STAR SHIP南北アメリカ

種類 ショート
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/21〜01/23

●本文

 ――StarShip。
 宇宙ステーションから幾つもの船が当たり前のように行き交う未来。
 数名を乗せた宇宙船を舞台に、毎回異なる宇宙船の内外を舞台としたSFアメリカドラマが企画された。
 この企画の意図は、様々な物語を多種に作れる事と、出演者が毎回変わる新鮮さにある。
「つまり、ありふれた人間模様を宇宙船に納め、コメディやサスペンス、ホラーにラブストーリーと、様々な物語を一話完結スタイルで展開させるドラマです。扱うのは大きな宇宙戦争的なものではなく、SFテイストを入れた小さな物語という訳です」
 サングラスの男は売りの部分を説明した。確かに過去の有名な作品は宇宙船を舞台としながら、大きな国家間戦争や星間戦争を中心としたSFドラマが多い。毎回舞台を変え、主人公達を掘り下げる事で大人気の作品もあるが、それらとは逆の構成で行おうというのだ。
「新鮮ではあるかもしれんが、地味にならないかね?」
「それに毎回違うセットが必要になるぞ。CGで処理すれば済むが、最近の視聴者は目も肥えている。セットも必要ではないのか? 女性の意見も聞きたいな」
「そうですわね。難解さを取り除いた構成は、女性に受けると思います。後は衣装や小道具が問題ですね。何かこう、商品なら買いたくなるような感じだと良いかしら?」
「様々な物語を描けるのは悪くないが、初回のテーマはどうするんだい?」
 様々な意見が飛び交ったが、どうやら企画は通してくれるようだ。
 後はスタッフを募集して形にしてゆけば良い。
 サングラスの男は部下に募集告知を出すよう指示した――――。

●現在不足している担当(複数OK)
 先ず、このSFドラマの世界観は共通である事を踏まえて会議に望んで欲しい。

・初回用のシナリオプロット
 登場人物は最大8名(登場人物を設定する必要はありません)。一隻の宇宙船内外を舞台としたシナリオプロットです。テーマと起承転結であらすじを簡潔に説明して下さい。

・衣装関連
 登場人物達にどんな衣装を身に着けさせるか、また、衣装のバリエーション等を簡潔に説明して下さい。イベント等でのコスプレも考慮し、見た目と機能美に優れているものを望んでいます。

・小道具関連
 登場人物達が携帯できる小道具類の基本コンセプトとバリエーションを簡潔に説明して下さい。玩具等に相乗効果をもたらしますので、センスが要求されます。

・大道具関連
 少ない予算で毎回異なる宇宙船内を構成できる提案を簡潔に説明して下さい。職人の巧みな技術が要求されます。

・モデルデザイン関連
 宇宙船のデザインバリエーションを簡潔に説明して下さい。プラモデルやゲーム等に相乗効果をもたらしますので、センスが要求されます。

・BGM関連
 どんな感じの音楽を起用するか、イメージを簡潔に説明して下さい。シナリオプロット担当と打ち合わせて、このシーンではスローで和やかな音色の音楽、とか、緊迫したリズムの音楽とか、合わせるのもアリです。ドラマを盛り上げる重要な部分です。

・全体構成
 各話ごとにどんな宇宙船で、どんな物語を展開させるか、簡潔に説明して下さい。何回の番組にするかも決めましょう。意見を纏めるもよし、各自に委ねた上で自分の意見を言うのもOKです。
 または、次回に再び会議希望でも構いません。

・その他
 その他、考えられる担当を☆ 但し、企画に深く関わっている役職は却下です。物語上、自分をアピールした上で、こんなのは、いかがでしょう? 的に留めて下さい。
 会議にお手伝いとしてお茶汲み等、なごみ系は歓迎です(本当か?)。

●今回の参加者

 fa0267 ツナ・フヂコ(20歳・♀・ハムスター)
 fa0521 紺屋明後日(31歳・♂・アライグマ)
 fa1586 雨宮 巧(14歳・♂・狐)
 fa1714 茶臼山・権六(44歳・♂・熊)
 fa1819 ミハイル・チーグルスキ(44歳・♂・狐)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)
 fa2673 広田信昭(25歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

●宇宙の浪漫は会議に託された
 オフィスの一郭にある会議室。集まっているのは8名の老若男女だ。
 楕円形のテーブルを囲むは7名。そんな中、お茶を汲んでいるのは、握ったら折れそうな程の華奢な躯つきの少年だ。金髪を軽やかに揺らし、穏やかな微笑みと共にコーヒーや紅茶を配る。
「はい☆ 冷めない内にどーぞ♪」
「大道具のコンや、あんじょう頼むわ」
 紺屋明後日(fa0521)がティカップを受け取り自己紹介すると、雨宮 巧(fa1586)は「大道具ですかぁ」と感嘆の声をあげ、満面の笑みを浮かべた。
「お茶汲み炊き出し、大道具の手伝いまで何でもしますよ♪」
「あら? それじゃ雑用の為にわざわざ来たのかしら?」
 澄んだ声に驚愕の色を滲ませ、マリーカ・フォルケン(fa2457)が緑色の眼差しを向ける。豊かな胸元が覗く優雅なドレスを纏う金髪の若い女性に、少年は頬を染めながら返す。
「脚本家を目指していますが、顔ぶれを見れば分かりますよ。勉強になればいいかなって」
 彼はまだまだ芸能界では新人であり、テーブルには本職の男が3人も確認できた。遠慮がちな少年に向け、サングラスを掛けた赤毛の青年が、口を開く。広田信昭(fa2673)だ。
「気負う事は無いんじゃないかな? あっしは新人だけど真剣に楽しまないとね。その為には喋れる時に喋らないと詰まらない。甘いもんでも食べながらリラックスしていこうじゃないか」
 テーブルの中央に持参した菓子をバラ撒く中、ドアが開き、サングラスの男が姿を見せる。今回の企画を立案したプロデューサーだ。
「‥‥丁度良いな。キミ、書類を配ってくれ」
 立っていた巧に人数分の書類を渡すと、席に腰を降ろして視線を流す。
「‥‥ふむ。それでは順を追って始めよう。先ずは初回用のシナリオプロットだ。準備した者は?」
「先ずは前提として主人公は宇宙の運び屋である」
 僅かな静寂の後、口を開いたのは、スキンヘッドで鋭い眼差しを向ける着流し姿の男だ。口髭を生やした厳つい風貌の、茶臼山・権六(fa1714)が逞しい腕を組み続ける。
「仮タイトルとして『恐怖の荷物』。主人公達は平和主義団体『グリーン・スペース』のリーダーに呼ばれた。仕事は、銀河連合の大国ブランシュが製作している、恒星を1発で破壊しその星系を消滅できるヘル・ファイアという実験中の中型ミサイルのコアを盗んだ2人の博士と、コア本体と制作データ。それを破棄できる惑星ナソスまで運んで欲しいという物だ。コアの制作データは‥‥」
「‥‥先ずはそこまでだ。他には?」
「では、私も運び屋で述べましょう」
 黒い長髪の青年が眼鏡の奥に、茶の瞳を研ぎ澄ます。巻 長治(fa2021)だ。
「仮タイトルは『宇宙船鳴動してネズミ一匹』。珍しい動物を動物園へ輸送中、トラブルで宇宙ネズミのつがいがケースから脱走。この生物は食糧があれば短時間で爆発的に増える為、大至急捕獲せねばならない。艦長は徹底的な捜索を指示。捜索の途中でクルーの意外な素顔が明らかになったり、クルー間でトラブルが発生したり、別の動物の脱走を招いたりとネズミそっちのけで騒ぎが拡大。‥‥SFというだけで身構えてしまう人も、やはりいるのではないかと思います。テーマは宇宙船のクルーも、やっぱり普通の人なんです、で、いかがでしょう?」
「‥‥なるほど。なら、運び屋の線で衣装に話を進めよう。提案者は?」
 手をあげたのは、襟幅広めのマオカラーのシャツにスカーフを巻いた女性だ。ツナ・フヂコ(fa0267)は全身を見せるように立ち上がる。衣服は隠しボタンでスッキリ纏まっており、色は紺地でボディの両サイドに白の立て帯ラインが施されていた。茶髪とスカートを揺らし、腰を捻って背中を見せながら陽気な笑顔を向ける。
「サンプル制服を作りましたー☆ 今、フヂコが着ていまーす♪ ほらほら、ヒップバッグに携帯通信機や非常時用武器が入るんだよー。‥‥そうですねえ、運び屋なら会社ロゴはーST(スターシップトランスポート)とかぁGGC(ギャラクシーグローバルキャリアー)とかぁ、傾斜のついた書体に色は薄いブルーのライングラデーションに☆を散らせてと♪ マスコットキャラにイルカのエンブレムをリアルタイプで格好良く☆」
 なんて言いながらペンを走らせ、イメージを描き始めるフヂコ。既にデザイナーモードだ。その後、正制服や宇宙船内作業服など着替えて見せたり小道具を披露した。
「‥‥では、次だ。毎回異なる宇宙船内を構成できる提案は?」
 コンが待ってましたとばかりに発言する。
「数種類のパーツをいくつか製作してそれの組み合わせで別の宇宙船内を表現するちゅう感じや。これやったら、窓パーツとか照明は新しく作らなあかんかも知れんけど予算は抑えれるはずや。CADでモデル作ったんや、そのほうが解り易いやろ?」
 ノートパソコンの画面には、図面作成ソフトによって描かれた数種類のパーツが組み合わせを変えて船内を表現する様が映っていた。合わせて他のプロダクションに交渉して獲得した廃棄道具のリストも並ぶ。これなら確かに予算を浮かせて様々な船内を作れそうだ。
「悪くないな。次はモデルデザインだが、誰かいるか?」
「撮影用の装置案と舞台のデザインなら考えて来ましたけど‥‥」
 口を開いたのは信昭だ。サングラスの男は訝しげに眉を顰める。
「舞台だと? 依頼したのはモデルデザインだが‥‥まあいい、続けろ」
 細身の青年は立ち上がりスケッチを見せた。それは様々な星の世界観イラストだ。純朴な星、都市とプラントの星、密林の星、砂漠の星が描かれていた。世界観を把握できる描写力はあった。続けて彼は撮影案を説明する。
「特撮映像で使うような組んだ模型をアップで撮り、特大サイズに見せる手法を取ってみてはどうかな。特殊効果として雨や雪、煙は合成、CGを使う。実写より格安でしょう」
「‥‥その組んだ模型のデザインが無ければ撮影も出来ないのだがな。世界観は参考に貰っておく。次はBGMだ。‥‥キミかな?」
 サングラスに映るはマリーカだ。彼女は軽く肘を抱き、瞳を閉じてイメージする。
「宇宙の運び屋を主人公とするみたいですね。でしたら、オープニングは宇宙の広がりを表すかのような幻想的な曲を当てる事にしましょう。これは管弦楽中心の音色で、必要なようならスキャットも交える事とするわ。主人公たちのテーマ曲は、戦争とか軍隊は無縁でしょうから、軽めで軽快な音楽にしましょう。これは、弦楽器中心の音色がいいかもしれませんね。それと劇中歌として、主人公の会社のCM曲とかもあるといいですよね。例えば、『こちらSS−QQ−VII。手軽で頼りになる会社。ちっさなことから大仕事まで、気軽にメールをくれたなら、あなたのところに即参上。すぐさま解決、低料金。メールの宛先SS−QQ−VII♪』。覚えやすくて、誰もが口ずさめるような曲はいかがかしら?」
 フンフン♪ と指を振るいながらリズムを刻み、緑の瞳を開いて微笑んだ。
「‥‥悪くないな。‥‥さて、キミもBGMだったかな?」
 次にサングラスに映ったのは、不敵な笑みを浮かばせるミハイル・チーグルスキ(fa1819)だ。
「私か? 私は今後の全体構成を行わせてもらおう」
「‥‥ほぉ? それだけか?」
「我が輩としてはな‥‥受けるか調査した後と考えておる」
「私も権六さんと同じ意見です。好評なら4回のシリーズでいかがでしょう?」
 次のシナリオ案も用意してあると長治が告げた。
「確かに、SFは需要が微妙だ。キミ達の提案では売りが見え難いのも一理ある。シナリオは兎も角、衣装のポイントや小道具のフォルムが不鮮明で、何より宇宙船のデザインすらない。‥‥だが、やって見なければ分からないのも事実だ。‥‥これで以上かな?」
 ――やって見なければ分からない‥‥。
 多くの視線が金髪の少年へ向けられた。巧が小さな拳を握り締める。
「あの、僕のシナリオも聞いて頂けますか?」
「‥‥お茶汲みでは無かったのか? いいだろう」
「テーマは『初めての仕事』。宇宙船を使って、銀河のあちこちにお届けものをする会社に就職し、初めて仕事に出る新人サブパイロットが主役です。ドラマの設定をさり気なく説明しつつ、無事初仕事が終わるまでを描く初回シナリオ。宇宙船の人工頭脳、通称ココア(コズミック・コース・アシスタントの略)に挨拶されたり、先輩にミスを注意されたりしながらも、無事、目的の星に近付く。ところが、メインパイロットが急病で倒れてしまい、着陸できなくなる。しかも、運んでいた種は時間が経つと勝手に成長してしまうという代物で、一面ジャングルになりながらも、新人たちの活躍で無事着陸、ことなきを得る。初回なので、簡単な御話を考えてみました」
「‥‥種だと? あぁ、運んでいた物か。荒削りだが参考になった。ミサイルとネズミと種か‥‥そうだな、簡単なシナリオで1回制作してみよう。先ずは俳優の興味を示すかも重要だ。募集を掛けて1日で集まれば今後の制作も考えよう」
 以上だ。そう残してサングラスの男は会議室を後にした。設定案に重複が無いだけに、幾つか採用されるようだ。シナリオは8名を割り当てた権六が優れているが、起承転結では長治も巧も悪くない。
 こうして宇宙の浪漫はアクターに託されようとしていた――――。