雪上のブラッドダンサー南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/27〜05/01

●本文

●イントロダクション
 雪を覆われた世界スノエルでは二つの陣営が長きに渡る内戦の歴史を刻んでいる。
 古き伝統と規律を重んじる貴族主義のプリンシパルに対し、改革を謳うリバイズはプリンシパルの王都陥落を目標として侵攻。
 カリアッハ山脈を越えねばならない状況下を強いられたリバイズは、駐屯基地を築き、プリンシパル防衛拠点『イグルー』を落とすべく動き出すが‥‥。

●陣営の簡単な設定
【プリンシパル】任務:イグルー基地防衛。
 中世の騎士をイメージとして捉えて下さい。服装も優雅で気品が漂うものが用意します。実用性より機能美を優先する傾向。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(最大人数までOK)。
 8mの人型兵器です。防衛用として短時間使用に特化されており、ホバリング機構を持つ機動性重視の短期戦タイプ。基本外観はシャープな造形で、高貴さが漂う鎧のような感じです。装甲は薄く、燃料消耗が激しいのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(剣)、銃器(銛のようにワイヤーの付いた射出アンカー機構あり)があります。

【リバイズ】任務:イグルー基地攻撃。
 プリンシパルに反乱する形となっており、同志の集団的なイメージとして捉えて下さい。野外活動が多い事から、実用性重視の防寒着を用意します。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(1機または副座型か2機まで)。
 8mの人型兵器です。基本外観は流線型なフォルムの傘状上半身下に、武骨な腕部や脚部があります。このデザインは雪上行動の特殊性とリアルさを強調しており、雪が機体に積もらず、腕や脚を風雪から守るようなイメージとなっています。脚部は長いスキー板のようになっており、安定性を保つ為に杭上の突起が施されています。装甲は強固ですが、機動性は鈍いのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(腕部から射出する杭)、銃器があります。
・ブラッドダンサー
 リバイズの特殊部隊名です。SGの機動力不足を補う為、スキーやスノーボード(ときにはスケート)を駆って機動戦を繰り広げるエキスパート。生粋の軍人より、スカウトされた学生等の若者が多いらしいです。

●シリーズ化
 SteelGraveを舞台のエッセンスとした1作品もシリーズ化に踏み切ったが、状況な難航中らしい。
 そんな中で反対意見が無かった事と賛成が半数を越えた為、雪上のブラッドダンサーもシリーズ化へと移行する事となった訳である。
 しかし、前回の放映は監督の予定していたものと若干の相違があった。
 問題は幾つかある。アクターの演技が最も冴えている部分にスポットを当て、撮影編集されるという事は、やはり演技が重要なのだ。
 今回の主役をやるとアクターが決めても、互いの演技に差異があったり、漠然としたものならば、より差異が少なく、冴えの感じられる演技のアクターにスポットが向けられる。
 シリーズ化に踏み切ったのは、個々のアクターを両陣営で組ませて演技させる事で、より注目されるエピソードを盛り上げようという意図が監督にはあった訳だが、今後もアクターに委ねる方向性で撮影編集される事となるだろう。

 今回は『障害物の少ない雪原で、偶然の遭遇戦(戦闘中に雪崩に巻き込まれる両陣営各1名)』というプロットのエピソードだ。

●tactical03
 イグルー基地侵攻経路を二つ絶たれたリバイズは、最後の経路となる「クーノ」を侵攻するしかなかった。
 見渡すばかりの広大な雪原だが、頻繁に雪崩が起きる為、侵攻経路としては危険と見合わせていたルートである。戦闘でも発生すれば呑み込まれる確率は高い。
 そんな吹雪の中、両陣営は偶発的に遭遇する事となった――――。

●募集区分と提出資料
 このドラマは8名を二つの陣営に分けて展開します。4対4が望ましいですが、偏っても構いません。基本的に、リバイズのイグルー基地攻撃に対処するプリンシパルという知恵比べ的な展開の中で、互いに宿敵を感じてゆく物語となっています。
――――――――テンプレート――――――――
【勢力】プリンシパルかリバイズ。
【名前】役名または芸名そのままでも構いません。
【設定】どんな立場で、どんな性格のキャラクターを演じるのか。
【役割】双方のSG乗りか、リバイズのブラッドダンサーか、プリンシパルの白兵部隊か選択。
【補足】機体名や装備、服装、得意、苦手など補足する設定がある場合に活用して下さい。
【演技】今回の主なプロットです(打ち合わせで変更OK)。台詞や行動を明記して下さい。
・起:クーノを侵攻するリバイズはプリンシパルと遭遇し、突発的に戦闘開始。銃声が連奏を掻き鳴らし、大きな雪崩が発生してしまう事で、両陣営から各1名が巻き込まれてしまう。
・承:雪崩に巻き込まれた2人は辛くも洞窟に逃げ込み九死に一生を得る。しかし、戦場を分断するような雪崩では、救出も容易では無いだろう。洞窟の入り口も雪の壁に覆われた。
・転:敵同士だが生き残る為に次第に協力し合う2人。互いの境遇や目的、考えを聞き、理解する機会もなかった敵の一片を垣間見る事となる。しかし、予想以上に救出は行われず刻は過ぎるばかりだ。
・結:もう駄目かもと何らかの覚悟を決める中、両陣営協力の元、2人は助け出される事となる。人命救助としての協力作業を終え、複雑な心境の中、両陣営はそれぞれ背中を向けて帰路へ向かうのだった。
――――――――――――――――――――――――
 今回のプロットを見ての通り、スポットが当たるのは巻き込まれた2人です。他の面々は断片的な登場となり、それぞれ救出を模索する演技と、協力するまでの経緯、シャベルでの雪掻き作業シーンの3つに分けられます。SGの手を使うのも有効ですが、基本SGとシャベルしかありません(その為に共同雪掻き救出と展開します)。
 今回の戦闘シーンは序盤のみを予定しています。出撃シーン演出は省き、侵攻している部分から始めなければ、フイルムが危ういかもしれません。

●サポート
 裏方担当。フイルムに余裕がある場合、サポートしたアクターとのシーンが流れるかもしれません。
 例)サポートしたアクターへ衣装(脚本/弁当)を渡して激励。演技指導をするなど。
 但し、初日のみですから、ニュアンスを間違えないで下さい。

●今回の参加者

 fa0065 北沢晶(21歳・♂・狼)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3293 Even(22歳・♂・狐)
 fa3451 各務・皐月(23歳・♀・小鳥)
 fa3936 シーヴ・ヴェステルベリ(26歳・♀・鷹)
 fa4874 長束 八尋(18歳・♂・竜)
 fa4905 森里碧(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

●tactical03
 横殴りの風雪が視界を遮る中、スノーモービルに跨るリサ・コリンズ(各務・皐月(fa3451))は、灰色と真紅に彩られたシャープなフォルムを模る2機のSGと対峙する真紅の人影を捉えていた。真紅の装甲服を纏ったミハエル・ミュラー(ディノ・ストラーダ(fa0588))が告げる。
「ワクチン輸送の責任者、特殊部隊所属のミュラー少佐だ」
『将官は司令官のケンプ中将だ宜しく頼む‥‥ん?』
 出迎えた灰色のSG『ロキ』から、オスカー・フォン・ケンプ(鬼道 幻妖斎(fa2903))の声が響いた。刹那、訝しげな声が洩れると同時、クーノ雪原に集う者達は異変を感じ、ミハエルが切れ長の瞳を流す。
「敵か?」
 吹き荒れる雪の濃霧を視界が捉え、映し出されるは流線型の上半身に武骨な腕部や脚部を覗かせる白いSG『イスカリオテ』だ。サユリ・ナラシノ=愛称サラ(森里碧(fa4905))の愛らしい風貌が驚愕に彩られる。
「うそ‥プリンシパルのSG?」
 それは偶然の遭遇だった。リバイズは密かにクーノ雪原を掻き分けていたのである。
「て、敵影確認! 交戦区域内の民間人信号なし。ブラッドダンサーリフトオフ、散開して下さい! イスカリオテ、FA射撃入ります!」
 少女の畳み掛ける指示の元、SG胸部の運搬用リフトが降り、ブラッドダンサーチームが雪上に散らばってゆく。白兵部隊を捉えたリサがヘルメット越しの瞳を研ぎ澄まし、アクセルを回す。
「こんな時に敵と遭遇ですか‥‥紅い機体? まさか、シリアさん?」
 スノーモービルが滑走する中、ホバーで一気に先陣を切るのは真紅のSG『スティンガー』を駆るシリア・イェンネフェルト(シーヴ・ヴェステルベリ(fa3936))だ。
「見つけたわよ! 赤いスノーボードの男ッ!」
 リバイズを接近させまいと銃声が奏でられ、雪原は瞬く間に戦場と化した。
「待て! 機体には運搬用のワクチンを詰めているんだぞ! 民間人が何人犠牲になると思うんだ、頭を冷やせ! ‥やってくれるな、戦意の高い部下をお持ちのようだ」
 皮肉と共にミハエルの瞳がロキを見上げる。コクピットでオスカーは、休日に宿題を押し付けられた学生のようなウンザリ顔を浮かべて苦笑する。
「敵さんも、せめてワクチン輸送の時くらい控えて欲しいなぁ」
 溜息と共に覗く視界の中、赤い装甲服の背部ジェットで宙を滑空しながらレーザーアックスを振り翳し飛び込んでゆくミハエルを捉えた。同様に眼下でリサが迷彩柄のスノーボードの敵兵と交戦中だ。
「ちょこまかとすばしっこい奴‥‥今度こそ」
 機関銃の弾をばら撒くものの、巧みなシュプールでラグナ・アルフェロフ(長束 八尋(fa4874))が洗礼を躱す。アイスブルーの防寒服姿が左右に流れ、両手を交差させて撃ち捲くる2挺拳銃が硝煙を噴き上げる。
「やるね‥前よりうんと腕を上げてる‥‥でも、吠える風を侮らないでね‥‥!?」
 異変に逸早く気付いたのはブラッドダンサーだった。次いでサラが轟音に周囲を見渡す。
「凄い銃撃の音‥‥違う! 雪が鳴ってる!」
 その頃、高台から何時ものように狙撃体勢を整えたアキラ(北沢晶(fa0065))は、巨大な津波の如く雪崩れ込む白い濁流を目撃する。
「おやおや、大自然の怒りって感じっすねー」
 呑気な声と裏腹に雪崩は交戦中の敵味方隔てなく降り注ごうとしていた。各々が退避に転ずる中、真紅の機体と共に呑み込まれた赤いスノーボードが宙に舞う。
「そんな‥‥ナルシスさん?」
「‥私達の銃声の所為ですか? いいえ、元はリバイズが‥‥」
 雪の濁流に後悔の色を浮かべたリサは、雪崩を隔てて呆然と佇むラグナを捉えた。

●洞窟に閉じ込められて
「う‥うーん」
 意識を取り戻したシリアは虚ろな瞳で周囲を見渡す。コクピットは闇に包まれ、外界からも光が見えない。浮かび上がるのは機器類の放つ仄かな明かりのみだ。
「ここは‥‥確か雪崩に巻き込まれて‥!?」
 シリアは懐中電灯を取り出し、ハッチを開いた。ライトの灯りが闇を照らす。
「洞窟? この雪の壁が入り口なら閉じ込められたって事ね‥‥!?」
 照らし出した一点を捉え、瞳を見開く。映し出されたのはSGの手中で意識を失っている青年だ。
「赤いスノボの男‥‥生きているの?」
 腰の銃を抜くものの、彼から反応はない。シリアは再びコクピットに滑り込んだ。通信機が生きている事に安堵の色を浮かべ、連絡を試みる。状況を告げる中、瞳がSGの手中を捉えた。
「意識を失っている敵1名を確認。救助をま‥‥ちょっとエネルギー切れ? まったくもう‥‥成長期じゃないんだから、もう少し燃費が良くてもいいのに!」
 素っ頓狂な声を響かせ、シリアは困惑の色を浮かべる。機体のエネルギーが切れたという事は、もはや鋼鉄の塊に過ぎない。やがて冷気が強襲する事だろう。

 ――地上ではシリアの通信で二人とも無事ある事をリバイズへ告げていた。
「理屈は要らないと思います‥‥一時休戦、ですよね? 戦場のトリックスターに、赤い狼さん」
 ラグナはオスカーとミハエルを捉える。意見の擦れ違いも考えられたが異論は無いらしい。SGを駆る指揮官等とサラが打ち合わせを始め、ブラッドダンサーと白兵部隊は除雪作業に取り掛かった。

 ――パチパチと焚き火の音と共に暖かさを感じてナルシス・フロイト(Even(fa3293))は瞳を開く。
 霞む視界に浮かび上がるは、初めて見る赤毛の若い女性だ。髪の色と同じ情熱的な瞳が青年を捉える。
「気がついたようね。言っておくけど、引きずり出されたわけじゃないから、私には触らないでよ? 寧ろ助けたのはコッチなんだから」
「おや? その声は‥‥あの赤いSGのパイロットがこんな美人さんだったとは、嬉しいですね。洞窟の中で銃はまずいと思いますよ?」
 にっこりと微笑みながら告げるナルシスだが、シリアの銃口が下りる様子はない。
「戦闘中にスリーサイズを聞きたがる飢えた狼に気を許すつもりはないわ。凍死したり縛られないだけ有り難く思って欲しいわね」
 強気な姿勢に揺ぎ無いシリアだが、拘束しなかったのは縛る道具が無かった為だ。ナルシスがゆっくりと立ち上がると、彼女の銃口も向きをあげる。青年は相変わらず余裕の笑みだ。
「まあともあれ、お互いここで運命を伴にするつもりはないでしょう? なんとかここを出る段取りをしないと。‥‥あ、ちなみに僕はナシアス・フロイトって言います。貴女は?」
「名前なんか聞いてどうする気? ‥‥‥シリアよ」
 僅かに視線を逸らして名前を告げた。
「さて、どうしましょうかね、岩壁が厚ければ通信も期待できませんか」
「少し前に連絡済みよ。味方が救助に来てくれる筈だわ‥‥ッ!」
 豊かな膨らみを押し潰すように腕を抱くシリアに、青年は防寒着のジッパーを下ろす。
「ちょっと! なんのつもり? これ以上近付いたら‥‥!?」
 放り投げられたのはナルシスが着ていた防寒着だ。
「外で働くのが仕事ですからね、暖かいですよ。人肌が一番だとは思いますが‥‥ジョークですよ」
「‥‥どうだか」
 シリアは小声で呟き防寒着を羽織った。焚き火の炎が弾ける音と共に彼に告げた言葉は――――。

『親愛なるまいすいーと。お元気ですか? 僕は今、雪崩に巻き込まれた人の救助作業です。戦争に参加してから、始めて人の役に立ってるような微妙な気持ちを味わってます』
 休息の合間にボイスレコーダーで語るアキラは、雪を踏み締める音に顔を向けた。瞳に映るリサが差し出すのは湯気の発つカップだ。
「あくまで救助活動の一環です。別に貴方達の為じゃありませんから」
 周囲を見渡せば、ロキやイスカリオテが除雪作業に機動音を響かせており、ミハエルが真紅の装甲服を半身脱ぎ捨て、スコップで雪掻きに汗を流していた。
(「ワクチンの有効時間はあと三時間‥‥間に合うのか?」)

 ――燃やすものも無くなると急激に寒さが襲い掛かった。
「遅いですね〜、まあ救助が来たとしても捕虜か銃殺ですかね」
「ふん、銃殺は無いんじゃない? リバイズ幹部の息子さん」
 刹那、ナルシスの表情が強張った。更にシリアが問う。
「誰だって不平、不満は抱えてる。そんなの、いちいち晴らしていたら社会が綻ぶに決まってるじゃない。プリンシパルの規律と貴族主義体制による秩序の維持は‥‥少なくともあなた達のやり方よりは正しいと信じてる。リバイズに何が出来るの? 何をしたか分かっているの?」
「何を‥って? ‥!? 何か聞こえませんか?」
 雪壁へ眼差しを向けた刹那、洞窟の入り口が崩れ外の光が洩れた。同時に姿を見せたのは敵と味方だ。

●救出のあと
「次に逢うのは戦場か‥あの世か‥またな」
 薔薇の花を投げ渡すと、背部のジェットでミハエルが華麗に飛び去ってゆく。
「次に砲火を交える時はお手柔らかにね」
 次いでオスカーが穏やかな表情を浮かべて踵を返す中、シリアがナシアスに振り返る。
「じゃあね‥‥今度あった時は、あなたの思いをへし折って、私の秩序を示すわ、覚えておいて」
 去ってゆくプリンシパルを見送るラグナとサラの表情は複雑だ。
「良い方達でしたね、此処が戦場でなければ‥良かったのに」
「‥‥これで良いのよね?」
「さて、我々も帰還しますかー。ナシアスさんにはラブロマンスの詳細をお聞きしませんとねー」
 アキラの声を聞きながら、青年は苦笑する。
「そんな雰囲気なら良かったのですけどね」