冒ユニ 血を流さぬ大地南北アメリカ

種類 ショート
担当 シーダ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/24〜05/29

●本文

●TV・OPテロップ
『冒険チーム・ユニコーン』
 軽快なテーマ曲をバックにタイトルが拡大され、そこに現れた森林から浮かび上がるように飛び出した一角獣・ユニコーンが、大地を‥‥空を‥‥海を背景に疾走する。
 そこへ重ねられるのは男の声‥‥
「人道支援、動物保護のために設立された複合出資団体による組織・ユニコーン財団。
 彼らが派遣したエージェントたちは、今日も各地で事件を解決していく‥‥」
 スタッフロールが流れ、数頭のユニコーンが線画になるとそれぞれが別の人物の姿へと変わっていく。
『血を流さぬ大地』
 サブタイトルが浮かび上がり、CMに切り替わった。

●TV・Aパート:紛争への初手
「危険な任務だ。無論、君たちには断ることが許されている。だが、放っておけないと思ってもらえると、私は信じている」
 今回のチーム・ユニコーンに召集されたエージェントのメンバーに、作戦のプロデューサーであるバトラーが語り始めた。
 画面には某国の地図が映し出されて、ポイントされた地図の一部が拡大された。
 衛星画像がリンクし、更に拡大されて施設の見取り図が3Dで表現される。
「今回の一件に関して、政治的配慮から政府からの表立った支援は得られない。
 だからこそ我々がこの情報を、『偶然』手に入れる事態となったわけだが‥‥」
 バトラーは、某国に撮影のために入国したアメリカ人がスパイと疑われて、収監されている事態を説明した。
 この地へ米軍を展開して、強襲救出することは簡単だ。しかし、国交を回復させるのは容易ではないことを政府関係者は知っている。僅かでもアメリカ政府の介入を臭わす証拠が残れば、それが外交のカードになるであろう。
 費用対効果‥‥ 簡単に言ってしまえば、それだけのために政府一職員のモラルが欠如し、情報を漏らさないための鉄壁の鍋の底に穴が開いて、ポタリと滴が垂れた‥‥ということだ。
「必要な物資があれば言ってください。ユニコーン財団が用意します。
 ただし、武器の調達はNGです。我々は戦争をしに行くのではありませんからな。
 無論、武器らしからぬものを武器として用いる分には、何の制限も与えませんが」
 バトラーはメンバーを見渡し、異論がないのを確認して話を続けた。
「現地への潜入は、偽の身分証とビザを用意します。適当な理由を作って入国してもらいましょう。その理由については、あなた方のやり良いようにしてもらって結構」
 最後に‥‥と言葉を望まれ、早速準備を始めてほしいと指示を出すディレクターを兼ねるスポンサーに対して、バトラーは一礼し、メンバーたちも同意を示した。

●撮影風景
 放送に先立って‥‥
 アメリカ国内の某所、赤い大地でロケを行っている撮影班は、目の前の施設に目を向けた。
 廃墟と化していた政府施設を借り受け、簡単に補修を施し、ジャンクのアンテナや見張り塔などを仮設した姿は一応現役に見える。
 元々、解体予定の施設であるために、多少壊れようが何の問題がないというのがグレイトだ。監督は、そう言って憚らない。
「さて、そろそろ素材は揃うか」
「突入シーンを残すのみです」
 男2人が台本片手に何かを話している。
「OK♪ グレイトだ。早速、撮影を始めよう」
 2人はコーヒーを飲み干すと台本を片手に満足そうにテーブルを離れた。

●今回の参加者

 fa0269 霧島 愛理(18歳・♀・一角獣)
 fa0348 アレイ(19歳・♂・猫)
 fa0360 五条和尚(34歳・♂・亀)
 fa0614 Loland=Urga(39歳・♂・熊)
 fa1861 宮尾千夏(33歳・♀・鷹)
 fa2603 ダン・バラード(45歳・♂・狐)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3115 (22歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

●TV・Aパート:紛争への初手
 机に置かれたユニコーンナイトのチェスピースは2つ。
「よろしく。チームリーダーのビューティーよ」
「こちらこそ」
 軽い会釈をしてクーガー(役者:辰巳 空(fa3090))は握手を交わした。
「早速だけど時間が惜しいわ」
「OK」
 ビューティー(役者:霧島 愛理(fa0269))が画面を操作すると、現地のニュースや各種運行表などが次々に開いてゆく。
「これ、使えませんか?」
 クーガーの示したものは、地震で町が被害を受け、死傷者が多数出ているというものだった。
 ビューティーが機器を操作すると、飛行機の航路の側に目的の監禁施設がある。
「降下作戦ってことね?」
 微笑むビューティーに、クーガーが頷いた。

 場面は薄暗い部屋へ‥‥
「クーデターの情報を知られたからには、事が終わるまでここに居てもらう。終われば自由にしてやる」
 将軍風の男が、笑顔を浮かべて椅子に縛り付けられたジャーナリスト風の男の肩を叩いていた。

「これが頼まれていたものよ」
 ユニコーン財団のエムブレムを着けたクルー(役者:宮尾千夏(fa1861))が、ありふれた医療機器や薬を詰め込んだケースを机の上に並べる。
「ありがとう。これは?」
「この白衣は特殊繊維で出来てるから、多少の衝撃には耐えられるわ。防弾チョッキじゃないから気休めだけど、ないよりましでしょ?」
 開発局クルーは白衣を広げてみせる。
「それと、これが防具。この上から白衣を着けるの。当たり所が良ければ拳銃の弾くらいは何とか防げる‥‥」
 ギプスや手術用の固定具、ケースの裏地などを外すと、手際よく身に着け、両手を広げて様子を見せた。
「防げる‥‥はずってことですね?」
「そう、過信は禁物。防具なんて使わずに済めば、それに越したことないんだから」
 クーガーにウィンクすると、クルーはマニュアルを引っ張り出して説明しだす。
「これは、このボタンを押してね。それで‥‥」
 ビューティーとクーガーは、クルーの説明に聞き入った‥‥

 赤い大地の風景‥‥

 そして、場面は、事務所ような一室‥‥
「医師か。書類はあるが‥‥」
 指揮官らしき兵士が隣を通るのを見計らってクーガーが札を押し込み、ビューティーは微笑んだ。
「ま、不備もないようだし、後は荷物だな」
 ゴホンと咳払いして、指揮官らしき兵士は椅子に座った。
「所持品は医療器具一式。申請書と間違いはありません」
 繊細な機械も多い医療器具であるから、徹底的に調べて壊れでもして損害を請求されては兵士たちがたまらない。
 自ずと審査は殆んど形式的なものになった。
「よし、通って良し」
 白衣の2人組みがゲートを通り抜けて行く。
「ここまではクリア」
「序の口じゃないですか。これからですよ」
 ビューティーとクーガーは駐機場へ向かうと、セスナで飛び立って行った。

●TV・Bパート:救出
 遠景からズーム‥‥
 バラバララ、バババババ‥‥
 レシプロ音が響く。
「幸運を祈ってるよ」
「ありがと」
 パイロットにビューティーがウィンク、クーガーは指を振って、バイザーを下ろしてドアを開けると飛び降りた。
 画面は変わって俯瞰の画に弾丸のように落ちる2つの影。
 小さな翼のような物が展開され、グンと水平方向に速度を増して行く。
 カメラはそれを追いかけるようにロールして追い抜いて行く。
「ん?」
 ボサボサ頭でよれよれの服を着たレーダー監視員(役者:五条和尚(fa0360))が首を傾げると、机の上で足を組んでいた同僚が欠伸をしながら近付いてきた。レーダーの画面を覗き込む。
「これは物資輸送用のセスナ。運行表にあるだろ?」
「違うよ。こっち」
 レーダーには、はっきりとした光点以外にチカチカと反応が現れ、消える。
「鳥か何かだろ?」
「なんだ鳥か」
 1人はドサッと腰掛けて目をつぶり、ボサボサ頭の男は再びレーダーの画面を覗き込むのだった‥‥

 背中に背負ったケースに装着された酸素ボンベからガスが噴射され、ビューティーとクーガーは目標の建物の屋上に着地。
 小型の落下傘を巻き取り始める。
 その時、突風が!
 クーガーの落下傘が膨らみ、風にあおられてバランスを崩す。
 間一髪、ビューティーに掴まれ、ホッと一息。
 落下傘を巻き取るとパックに入れて、医療ポンプに接続。空気を抜いて一気に小さく纏めるとケースに収納した。
 ギプスなどのプロテクターを装着して、その上から服と白衣を着け、ストローマイクを襟の下に装着し、イヤホンを填めた。

 術具を手に取り、鏡面で通路の先を覗く。
「あそこね。監禁されているのは」
 部屋の前には軍服に軍靴、鍔帽と防弾ジャケットを着け、腰には通信機を装着、アサルトライフルを脇に立て、サブマシンガンや拳銃、アーミーナイフを装備した完全武装の兵士2名が立ち塞がっている。
「任せてください」
 目配せするクーガーに、ビュティーは頷いた。
「将軍の命令で来た。死なれては困るということだ」
「アブラハム医師はどうした。交代するとは聞いていないが」
 奪った身分証にはクーガーの写真が張ってあるが、確認されれば直ぐにバレてしまうだろう。
 それでも何気ない歩調でクーガーは2人に近付く。
「身分証を確認させてもらおう〜」
 1人(役者:五条)は身分証に手を伸ばそうとし、1人は通信機に手を伸ばそうとしている。
 その注意がそれた一瞬、クーガーの手刀が飛び、怯んだところへ‥‥
 プシ、プシ‥‥
 円筒型のスティックを手に取り、兵士に押し当てる。使い捨ての容器をポケットに手早くしまうと兵士の脇に手を差し込んだ。
 片方を飛び出してきたビューティーが受け止め、そっと床に寝せる。
「シフトでは誰も居ないはずだけど、気をつけて」
「OK」
 兵士の懐からカードキーを探し出すと、クーガーは携帯用のバイタルメーターのスロットに差し込む。
 ビューティーはドアの蝶番に油を流し込む。
 クーガーがボタンを操作するとバラバラと数字が流れ、6桁の数字が並んだ。
 装備を片付けて背負いなおすと吐き出されたキーを差し込み、暗証番号を打ち込む。
 スー‥‥
 開いた扉の向こうにはジャーナリストの姿が‥‥
「危ない!」
 部屋の中にも見張りの兵士が1人‥‥
 拳銃を抜くと、ジャーナリストに向けた。
 クーガーが飛び出すが、間に合わない。
 タン!
 斜めに身体を入れ、弾丸のエネルギーを反らせつつ、その身に銃弾を受ける!
 驚愕する兵士に手刀を一発。銃を落とした兵士の、その首筋に麻酔スティックを打ち込んだ。
「痛ぅ‥‥」
 クーガーは顔を顰めるが、血は出ていない。
「立てる?」
「大丈夫、助けに来てくれたのか?」
「そう、一刻を争うわ。ユニコーンの角は、どんな悪事も見逃さない」
 ビューティーはメスで縄を切ると、ジャーナリストに肩を貸した。
 銃声で異変を気づかれただろう。階下で騒ぐ声が聞える。
 クーガーは窓を開いて様子を確認!
「くそっ、奴ら、あの男を攫って行きやがった。窓を破って、外に出て幹線道路のほうへ逃げて行く!」
 クーガーは兵士の通信機に叫んで親指を立てている。

 警報が鳴り、階段にはシャッターが降りた。エージェントはジャーナリストを連れて建物の反対側へ通路を走る!
「ビシャス将軍がクーデターを起こす。それを知って監禁されたんだ」
「話は後!」
 ホチキスガンを構えると階下の立ち木に向かって撃つ!
 フックを窓枠にかけるとホチキスガンを操作して2つに割り、ワイヤーを挟み込む。
「しっかり掴まっていて」
 ビューティーはジャーナリストをベルトで固定すると一気に滑り降りる。
 クーガーも続き、手近な車両に乗り込むと燃料を確認して、バイザーの裏に手を入れた。
 その間にビューティーが体温計のスイッチを押すとフックが外れ、ワイヤーの先をセットした人工心肺装置に巻き取られていく。
「ビンゴ」
 鍵だ。迷わず差し込んで回す!
 バォン‥‥
 3人を乗せた車両は荒野へと走り出した。

 陽動に気づいて荒野へ追ってきた兵士たちが砂塵を巻き上げてやって来るが、それをあざ笑うかのように岩陰からセスナが飛び立った。

●チェック
 あと少しでロケ現場での撮影は終わりだ。
「空中シーン。結構、良い画が撮れたじゃないか。グレイトだぜ」
「次があれば、もっと良いアングルで撮れないか、工夫してみますよ」
 撮影スタッフの飆(fa3115)は、缶コーヒーを置いて笑った。
 捕まっていたジャーナリストが人事でないような気がして、思わず思い出し笑い。
「いい演技で最高の映像が撮れたよ!」
「監督の台詞だよ、そりゃ」
 カメラを担ぎながら近くにいた辰巳の背中を軽く叩く飆に、助監督がすかさず突っ込み。
「それにスタッフみんなのお陰ですよ」
 助監督の台詞に、大道具のLoland=Urga(fa0614)なども作業をしながら手を上げて答えている。
「次に組む時も宜しくだぜ」
 片づけが終われば撮影の打ち上げだ。ビールや料理を存分に味わえる。
 Lolandたちは、最後のシーンに向けて手を動かし始めた。