GUN&ROAD 10南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
09/25〜09/29
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前回のリプレイを見る
●本文
●TVCM
――舞台は急展開を迎えた。
何の因果かトレジャーハンターの船に命拾われユラユラと。
待ち構えたのは『女海賊』。何とか退け辿り着いたのは見知らぬ大陸。
ここは今までの大陸と繋がっているのか否か?
物語は新たな舞台でリロードされる――――。
「ええ、そうよ。キャストは何とか集まって、まだ放映は可能です。え? 初期のメンバー? 何か事情があるのでしょう。はい、宜しくお願いします」
サミィ・ライナー監督は携帯を切ると、深い溜息を吐きながらテーブルに頬杖をついた。
「もぉー、エイミーまでどうしちゃったのかしら? 肩書きを女優にしたのに、他の番組に出演しているようでもないし‥‥」
「どうします? いつまでも病人では誤魔化せませんよ? リネットと同じく行方不明でも問題ですし‥‥」
「‥‥最悪今回出演しなければちゃんとした治療が必要って事で港の町へ置いて来たとすればいいわ」
「では彼女が入るまで待つと?」
「継続アクターの参加を優先させるわ。WEFのプロデューサーに初日の参加が落ちたなんて知られたら、続けるのが難しくなるのよ? 勿論、私達の給料にも響くでしょ?」
WEFのシステムは複雑だ。募集初日とその後では評価が違うのである。つまり、集まりが悪い番組は継続を見送られる場合もあるし、足りない場合は撮影すら行われない事も有り得る。
「何とか10人集まってくれたけど‥‥まだ安心はできないわよね」
まだまだ予断を許さない状況は継続中らしい。
●trigger10――地図の断片編or未来編
先ずは選択制で決める事が一つ。大陸に辿り着いたものの、前回は何も語られていない。そこで、シナリオプロットが2本用意された。『地図の断片編』と『未来編』である。未来編とは大陸を見つけたが、その時、時空の歪みに突入してしまい‥‥というものだ。または誰かの夢オチでも良いかもしれない。サミィ監督は夢オチがアクターに好評なら、一人一人の夢を再現して見るのも良いかも☆ なんて言ってましたが‥‥。夢オチの場合はアクター達に構成は任せるとの事です。1話完結であれば、時代考証なしにワイワイ‥‥って、アリなんですか?
夢オチの場合、誰の夢か主導権必須。監督気分でどーぞ♪ ってサミィ監督に聞かれるとマズイですね(苦笑)。
・地図の断片編初期プロット(配役の相談による修正可能=演じる場合の台詞含む)。
起:数日の働きとレオンの財産で幌馬車と地図を手に入れ、旅するゴールディ一行。
道中幾台もの馬車と遭遇する。どうやらこの大陸ではトレジャーハンターという仕事が多く、宝を探して旅する者が溢れているという。「不用意に馬車を降りない。夜は気を付ける。誰も信じるな。後は女がいると知られるなってとこだ。この土地で生き残る最低条件さ」。やがてその意味を知る事となる。
承:それはハンター? それとも盗賊?
真夜中。ゴールディ一行の幌馬車にトレジャーハンターが潜入する。人質を取られ、言う通りにしろと脅されるゴールディ達。身包み剥がされ、遂に見つかってしまう地図の断片。ハンターは驚愕に呟く。「これと似た物を持っている奴がいたな。やはりこれは宝の地図か」。ハンターは地図の断片を奪って姿を消した。
転:機転を利かせた者は?
ゴールディ達が地図の断片を奪われた時、偶然馬車を離れていた者が現場を発見。付近の馬を奪って(借りて)追跡。駐留地点を確認して引き返すと、仲間達へ知らせた。「地図の断片を取り返すのよ!」。反撃の狼煙はあがる。
結:戦闘。同じ地図の断片を所持する者とは?
反撃に出るゴールディ一行。ハンターを懲らしめて『似た物』を持っている奴の手掛かりを聞く。「しかし、見つけ出してどうする? おまえ達も奴から奪うか? ハンターなら咎めないがな」。ゴールディ達の答えは?
・課題:ゴールディ一行は役割を分担せよ。
起:働くシーンメンバー(どんな仕事をどんな風にしているか)。
承:人質にされる人(1名が妥当か)。
転:馬車を離れていた者(複数OK)。身包み剥がされたくない者推奨(笑)。
複数なら馬を奪う際に善悪の遣り取りなどあればGOOD。
結:戦闘メンバー。通常シーンより戦闘シーンを重んじたい人向け(注:ここで担当しないと戦闘に参加できない訳ではありません。通常シーンが制限される分、戦闘シーンの活躍が増します)。
・課題2:トレジャーハンターを演じるアクター。
地図の断片と似た物を持つ者の外見的特徴を提示せよ。次回から捜索予定となります。
「夢オチが自由なだけに、今回のプロットはガチガチですね」
「どっちを選ぶかしらねぇ♪ 一度、現代物とか近未来物とかこのメンバーでやって見たかったけど、GUN&ROAD2 なんて企画しとこうかしら☆」
監督‥‥本編終わらせてから考えましょうよ‥‥。
●募集区分
・ゴールディ一行:(1人〜)
ゴールディ、リリィ、エイミー、ヴィシャス、カスミ、リーン、ミナ、レオン、アイリーン。
・トレジャーハンター:性別不問(1人〜)単独でもチームでも構いません。
この大陸では盗賊と同等の意味があるほど定着している名称。
本来は宝捜しをする者達を示すが、宝を奪ったりする行為が平然とされており、真っ当な職業ではない為、取締も無く、ハンター達では、奪われる方が悪いという事が当たり前となっているらしい。
・今回のサブキャラクター(打ち合わせに因ります)。
今回のNPCです。尚、アクターが演じないNPCの場合は最低限の登場しかしない予定です。アクターが演じる場合、名前はお好きに☆
●演じる為に必要な書類項目
・配役:ゴールディ一行/トレジャーハンターなど。
・役名:登場人物の名前です。本名で出演してもOK。
・服装:簡潔に。衣装はイメージに合うものを用意する予定です。
・設定:どんなタイプ(設定)のキャラクターを演じるか明記して下さい。
・容姿:髪型や髪色、瞳の色や口調など、明記していなければ役者のそのままとします。
・武器:敵と戦う時に使用する武器です。
尚、結構ノリで制作されている為、とんでもない銃以外は採用予定です。
勿論、所持していなくても、格闘武器でも構いません。
起:(行動や演出、台詞など)
承:(同上)
転:(同上)
結:(同上)
●サポート関連
衣装作成/脚本協力/大道具・小道具など前準備関連。
名前とどんな仕事をしたか載る予定です。
●何らかの事情で優先期間を越えてアクター枠が空いた場合、新規、または復帰(?)キャラ募集します。
今回も10名に枠を増やしますが、参加枠が埋まらない場合は8名に戻させて頂きます。
●リプレイ本文
●trigger10
――それは、前触れも無く起きようとしていた。
「えー、またぁ!?」
馬車に揺れる金髪ツインテールの少女が振り返り、幼さの残る愛らしい風貌に困惑の色を浮かべた。
(^^ゴールディ・ゴールドウィン:碧野 風華(fa1788)
「そんなイヤそうな顔しないで、馬車を止めて休みましょう♪ みんな寝ているんだし、ね?」
両手を豊かな胸元で合わせ、和服美女が朗らかな笑みを浮かべて見せる。小首を愛らしく傾げると、結ったポニーテールがサラリと揺れた。
(^^カスミ(霞):金田まゆら(fa3464)
確かに荷台の仲間達は深い眠りの中。手綱を担うゴールディとて、そろそろ睡魔の誘惑に限界を感じるほど疲れている。仮眠だけでも摂るべきだろうか。尤も、カスミが直ぐに眠らせてくれそうもないが‥‥。
「いいわ、その代わり私が休んでいる間の見張りはカスミに任せたわよ? こんな荒野で賊に襲われたら堪ったものじゃないわ」
「任せて☆ さ、荷台の方へいらっしゃいな♪」
満面の笑みで手招きする和服美女。ゴールディは諦めにも似た深い溜息を吐くと、手綱を引いて馬車を止め立ち上がった。荒野の風に、細身を着飾ったドレスが靡く。
「もぉ、しょうがないわね」
ツインテールの少女は夜風に金髪を揺らすと、荷台で待つカスミの元へ向かった。手招きした和服美女は正座しており、ズイっと手前に空間を作る。ここに座れと言っているのだ。
仕方なく足を伸ばしてゴールディは背中を向ける。衣装も相俟って、黙っていれば可愛らしい人形のようだ。カスミは胸元の合わせ目に細い腕を入れると、たおやかな微笑みで櫛を取り出す。
「リボンを解くわね☆」
刹那、一気に解放された金髪が、優麗な川の流れの如く落下し、艶やかなロングヘアと化した。愛しそうに左手で掬い上げ、優しく梳いてゆくカスミ。背中を向けるゴールディは、心地良い櫛捌きに瞼は重く、遂に船を漕ぐ有様だ。そんな少女に和服美女がクスリと微笑む。
「‥‥‥‥♪」
何かに閃き、カスミは表情に悪戯っぽさを浮かび上がらせると、リボンを新たに二つ胸元から取り出した。いったいどんな内ポケットがあるんだなんて聞くのは野暮ってものだろう。
しかし、この悪戯心が全ての始まりになる事を彼女達は知る由もない。
●GUN&ROAD――番外編〜開いた夢の扉〜
――さぁ、もうすぐ出来るわよ☆
「ん‥‥そっか、私、眠っちゃったのね‥‥!?」
ゴールディは重い瞼をゆっくりと開くと違和感を覚えた。きゅッと金髪が結ばれる感覚と共に、円らな青い瞳が見開かれてゆく。サラリと横に映るは二本のツインテール‥‥否、左側だけで二本見えたのだ。今まさに右側のリボンが結ばれようとした刹那、戦慄の表情と共に、慌てて少女が叫ぶ。
「ち、ちょっと! なにやっているのよッ!?」
――きゅッ★
「ああぁぁッ!!」
絶叫と共に少女の細い身体が仰け反った。電気が迸っているかのように小刻みに痙攣する中、何事かと褐色の娘が白髪を掻きながら目を覚ます。
「何よぉ、変な声だしてさぁ」
(^^;リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
その時、彼女は見た。ゴールディのフォーテールが舞い揺れると共にピンクの粒子が飛び交い、細身のシルエットが大人っぽく変容してゆく光景を――――。
「な、なに? ゴールディ? どうしちゃったの!?」
驚愕に瞳を見開く中、ファンシーな光源をバックに、ドレスの胸元が張り裂け、レオタードに包まれたたわわな二つの膨らみが飛び出すと、曝け出した腰がキュンっと引き締り、ばちんッと桃尻が肉感的に盛り上がった。続いてピンクの粒子が少女に纏い付き、クルリと回ると共に、テンガロンハット、ガンベルト、滑車の付いたウェスタンブーツが模られ、最後にヘソ出しレオタードの背中にマントが翻る。その姿は、元のスタイルを思い出させない位に艶かしく肉感的だ。ゆっくりと青い瞳を開いてゆくゴールディ。何気に艶っぽいのは気のせいか? 刹那、色っぽく変容を遂げた美女が高笑いを響かせた。
「おーほっほっほっ!! ウェスタン魔王ルックの完成よ★」
「あらま〜‥‥お、おっきくなっちゃったわねぇ‥‥」
仰け反って高笑いを続けるゴールディの豊満な胸がゆっさゆっさと揺れる様に、ただ唖然と覗き込むリリィ。そんな中、青い瞳が研ぎ澄まされ、褐色の娘を冷たい色で睨む。
「よくも前回は視聴者サービスさせてくれたわね! お返しよっ!」
振り上げた手中に現われるは、長い杖に巨大なリボルバーの弾倉が模られた武器――リボルバースタッフ――。ブンブンと両手で回した後に狙い定め、弾倉の回転と共に先端から何かが発射された。放たれた洗礼はリリィへと飛び込んでゆく。
「ひいぃぃッ!?」
閃光がくの字に曲がる褐色の肌を貫いた。瞳を見開く中、それは始まる。
「ええっ!? ちょっと‥‥!?」
視線を落とした自分のたわわな胸元が、まるで空気が抜けるように萎み出したのだ。慌てて両手で触れるものの、その勢いに戦慄くばかり。遂に柔らかい感触が掌に感じられなくなった。
「な、何でこんなに‥‥アタシはちっちゃく!? っていうか、つるぺったんじゃないのぉ!」
ゴールディの高笑いが響く中、ガクリと膝を着くリリィ。愕然とする褐色の『少女』に歩み寄るは、夜会ドレスの裾を揺らす白い足だ。視線が上がる中、優麗に靡く長い黒髪の『霞』が映る。
「あらあら、これじゃ女の子か男の子かも分からないわねぇ★」
「‥‥って、アンタ、カスミ?」
「カスミ? それは仮の名前なの。私はマジカルミストよ♪」
――なに? マジカルミストって?
●目覚めた令嬢、それは‥‥
「うぅん‥‥」
窓から注し込む暖かい陽射しに、少女はゆっくりと瞳を開く。
(^^;リーン・スティール:百瀬 愛理(fa1266)
霞む視界に映し出されたのは、金で彩られ、繊細な装飾を施された二本の柱だ。それは高く伸びており、赤い天井で固定されていた。半透明のカーテンがオーロラの如く揺れ、背中を包む柔らかい感触が優雅な気分にさせる。リーンは、安堵感に満ちた微笑みを浮かべて円らな瞳を閉じた。
(「あぁ、いいベッドだな‥‥高価なものはやっぱり寝心地も違うんだな‥‥!?」)
再び寝息を立ててしまいそうになった刹那、少女は慌てて瞳を開くと、勢い良く半身を起こした。優麗な長い金髪が頬を撫でる中、驚愕に瞳が見開く。
「な‥‥なんなんだよー!」
絶叫の如き声が静寂に包まれた豪奢な室内に響き渡った。彼女は小奇麗なドレスに細身を包んでいたのだ。瞳に映るは、膝丈のふわふわしたスカート。視線を左右の肩に流せば、上品なパフスリーブ。普段なら薄汚れたオーバーオールの筈‥‥。
どうしてこんな所に? パニックに陥った少女は、慌てて身を包む衣服を脱ごうと手を運んだが‥‥瞳を研ぎ澄まして止めた。
「誰かいるのか!?」
リーンは慌ててベッドを包むカーテンを引き、訝しげな表情で室内を見渡す。広すぎる室内に人の気配は感じない。静寂の中、頬を冷たい汗が滴ってゆく。
「リリィ! ゴールディ! おいッ、誰もいないのかよ!? チッ!」
右手を軸に、下半身を大きく振ってベッドから飛び降りるリーン。お嬢様な雰囲気にそぐわない振る舞いだが、そもそも彼女に気品がどうのと言うのは無駄というものだろう。
改めて腰下を包むドレスへ視線を落とし、無言で調度品の扉を次々と開けてゆく。衣服が並んでいるものの全てドレスだ。レースやフリルだらけの衣装も見られ、少女は絶句した。深い溜息が洩れる。
「‥‥これが一番マシか。仕方ねぇ、先ずは部屋から出るか」
意を決してリーンは部屋のドアを開いた――――。
――廊下はどこまでも続く終わりのない道に思えた。
部屋に陽光が射していたのに、ここは左右に明かりが灯る薄闇の中だ。響き渡るはリーンの靴音のみ。不安の色が表情を彩ってゆく。
(「ったく、歩き難い上に、足がスースーするぜ。ったく、みんな、どこに行っちまったんだよ」)
思い出せない。どうして自分が屋敷の寝室で眠っていたのか? もしかすると誘拐されたのだろうか?
――カツン★
靴音が響き渡り、リーンは慌てて突っ走った。この際、派手にスカートが捲り上がろうと気にしない。視界に人影が映る。
「ま、待ちやがれ! 話を聞かせてくれよ!」
スっと壁に消える人影へ駆けながら少女は声を響かせた。靴音と共に反響するのはリーンの声のみだ。息を弾ませ、人影のいた場所に辿り着く。サラリとロングヘアが反動で前に揺れる中、リーンの視線が横へ流れる。刹那、再び瞳は驚愕の色に染まった。
「いつまでもガキだと思ってたけど‥‥そうしているともうガキだなんて言えねぇのかも知れねぇな」
(^^アレン・バクスター(アンジェラ):壬 タクト(fa2121)
壁に背を預けて少女を見下ろすのは、灰色の髪を少し逆立て、左目を眼帯で覆っている精悍な風貌の男だ。リーンは唖然としながらも顎を引くと、頬を染めながらも上目遣いで照れを隠す。
「なっ‥‥べ、別に好きで着てるんじゃねーよっ!」
萌えたか? アレン。
「い、いいじゃねーか‥‥似合ってるぞ」
眼帯の男は少しだけ気恥ずかしげにドレス姿のリーンを褒めた後、両手を固めて身構え、抗議の眼差しを向ける少女の頭を乱暴に撫で回す。一瞬抵抗の意識を解き、懐かしい感覚に心を奪われた。
『じゃーな』
笑いながら離れてゆく手の感触と脇を通り過ぎる男の姿に、リーンは慌てて振り返る。だが、そこに先ほどまでいたアレンの姿は既にいない。
「アレン? おい、どこ行っちまったんだよ!? 冗談は無しだぜ!? アレ‥‥!?」
漆黒の闇に浮かび上がったのは一人の影だ。明かりに照らされるは黒髪を後ろに撫で付け、オールバックに流した端整な風貌。肩から猫が姿を覗かせ、指で喉を撫でるとゴロゴロと気持ち良さそうに顎を上げた。
「どうした? ペルノ‥‥。腹が減ったのか? それともマタタビが欲しいか?」
(^^;ロバート・マクレガー(エルバッキー):工口本屋(fa4421)
愛猫に話し掛ける紳士的な衣装に身を包んだ男に、リーンが口を開く。
「アレンは何処だ!? アンタ何者なんだ!?」
『オーッホッホッホ♪』
刹那、少女の背後から高笑いが響き渡った。金髪を靡かせて弾けるように振り向くリーン。瞳に映ったのは、赤いロングドレスにラメ付きの黒い羽のショールを肩に掛けており、真っ赤なストレートロングヘアの美女だ。ブルーアイシャドーの瞳を細め、青い口紅が妖艶に微笑む。
「貴女みたいなお子様、アレンが相手にするわけないでしょう? 出直してらっしゃい!」
「なッ、おまえは!? あんときの女海賊!? ‥‥!?」
少女は我が目を疑った。絨毯が波打ったかと思うと、美女の足元から巨大な鰐の頭が飛び出したのだ。高笑いと共に、まるで絨毯を沼地の如く、太い脚が現われ、続いて尻尾が覗いた。獰猛な爬虫類の目が、ギロリとリーンを映し出す。
「‥‥おいッ、アリかよ!? 普通絨毯から鰐が出て来るかぁ? って、鰐に乗っているかよ!」
動揺しながらもビシッとアンジェラを指差した。そう、確かに美女は巨大な鰐の背中に乗っているのだ。
「オホホホ♪ ワニの餌にしてあげるわ!」
ドカドカドカとモンスターよろしく、少女に向かって迫り来る巨大鰐。その動きは速い! 眼光にリーンを映して向かって来る中、無意識にスカートへと手を忍ばせた。
「‥‥!!」
手に馴染む感触に少女は不敵な笑みを浮かべると、左右の腕をクロスするように薙ぎ振るう。リーンの手から数本のナイフが放たれ、巨大ワニへと飛び込んでゆく。
しかし、乾いた音と共に切先は強靭な鱗に弾かれ、四方八方へと飛び散った。
「‥‥う、うそだろ?」
流石のリーンも顔を崩し、慌てて背中を向けて駆け出すと、揺れる視界に微動だにしないロバートが映る。
「冗談じゃないぜ! おい、早く逃げろ! アンタも食われちまうぞ!」
「‥‥素晴らしい位どうしたら良いか分からない展開だが‥‥ご心配なく、万能紳士『ロブロイ』に不可能はない! ペルノ!」
万能紳士ロブロイことロバートが指揮棒を手中に出現させると同時、肩に乗った猫が太い尻尾を立てた。男の瞳がナイフの如く研ぎ澄まされ、優雅な動作で手を動かす中、合わせてペルノが大きな口を開く。
『にゃあぁぁぁッ!!』
猫の愛らしい鳴き声が空間を振動させる中、まるで見えない衝撃波を叩き込まれたように、少女が後方の巨大鰐+アンジェラと共に吹き飛ばされた。
「なんですってえぇぇッ!!」
「うわあぁぁぁッ!! アァァーレェェーン!!」
●シンクロする世界
「ほっほっほっ♪ さあ、私の靴を磨くのよ!」
ウェスタンブーツをしゃがみ込むリリィの前に突き出すゴールディ。続いてセクシーなドレス姿のマジカルミストが縊れた腰に両手を当て、口を開く。
「ほら、礼儀が成ってないわね。聞えなかったの? そうね、ご褒美に大好きなお酒を差し上げても良いわよ♪」
見下すように微笑む美女だが、酒の一言にリリィの瞳が輝いた。弾けたように顔をあげ、ニンマリと口元を緩める。
「お酒!? それ本当? ゴールディのブーツを磨いたら‥‥あんッ!」
身の丈以上はある杖を出現させると、マジカルミストが勢い良く褐色の頬を薙いだ。乾いた音と共に転がるリリィ。じんッと痛む赤く染まった頬に手を当て、少女は涙目で美女を睨む。
「な、なにするのよ! 小さくなった分、柔らかくて痛いんだぞ!」
「口の聞き方に気をつけなさい☆ 魔女王ゴールド『様』、でしょ?」
「だ、誰が魔女王ゴールド様なんて‥‥あれ? ゴールディ様に『様』なんて付けて‥‥あれれ?」
マジカルミストが細める瞳に映る少女が、戸惑いを見せた。どうやら魔法でゴールディには『様』が自然と付いてしまう呪縛が掛けられたらしい。
「(取り敢えず、ブーツを磨けばお酒が呑めるのよね)‥‥それでは、磨かせてもらいます‥‥!?」
ゴールディに対して紡ぎ出した口調は、まるで使用人だ。これも魔法と察すれば、動揺も少ない。兎に角、お酒、お酒、呑める、呑める、と言い聞かせながら、高笑いを響かせるフォーテール美女のブーツを磨いた。
「これでよろしいでございますか? 魔女王ゴールド様」
「まあ、いいわ♪ 霞?」
「はい、リリィ。ご褒美よ☆」
マジカルミストが手に持っているのはウィスキーの注がれたグラス。カラン☆ と琥珀色の液体の中で、氷が涼しげな音色を奏でた。もう、リリィの瞳は釘付けだ。
「お酒〜☆ 何日振りかのお酒よぉ〜♪」
バタバタと四つん這いで傍に寄り、両手でグラスを受け取ると、一気に喉に流し込んだ――刹那。
「けほけほッ‥‥ぺっぺ! え〜ん、お酒が美味しくないぃ〜」
まるで苦いものでも口に入れたように、咳きこみ、舌を出して瞳を潤ませた。二人の美女は予期していたかの如く、高笑いを響かせてゆく。それが溜まらなく腹立たしく悔しかった。
「くっ‥‥お酒も呑めないなんて、もう小さいのはゴメンだわぁ!!」
褐色の肌にオーラを滾らせ、拳を固めるリリィ。流出する光の波が全身を包むと、少女の衣装がマナ板の如き胸元や局部を覆うのみの、際どい小悪魔コスチュームに変わった。これはこれで視聴者に萌える要素はあったろう。しかし、その腰にガンベルトは見当たらない。
「魔女王ゴールド様なんてッ大ッ嫌いでございますぅッ!!」
下僕口調と裏腹に、リリィが、わーっと両手をあげて突進してゆく。仕草さえ殆ど子供だ。そんな少女に「ふふん♪」とハナで笑い、フォーテールを揺らしてリボルバースタッフから銃声を響かせる。
床に跳弾する甲高い音と共に、ダンスを踊る様相の褐色少女。そんな中、マントを棚引かせて疾風の如く魔女王が肉迫する。
「おーほっほっほっ! 返り討ちにしてあげるわ!」
金髪を振った途端、フォーテールが蛇のように伸び、リリィに鞭の如き洗礼を叩き込んだ。もはや、髪の毛ではない。幾十も束と化したロープと同様だ。褐色の肌を弾く度に、小さな肢体が舞い踊る。
「きゃんッ、やぁッ、イタっ」
「魔女王ゴールドに逆らおうなんて1000万年早いのよ!」
のたうつ金髪が横薙ぎに振るわれ、宙で激しくスピンしながらリリィが床に叩き付けられた。
「くっそぉ‥‥小さい分、リーチに差が‥‥」
――否、もはやそんな問題ではないと思うが‥‥。
そんな中、事態は急展開を迎える。
●巨大ワニ出現!? 重なる夢の中で
――感じる‥‥強大な夢の波動に誘われている‥‥。
「な、何なんだよッ、ここは!?」
リーンは光の粒子が舞う漆黒の世界を落ちていた。否、正確に言えば、落ちていると感じていた。長い金髪は舞い上がり、ドレスも風を受けたように波打ちながらバタバタと音を立てている。スカイダイビングの如く手足を広げる少女の視界に、頭から落下して行く美貌の紳士が映った。
「俺は夢の案内人。ここは夢と夢を繋ぐトンネルのようなものだ」
「トンネル!? 夢だって!? あー、めんどくせえ! それで、オレは何処に落ちてんだよ!?」
リーンの問いに、ロブロイは静かに首を横に振る。
「強大な波動に吸い込まれているようだ‥‥流石に万能紳士の俺としても、どうする事も出来ない」
どこが万能紳士なんだ。指揮棒を振るっただけで、何もしていないじゃねーか‥‥というツッコミが脳裏を過ぎった刹那、悲鳴を響かせるアンジェラと、白い腹を見せたまま滑稽な姿で落下する巨大ワニが急速落下して通り過ぎた。つまり‥‥。
「あのワニと女海賊も一緒かよ!?」
「‥‥そうなるな‥‥先の事は俺にも分からない。だが、万能紳士ロブロイも夢の案内人としてお付き合いしよう。見ろ、光だ!」
眼下に光が覗いたかと思うと、急速に眩い空間が広がってゆき、アンジェラと巨大ワニ、リーンと万能紳士が包まれた――――。
――どんッ★
突然に響き渡った衝撃音に、リリィ、魔女王ゴールド、マジカルミスト霞が、同時に顔を向けた。
視界に映るは、巨大ワニに下敷きにされた赤い髪の美女と、紳士にお姫様だっこされたドレス姿の少女だ。思わぬ闖入者に瞬きを数度繰り返す三人。
「な、何よ、これ? どうしてワニが‥‥」
「し、知らないわよ! 霞! どういう事なの!?」
「分からないわ‥‥。怪しいのは確かだけど‥‥。何者なの!? 魔女王ゴールド様の御前よ!!」
「魔女王‥‥ゴールド様ァ? って、ゴールディじゃねーかよ。どうしたんだよ、この髪‥‥」
「‥‥魔女王ゴールドですって!?」
混乱しながらも知った顔を指差すリーンの傍、圧し掛かるワニに堪えながら、アンジェラが口を開く。
「‥‥そう‥‥聞いたことがあるわ‥‥魔女王ゴールドは黄金郷エルドラドの末裔エルドラダー! エルドラドはその力を濫用したために滅びたがその血脈は大西部に密かに残っていた! だがエルドラドを封印した一族もまた、その血脈を残していた! ゴールディのツインテールは魔女王ゴールドの封印だったのよ! でもまさか‥‥あんな小娘が!」
戦慄の表情を浮かべる赤毛美女だが、リーンはシラっと眼差しを細めた後、魔女王ゴールドに視線を向けた。
「微妙に分からねぇ話だが、魔女王って事は、敵と見て良いようだな!」
「そうよ。あなたをワニの餌にするのは、その後って事になるわね」
「ケッ、そう簡単に思い通りにさせて堪るかよ!」
どうやらアンジェラとリーンは共闘の構えを取ったようだ。赤毛の美女が巨大ワニに跨る中、少女が歩幅を開いて魔女王を睨む。指をピクンと動かした刹那、スカートの中から得物を取り出し、両腕を前に突き出すと同時に切先が風を切る。放たれたのは8本のナイフだ。
閃光の如く吸い込まれてゆく切先の前に、マジカルミストが割って入る。
「こんな物理武器なんて♪」
微笑むと同時、艶やかなスカートが舞い上がると、白煙を棚引かせて幾つもの弾丸が不規則な軌道で発射された。それをミサイルというのだが、夢の中であり、時代的に彼女達は知らない。敢えて呼称するなら、ファンタジックに『フォーミングブリッド』と呼ぼう。
次々とナイフへ飛び込んでゆき、派手な爆炎と化す様に、リーンは軽く舌打ちした。
「訳の分かんねぇ武器使いやがって! ていぃぃやあぁぁッ!!」
少女は諦めず、スカートの中からマジックの如くナイフを取り出し、怯まずに放ち捲る。霞も負けじと白煙をスカートの中から棚引かせた。
「スカート勝負で負ける訳にはいかないわね★」
「もー勘弁してくれっ」
この勝負は腕が止まった方が負けだ。リーンは半泣き状態で、休む事なく腕を振るった。彼方此方で爆炎が宙を彩る中、忘れてはいけないアンジェラがワニで突撃を掛ける!
「魔女王もワニの餌にしてあげるわあぁぁぁッ!!」
「爬虫類風情に私が食べられる訳ないじゃない♪」
リボルバースタッフを両手で支え、銃声を響かせるゴールド。カンカンッ★ と乾いた音を弾かせて重装甲を見せる巨大ワニだったが、大きく開いた口に銃弾が入った瞬間、巨大な爆発を起こして吹き飛んだ。合わせてボロボロのアンジェラが白煙を泳がせて弧を描き飛んでゆく。
「きいいぃぃぃッ! 覚えてなさあぁぁぁいぃぃッ!!」
そんな様を、万能紳士ロブロイとリリィは目で追う。
「‥‥これも運命というものか」
「あらら〜、派手に飛んだわねぇ」
一方、マジカルミストとリーンの終わらない戦いも決着を迎えようとしていた。美女が杖を肩に背負い、ドレスに包まれた両足を開いて身構える。
「切りが無いわね。なら、これでどうかしら♪」
杖の先端に光の粒子が集束した次の瞬間、激しい轟音と共に未知なるエネルギーが発射され、少女を飲み込んでゆく。
「なッ!? オレもやられ役かよおぉぉぉッ!! アレンをもっと出しやがれぇぇぇッ!!」
ボロボロのリーンが白煙を泳がせて弧を描き吹っ飛んだ。そんな様を、万能紳士ロブロイとリリィは目で追う。
「熱で消滅しないで飛んでゆくのがナンセンスだな」
「すっごーい、これ(マジカルミストの武器)欲しいかもぉ」
周囲を紅蓮の炎に包みながら、魔女王の高笑いが廃墟同然の世界に響き渡った。
「弱いわ! 愚民共は私に平伏せば良いのよ! あまりにも可笑しくて弾む胸が痛くなりそう♪ さあ、そこのマナ板チビ娘!! これで私の力が分かったでしょ? 跪いて拝むがいいわ♪」
「さぁ、頭が高いわよ♪ 魔女王ゴールド様に平伏しなさい★」
「魔女王ゴールド様ァ!」
神に祈りを捧げるように、両手をあげて褐色の半身を上下させるリリィ。そんな光景を背後に、万能紳士ロブロイが口を開く。
「さて、そろそろ万能紳士の力を見せて幕とするか‥‥」
――パチン★
彼は指を鳴らした――――。
「うわあぁッ!!」
長い金髪を舞い躍らせ、リーンは跳ね起きた。荒い息を整え、周囲を見渡す。ここは馬車に荷台だ。汗で頬に張り付いた髪を指で払うと、恐る恐る自分の身を包んでいる衣服に瞳を落とす。いつもの薄汚れたオーバーオールだ。少女は安堵の息を洩らす。
「‥‥‥‥もー、あんな服は勘弁だぜ‥‥オレは寝なおす」
帽子を目深に被り、再び倒れて寝息を洩らすリーンであった。
次に半身を起こしたのはゴールディだ。寝惚け眼で視線を周囲に流すと、寝苦しそうにうんうん唸っているリリィと満面の笑みを浮かべるカスミが映った。
「‥‥なによ? あれは夢?」
胸元に視線を落とす少女。視界に飛び込んで来たのは、たわわな二つの膨らみだ。
「‥‥え゛」
驚きと戸惑いの中、二つの乳房を両手で掴んでみる。‥‥柔らかい。否、ちょっと硬めだ。例えるなら、パンのような‥‥。
「ってこれ何、あんぱん? カスミの悪戯ね! これのせいであんな夢見たのかしら?」
ドレスの胸元を弄り、取り出したパンをカスミの口に放り込むゴールディ。彼女の夢がどんな風に変容したかは本人しか知らない――――。
――翌日。
「おはよ、ゴールディ」
「あら? 早いじゃないの?」
手綱を引くツインテールの少女が振り向くと、はにかむようなリリィが映った。褐色の娘は何も言わず、ゴールディの隣に腰を下ろす。
「何よ? お酒なら次の町まで買えないわよ!」
「酒は未だ残っているよ‥‥‥‥えっと‥‥何か、ごめんね。ゴールディ」
「何? また何かやらかしたの?」
「何もしてないけど‥‥相手の身になるのも気持ちが分かって良いよね。お酒は止めようかなって思っているんだ♪」
「えぇーッ!?」
そして、リリィはぷっつりと酒を止めた。
数日も保たなかったが、一行の路銀も少しは楽になったとかならないとか――――。
――刻を同じく。
「うぅん‥‥なんてこうげきなのかしら‥‥」
「‥‥あ、暑い‥‥この万能紳士の力で‥‥」
荒野で行き倒れ状態の二人。傍で猫が鳴いていたが、暫らく目を覚まさなかったという――――。
放送後抗議の電話が殺到した。GUN&ROAD全話DVDにも収録されない幻の話になったとかならないとか‥‥。
レアと見られるか否かは今の彼等に知る由も無い‥‥。
TO BE CONTINU NEXT 10★20 GUN&ROAD OUT02 OK?