねえ」
 味鋺味美(fa1774)さんが微笑みました。眼鏡を外したらスゴイ美女なんて漫画を連想したのはヒミツです。
「あとは小道具だけど‥‥時期的に卒業式だから卒業証書の入った筒とか‥‥花飾りかしらね〜? 演出的なことは、ちょっと専門外だけど、桜吹雪か何かを降らせるのもいいかもね」
「学校と卒業式ですか」
 高野正人(fa0851)さんがツナギの組んでいた腕を解き、線のように細い眼差しを上げました。
「桜舞い散る中、思い人に貰ったバレンタインのお返しを渡すって絵になりませんか? 桜のセットを組み上げて、背景にCGとか張りぼてで簡単な場面設定をつけるって感じですか。桜吹雪みたいなのをやりたい方がおられればタイミングを図ったり‥と、こればっかりは実際に流れでやりながら打ち合わせしないと、ですね」
 毎回大道具やセットのお仕事をされているだけあって、あたしの記憶が追い着かないほど次々に語りました。つい先走り過ぎたかと、白いタオルを巻いた頭を掻いて苦笑する中、スモーキー巻(fa3211)さんが、サラサラする感じの茶髪から温和そうな瞳を開いて、細い顎に指を運びます。
「『春の訪れ』的な演出ができれば理想的ですね。味美さんや正人さんの案である桜吹雪も、非常にそれっぽい感じでいいと思いますよ」
 こうして方向性が決定すると、犬神 一子(fa4044)さんが袖を捲くったツナギから太い腕を見せて、力強く頷きました。赤毛の長髪を首の後ろで結った姿は、サムライか武道家のような感じです。
 そんな中、木野菜種(fa1681)さんが和服の袖から覗く手をあげました。いつも曲を作って戴いている頼れるおねえさんです☆
「演出に異論はないけど、ちゃんと曲のことを考慮してくれるのよね?」
「勿論ですよ。歌手の皆さんのイメージを聞いて、そこからあまり外れすぎないように配慮します。細かい部分の足し算引き算は動かせる物などでなんとかできると思うので、動かせない、もしくは動かし難い部分に関しては最大公約数的な感じにする事で纏め上げましょう」
 うーん、演出には算数が必要みたいで難しそう。次に衣装に関して、千種さんが口を開きます。
「あとは衣装‥‥ですか? 私はホワイトデーと言うことで、マシュマロのような薄いピンク色の着物を着ることにしますね。紗亜弥ちゃんは‥‥どんなのがいいかしら? 土筆の柄とかも面白いかもね〜☆」
 着物の袖で口元を隠してクス☆ と笑いました。つくしかぁ。彼女ならきっと文字は漢字の筈です。後で気付いたのですが、メールだったら、つちふでとかどひつと読んでいたかもしれないのはヒミツですよ☆
 
●舞台製作です
 菜種さんが作詞作曲を獣化して頑張っている間、あたしは舞台製作現場におじゃましました。
 高野さんは何だかテンションも高く張り切っています。犬神さんはガッシリした体格から想像できるように、演出に沿ってセットを組み立てたり、主に力仕事に汗を流していました。瞳が合ったので、あたしが訊ねると、彼が微笑みます。
「出演者の安全のためにも土台からきっちり作らないとな。怪我をされたら大変だし、プロとして例え1日のみのセットでも、数年後に使える位の物は作らなきゃ失格だろう?」
 職人さんの言葉は重いです。でも、安心して歌に集中できる環境も作ってくれているんだと、改めて再認識しました。皆さん、ご苦労様です☆
「ねぇ、背景だけど、スクリーンに投影するのか、大道具で作るのか決めたの? お互い新人じゃないのよ、そこ決めて置かなきゃ駄目じゃないかしら」
 味鋺さんがセットと演出担当の方を呼びました。男性陣が苦笑する姿が微笑ましいです。そんな中、喜田川さんが訪れました。
「彼らの為に、バナナの差し入れをと思いましてね。バナナはエネルギー源として優れておりますから。あ、そうそう、紗亜弥さんのメルアドまだ教えて貰っていませんでしたね」
 そういえば皆に聞いてたっけ‥‥。あたしは苦笑するしかありませんでした。

●レッスンです
『海の向こうからの突然の届け物、差出人は遠い空の下 遥かなる海の上に居る想い人。
 いつの日かその人に手渡せることを願い、今年もまた食べてもらえぬチョコを作っていた私。
 だけど心は、ずっと彼の人の元に届いていた。
 異国の白いお菓子、彼の人の心とともに‥‥私の元にー♪』
 ‥‥って感じですか? 菜種さんが豊かな胸元で腕を組んだまま、瞳を開きます。
「そうね‥‥曲調はバレンタインの時同様に直球で演歌よ。冒頭はうみねこの鳴き声と波の音から始まって、三味線の音が入ってくるの。一見、先月のバレンタインと同じような始まりだけど、こっちの曲の音色は明るくね。『チョコを作っていた』という部分は、先月のバレンタインの曲のフレーズをアレンジして使用しているわ。ちゃんと曲を聞いてる人なら、すぐに先月の曲と対になってることが分かるようにしなくちゃね♪ あ、紗亜弥。曲の最後、『私の元に』の部分は空いている手を胸に当てなさいな。曲の表現方法は、何も歌うだけじゃないのよ。もう一度唄ってみて」
 レッスンは唄っては直しての繰り返しで、仕草を入れながら仕上げてゆきます。でも、前より注意されなくなったと思うけど、どうなのかな? あたし成長しているのかな?
「今日はここまでにしましょ。これであたし紗亜弥に何曲書いてるのかしら?」
 指折り数える姿を見つめながら、感謝で一杯になりました。いつも有り難うございます☆

●リハーサルです
「立ち位置はこの辺でよろしいですか? はい☆ では司会を進めますね♪」
 微笑み絶やさず千種さんがリハーサルを進めた後、戻りながら胸に手を当てて息を吐くと苦笑します。
「かなり慣れて参りましたので、楽にはなりましたけど、まだまだどきどきしますよね‥‥失敗したりしたらどうしようかと思ってしまうので。ですが、紗亜弥ちゃんや他の方々に支えられて何とかなっています。紗亜弥ちゃんも頑張ってくださいね☆」
 そんなっ、まだまだふつつかものですっ。あたしも千種さんの笑顔に救われていますよぉ。
 喜田川さんが唄う『白き道』が響き渡ります。男が女に愛の告白をしようと悶々とした思いを募らせている歌だそうですが、コブシの利かせ方は何時も通り見事です☆ あ、戻って来た。お疲れ様です☆
「それにしても‥‥最近自分の唄っている歌を考えますと、自分の春もほしくなりますね」
 白髪を掻きながら苦笑しました。そうですよね、あたしも自分の事と錯覚したりします。
 ‥‥それにしても、最近高野さんの元気が途端に低下したのが気になります。具合が悪いのかな?

●はじめてのホワイトデー
「ホッワイットデー♪ 今まで家族ぐらいにしか返した事はありませんが! さらばグレーな青春‥‥グレーなのに青とはこれいかに〜」
 なんて浮かれ気味な正人だが、日が経つに連れ深い溜息に彩られた。ふと気になったスモーキーが声を掛けると、細目の青年は訳を話す。
「紗亜弥さんが好きなのってなんでしたっけね。自分が驚くほど紗亜弥さんのこと知らなくてちょっと凹み気味なんです」
「まあ、何人かお返しをしなきゃならない相手はいるけど。義理ばっかりだから、そんなに難しく考えていませんよ。3倍と言ってももとがもとだから、相手もそんなに期待はしてないだろうしね」
 ――そしてリハーサルは0時を周り14日を迎える事となる。
 一子が義理アメとか言いながら、バレンタインデーに貰った貰わないを気にせず、ホイホイと女性陣に渡してゆく中、細目の青年が少女にぎこちない動作で歩み寄り、外へ誘う。
「紗亜弥さん‥‥感謝の気持ちです」
 ‥‥青年よ、伝える言葉位は用意しておこう。
 半信半疑で受け取った少女が箱を開けると、紗亜弥の顔型チョコ。ハート型の枠もチョコで作られており、作った本人が苦笑するように、少女趣味っぽさが醸し出されていた。
「これ、あたしの顔ですか? っていうかホワイトデーの?」
 暫しの沈黙が流れてゆく。正人には数時間に感じられた事だろう。俯いた少女が戸惑い気味に口を開く。
「えっと‥‥ごめんなさいっ!」
 突然のごめんなさいコール! プレゼントセンスか、気の利いた言葉が欠落していた故か? 正人は崩れそうになったかもしれない。
「じゃなくて‥‥負担かけちゃったみたいで‥‥ありがとうございます☆ でも、なんか食べるの勿体無いっていうか、あたしがあたしを食べるなんて複雑ですね」
 何ともぎこちない成り行きをこっそりと窺いながら、仲間達は微笑んでいたらしい‥‥。
 きっと本番の歌声も彩りが広がった事だろう――――。