刑事、撃たれてなんぼ南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
シーダ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/21〜05/25
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●本文
ズダダダダダ!
車のドアに穴が開き、炎を拭いたと思ったら爆風をあげて吹き飛んだ。
炎が割れ、そこからは男が1人‥‥
カツッ、カツッ‥‥と靴の音が聞こえる。
「罪もない市民たちの仇‥‥ お前だけは許しちゃ置けねぇ」
刑事リチャードは、帽子を投げ、男たちに見得を切った。
「えぇい、撃ち殺せ!」
ハンドガン、サブマシンガンに撃たれ、リチャードがよろめく。
ちっ、ちっ、ちっ‥‥
リチャードは、指を振って不敵に笑っている。
「俺には、そんなものはきかねぇよ」
弾が突き刺さったポリスバッジ、十字架、ロケット、下ろしたばかりの札束、炭酸飲料の王冠、などなど、などなど‥‥
色んなものが破れた服から落ちてくる。
「お前たちに撃たれた、みんなのためにも‥‥ お前らを逮捕してやるぜ!」
拳を固めて走り出す刑事リチャードに銃を向けた男たちは引き金を引くが、弾が出ない。
慌てふためく男たちをリチャードは殴り倒していくのだった。
「ん〜、いい撃たれっぷりだったね。グレイト」
監督はリチャード役の俳優ディーン・アンダーソンの肩を叩いた。
「次の台本が上がりました」
「オーライ、読んでおくよ」
助監督から台本を渡されて、ディーンは歩いて行った。
●リプレイ本文
●事件
立てこもり現場‥‥
建物の屋上にスナイパー(役者:宮内・ミリー(fa1784))のライフルを構える後姿が‥‥
眼下にはパトカーが集結している。
「まあまあ、ここは一つ冷静に話し、Oh‥‥」
「こうなりたくなかったら早くしろ!」
銃声と共にネゴシエイター(役者:宮内)が射殺された。
「ミヤウチ、撃て」
「く‥‥ 撃てないわ‥‥」
犯人は子供を盾に動き回り、狙いを定められない。
「いいから撃て! 奴には交渉は通じない」
インカム越しに叫ぶが、自分の後ろから声がしたのに気づき、思わず振り返る。
「狙われる側の気分はどうだ?」
バンバンバン‥‥
ミヤウチはスナイパーライフルに寄り添うように力を失っていった。
場面は変わって、警察署内‥‥
仮眠室のドアを後にして東洋系の女性警官(役者:烏丸りん(fa0829))が化粧室に入った。
「ふぅん♪」
朝日が黒髪に反射してプラチナブロンドと違った美しさを醸し出している。
「あ、おはようございま」
気配を感じて明るく挨拶した彼女だったが‥‥
パスッ、パスパス‥‥
「す‥‥」
そのまま洗面台に倒れこみ、流しに顔を埋めて動かなくなった。
生を失っていく肉体と対照的に、髪は美しいまま化粧台の上に広がって落ちた。
「これで何人目だ‥‥」
現場検証の最中、への字に口を噤む刑事リチャード‥‥
遺品のコンパクトや口紅を握り締めると静かに黙祷した。
「必ず犯人は捕まえてやる」
整ったデスマスクに誓い、リチャードは、その場を後にした。
●リチャード、危機一髪
黒のロングコートが、影の中で窓から入るネオンライトを受けて時折姿が浮かぶ。
闇に紛れてオフィスのパソコンを操作する男(役者:皇・皇(fa0043))の胸元でロケットが光を反射した。
「このデータがあれば‥‥」
男はメモリーを引き抜いた。
場面は変わって昼のカフェ。
「よぉ」
刑事リチャードは、ヒソと呟くと、オープンカフェの一席に腰を下ろして指を鳴らす。
「例の見取り図だ。無くすなよ。これの為に、うちの課から何人逝ったか」
コーヒーを飲むふりをしながら、背中越しにリチャードに話しかけ、メモリーを受け皿の陰に置く。
「無駄にはしないさ、コウ」
「さて、俺の仕事は此処までだ。後は頼むぜ? 俺はこれから彼女とデートなんだからよ」
2人は視線を合わせることもなく去っていく。
しかし‥‥
コウとすれ違った男は、背広の胸に手を入れると銃を目立たぬように身体の側に下ろした。
1歩、2歩‥‥
「ちっ! リチャードッ!」
振り向き様に駆け、蹴る。男の拳銃が暴発し、周囲に悲鳴が上がった。
コートのポケットに手を突っ込んだまま、蹴り、蹴り、蹴り!
ダダ‥‥‥‥ン‥‥
ポケットの中で構えていたコウの銃が男を捉え、リチャードを狙った銃弾はコウに‥‥
「わりぃ、どうやら待ち合わせには行けそうにないわ‥‥ 彼女に伝えてくれないか。悪いな、って」
「諦めるな! 俺は伝えないからな」
リチャードは首を振った。
●戦い
「ボスに宜しく」
黒い肌に黒い瞳、対照的な白い髪と白いドレス‥‥ 豊満なボディが布地に隠されることによって色気を増している。
ターバンの男から贈り物の指輪をはめてもらい、グラスを片手に女(役者:クールマ・如月(fa0558))は上機嫌に歩く。ドぎつい化粧と衣装で色気を振りまきながら‥‥
武器の闇オークション・パーティーには、様々な人種の者たちが集まっていた。
あちこちで商談が成立しているのか、握手する姿が‥‥
「うまくいきそうね、ボス」
葉巻をくわえ、ウィスキーを片手に様子を眺めている厳つい顔の男に、愛人がしなだれかかる。
男は無言で会場の様子を見つめ、グラスを傾けた。
その時!
「観念しな」
リチャードの登場に会場の客たちは、我先にとドアを開け放って逃げ出していく。
潜入捜査官コウの形見のデータを元に立案された突入作戦だ。雑魚は他の警官たちに任せておけばいい。
ボスはクロスを引き、マシンガンを手にすると、1丁を愛人に渡す。
タタタ、タタタ‥‥
愛人とボスの乱射するサブマシンガンは、帽子を抑えて走り抜けるリチャードを追うように壁を砕いていく。
「回り込め!」
警官たちは、銃撃の中、応酬しながら障害物を盾に敵に接近する。
しかし、相手が凶悪すぎる。バズーカ!
「危ない!」
仲間の警官に押し飛ばされた先に照準され、発射!!
「嘘だろ」
苦笑いの警官(役者:酉家 悠介(fa2112))。
グワァン!!
画面が切り替わり、爆発!!
「ちくしょぉお」
警官たちは一斉に突撃した。
「お前を倒して、俺は出世する!」
若いチンピラ(役者:北沢晶(fa0065))が、拳銃を構えて走りこみ、リチャードを邪魔する。
「喧嘩はビビった方が負けだぜ」
ダンダン!
警官からの射撃に晒されながら、チンピラがリチャードに迫る。
「へへっ‥‥ 朝の占いで、今日はツイてると言われたんだ」
チンピラが笑いながらリチャードを撃つ。
みぃ‥‥
チンピラが気をとられた先には黒猫が‥‥ 神秘的は瞳でこちらを見つめている。
「喧嘩の最中によそ見をすると負けるぜ」
気づいたときには遅い。軽快なアッパーがチンピラを倒した。
リチャードは、弾丸を受け止め、命を救ってくれた悪友の形見のロケットを握り締めた。
「奴ら、上だ!」
刑事(役者:ジョニー・マッスルマン(fa3014))が上を指差すと、リチャードは駆け出した。
「Dork!」
ギャングのショットガンに気づき、飛び出して拳銃を撃つ!
銃声にリチャードが振り向くと刑事が崩れ落ちた。
「お前もかよ‥‥ 逝くな」
「Dum‥‥ しくじったぜ‥‥ これじゃあメリッサを孕ませられないな‥‥」
リチャードは刑事の下半身に目をむけ、そむけた。
『HAHAHAHA〜♪ HEY、リチャード! 聞いてくれよ! 遂に! 遂に!! メリッサと決めたんだ!!』
『見ろよこれ、デュポンの限定モデルだぜ! しかもメリッサのLOVEがMAXの!』
嬉しそうに話してくれた同僚の笑顔が脳裏に浮かぶ‥‥
「シガーをくれ‥‥」
「すまん、ライターを忘れた」
「しょうがないな、俺のお守りを貸してやるよ」
リチャードは刑事のポケットから、彼自慢のライターを取り出すと、煙草を咥えさせ、火を着けた。
「ああ‥‥ 旨い」
刑事の口から煙草が零れ落ちた。リチャードは静かに横たえて駆け出した。
残されたのは、倒れた警官やギャングたち‥‥ そして‥‥
自動ドアに挟まれて、倒れるチンピラの姿‥‥
●終焉
屋上の夕闇に3つの影‥‥
近付いていくと、ボスと愛人、そして別の誰かだとわかる‥‥
何かの取引でもしているのか‥‥
「ふふ、この情報、上にバラされたらまずいわよねえ。それじゃあまた、よろしくね」
「待てよ」
「何? まだ何か用でも」
パーーーン‥‥
驚愕する赤い髪の女(役者:大河・剣(fa1509))は、歩くように倒れこむ。
「用がないって伝えたかったんだがな」
ボスは残酷な笑みを浮かべると、更に何発か撃ち込んだ。
ヘリのローター音が近付いてくるのを感じながら階段を駆け上がるリチャード!
「そこまでだ!」
「しつこいと嫌われるぞ」
ボスは飛び出してきたリチャードの動きに合わせて連射。
射線上に入ってきた愛人の背中に弾丸が突き刺さり、ババッと血を吹いた。
ボスは愛人を爪先を使ってひっくり返すと、ねっとりとした笑いを浮かべた。
「ドジったよ。フフ‥‥」
愛人のドレスはクリムゾンカーキに染まっていく。
「いい女だったんだがな」
タタ‥‥
「ひどい奴だ、お前は」
リチャードは歯噛みして見ているしかない。
「結構。お前たちを天国に送るのが俺の仕事でね」
ボスの放った弾丸がリチャードを撃つ‥‥
「殺された皆のために、お前は必ず逮捕する」
砕けた口紅やコンパクト、歪んだターゲットスコープやポリスバッチと一緒に、弾がカラカラと床に転がった。
ダッシュするリチャードをマシンガンを向けるが、弾切れ。
僅かに表情を歪め、ハンドガンを撃つのと同時にリチャードのストレートがボスを吹き飛ばす!
気を失うボスを前に、リチャードは屋上の縁に腰掛けると煙草を取り出して火を着けようとしたが、いくらやっても着かない‥‥
ライターには弾丸が突き刺さっているのを見ながら、リチャードはヘリの音が遠ざかっていくのを聞いた‥‥
●チェック
「皆のやられっぷり、良かったぜ」
お茶と菓子で休憩しながらくつろぐディーンに言われて、皇は照れている。
「撃たれ役‥‥楽しかったですねえ」
だが、北沢の視線は自然と、そう言うクールマの胸に‥‥ 眼福、眼福。
「こういうノリは嫌いではありません」
「はー、女優なんぞ始めてで緊張したけどよー」
そう言う烏丸や大河、宮内、酉家、ジョニーたち‥‥
「みんな、グレイトだったぜ」
編集のチェックをしていた監督は、出演者たちのことを思い出しながら頷いた。